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岩松了「そして春になった」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

昨日は相当バタバタで更新は無理でした。
今一段落という感じではあるのですが、
色々と不安なことがあって落ち着きません。

また新型コロナのことなど含め、
少し整理してから記事にはしたいと思っています。

今日は休みの日で趣味の話題です。
今日はこちら。
そして春になった.jpg
もう公演は終わっていますが、
昨年の12月に岩松了さんの新作2人芝居を、
下北沢の本多劇場で鑑賞しました。

これはダブルキャストでの上演で、
ある映画監督の妻とその愛人が登場しますが、
妻が松雪泰子さんで愛人がソニンさんというペアと、
妻が片桐はいりさんで愛人が瀧内公美さんのペアの2組での上演です。

僕は松雪さんとソニンさんのペアを実際に観て、
それから映像配信があったので、
片桐さんと瀧内さんの舞台を2回観て、
それで「あれ、ここはちょっと台詞が違っているのじゃないかしら」
と気になってしまったので、
結局松雪さんの舞台も配信で観直しました。
結局2回ずつ観たことになります。

岩松了さんの作品はいつも非常に難解で、
とても意地悪に書かれています。
台詞は全て平易な言葉で書かれているのですが、
通常期待されるようなドラマチックな展開は全く起こらないか、
ラストに唐突に起こります。
大抵ラストに至って「えっ!」と驚き、
もしくは「もうこれで終わりなの?」と愕然として、
「今まで2時間を掛けて観させられていたものは何だったのかしら」と、
これまでの展開を遡ろうとするのですが、
時既に遅し、という感じになるのです。

今回の作品は岩松さんの中では、
比較的平易なものですが、
それでも最初に実際の舞台を1回観た時には、
初めから台詞がなかなか頭に入って来ず、
中段で舞台の動きが入ると、
「あっ、これはもう締めに向かっているな」
と予測はしながらも、紛らわしい台詞に翻弄され、
結局欲求不満のまま劇場を後にしました。

配信というのは便利なもので、
実際に観た舞台を、
その記憶がそれほどぼやけない前に、
何度も確認出来るという利点があります。
特に今回の作品は全編で50分程度という短さなので、
それほどのストレスなく確認することが出来ます。
今回は12月に観た舞台を、
レセプト作業をしながら、
電子カルテの隣のパソコンで流しっ放しにしました。

今回の作品は女性の2人芝居で、
2人は読み合わせみたいに台本を手に持っていて、
ある時は互いに台本に目を落としたまま台詞を喋り、
またある時は台本を読みながら、
それについて議論をする、
という感じにもなります。

舞台は湖の畔の映画監督の男性の別荘で、
そこに監督の妻とその愛人の女性がいて、
更に実際には登場しないものの、
より若い新進女優が、
監督の新しい愛人として居合わせているようです。

時制としては、
そのパーティーの夜が「現在」で、
そこで愛人の女性が新進女優(新しい愛人)を、
湖にボートで連れ出して、
ボートから落として殺してしまい、
その瞬間を別荘の窓越しに、
監督の妻が目撃している、
という場面がまず描かれます。

そこから時間は遡って、
監督の妻とその愛人との最初の出会いから、
監督の心が妻から愛人への動く様子、
互いに憎みながら、
同じ男性を支点としている関係性から、
2人の女性が心の繋がりを持つ様子、
そして題名でもある「そして春になった」という映画で、
愛人が「妻」の役をキャスティングされ、
ヒロインを新進女優が演じることで、
愛人もかつての妻のように捨てられることが明らかになります。
そこに至って、妻と愛人の立場はほぼ同じになり、
2人にはある種の共犯関係が生まれます。

そして、ラストにはもう一度最初の場面が描かれるのですが、
殺人を目撃した妻が、
その時に手を切って血をにじませることで、
2人の心理的な共犯関係が確認されて終わるのです。

岩松さんとしては結構クリアなお芝居ですが、
それでも分かりにくいのは、
読み合わせという様式で代名詞が多いので、
「この台詞は誰のことを言っていて、誰に向かって話しているのかしら?」
という点が意図的に不明瞭にされていることが主な原因です。

これは実は「あなた」と言うのは、
その全てが舞台上の相手役のことのみを示しているのですね。
そっぽを向いていても、
呼びかけは全て相手に向かっているのです。
それを理解すると、
比較的すっと、台詞が頭に入ってくるようになります。

読み合わせ形式というのは一種の冒険で、
観ていてそう面白いものではないのですが、
単純な朗読ではなく、
それでいて記憶した台詞を、
あたかも今自発的に発せられたもののように表現する、
普通の台詞劇とも違っているので、
新型コロナ対策の苦肉の策という側面もある一方で、
舞台の新しい可能性を感じさせるものでもありました。

今後は実際の舞台を補足する配信との相乗効果が、
舞台芸術鑑賞の1つの新しい形になっていくような気もしました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ワンダーウーマン 1984」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当します。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ワンダーウーマン1984.jpg
最近では公開が珍しいハリウッド製の娯楽映画です。

ワンダーウーマンの新映画シリーズ2作目で、
作品毎に年代が変わるのが特徴です。
今回は1984年が舞台になっていて、
当時のSF映画のちょっとチープな感じが再現され、
レトロな感じの映画になっています。
色調もちゃんとあの時代の感じですし、
特撮も敢えてチープな感じを残しているんですね。
それでいて、オープニングの掴みの部分だけは、
アマゾネスの競技会を、
ダイナミックな今の技術で圧倒的な見世物にしていて、
その辺のバランス感覚はさすがと思います。

「猿の手」(映画に言及あり)を思わせる、
一度だけ願いをかなえてくれる神秘の石が登場し、
それに翻弄されて世界は大混乱になりますが、
ワンダーウーマンが自分のかなえられた願いを撤回することにより、
世界はその秩序を取り戻します。

これは「懐かシネマ」という感じの映画で、
スター・ウォーズのエピソード7みたいな世界ですね。
このタイムスリップしたような80年代の世界と、
結構ダサいスーパーヒーローや、
間抜けな悪党の世界を、
懐かしく楽しめる人には、
悪い作品ではありませんし、
そうでない人には、
「何だこりゃ」という感じの映画です。

個人的にはこうしたものが嫌いではないので、
それなりに楽しんで観ることが出来ました。

映画館もしばらくは、
また緊急事態で自粛ムードになると思うので、
新作より旧作や名作の上映などに、
しばらくシフトして欲しいな、と思いました。

皆さんも感染対策に留意しつつ、
お好きな方は、
決められた制限の範囲で映画館に足をお運びください。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症に対するアデノベクターワクチンの有効性(アストロゼネカ社など) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスのアデノベクターワクチンの有効性.jpg
Lancet誌に2020年12月8日ウェブ掲載された、
オックスフォード大とアストラゼネカ社などによる、
新型コロナウイルス予防ワクチンの臨床試験結果についての論文です。

このワクチンも、
ファイザー社などによるmRNAワクチン、
モデルナ社によるmRNAワクチンより少し遅れて、
本国のイギリスで一般への接種が開始されています。

このADZ1222と題されたワクチンは、
mRNAワクチンとは異なる製法によるアデノウイルスベクターワクチンです。

ウイルスベクターワクチンというのは、
他の無害なウイルスの遺伝子の一部に、
目標とするウイルスの遺伝子を取り込ませて、
それを人間に感染させることにより、
免疫を誘導しよう、という手法のワクチンです。

今回のイギリスのワクチンは、
チンパンジー由来の人間には感染しないアデノウイルスを、
ベクターとして利用して、
そこに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の、
突起(スパイク)部分の蛋白質の遺伝子を挿入し、
それを接種することで人間にこのアデノウイルスを感染させます。

このウイルスは人間の細胞に感染しますが、
そこで増殖はしないように調整されています。
結果としてウイルスに対して身体が免疫を誘導するので、
それが新型コロナウイルスにも有効に作用する、
という仕組みです。

生ワクチンや不活化ワクチンほど量産に時間が掛からず、
ウイルスを感染させるので、
不活化ワクチンより細胞性免疫の活性化も強く期待出来る、
という点が利点です。

中国で開発されている同種のワクチンは、
エボラ出血熱ワクチンで開発には成功しており、
イギリスの今回のワクチンはMERSワクチンとして開発した経緯があり、
いずれのワクチンも大規模な臨床応用、
というところには至っていない点に、
若干の不安はありますが、
比較的成功の可能性の高い技術ではあるのです。

今回発表された臨床試験は、
ブラジル、南アフリカ、イギリスで施行された、
4種類の介入試験の結果をまとめて解析したものです。
いずれも18歳以上の一般住民をクジ引きで2つに分けて、
一方は実際のワクチンを投与し、
もう一方は偽ワクチン(試験により髄膜炎菌など別のワクチンや生理食塩水)
を使用して、
2本目のワクチン接種後14日以降の、
新型コロナウイルス感染症の発症を比較して有効率を算出しています。

トータルで23848名が試験に参加し、
メインである有効性の解析には、
そのうちの11636名が使用されています。
基本的に2本のワクチンを筋肉注射で使用していますが、
その間隔は試験により幅がありますが、
標準は4週間です。
トータルなワクチンの有効率は70.4%(54.8から80.6)と算出されています。

このワクチンはmRNAワクチンとは異なり、
冷凍保存などの特殊な温度管理の必要性がなく、
現状のインフルエンザワクチンなどと、
同じような管理で接種可能である点が一番の利点で、
ワクチンの価格自体も安いとされていますが、
mRNAワクチンの有効性が概ね95%であることを考えると、
70%というのはかなり見劣りのすることも確かです。

今後その接種が拡大する中で、
その利便性と有効性、安全性のバランスが、
より明確になることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症の免疫持続期間(医療従事者での解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス感染症の免疫はどのくらいの期間有効か?.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年12月23日掲載された、
新型コロナウイルス感染症の免疫持続期間についての論文です。

新型コロナウイルス感染症について、
現状不明な点の1つは、
一度感染した患者さんが、
どのくらいの期間免疫が持続しているのか、
言葉を替えればどのくらいの期間感染することはないのか、
ということです。

通常臨床的には半年くらいは免疫は持続する、
というように考えられていますが、
その一方で短期間での再感染事例の報告もあり、
また免疫を反映する抗体価の測定では、
感染後2ヶ月で抗体が減少する事例が多い、
という報告もあって研究結果は一致していません。

今回の検証はイギリスにおいて、
オックスフォード大学病院の医療従事者を対象とした、
個々の事例の経過を追った研究としては、
最も大規模なものです。

トータルで12541名の医療従事者に血液の抗スパイク抗体の測定を施行し、
その後の経過を観察しています。
このうち11276名は観察期間を通して抗体価は陰性で、
1177名は登録時に抗体が陽性、
88名は登録時には陰性で経過中に感染して陽性となっています。

経過観察中に登録時に抗体陰性の223名が、
RT-PCR検査で陽性が確認されました。
このうち100名はスクリーニングで発見された無症状感染で、
123名は症状のある感染でした。

登録時に抗体陽性者では2名のみが、
経過中にRT-PCR検査で陽性となり、
いずれも無症状の感染でした。

つまり、概ね6ヶ月の観察期間において、
有症状の感染は100%阻止されていて、
抗体価が陽性であれば半年は再感染は阻止されると、
そう考えて大きな間違いはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症に対するロックダウンなどの行動制限の有効性(イギリスでの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ロックダウンの有効性.jpg
Lancet Infectious Diseases誌に、
2020年12月23日にウェブ掲載された、
イギリスにおいて施行されたロックダウンの効果についての論文です。

新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。

ここで問題となるのが、
飲食店などの閉鎖や旅行や外出の制限などの、
社会活動の制限の有効性です。

人間同士の接触を物理的に制限すれば、
感染が予防されること自体は確実です。
ただ、人間同士の活動を大きく制限すれば、
当然社会生活は大きく制限され、
経済的にも甚大な影響が生じます。

そのために、経済的補償をするなどして、
一定の期間そうした社会活動の制限を行い、
感染が減少した段階で解除する、
という方針が取られます。

しかし、感染を防御するという観点からは、
長く制限を行う方が良い一方、
経済的なダメージを最小限にするには、
制限は最小限に留めることが望ましい、
というジレンマがあります。

どのような対策を講じるかどうかは、
感染防御的な観点のみからは決定することは難しく、
政治的な問題でもあり、
世論の支持や理解も必要という意味で、
非常に難しい問題なのです。

今回の研究はイギリスにおいて、
実際に行なわれた社会生活制限やロックダウンの有効性を、
施行後の入院患者数や死亡数、
グーグルなどのデータを活用した人間同士の接触の減少度などから、
数理的に推計して比較しています。

イギリスにおいては、
段階的な社会活動の制限が規定されています。
まず第一段階の制限は、
飲食店やバーなど接触を伴うサービスのある店舗の、
22時までの時間制限と、
人間同士の交流は6人以内が骨子です。
第二段階の制限は家族以外の交流の禁止と、
不要不急の旅行の禁止が加わり、
第三段階の制限では、
飲食店やバーなどの営業停止が加わります。
更に厳しいロックダウンにおいては、
住民は生活に必要最低限の外出を除いては、
原則家にいることが求められます。

他に北アイルランドにおいて行われたロックダウンは、
2家族以上で10人を超える交流は禁止され、
ウェールズにおいて行われたロックダウンは、
生活必需品などを除く店舗は閉鎖され、
原則外出も禁止で家族以外との交流も禁止という、
最も厳しいものになっています。

その結果はこちらをご覧下さい。
ロックダウンの有効性の図.jpg
ロックダウンの有効性を一覧表としたものです。
その有効性は、
実効再生産数(R: effective reproduction number)の低下、
という指標で推計されています。

何度かご紹介している基礎再生産数(R0)は、
新しい感染症が入って来たような場合に、
患者1人から二次感染する患者数のことですが、
実効再生産数というのは、
ある程度感染が拡大した時において、
同じように患者1人から二次感染する患者数のことです。
その集団には既に免疫を持っている人もいる可能性があるので、
最初とは数値のニュアンスが変わって来るのですが、
数値が1を切らないと感染は拡大する、
という点は同じです。

何も対策を講じない時と比較して、
第二段階の制限を行うと、
実効再生産数は2%低下します。
第三段階の制限を行うと、
実効再生産数は10%低下します。

一方で北アイルランド型のロックダウンで、
学校も閉鎖した場合には、
実効再生産数は35%、
学校は継続した状態では22%、
実効再生産数は低下します。

ウェールズ型のロックダウンで、
学校も閉鎖した場合には44%、
学校は継続した状態では32%、
実効再生産数は低下すると推計されました。

このように、
人間同士の交流を物理的に制限することにより、
感染は一時的には減少します。
しかし、ロックダウンが解除されると、
免疫のない人が大多数の集団であれば、
速やかにリバウンドが起こります。

これがロックダウンが感染拡大を、
一時的に抑えはしても、
しばらくしても次の感染拡大が起こるという、
世界中で起こっている出来事の、
1つの説明なのです。

学校の閉鎖は感染抑止に一定の有効性がありますが、
学校を閉鎖することは青少年への影響が大きく、
現状は余程のことがない限り、
学校は閉めないというのが、
基本的な考え方となっています。

今回の感染症は色々な意味で厄介で、
テレビのコメンテーターの言う通りにすれば解決、
というほど簡単なものではないことは、
間違いのないことだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの有効性(モデルナ社) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
モデルナ社のコロナワクチン.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年12月30日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症のワクチンとして、
ファイザー社などのワクチンと共に、
もう海外では一般への接種が開始された、
モデルナ社によるmRNAワクチンの、
有効性についての臨床試験結果をまとめた論文です。

今回開発されたのは、
mRNAワクチンというタイプのワクチンです。
その仕組みの概略がこちら。
(図はファイザーなどのワクチンのものを使用しています)
RNAワクチンのメカニズムの図.jpg
mRNAというのは、
人間の細胞がリボゾームという工場でタンパク質を作る時に、
その設計図となる遺伝子の鋳型のようなものですが、
それを合成して新型コロナウイルスの突起部分の蛋白質の、
元になる遺伝子を挿入します。
それを脂質の膜のカプセルで保護して粒子にしたのが、
このワクチンの原型で、
それを筋肉注射で身体に送り込みます。

それが、抗原提示細胞と呼ばれる免疫細胞に取り込まれると、
そこで抗原蛋白が作られ、
それが新型コロナウイルスに対する免疫を、
誘導することになるのです。

これまでのワクチンは、
基本的に抗原蛋白そのものを投与して、
それで免疫を誘導するという手法でしたから、
今回のワクチンはその元になる遺伝子を投与して、
身体の細胞に抗原蛋白を作らせる、
という点が全く違っているのです。

このワクチンは100μgを4週間の間隔で2回筋肉注射で接種します。

今回の臨床試験はアメリカで、
18歳以上の30420名をくじ引きで2つに分けると、
一方は上記のワクチンを2回接種し、
もう一方は偽ワクチンを接種して、
その後の両群の新型コロナウイルス感染症発症率を、
比較検証しています。

その結果、
2回目のワクチン接種から14日以上経過後に発症した、
新型コロナウイルス感染症は、
ワクチン接種群では11件であったのに対して、
偽ワクチン群では185件で、
2回のワクチン接種により、
新型コロナウイルス感染症は94.1%
(95%CI: 89.3 から96.8)有意に抑制されていました。

今回の臨床試験においては、
ワクチンの有害事象は、
主に接種部位の疼痛や発赤、
だるさや頭痛などで、
重篤なものは少なく、
偽ワクチンと有意な差は認められませんでした。

先日ご紹介したファイザー社などによるmRNAワクチンの有効性は、
ほぼ95%で、
今回のモデルナ社のワクチンは、
ほぼ同一の規模と方法の臨床試験において、
こちらもほぼ同一の有効性を示した、
と言って良さそうです。

現時点での新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの問題点は、
最長でも2ヶ月程度の短期間の有効性しか、
示されてはいない、という点にあります。
猿を使った実験や中和抗体の測定などのデータでは、
3ヶ月程度の有効性はあると推測されますが、
それ以降の有効性については全く分からない、というのが実際です。
また、ワクチンの臨床試験は偽ワクチンを使用して行われていますが、
明らかにワクチンの接種部位の腫れや痛みには差があるので、
結果としては本人にも本物のワクチンが接種されたかどうかは分かってしまい、
それが結果に影響を与えている可能性も否定は出来ません。
更には今回の臨床試験は症状のある感染の予防効果をみたもので、
無症状の感染まで予防可能であるかどうかは明らかではありません。
つまり、接種者の有症状の感染の予防効果は確かでも、
無症状の感染は予防しないとすれば、
感染拡大自体を阻止するかどうかは、
まだ今後の経過をみないと、
判断は出来ない事項なのです。

今後の情報を注視しつつ、
その進捗を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年1月4日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日までクリニックは年末年始の休診です。
明日からは通常通りの診療になります。

今日はまた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療についての話です。

昨日は午前中発熱外来でクリニックを開けましたが、
結局連絡があって受診されたのは2名のみでした。

どうも無理して三が日に診療をした割には、
あまりお役には立てなかったようです。

年末の1300人以上という数字は非常にショッキングでしたが、
その内訳は実際のところどうなのか、
地域的な偏りがどの程度あるのか、
自費検査の分がどの程度乗っかっているのか、
など、その詳細を知りたいところです。

年末年始の診療をしていてのこの閑散とした状況からは、
緊急事態宣言も間近、というようなニュースは、
どうも実感を持って感じることが出来ません。

落ち着いているようで、
一部の病院には患者さんが殺到しているのでしょうか?

仮にそうだとすれば、
軽症の方は幾らでも廻して頂いて良いのですから、
もっと効率的な診療が、
出来るような体制を何とか整備して欲しいものです。

幾つか最近印象的だった事例の話をします。
実際の事例を元にしていますが、
守秘義務及び個人の特定を避ける観点から、
敢えて事実を変えて記載している部分のあることを、
予めお断りしておきます。

1例目は近隣のあるお寺のお坊さんなのですが、
僧房で集団生活をしていたのですね。
その中の1人が持病を持っていて、
その持病のために総合病院に入院したのですが、
その病院で新型コロナウイルス感染症の院内感染が発生。
それから数日して、その人は、もう入院は続けられないと、
強制退院のような形になったのです。
その時点で発熱などの症状はなかったのですが、
退院となって2日後に発熱。
発熱外来を経由しての検査でその人の陽性が確認され、
一緒に生活していた10人以上が濃厚接触者と認定。
結果としてクリニックで検査をしたお坊さんを含めて、
5人以上がお寺で感染してしまうという、
クラスターになってしまったのです。

クリニック目線で考えると、
いきなり退院にするのではなく、
一定期間は隔離にするなど、
もう少し配慮があるべきではなかったかしら、
というようには思うのですが、
病院としてはそれどころではないですし、
ともかく感染していない(と思われる)患者さんを、
一刻も早く病院の外に出そう、
という考えが先行したのだと思います。

クリニック、家庭、保健所、病院と、
それぞれの認識に違いがあり、
それぞれに疲弊してくると、
結局は自分のところから、
自分の責任の及ぶところから、
新型コロナの患者さんを早く手放したい、
という思いが先行してしまい、
こうした事例が多くなるように思います。

ここにも患者数急拡大の1つの要因がありそうです。

2例目は知的障害のある30代の男性ですが、
37度代後半の発熱と咳、胸の痛みを主訴にして、
近隣の救急指定病院を受診。
すぐに採血とRT-PCR検査、胸部CTまで検査をしましたが、
CTで肺炎像はなくPCR検査は陰性であったので、
咳止めなどが対処療法として処方され、
経過をみる方針となりました。
ただ、ご本人も付き添いの母親も、ちょっと癖のある人で、
その診断をあまり信用せず、
今度は別の内科を再び受診し、
診察のみを受けて抗菌剤などの処方を受けました。
それから一週間が経ちましたが、
微熱は続き体調はあまり改善しません。
それでその患者さんは再び母親と一緒に、
クリニックを受診されました。
他の病院でも同じだったと思うのですが、
全く事前の連絡なく、いきなり受診をされて、
「具合が悪い。熱がある。胸が苦しい」と言われるのです。
正直困りました。
診察をお断りすることは出来ないのですが、
他の熱のない患者さんと一緒にお待たせする訳にはゆきません。
いつも別室で診察をする手はずにしているのですが、
時間で予約して調整しているので、
飛び込みでそうした方が来られると、
調整がつかなくなってしまうのです。
仕方なく一旦その2人を別室に案内し、
時間通りに来た濃厚接触者の方を、
しばらく外でお待たせすることになってしまいました。

拝見すると診察上は呼吸状態を含めて、
大きな異常はありません。
ただ、微熱は続いていて、
胸が苦しいとも言われているので、
このまま帰ってもらう、という訳にもゆきません。

これまでの経緯を考えれば、
最初に受診した救急病院で、
CTなども撮っているのですから、
そこでもう一度問題がないか確認をしてもらうのが、
適切ではないかと考えました。

それでその救急病院に連絡して、
担当した医師に相談すると、
「あの症状はメンタルなのだから、
これ以上検査をしても意味がない。
CTは月に2回撮ると保険で通らないので出来ない」
と剣もほろろの対応でした。

仕方なく午前中の患者さんが終わるのを待って、
胸部レントゲンと採血をして、
いずれも問題はなかったので、
PCR検査の再検はせず、様子をみてもらう方針としました。

勿論救急病院の初診の判断としては、
検査も異常はなかったので経過観察で良いと思うのですが、
1週間も微熱が続いていることは客観的事実なので、
勿論精神的な要因かも知れませんが、
知的障害があるから症状はメンタル、
というのは疑問ですし、
1週間前の検査が異常がなかったからと言って、
今も異常がないとは言い切れないのですから、
もう一度診療してくれても良いのではないかしら、
というのは強く思った事例でした。

いずれにしても医療機関や担当部署のいずれもが、
疲弊してほころびが出て、
連携も上手くいっていないので、
その狭間で患者さんや感染者が放置され、
その間に感染が拡大する、という悪循環が、
おそらく現状の本質ではないかという気がします。

明日からまたどのような展開が待っているかは分かりませんが、
状況を見つつ自分に出来ることを、
日々やっているより他はないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「新解釈・三國志」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は1月3日でクリニックは休診ですが、
予約制の発熱外来のみ行う予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
新解釈三國志.jpg
福田雄一監督による、
悪ふざけ版「三国志演義」という感じの映画です。
物凄い悪評なので、
観ないでおこうかと思ったのですが、
妻が「宣伝しているので観たい」というので、
急遽診療終わりに近くの品川プリンスシネマで鑑賞しました。
観客は20人くらいで、
観たいと言っていた妻は、
巻頭5分で爆睡していました。

これは「キングダム」のセットを流用して、
短期間で1本でっち上げたという作品で、
典型的なエクスプローテーション映画(低予算見世物金儲け映画)です。

その限界を分かった上で、
何処まで規格外のものを作れるか、
何処まで徹底して遊べるのか、
という点がポイントで、
過去には多くの、
カルト的エクスプローテーション映画の傑作もあります。

なので、これは普通の映画として評価するべきものではなく、
敢くまで「低予算見世物金儲け映画」として、
評価するのが正解なのだと思います。

今回福田監督が目標としていたのは、
おそらく「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」で、
歴史物語の古典を徹底して遊び尽くす、
と言う点では発想はそのままですし、
解説役のおじさんが出てくる、
というところも同じなのですが、
あちらは時間も1時間半くらいと短いですし、
メタフィクション的な仕掛けも豊富で、
シュールなギャグも山盛りなのですが、
今回の三國志のパロディは、
時間も2時間とお笑い主体の割には長いですし、
基本的には原作の物語をなぞった上で、
そこに新解釈が乗っかるという感じなので、
あまり破天荒な展開やシュールなギャグはありません。

正直かなり中途半端に感じました。

こういう映画は勿論あって悪くはないのですが、
今回のものは見世物映画としてもあまりに座りが悪く、
その割には結構真面目に筋を追うという部分が多いので、
多くの観客は失望の上映画館を後にしたように思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い新年をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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2020年の演劇を振り返る [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

お正月、皆さん如何お過ごしでしょうか?

今日は昨年の演劇を振り返ります。

昨年は以下の公演に足を運びました。

1.明石家さんま「七転抜刀!戸塚宿」
2.川村毅「クリシェ」
3.別冊根本宗子第8号「超、Maria」
4.シベリア少女鉄道「ビギンズリターンズアンドライジングフォーエバー」
5.桑原裕子「往転」 
6.「縛られたプロメテウス」
7. 三谷幸喜「大地」(配信で鑑賞)
8.「イヌビト~犬人~」
9.KAKUTA「ひとよ」
10.シェーファー「わたしの耳」
11.ケラ「ベイジルタウンの女神」
12.ねずみの三銃士「獣道一直線!!!」
13.唐組「さすらいのジェニー」
13.松尾スズキ「フリムンシスターズ」
14. シベリア少女鉄道「メモリーXメモリー」
15.岩松了「そして春になった」(松雪泰子&ソニン)
16.三谷幸喜演出「23階の笑い」
17.タニノクロウ秘密クラブ「MARZO VR」
以上の17本(配信1本含む)です。

これはもう新型コロナの影響でガクッと減りました。
今年の3月からはほぼすべての公演が中止となりましたし、
7月以降は徐々に小劇場も再開はされましたが、
仕事上密になるような劇場はなるべく避けようと思っていたので、
今までのように小劇場に足を運ぶことはなくなりました。

そんな訳で今回はベストを選ぶほど作品を観ていないので、
ベストの選出は特にしません。

今の感染状況を見ている限り、
再度緊急事態となる可能性は高く、
演劇の上演も再度困難な状況にはなりそうです。

傾向としては、
一定の数の演劇のファンというのはいますから、
今の形での上演も続くとは思いますが、
それはもう今後のトータルな数の増える性質のものではなく、
長期的には減少するものだと思いますから、
今の形の演劇の上演は、
もう衰退するジャンルと考えて間違いはないと思います。
その中で配信とVRの活用というのは、
演劇と映像メディアの融合の1つの流れと思われ、
映像と生身の演劇の中間のようなジャンルが、
今後はより進歩してむしろエンタメの主流となっていくように、
個人的には考えているところです。

今年何本くらいの舞台に出逢えるでしょうか?
感染防御には留意しつつ、
一期一会の思いで作品に対したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良いお正月をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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2020年の映画を振り返る [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今日は昨年観た映画を振り返ります。
昨年映画館で観た映画がこちらです。

1.パラサイト 半地下の家族
2.カツベン
3.ジョジョラビット
4.ラストレター
5.リチャード・ジュエル
6.AI崩壊
7.ロマンスドール
8. 37セカンズ
9. 1917
10.キャッツ
11.9人の翻訳家
12.テリー・ギリアムのドン・キホーテ
13.犬鳴村
14.彼らは生きていた
15. RED
16.地獄の黙示録
17.ミッドサマー
18. Fukushima 50
19.初恋
20.ミッドサマー(特別版)
21.ナイブズアウト
22.ヘレディタリー・継承
23.一度死んでみた
24.デッド・ドント・ダイ
25.仮面病棟
26.透明人間
27.ダークナイト
28.今日から俺は!! 劇場版
29.レイニーデイ・イン・ニューヨーク
30.コンフィデンマンJP プリンセス編
31.ウェイブス
32.アルプススタンドのはしの方
33.インセプション
34.事故物件 怖い間取り
35.mid90s
36.インターステラー
37.青くて痛くて脆い
38.テネット
39.行き止まりの世界に生まれて
40.宇宙でいちばん明るい屋根
41.浅田家!
42.スパイの妻
43. ミッドナイト・スワン
44.星の子
45.朝が来る
46.鬼滅の刃 無間列車編
47. 罪の声
48.  さくら
49. ドクター・デスの遺産
50. 佐々木、インマイマイン
51. サイレント・トーキョー
52. 異端の鳥
53. 燃ゆる女の肖像
54. ミセス・ノイジィ
55. AKIRA
56. 新解釈・三國志
57. 私をくいとめて

以上の57本です。
3月後半から6月くらいまでは、
コロナの影響で殆ど映画は観られませんでしたから、
その割には結構観ているかな、という感じです。
後半も洋画はハリウッド系などはほぼ全滅でしたから、
洋画は公開自体少なかったですし、
通常の状態ではありませんでした。
その一方で邦画はかなり良かったですね。
力作が多かったですし、いつもの2年分くらい、
一気に放出された、という感じでした。

良かった5本を洋画と邦画とに分けて、
エントリーしてみます。
2020年に公開された新作に限っています。

それではまず洋画編です。

①パラサイト 半地下の家族
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-01-18
これはもう言うまでもなく、
2019年から2020年に掛けての映画を代表する1本ですよね。
日本公開は2019年なのか2020年なのか微妙です。
個人的にはそれほど好きな映画ではないのですが、
ともかく完成度が圧倒的で、
面白さも圧倒的であることは間違いがありません。
色々な意味で今は韓国と中国の時代ですね。
それを強く印象付けた1本でした。

②異端の鳥
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-12-13
こちらは東欧のムードが独特の異形の大作。
良い意味で今という時代を感じさせない力作で、
人間の暗黒面を抉り出したような、
奇怪なキャラクターの饗宴がまことに魅力的なカルトでした。
タルコフスキーと石井輝夫を混ぜ合わせたような孤高の作品です。

③ミッドサマー
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-03-01
鬼才アリ・アスターのカルト・ホラーですが、
如何にも現代的なメンヘラこじらせ系女子と、
古典的なホラーのジャンル物との融合が斬新で、
極彩色で陽光に溢れた、
悪夢の世界がいつ果てるともなく展開され、
ある種の中毒になったような気分で劇場を後にしました。
前作の「ヘレディタリー 継承」も観ましたが、
こちらも極め付きの傑作でした。

④リチャード・ジュエル
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-02-02-1
クリント・イーストウッドによる冤罪物の社会派映画ですが、
イーストウッドの最近の映画の中では、
完成度も高く優れた作品だったと思います。
主人公2人の熱演もなかなかで、
アメリカ映画の一番良い部分を感じさせました。
変にひねったものではなく、
こういうストレートな映画をもっと観たいですね。

⑤レイニーデイ・イン・ニューヨーク
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-08-01
2017年に製作されたウディ・アレンの新作で、
監督の女性問題からアメリカでは未公開となったいわくつきの映画です。
名匠ストラーロの撮影が抜群に美しくて、
アレンの資質も良く出た、
とても素敵で洒脱でロマンチックな映画です。
これでアレンの映画も終わりかと思うと、
切ない気分になりますが、
こうした清廉潔白が求められる世界では、
仕方のないことなのかも知れません。

それでは次は邦画の私的ベストです。

①朝が来る
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
昨年は多くの優れた日本映画が公開されましたが、
作家性という意味では抜きんでていたのがこの河瀨直美監督の新作です。
テレビドラマ化もされたミステリー的原作を、
河瀨さんの感性で詩的に映像化しています。
彼女の映画としては原作があるだけに分かりやすく、
「あん」に匹敵する傑作に仕上がったと思います。

②罪の声
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-11-07
グリコ森永事件の真相に迫った社会派犯罪映画ですが、
テレビ出身のスタッフながら堂々たる映画に仕上がっていて、
原作を超える感銘がありました。
2020年の映画の中で最も映画的興奮を感じた作品で、
ラストの処理がテレビ的で安手であったことは不満ですが、
それ以外はケチの付けようのない力作でした。
特に星野源さんの説得力のある芝居が、
素晴らしかったと思います。

③ミッドナイトスワン
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-10-17
昨年ロングランとなり、本当の意味でヒットした1本です。
草薙剛さんがトランスジェンダーを演じた、
「老いた娼婦と少女の物語」という、
ヨーロッパ映画的な作品です。
これは少女役の新人の女優さんが抜群に良くて、
特に前半は素晴らしい出来栄えです。
ただ、後半にちょっと失速する感じになり、
話も駆け足でゴタゴタするのが減点ポイントでした。
「37セカンズ」とともに、
2020年に最もインパクトがあった日本映画です。

④浅田家!
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-10-03-1
豪華キャストのみ話題になる感じがありましたが、
「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督の、
本領発揮の力作で、
シネフィル的な拘りの映像がいつもながら凄いですし、
震災で藝術に出来ることは何か、
という大きなテーマに真正面から取り組んだ意欲作でした。
もっとこじんまりしたキャストで、
観てみたい、という気もします。

⑤初恋
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2020-03-14
2020年は娯楽映画でも面白い作品が多かったですね。
「AI崩壊」、「仮面病棟」、「サイレント・トーキョー」と、
皆頑張っていた作品でした。
その中でも三池崇史監督の本作は、
かなり出来の高低の激しい三池作品の中で、
かなり振り切れた感じのある会心作で、
僕は一番のお気に入りでした。
染谷将太さんの国宝級のゲス芝居、
もう最高です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良いお正月をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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