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「メメント」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは5月の連休のため休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
メメント.jpg
クリストファー・ノーラン監督の出世作「メメント」が、
今特別上映という感じでリバイバル公開されています。

これは2000年製作、日本公開は2001年です。
僕は公開時には映画館では観ていなくて、
何かの記事で興味を持って、
レンタルビデオで観たのが初見です。
とても衝撃的で感銘を受けて、
次に公開された「インソムニア」は映画館で観たのですが、
これは「メメント」とは違って、
とても普通の感じの地味なサスペンス映画だったので、
正直とても肩透かしの感じを持ったことを覚えています。

外傷の後遺症で、
記憶が10分しか持たなくなった男が、
自分の妻を殺した犯人を探し求めるというストーリーで、
それを「犯人」を殺した瞬間から、
記憶が持続している10分を一区切りにして、
逆向きに遡ってゆくという、
小説の叙述ミステリーをそのまま映像化したような奇想が素晴らしく、
後から購入したDVD版には、
それを時間軸を元通りにして、
再編集した別ヴァージョンも収録されていました。

ノーラン監督は、
「インターステラー」も最高でしたし、
新作の「オッペンハイマー」も良かったのですが、
矢張り初見の衝撃ということで言うと、
この「メメント」が今に至るまで1番であることは間違いがありません。

記憶が短時間しか持たない、
という症状を利用したフィクションは、
勿論前例がない訳ではありませんが、
それがポピュラーになったのは、
矢張りこの作品以降であると思います。
小川洋子さんの「博士の愛した数式」という作品が、
数年後に発表された時には、
「これパクリじゃん」という感想しか浮かびませんでした。
これはこれで素晴らしい小説であると、
比較的最近読了して分かりましたが、
それまでとても読む気がしなかったのは、
「メメント」があったからです。

この映画は初めて観た時に、
主人公が探し求めていた犯人は○○だ、
ということだと理解したのですが、
今回改めて映画館で観返してみると、
はっきりとそうは言っていない、
という気がしたので、
「あれれ…そうじゃないの?」と疑問に感じ、
家に帰ってから結局もう一度、
ユーネクストで観直しました。

これはそうした魔力のある作品ですね。

それでもう一度慎重に確認したのですが、
まあ最初に観た時の感想は、
間違っていなかったのですね。
ただ、それほど明確に台詞化はされていないのと、
それが「嘘吐き」と散々言われている人物の口からの台詞なので、
それを明確に事実とはしていないのね、
というようには感じました。

これはノーラン監督の天才にして初めて可能となった、
ほぼ完璧に近い構成の作品で、
しかもそれをギリギリのところで、
完全にクリアにはしない部分を残して、
長く記憶に残るカルトにしている、
という稀有な作品です。
しかもおそらくノーラン監督のフィルモグラフィの中でも、
最も強く情緒を揺さぶる、切なく衝撃的な場面が、
中段に差し挟まれています。

そのために何度も何度も観返してしまうというところは、
個人的経験の中では、
「ツィゴイネルワイゼン」や「日本殉情伝 おかしなふたり」、
「記憶の棘」、「ピクニック・アット・ハンギングロック」などと並んで、
偏愛しているカルト映画の1本なのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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