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オリーブオイルの認知症死亡抑制効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オリーブオイルの認知症予防効果.jpg
JAMA Network Open誌に、
2024年5月6日付で掲載された、
オリーブオイルの認知症関連死への有効性についての論文です。

ギリシャなどの地中海地方の伝統食が、
心血管疾患のリスクを抑制し、
認知機能にも良い影響を与えることが、
これまでの多くの疫学データにより示されています。

これを地中海ダイエットと呼んでいます。

地中海ダイエットの特徴は、
オリーブオイルとナッツの摂取量が多いことで、
このためオリーブオイルとナッツの健康効果についても、
個別の検討が行われています。

今回の研究は、
非常に多くの臨床研究に活用されている、
アメリカの大規模な医療従事者の疫学データを活用して、
オリーブオイルの摂取量と、
認知症に関連する死亡のリスクとの関連に的を絞って、
検証を行っているものです。

対象は登録時に慢性病や癌のなかった、
トータル92383名の医療従事者で、
4年毎に食事内容を調査し、
28年という長期の経過観察を行っています。

オリーブオイルの摂取量は、
月に1回未満、1日平均で4.5グラム以下、1日平均で4.5グラムは超えて7グラム以下、
1日平均で7グラムを超える、の4群に分けて検証しています。

その結果、
オリーブオイルを1日7グラムを超えて摂っている人は、
殆ど摂っていない人と比較して、
観察期間中に認知症に関係して死亡するリスクが、
28%(95%CI:0.64から0.81)有意に低下していました。

ここで1日5グラムのマーガリンをオリーブオイルに交換すると、
認知症関連死のリスクは8%(95%CI:4 から12)、
1日5グラムのマヨネーズをオリーブオイルに交換すると、
認知症関連死のリスクは14%(95%CI:7から20)、
それぞれ有意に抑制されると推計されました。

このように、
他の動物性脂肪をオリーブオイルにすることにより、
認知症による死亡のリスクが低下するという、
具体的な検証は非常に興味深く、
今後認知症関連死以外の健康リスクについても、
同様の検証が行われることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「アスミク・グレゴリアン ソプラノリサイタル」(2024年) [音楽]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
グレゴリアン.jpg
リトアニア出身のソプラノ、
アスミク・グリゴリアンのリサイタルが行われました。
東京フィルの演奏。
演目を変えての2日の公演で、
2日とも足を運びました・

2022年にシュトラウスの「サロメ」の演奏会形式の公演で来日。
大変評価の高い公演でしたが、行けませんでした。

今回は2日目の公演で、
サロメの最後のモノローグが、
「七つのヴェールの踊り」の演奏に続いて披露され、
これは東京フィルの演奏も良かったですし、
グレゴリアンの歌唱も、
最初に飛ばし過ぎて、ちょっと後半失速した感はありましたが、
さすが「サロメ」で有名になっただけのことはある、
と思える圧巻の歌唱でした。

声質が非常にガッチリとしていて安定感があり、
重厚で体力のある歌唱は、
シュトラウスやワーグナーにもってこい、という感じ。
まだそれほどワーグナーは歌っていないようですが、
これからより円熟した、
彼女のワーグナーを聞きたいと思いました。

1日目はシュトラウスの代わりにプッチーニだったのですが、
ちょっと繊細さやドラマチックな盛り上がりには欠けるという印象でした。
彼女はピアニシモも綺麗なのですが、
プッチーニのピアニシモではない、
という感じでした。

リサイタルの構成として、
1日目はアンコールが「トスカ」のアリアの1曲のみ。
2日目はアンコールはありませんでした。

アンコールがなくて悪いということはないのですが、
それなら、「サロメ」は演奏会形式で、
全曲に近い形で披露しても良かったのではないでしょうか?
ちょっと物足りない感じの残る公演ではありました。

オペラファンは、
最後はシュトラウスに行きつく、
というようなところがありますね。
古典オペラの最後の輝きで、
しかも現代音楽を先取りしているところもあります。
ただ、最初から聴きやすいという感じの音楽ではないので、
その滋味を感じるには、
僕自身は結構長く掛かりました。

「サロメ」も凄いですよね。
今回オケで聴いて、
その音楽自体の只ならぬ緊張と興奮とに、
改めて感銘を受けた思いがありました。
オペラとしての上演では、
色々凝った演出をすることも多いですし、
音楽自体の凄みが、少し後退してしまうところがあるのですね。
「七つのヴェールの踊り」は、
途中のバレエ音楽のように聴いていたのですが、
そんなものではない、
凄味に溢れた音の魔術であることを再認識しました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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睡眠の有害物質除去に与える影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
睡眠中の脳の代謝と有害物質除去.jpg
Nature Neuroscience誌に、
2024年5月13日付で掲載された、
睡眠中の脳の代謝と有害物質の排泄速度を検証した、
動物実験の論文です。

生物は何故眠るのでしょうか?

これは現時点ではまだ、
完全には解明されていない問題です。

睡眠には覚醒状態にはない、多くの利点がある、
という知見はあり、
そのうちの1つは、
睡眠状態は体内の有害物質や老廃物の排泄を促し、
身体をリセットするような効果がある、
というものです。

眠っている間に身体が綺麗になる、
という訳で、
これをグリンパティック仮説(Glymphatic Hypothesis)
と呼んでいます。

脳は身体からは独立しているため、
脳には老廃物を排泄するようなリンパ機能が存在しない、
というように考えられていましたが、
近年の研究により脳脊髄液が脳内を循環して、
脳のグリア細胞と連携して、
脳内の不要な物質や有害物質を、
「洗い流す」ような仕組みがあることが明らかになり、
これをリンパとグリア細胞の名前を繋げた造語として、
グリンパティックシステムと名付けたのです。

このグリンパティックシステムは、
睡眠時、特にノンレム睡眠時に活発になるとされていて、
その代表的な知見の1つであるScience誌の論文では、
睡眠中には60%その排泄効率が高まると報告されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3880190/

睡眠時間が短いとアルツハイマー型認知症のリスクが高まる、
というデータがあり、
このグリンパティック仮説を適応すると、
脳内の異常蛋白が睡眠時間が短いことで排泄されず、
脳への蓄積を招くのではないか、
という推測が成立するのです。

しかし、まだこれは主に動物実験のデータのみからの知見で、
人間で実証されている、という訳ではありません。

今回の研究はこのグリンパティック仮説を確認する目的で、
ネズミの脳に蛍光色素を注入し、
その排泄速度を覚醒時と睡眠中、麻酔状態で、
比較検証しているものです。

その結果、意外なことに、
覚醒時と比較して睡眠中の色素排出速度は約30%、
麻酔時では約50%も低下していました。

つまり、Science誌論文などとは真逆の結果で、
睡眠中はむしろ毒素の排出は低下するという結果です。

果たしてどちらが正しいのでしょうか?

「睡眠は素晴らしい」というイメージを、
一旦取り除いて考えると、
覚醒時より睡眠時は代謝が大きく低下するのですから、
脳の代謝速度も落ちるのは、
何ら不思議ではありません。
むしろ、代謝は落ちているのに、
有害物質の排泄速度だけ増加するのだ、
という意見の方が不自然に感じられます。

ただ、これも1つの条件での動物実験のデータに過ぎず、
この問題は今後多くの検証の後に、
事実に近いものが見えてくるような気がします。

つまり、
現時点で睡眠に脳のデトックス効果がある、
という良く聞かれる見解は、
まだ仮説の域を出ないものなのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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2型糖尿病治療薬の有効性比較(イギリスのプライマリケアデータ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
イギリスの2型糖尿病治療薬比較.jpg
British Medical Journal誌に、
2024年5月8日付で掲載された、
イギリスのプライマリケアにおける、
2型糖尿病治療薬の有効性を比較した論文です。

糖尿病の治療には地域による違いが見られます。

今回の論文に記載されているイギリスのガイドラインでは、
2型糖尿病の第一選択薬はメトホルミンで、
それで充分なコントロールが得られない場合、
DPP-4阻害剤、SU剤、SGLT2阻害剤を併用することが、
第二選択の治療として推奨されています。

最近GLP-1アナログも使用頻度の高い薬剤として知られていますが、
この論文で検証されている2015年から2021年のイギリスにおいては、
その使用頻度は低く、
第二選択の薬剤からは外れているようです。

それでは、この第二選択の薬のうち、
どれを選ぶのが最も有効性が高いのか、
という点については、
これまであまり直接比較したデータがありませんでした。

そこで今回の研究では、
イギリスにおけるプライマリケアと病院の受診歴、
死亡データなどの医療データを解析することで、
第二選択薬3種類の有効性の比較を行っています。

対象はメトホルミンに第二選択の薬3種のうちの1つを、
併用している2型糖尿病患者、トータル75739名で、
内訳は33.9%がSU剤、45.5%がDPP4阻害剤、20.6%がSGLT2阻害剤です。

3剤の比較において、
HbA1cの低下率、BMIの減少率、収縮期血圧の低下率のいずれも、
最も優れていたのはSGLT2阻害剤でした。
またSGLT2阻害剤は心不全による入院のリスク低下において、
DPP-4阻害剤より優れ、
腎機能低下の進行予防効果において、
SU剤より優れていました。

このように、
薬剤選択においては日本と似たところのあるイギリスにおいて、
2型糖尿病治療薬の第二選択薬として、
最も優れていたのはSGLT2阻害剤で、
最近良いデータが蓄積されているこの薬剤の、
ポジティブなデータがまた1つ追加された、
と言って良いかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コレステロール降下剤スタチンの糖尿病リスクについて(2024年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの糖尿病リスク.jpg
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2024年5月付で掲載された、
脂質異常症治療薬の有害事象についての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
アトルバスタチンやロスバスタチン、シンバスタチンなどが、
その代表的な薬剤です。

このタイプの薬剤は、
強力なコレステロール降下作用と共に、
抗炎症作用なども併せ持ち、
今では動脈硬化の予防薬的な位置づけとして、
幅広く使用されています。

その有効性は特に狭心症や心筋梗塞などの、
心臓の血管の病気を持っている人の、
再発予防や予後の改善において最も認められています。

このように非常に優秀な薬であるスタチンですが、
幾つかの副作用や有害事象も報告され研究されています。

その中で問題となるものの1つが、
スタチンの使用による糖尿病発症リスクの増加です。

これは薬剤によりデータには差があるのですが、
基本的には全てのスタチンに認められるもので、
そのメカニズムである酵素阻害作用自体が、
リスク増加に関連していると考えられています。

ただ、そのリスク増加は概ね軽度で、
多くの場合生活指導や投薬の調整で対応可能なものなので、
スタチンの有効性を否定するものでない、
という見解が一般的です。

ただ、多くのこれまでの臨床データは、
新規糖尿病の発症リスクを見ているだけのものが多く、
実際に臨床で患者さんを診るに当たって、
どのような点に注意するべきかの、
参考にはあまりなっていない、という欠点がありました。

今回の研究は、
スタチンと偽薬とを比較した、
これまでの精度の高い19の無作為介入試験に含まれる、
トータルで123940名の患者データをまとめて解析する、
メタ解析の手法で、
この問題の検証を行っています。

スタチンはそのコレステロール降下作用の強さによって、
低強度、中強度、高強度に分類され、
たとえば最も一般的なスタチンの1つである、
アトルバスタチンでは、
1日10㎎から20㎎が中強度で、
40㎎から80㎎(日本では未採用)が高強度となっています。

検証の結果、
低強度から中等度スタチンの使用は未使用と比較して、
新規糖尿病の発症リスクが10%(95%CI:1.04から1.16)、
高強度のスタチンの使用では36%(95%CI:1.25から1.48)、
それぞれ有意に増加していました。

登録時に糖尿病のなかった人では、
低強度から中強度のスタチン使用により、
平均血糖は0.7mg/dL程度上昇し、
高強度スタチンでもほど同等の上昇が認められました。
平均のHbA1c値は、
低強度から中等度のスタチン使用により、
0.06%(95%CI:0.02から0.06)、
高強度スタチンの使用により、
0.08%(95%CI:0.07から0.09)、
それぞれ有意に増加していました。

どのような患者さんが糖尿病を発症しやすいのかを解析したところ、
新規糖尿病発症者の62%は、
4分割した血糖値が最も高めの群に属していました。

また登録時に糖尿病のあった患者さんで解析すると、
血糖の悪化が低強度から中強度スタチンの使用では、
10%(95%CI:1.06から1.14)、
高強度スタチンの使用では、
24%(95%CI:1.06から1.44)、
それぞれ有意に増加していました。

今回の結果で見る限り、
スタチンで糖尿病リスクが上昇することは、
間違いがないのですが、
スタチンによる血糖の上昇は比較的軽微なもので、
主に境界型糖尿病や予備群と呼ばれるような、
血糖値がやや高めの患者さんにおいて、
それが糖尿病の基準を満たして発病と判断される、
という事例が多いようです。

従って、たとえば心筋梗塞などの二次予防において、
スタチンが使用されるようなケースでは、
その効果は血糖が軽度上昇するリスクを、
大きく上回ると想定されますから、
スタチンに使用に問題はないと思います。

その一方でコレステロールがやや高いのみで、
動脈硬化性疾患のリスクもあまり高くないようなケースでは、
その使用時の血糖上昇のリスクは、
無視出来ないものとなる可能性もあります。

今回のような知見を基にして、
今後より科学的な、
スタチン使用時の血糖監視の基準が、
定められることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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唐組・第73回公演「泥人魚」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
泥人魚.jpg
唐組の春公演に足を運びました。
2003年に初演され世評の高かった「泥人魚」の再演です。

奇しくも東京公演初日の前日、
寺山修司の逝去と同じ日に、
唐先生は亡くなりました。

この作品は勿論初演も観ているのですが、
それほど強い記憶としては残っていません。
当時はもっとスペクタクルな唐芝居を、
まだ期待する気持ちがあったので、
こじんまりとした印象を持ったのだと思います。

ただ、今回改めて観直してみると、
諫早湾の対立が小さなブリキ店に再現される、
という構成や、泥の海の人魚姫という趣向など、
如何にも唐先生という奇想が密度濃く処理されていて、
即興劇のような闊達さが、
オープニングからラストまで、
緩むことなく展開されるテンポも心地良く、
この時代の唐先生を代表する作品の1本であったことを、
理解することが出来ました。

今回はセットも良く、演出も冴えていましたし、
何より役者の力の漲り方が素晴らしく、
唐先生を送るに相応しい、
熱の籠った舞台になっていたと思います。

是非役者の熱演を観に、
テントに足をお運び頂きたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ブルックリンでオペラを」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ブルックリンでオペラを.jpg
レベッカ・ミラー監督による、
ニューヨークを舞台に、
恋と人生に翻弄される大人の男女の人間模様を、
時にコミカルに、時にほろ苦く描いたオシャレな映画です。

こういう映画は以前は沢山あったと思うのですが、
最近はあまりないな、という印象です。

監督自身も言っているようですが、
明らかにウディ・アレンの都会的なコメディを、
下敷きにしているという感じの作劇です。

主役のピーター・ディンクレイジさんの役柄が、
芸術的才能は豊かであるのに、
自己肯定感が非常に低く、
小心者でコンプレックスの塊なのですが、
これはもうウディ・アレンさんが映画で主役を演じる時の、
役柄そのものですよね。
それでいて美人にばかりモテてしまう、
というところも同じです。

その小心者の役柄を、
身長の低い役者が演じる、
という辺りのセンスを、
面白いと取るかどうか、
という辺りが、
この映画が好きになるかどうかの、
分かれ道であるように思います。

僕は基本的にウディ・アレンの映画が大好きなので、
悪くはないのですが、ちょっと物足りない感じはありました。

ウディ・アレン映画に登場する人物は、
表面的に紳士的なのに変態であったりと、
意外な裏側が隠れている、
というような趣向が多いのですが、
この映画に登場するキャラは、
基本的に皆表裏がないのですね。

そこも個人的には少し物足りない部分でした。

中ではアン・ハサウェイが演じた潔癖症の精神科医が、
突飛とも思える顛末を迎えるのですが、
要するに自分自身の過去に「穢れ」を感じ、
最終的には夫にも「穢れ」を見出して、
そうした行為に至るのですね。
唐突に見えてその辺りの段取りは、
かなり緻密に組まれていると感じました。

キャストではマリサ・トメイ姐さんが、
今回一番の儲け役で、
魅力的で格好の良い姐御ぶりでした。

そんな訳で、
ウディ・アレンの「ハンナとその姉妹」辺りと比較してしまうので、
どうしても点は辛くなるのですが、
今では貴重な感じの、
ニューヨークを舞台にした大人の人生ドラマで、
こうした映画が懐かしい方には、
お薦めは出来る作品だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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メラトニンのCOPD急性増悪予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メラトニンのCOPD悪化予防効果.jpg
Respiratory Research誌に2024年4月27日付で掲載された、
睡眠を調整するホルモンの、
ウイルス感染にともなう呼吸器疾患増悪に対する、
抑制作用についての論文です。

感染症などに罹って身体が弱くなると、
人は自然に眠くなって、
睡眠時間は普段より長くなることが通常です。

風邪になって具合が悪い時には、
一晩眠る毎に体調は少しずつ改善し、
回復を実感することが多いことも、
多くの方が実感されていることだと思います。

逆に具合が悪くて眠れない時には、
病状はより悪いことが多いのです。

それは何故でしょうか?

感染症などを回復させる作用が、
どうやら睡眠自体にありそうなのですが、
それはどのようなメカニズムに依っているのでしょうか?

その全てを説明出来る訳ではありませんが、
その1つの要因となっているのが、
睡眠を誘導するメラトニンというホルモンの働きです。

メラトニンは人間の昼と夜のリズムを作る上で、
重要な働きをしている脳松果体から分泌されるホルモンで、
夕方から上昇して朝には減少します。
実はこのホルモンには、
睡眠の誘導作用と共に、
抗酸化作用と抗炎症作用を併せ持つことが確認されていて、
それが寝ている間に、
感染症が回復に向かう、
1つのメカニズムであると想定されているのです。

ただ、その詳細は必ずしも明確になっているという訳ではありません。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、
タバコのみが原因ではありませんが、
主に喫煙習慣を原因として発症する、
慢性気管支炎や肺気腫などの肺の病気の総称で、
高齢者に多く、痰がらみや咳、息切れなどが、
通常の状態での主な症状です。
インフルエンザや新型コロナなどの感染症に罹患すると、
重症の肺炎を起こしたり、
呼吸困難などを起こして、
急激に状態が悪化することが多く、
それをCOPDの急性増悪と呼んでいます。

この急性増悪には、
身体の免疫系が感染をきっかけとして暴走する、
サイトカインストームと呼ばれる現象が、
関与していると想定されています。

今回の研究はネズミを利用した動物実験ですが、
ネズミに24週間に渡ってタバコの煙を吸わせ、
COPDの状態にすると、
更にインフルエンザA型ウイルスに感染させて、
COPDの急性増悪の状態を作ります。

その結果、
感染により肺機能は低下し、
肺の組織の損傷が悪化したことが確認されました。
そこで注射によるメラトニンの投与を行うと、
免疫細胞による過剰な炎症性サイトカインの産生が抑制され、
細胞死のシグナルも抑制されることが確認されました。

つまり、メラトニンの投与により、
COPDのウイルス感染による急性増悪が、
予防されることを示唆する所見です。

これはまだ動物実験の知見で、
しかも臨床的に有効性が確認されている訳ではない、
という点には注意が必要ですが、
睡眠が安定していることが、
免疫の安定にも繋がっている、
というように考えると非常に興味深く、
今後の人間を含めた研究にも期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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脳の脆弱部位に影響を与える環境因子 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は介護保険の審査公務の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
認知症の改変可能リスク.jpg
Nature Communications誌に2024年3月27日付で掲載された、
老化や精神疾患などに脆弱な脳神経部位へ、
影響を与える環境因子を解析した論文です。

正常な老化は成長の過程を鏡に映したように進行する、
という考え方があります。

子供は次第に成長して大人になりますが、
その成長過程を逆転させたようにして、
徐々に脳の働きは低下し、
老化は進行してゆくというのです。

つまり、正常な老化は子供に返ることだ、
という理論です。

ここで思春期に見られる、
正常な脳の成長の最後の部位が、
老化に伴って、
最も最初に変性し易いことが指摘されていて、
その部位に認められる異常が、
成長期においては統合失調症に、
老化に伴ってはアルツハイマー型認知症に、
関連が深いことが指摘されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4267352/

この脳の特定部位の変性は、
遺伝的な影響を受けることが指摘されていますが、
その一方で基礎疾患や環境要因の関与も指摘されています。

今回の研究では、
イギリスの大規模な医療データである、
UKバイオバンクの臨床データを活用して、
認知症の発症に影響する可能性のある、
飲酒や高血圧など161の環境因子と、
認知症の発症に関連すると思われる、
脳の脆弱な部位の変性との関連を比較検証しています。

その結果糖尿病と、
環境汚染の指標である住環境の二酸化窒素濃度、
飲酒頻度の3項目が、
脳の脆弱部位の変性と関連していることが認められました。

何故この3項目が認知症のリスクと関連しているのか、
明確ではない面がありますが、
通常の認知症リスクとは別の形で、
今回の検証が行われている点は非常に興味深く、
通常の解析と比較して別の結果が得られた理由を含めて、
今後のデータの蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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心房細動の発症リスクと長期予後(デンマークの大規模疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心房細動の長期予後.jpg
British Medical Journal誌に2024年4月17日付で掲載された、
心房細動の罹患率と予後についての論文です。

心房細動というのは、
心臓の心房という部分が不規則に興奮することにより、
通常ではほぼ定期的に起こる心拍が、
不規則に起こることが続き、
動悸などの症状を伴う不整脈で、
年齢と共に増加することが知られています。

生涯において心房細動を発症するリスクは、
地域や報告の年代によっても違いがありますが、
概ね20から30%程度と報告されています。

ただ、最近高血圧など心房細動のリスクを低減することにより、
一定の予防効果が確認されている、というような報告もあり、
実際に近年その罹患率が低下しているのかどうか、
という点はまだ明らかではありません。

心房細動が健康上の大きなリスクであるのは、
多くの合併症の原因となるためです。

最も広く知られているのは、
脳梗塞などの血栓症リスクの増加ですが、
それ以外にも心不全や心筋梗塞などのリスクとなり、
生命予後にも悪影響を与えることが報告されています。

この点についても、
近年血栓症のリスクを低下させる、
抗凝固剤の使用が積極的に行われ、
そのリスクは低下していることが想定はされますが、
以前のデータと比較して、
どの程度その予後が改善しているのか、
という点については、
精度の高いデータが存在していません。

そこで今回の研究では、
国民総背番号制を取っているデンマークにおいて、
2000年から2010年と、2011年から2022年という、
2つの時期の大規模な医療データを比較して、
心房細動の罹患率と、
血栓症や心不全などの合併症の発症リスクの、
経時的推移を検証しています。

対象は登録時で45から94歳の一般住民3574903名です。
観察期間中に、
そのうちの362721名が心房細動を発症しています。

検証の結果、
45歳の住民がその生涯の中で心房細動を発症するリスクは、
2000年から2010年の期間では24.2%、
2011年から2022年の期間では30.9%で、
最近10年で生涯の心房細動発症リスクは、
6.7%(95%CI:6.5から6.8)有意に増加していました。

心房細動と診断後に、
最も頻度が高く発症する合併症は心不全で、
2000年から2010年の期間では生涯リスクは42.9%、
2011年から2022年の期間では生涯リスクは42.1%で、
最近10年での有意な増減は認められませんでした。

一方で心房細動の合併症のうち、
脳卒中と心筋梗塞の生涯リスクは、
2000年から2010年の期間と比較して2011年から2022年の期間では、
脳卒中が22.4%から19.9%と2.5%(95%CI:-4.2から-0.7)、
心筋梗塞が13.7%から9.8%と3.9%(95%CI:-4.2から-0.7)、
それぞれ最近10年で有意に低下が認められました。

つまり、予防のための様々な取り組みや、
リスクとなる病気の治療の進歩にも関わらず、
心房細動の生涯リスクはこの10年でむしろ増加しており、
その比率は4人に1人から3人に1人となっていました。

その合併症として最も多かったのは心不全で、
これについてはその生涯罹患率にこの10年で変化はなく、
脳卒中と心筋梗塞の罹患率は低下していて、
これは抗凝固剤などによる治療の効果と考えられます。
ただ、その予防効果も想定されているほど大きなものとは言えません。

これはデンマークの疫学データで、
そのまま日本に適応可能なものではありませんが、
医療の進歩にも関わらず、
心房細動の生涯罹患率はむしろ増加しており、
その予後を左右する合併症の頻度も、
それほど大きくは低下していない、
という今回の検証は重く受け止めるべきで、
日本においても同様の検証が必要であることは間違いがありません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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