インフルエンザに特徴的な症状は? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2015 年のClinical Infectious Diseases誌に掲載された、
インフルエンザの症状についての論文です。
少し古いものですが、
先日の感染症対策の講演でご提示のあった論文だったので、
改めて読んでみました。
「発熱外来」という言葉があるように、
通常感染リスクの高い感染症では、
発熱が最も重要な指標として使われています。
たとえば、熱が37.5℃以上の方は、
通常の診察室ではなく、発熱外来で対応する、
というようなトリアージが、
今は一般的に行われています。
新型コロナについても、
矢張り発熱が感染を疑う一番の指標となりました。
インフルエンザの場合も状況は同じです。
しかし、実際には新型コロナでもインフルエンザでも、
発熱がなくて感染しているというケースが、
少なからずあることが報告されています。
厄介なのは咳込みが酷いのに、
熱は出ていない、というような状態があることで、
この場合は発熱がなくても、
当然周辺にウイルスをバラまいて、
感染が拡大する事態となるのです。
それでは、実際に特定の感染症において、
どの程度の比率で発熱はなく、
それ以外の症状はある、
という病態が存在しているのでしょうか?
今回の研究はアメリカの単独医療施設において、
出勤する医療従事者の症状を確認。
発熱があれば即自宅療養となりますが、
発熱がなく、咳、咽頭痛、鼻汁、鼻閉のうち、
いずれかの症状がある場合には、
インフルエンザの遺伝子検査を施行して、
症状と陽性率との関連を検証しています。
449名に遺伝子検査を施行し、
そのうちの54%に当たる243名で、
インフルエンザに代表される感冒の原因ウイルスが同定されました。
同定されたウイルスのうち、
最も多かったのはコロナウイルス(新型コロナではありません)で、
142例で検出。
続いてインフルエンザウイルスが35例、RSウイルスが33例となっていました。
全体の18%は発熱を伴っていたか、
経過中に発熱した事例でした。
インフルエンザの事例のうち1例のみがB型で、
それ以外はA型でした。
インフルエンザA型と診断された34例のうち、
経過中に発熱したのは42.4%で、
咳は全例に認められ、鼻水は63.6%に、
鼻閉は63.6%に、咽頭痛は60.6%に認められていました。
ちょっとややこしいのですが、
上記以外にかかりつけ医で検査を行い、
インフルエンザA型と診断された7例があり、
それを加えると41例がインフルエンザA型と診断された事例になります。
そして、そのうちで発熱を経過中に伴っていたのは、
51.2%の21例のみでした。
インフルエンザと診断された事例のうち、
前年度にインフルエンザワクチンを接種していたのは20人で、
ワクチン未接種者で無熱性のインフルエンザが多い傾向は認められましたが、
統計的に有意な差はありませんでした。
このように、
咳などの症状のみでも、
実際にはインフルエンザの事例は流行期には多く存在していて、
感染の拡大を防ぐためには、
感冒症状全体を、
感染拡大のリスクと考えた方が良いようです。
この論文は、先日の感染症関連の講演で、
ご高名な感染症の専門の先生が提示されていたのですが、
説明としては、
「インフルエンザでは100%咳の症状がある」
と言われていました。
そんなことあるのかしら、
とお聞きした時点で疑問に思ったので、
元論文を読んでみたのですが、
確かに咳の頻度は調べた範囲では100%ですが、
事例は34例のみで1シーズンのみでの検証ですから、
それで言い切るのは如何なものか、と思いました。
そもそもこの研究では、
感冒症状のある人のみを検査の対象としているので、
それがインフルエンザ自体の症状の特徴、
という言い方は出来ないと思います。
高名な先生も意外にエビデンスの乏しい知見を、
断定的な事実のように言われるのだなあ、
と改めてそんなことを思いました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2015 年のClinical Infectious Diseases誌に掲載された、
インフルエンザの症状についての論文です。
少し古いものですが、
先日の感染症対策の講演でご提示のあった論文だったので、
改めて読んでみました。
「発熱外来」という言葉があるように、
通常感染リスクの高い感染症では、
発熱が最も重要な指標として使われています。
たとえば、熱が37.5℃以上の方は、
通常の診察室ではなく、発熱外来で対応する、
というようなトリアージが、
今は一般的に行われています。
新型コロナについても、
矢張り発熱が感染を疑う一番の指標となりました。
インフルエンザの場合も状況は同じです。
しかし、実際には新型コロナでもインフルエンザでも、
発熱がなくて感染しているというケースが、
少なからずあることが報告されています。
厄介なのは咳込みが酷いのに、
熱は出ていない、というような状態があることで、
この場合は発熱がなくても、
当然周辺にウイルスをバラまいて、
感染が拡大する事態となるのです。
それでは、実際に特定の感染症において、
どの程度の比率で発熱はなく、
それ以外の症状はある、
という病態が存在しているのでしょうか?
今回の研究はアメリカの単独医療施設において、
出勤する医療従事者の症状を確認。
発熱があれば即自宅療養となりますが、
発熱がなく、咳、咽頭痛、鼻汁、鼻閉のうち、
いずれかの症状がある場合には、
インフルエンザの遺伝子検査を施行して、
症状と陽性率との関連を検証しています。
449名に遺伝子検査を施行し、
そのうちの54%に当たる243名で、
インフルエンザに代表される感冒の原因ウイルスが同定されました。
同定されたウイルスのうち、
最も多かったのはコロナウイルス(新型コロナではありません)で、
142例で検出。
続いてインフルエンザウイルスが35例、RSウイルスが33例となっていました。
全体の18%は発熱を伴っていたか、
経過中に発熱した事例でした。
インフルエンザの事例のうち1例のみがB型で、
それ以外はA型でした。
インフルエンザA型と診断された34例のうち、
経過中に発熱したのは42.4%で、
咳は全例に認められ、鼻水は63.6%に、
鼻閉は63.6%に、咽頭痛は60.6%に認められていました。
ちょっとややこしいのですが、
上記以外にかかりつけ医で検査を行い、
インフルエンザA型と診断された7例があり、
それを加えると41例がインフルエンザA型と診断された事例になります。
そして、そのうちで発熱を経過中に伴っていたのは、
51.2%の21例のみでした。
インフルエンザと診断された事例のうち、
前年度にインフルエンザワクチンを接種していたのは20人で、
ワクチン未接種者で無熱性のインフルエンザが多い傾向は認められましたが、
統計的に有意な差はありませんでした。
このように、
咳などの症状のみでも、
実際にはインフルエンザの事例は流行期には多く存在していて、
感染の拡大を防ぐためには、
感冒症状全体を、
感染拡大のリスクと考えた方が良いようです。
この論文は、先日の感染症関連の講演で、
ご高名な感染症の専門の先生が提示されていたのですが、
説明としては、
「インフルエンザでは100%咳の症状がある」
と言われていました。
そんなことあるのかしら、
とお聞きした時点で疑問に思ったので、
元論文を読んでみたのですが、
確かに咳の頻度は調べた範囲では100%ですが、
事例は34例のみで1シーズンのみでの検証ですから、
それで言い切るのは如何なものか、と思いました。
そもそもこの研究では、
感冒症状のある人のみを検査の対象としているので、
それがインフルエンザ自体の症状の特徴、
という言い方は出来ないと思います。
高名な先生も意外にエビデンスの乏しい知見を、
断定的な事実のように言われるのだなあ、
と改めてそんなことを思いました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
肥満を伴う心不全に対するセマグルチドの有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は校医活動などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年8月25日付で掲載された、
肥満を伴う心不全に糖尿病の治療薬を試みる、
という臨床試験の報告です。
アメリカにおいては、
心機能が一定レベル保たれている心不全患者の多くは、
肥満を伴っていると報告されています。
この心不全と肥満は無関係ではなく、
体重増加による心臓への負荷や、
内臓脂肪の増加の心血管系に与える影響などが、
密接に関連していると考えられています。
しかし、現行の心不全の治療薬は、
利尿剤や血管拡張剤、強心剤など、
いずれも肥満の改善とは無関係のものばかりです。
それでは肥満を改善することにより、
どの程度心不全は改善するのでしょうか?
GLP-1アナログは、
インクレチン関連薬と呼ばれる糖尿病治療薬の注射薬ですが、
高用量において肥満に有効であることが臨床試験で確認されています。
それでは、
このGLP-1アナログの注射薬を、
肥満を伴う心不全に使用した場合、
どのような効果があるのでしょうか?
今回の研究では、
左室機能が一定レベル(駆出率45%以上)保たれている心不全があり、
BMI30 以上の肥満のある、
トータル529名の患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
患者本人にも主治医にも分からないように、
一方はGLP-1アナログのセマグルチドを、
1週間に一回2.4㎎皮下注射して、
もう一方は偽の注射薬を同じように使用して、
その経過を52週に渡って観察しています。
その結果セマグルチドの使用により、
体重は平均で13.3%低下し、
それに伴って心不全の身体症状にも改善が認められました。
また6分間で歩ける距離を比較すると、
治療前後でセマグルチド群では21.5メートル改善していたのに対して、
偽注射群では1.2メートルの改善に留まっていて、
有意な運動能力の改善が確認されました。
このように、
GLP-1アナログの使用により、
長期に渡り体重の減少と共に、
心不全症状の改善が認められていて、
安定した肥満を伴う心不全に対しては、
今後有用な治療の選択肢となる可能性がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は校医活動などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年8月25日付で掲載された、
肥満を伴う心不全に糖尿病の治療薬を試みる、
という臨床試験の報告です。
アメリカにおいては、
心機能が一定レベル保たれている心不全患者の多くは、
肥満を伴っていると報告されています。
この心不全と肥満は無関係ではなく、
体重増加による心臓への負荷や、
内臓脂肪の増加の心血管系に与える影響などが、
密接に関連していると考えられています。
しかし、現行の心不全の治療薬は、
利尿剤や血管拡張剤、強心剤など、
いずれも肥満の改善とは無関係のものばかりです。
それでは肥満を改善することにより、
どの程度心不全は改善するのでしょうか?
GLP-1アナログは、
インクレチン関連薬と呼ばれる糖尿病治療薬の注射薬ですが、
高用量において肥満に有効であることが臨床試験で確認されています。
それでは、
このGLP-1アナログの注射薬を、
肥満を伴う心不全に使用した場合、
どのような効果があるのでしょうか?
今回の研究では、
左室機能が一定レベル(駆出率45%以上)保たれている心不全があり、
BMI30 以上の肥満のある、
トータル529名の患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
患者本人にも主治医にも分からないように、
一方はGLP-1アナログのセマグルチドを、
1週間に一回2.4㎎皮下注射して、
もう一方は偽の注射薬を同じように使用して、
その経過を52週に渡って観察しています。
その結果セマグルチドの使用により、
体重は平均で13.3%低下し、
それに伴って心不全の身体症状にも改善が認められました。
また6分間で歩ける距離を比較すると、
治療前後でセマグルチド群では21.5メートル改善していたのに対して、
偽注射群では1.2メートルの改善に留まっていて、
有意な運動能力の改善が確認されました。
このように、
GLP-1アナログの使用により、
長期に渡り体重の減少と共に、
心不全症状の改善が認められていて、
安定した肥満を伴う心不全に対しては、
今後有用な治療の選択肢となる可能性がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
新型コロナの今後について(2023年8月) [仕事のこと]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
British Medical Journal誌に2023年8月15日付で掲載された、
イギリスの新型コロナの現況についての解説記事です。
今回は日本の状況と比較しながらまとめてみたいと思います。
イギリスにおいては、
新型コロナ患者の発生調査が2023年3月で中止となり、
2022年8月以降病院で施行される新型コロナの検査数も、
減少が続いています。
従って現在患者数を直接確認出来るような情報はなく、
新型コロナによる入院事例のみが、
報告され集計されているという状況であるようです。
日本では少し遅れて2023年5月8日以降、
新型コロナの位置付けが5類感染症となり、
全例報告が廃止されて、
他のインフルエンザ感染症などと同じように、
一部の定点医療機関からの報告のみが、
集計されているという状態になっています。
イギリスにおいては2023年7月までは、
入院の報告数は低い水準で推移していましたが、
8月4日の時点でそれまでの4週の倍を超える事例が、
新型コロナにより入院しています。
つまり、8月に入り新型コロナの患者が急増している、
という可能性が考えられます。
日本でも同様の経過が認められていて、
夏休みの期間に入り、正確な統計はありませんが、
クリニックの診療での体感としては、
新型コロナ患者が急増している、
という印象を持っています。
今の特徴としては、
新型コロナの急増と共に、
インフルエンザA型の感染が増えていることで、
症状からはその判別は困難で、
適宜新型コロナとインフルエンザの同時検出キットを、
活用して診断を行っているところです。
上記解説記事における今後の問題点としては、
まずワクチンの追加接種が対象をかなり限定して施行されているため、
ワクチンの免疫が低下する時期に、
再度感染の拡大が起こるのではないかという点が指摘されています。
また新たな変異株が主体となることにより、
重症化リスクの高い感染が、
再度拡大する可能性も指摘されています。
現行世界の一部の地域では、
より感染力が強く、免疫をすり抜ける能力の高い変異株が、
同定されていますが、
いずれもオミクロン株から派生したもので、
少なくとも明確に重症化が多い、
というような報告はまだないようです。
従って、オミクロン株を主体として、
そこから派生した変異株が流行を繰り返す、
というような今の状態が今後も続いてゆくのであれば、
季節性インフルエンザと同じように、
「少し怖いところもある流行する風邪」というくらいの対応で、
共生してゆくことが可能と思いますが、
そう上手くいってくれるという保証はなく、
初期の流行株やデルタ株に近い変異株が、
出現して流行した時の対応も、
常に考えつつ経過をみる必要があるのです。
こうしたイギリスの対応なども参考にしつつ、
日々の診療に当たりたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
British Medical Journal誌に2023年8月15日付で掲載された、
イギリスの新型コロナの現況についての解説記事です。
今回は日本の状況と比較しながらまとめてみたいと思います。
イギリスにおいては、
新型コロナ患者の発生調査が2023年3月で中止となり、
2022年8月以降病院で施行される新型コロナの検査数も、
減少が続いています。
従って現在患者数を直接確認出来るような情報はなく、
新型コロナによる入院事例のみが、
報告され集計されているという状況であるようです。
日本では少し遅れて2023年5月8日以降、
新型コロナの位置付けが5類感染症となり、
全例報告が廃止されて、
他のインフルエンザ感染症などと同じように、
一部の定点医療機関からの報告のみが、
集計されているという状態になっています。
イギリスにおいては2023年7月までは、
入院の報告数は低い水準で推移していましたが、
8月4日の時点でそれまでの4週の倍を超える事例が、
新型コロナにより入院しています。
つまり、8月に入り新型コロナの患者が急増している、
という可能性が考えられます。
日本でも同様の経過が認められていて、
夏休みの期間に入り、正確な統計はありませんが、
クリニックの診療での体感としては、
新型コロナ患者が急増している、
という印象を持っています。
今の特徴としては、
新型コロナの急増と共に、
インフルエンザA型の感染が増えていることで、
症状からはその判別は困難で、
適宜新型コロナとインフルエンザの同時検出キットを、
活用して診断を行っているところです。
上記解説記事における今後の問題点としては、
まずワクチンの追加接種が対象をかなり限定して施行されているため、
ワクチンの免疫が低下する時期に、
再度感染の拡大が起こるのではないかという点が指摘されています。
また新たな変異株が主体となることにより、
重症化リスクの高い感染が、
再度拡大する可能性も指摘されています。
現行世界の一部の地域では、
より感染力が強く、免疫をすり抜ける能力の高い変異株が、
同定されていますが、
いずれもオミクロン株から派生したもので、
少なくとも明確に重症化が多い、
というような報告はまだないようです。
従って、オミクロン株を主体として、
そこから派生した変異株が流行を繰り返す、
というような今の状態が今後も続いてゆくのであれば、
季節性インフルエンザと同じように、
「少し怖いところもある流行する風邪」というくらいの対応で、
共生してゆくことが可能と思いますが、
そう上手くいってくれるという保証はなく、
初期の流行株やデルタ株に近い変異株が、
出現して流行した時の対応も、
常に考えつつ経過をみる必要があるのです。
こうしたイギリスの対応なども参考にしつつ、
日々の診療に当たりたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
アスピリンの二次予防はどの程度行われているのか? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年8月付で掲載された、
有効なアスピリンの治療の世界での実施状況を検証した論文です。
1日80㎎から100㎎くらいの低用量のアスピリンに、
心筋梗塞などの心血管疾患の再発予防効果のあることは、
これまでの多くの臨床データにより実証されている事項です。
これは一度そうした病気を起こした患者さんの、
再発予防効果としてで、
まだ病気になっていないけれど、
そのリスクが高い状態での使用については、
最近は否定的な見解もあって結論に至っていません。
つまり、心血管疾患の再発予防のためには、
アスピリンは非常に有効な治療であることに間違いはなく、
安価な薬であることを考えれば、
非常に費用対効果の高い治療である、
という言い方が出来ます。
それでは、アスピリンの再発予防の適応のある患者さんのうち、
実際に使用している比率はどのくらいなのでしょうか?
今回の研究は世界51か国を
高所得国、高中所得国、低中所得国、低所得国
(この順番に所得が高い。国連で決められている区分です。)に分け、
2013年から2020年に、
40から69歳の124505人の健康調査を施行して、
心血管疾患の有無とアスピリン使用との関連を検証しているものです。
その結果、
対象者のうち8.1%に当たる10589名が、
心血管疾患の既往がありました。
心血管疾患の既往のある人のうち、
再発予防目的でアスピリンを使用していたのは、
全体では40.3%に過ぎませんでした。
これを国の所得によって分類して比較すると、
エチオピア、ウガンダなどの低所得国では、
アスピリンの使用比率は16.6%という低率であったのに対して、
低中所得国のケニア、ザンビア、ベトナムなどでは24.5%、
高中所得国のアルジェリア、イランなどでは51.1%、
高所得国のイギリス、アメリカなどでは65.0%となっていました。
このように、
有効性が高く経済的にも負担が少ないとされる、
アスピリンによる心血管疾患の再発予防についても、
実際には適応の患者さんの多くが施行しておらず、
特に低所得国においてその傾向が顕著であることが、
今回の検証で明らかになりました。
日本においても、
色々な理由により、
本来必要な再発予防の治療が、
行われていないケースはかなり多いと考えられ、
その有効な対策が、
検討される必要があると思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年8月付で掲載された、
有効なアスピリンの治療の世界での実施状況を検証した論文です。
1日80㎎から100㎎くらいの低用量のアスピリンに、
心筋梗塞などの心血管疾患の再発予防効果のあることは、
これまでの多くの臨床データにより実証されている事項です。
これは一度そうした病気を起こした患者さんの、
再発予防効果としてで、
まだ病気になっていないけれど、
そのリスクが高い状態での使用については、
最近は否定的な見解もあって結論に至っていません。
つまり、心血管疾患の再発予防のためには、
アスピリンは非常に有効な治療であることに間違いはなく、
安価な薬であることを考えれば、
非常に費用対効果の高い治療である、
という言い方が出来ます。
それでは、アスピリンの再発予防の適応のある患者さんのうち、
実際に使用している比率はどのくらいなのでしょうか?
今回の研究は世界51か国を
高所得国、高中所得国、低中所得国、低所得国
(この順番に所得が高い。国連で決められている区分です。)に分け、
2013年から2020年に、
40から69歳の124505人の健康調査を施行して、
心血管疾患の有無とアスピリン使用との関連を検証しているものです。
その結果、
対象者のうち8.1%に当たる10589名が、
心血管疾患の既往がありました。
心血管疾患の既往のある人のうち、
再発予防目的でアスピリンを使用していたのは、
全体では40.3%に過ぎませんでした。
これを国の所得によって分類して比較すると、
エチオピア、ウガンダなどの低所得国では、
アスピリンの使用比率は16.6%という低率であったのに対して、
低中所得国のケニア、ザンビア、ベトナムなどでは24.5%、
高中所得国のアルジェリア、イランなどでは51.1%、
高所得国のイギリス、アメリカなどでは65.0%となっていました。
このように、
有効性が高く経済的にも負担が少ないとされる、
アスピリンによる心血管疾患の再発予防についても、
実際には適応の患者さんの多くが施行しておらず、
特に低所得国においてその傾向が顕著であることが、
今回の検証で明らかになりました。
日本においても、
色々な理由により、
本来必要な再発予防の治療が、
行われていないケースはかなり多いと考えられ、
その有効な対策が、
検討される必要があると思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
救急患者の受け入れが直前で一方的に断られた事例(実話) [仕事のこと]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
医療の講習会で終日勉強の予定です。
今日は昨日の診療中にあった、
信じられない体験をお話します。
事実を元にしていますが、
患者さんと病院の特定を避ける観点から、
一部敢えて事実を変えて記載している部分のあることを、
予めお断りしておきます。
Bさんは70代の女性で、
慢性心房細動と慢性心不全の持病があります。
当院に定期的に通院をされていて、
抗凝固剤や血管拡張剤などの処方を行い、
1年に一度は総合病院の循環器内科での精査も行っていました。
そのBさんが夫の浮き添いの上で、
昨日土曜日の午後に外来を受診されました。
お聞きすると数日前に自宅で転倒して背部などを打撲。
2日前の金曜日に近くの整形外科のある病院を受診して、
レントゲンなどの検査を行い、
腹痛の訴えもあったので腹部CTも施行して、
特に問題はないという結果で帰宅をされています。
しかし、転倒後元気がなく、
自発的に言葉を発することが少なく、
食事も一切摂れないという状態になりました。
それで心配した夫が、同行の上受診をされたのです。
受診されたBさんのご様子は、
一見いつもと変わりなく見えましたが、
何かぼんやりとしていて、意識レベルの低下が疑われました。
熱はなく血圧はいつもより高めでしたが、
その時点では転倒のショックが原因ではないかと思い、
夫の希望もあったので点滴施行することとして、
その準備に入りました。
ところが、
横になったBさんは、
あえぐような不規則な呼吸状態となり、
酸素飽和度は83%に低下していました。
レントゲンでは心不全による胸水貯留などはなく、
心電図でも心筋梗塞などの所見は認めません。
転倒との関連から肺塞栓症などが疑われたため、
救急医療機関での治療が必要と判断。
近隣の総合病院や救急病院に電話をしましたが、
土曜の午後という悪条件もあり、
ある病院は全く電話が繋がらなかったり、
別の病院は手一杯で受け入れ困難など、
病院探しは難航しました。
ようやく、近隣の総合病院の1つで、
担当の看護師さんに病状を説明したところ、
救急の医師とも連絡を取ってもらい、
受け入れについての了解を頂きました。
地獄に仏とはこのことです。
それで、救急車を依頼し、ほどなくして救急隊が到着しました。
救急隊には搬送先の病院名と救急担当の医師の名前を告げ、
バイタルをチェックの上、
救急車はBさんを載せてクリニックを出発しました。
これでひと段落、とその時は思いました。
ところが…
そこで信じられないことが起こります。
一旦クリニックを出発して病院に向かった筈の救急車は、
30分ほどでクリニックに再び戻って来ました。
そこで救急隊の隊長さんが言うには、
「こちらから病院に受け入れ確認の連絡をしたところ、
『確かに一度は受け入れを認めたけれど、
状況が変わったので受け入れは出来ません。
何処か別の病院を探すか、
元のクリニックに戻って下さい』と言われました。
今クリニックの前に停まって病院を探しています」
という唖然とするしかないようなご返事です。
救急隊でも、
「そんな馬鹿な」と抗議をしたのですが、
「挿管の必要な患者さんが来院されたので、
そちらの対応で手一杯なので受け入れ出来ません」
という一点張りです。
仮にそれが事実だとしても、
一度通常のルートで受け入れの依頼をして同意をして頂いたのに、
依頼したクリニックには何の連絡もせず、
それを一方的に反故にする、
というのは尋常ではありません。
それもせいぜい30分くらいの間の出来事なのです。
短時間にどうしても受け入れ出来ない事態になる、
というのはあり得ないことではありませんが、
それであればもう少し対応の方法がある筈です。
ほったらかしておいて、
救急隊からの連絡を待ち、
それを断って何のフォローもなくお終いというのは、
あまりに非礼な態度ではないでしょうか?
何より救急隊に対して、
あまりに礼を欠いた対応であるように思います。
それから救急隊とクリニックの看護師が協力して、
再び受け入れ可能な病院を探し、
何とか近隣の総合病院で受け入れをして頂くことが可能となりました。
紹介状の宛名を書き直し、
救急隊に向かって頂いて、
何とか入院の運びとなったのです。
こうした地域医療に、
もうかれこれ25年くらい関わっていますが、
一度受け入れを確認している病院で、
救急隊の要請が直前で拒否される、
というのはこれまでに一度も経験のない事態でした。
世の中には信じられないことがあるものです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
医療の講習会で終日勉強の予定です。
今日は昨日の診療中にあった、
信じられない体験をお話します。
事実を元にしていますが、
患者さんと病院の特定を避ける観点から、
一部敢えて事実を変えて記載している部分のあることを、
予めお断りしておきます。
Bさんは70代の女性で、
慢性心房細動と慢性心不全の持病があります。
当院に定期的に通院をされていて、
抗凝固剤や血管拡張剤などの処方を行い、
1年に一度は総合病院の循環器内科での精査も行っていました。
そのBさんが夫の浮き添いの上で、
昨日土曜日の午後に外来を受診されました。
お聞きすると数日前に自宅で転倒して背部などを打撲。
2日前の金曜日に近くの整形外科のある病院を受診して、
レントゲンなどの検査を行い、
腹痛の訴えもあったので腹部CTも施行して、
特に問題はないという結果で帰宅をされています。
しかし、転倒後元気がなく、
自発的に言葉を発することが少なく、
食事も一切摂れないという状態になりました。
それで心配した夫が、同行の上受診をされたのです。
受診されたBさんのご様子は、
一見いつもと変わりなく見えましたが、
何かぼんやりとしていて、意識レベルの低下が疑われました。
熱はなく血圧はいつもより高めでしたが、
その時点では転倒のショックが原因ではないかと思い、
夫の希望もあったので点滴施行することとして、
その準備に入りました。
ところが、
横になったBさんは、
あえぐような不規則な呼吸状態となり、
酸素飽和度は83%に低下していました。
レントゲンでは心不全による胸水貯留などはなく、
心電図でも心筋梗塞などの所見は認めません。
転倒との関連から肺塞栓症などが疑われたため、
救急医療機関での治療が必要と判断。
近隣の総合病院や救急病院に電話をしましたが、
土曜の午後という悪条件もあり、
ある病院は全く電話が繋がらなかったり、
別の病院は手一杯で受け入れ困難など、
病院探しは難航しました。
ようやく、近隣の総合病院の1つで、
担当の看護師さんに病状を説明したところ、
救急の医師とも連絡を取ってもらい、
受け入れについての了解を頂きました。
地獄に仏とはこのことです。
それで、救急車を依頼し、ほどなくして救急隊が到着しました。
救急隊には搬送先の病院名と救急担当の医師の名前を告げ、
バイタルをチェックの上、
救急車はBさんを載せてクリニックを出発しました。
これでひと段落、とその時は思いました。
ところが…
そこで信じられないことが起こります。
一旦クリニックを出発して病院に向かった筈の救急車は、
30分ほどでクリニックに再び戻って来ました。
そこで救急隊の隊長さんが言うには、
「こちらから病院に受け入れ確認の連絡をしたところ、
『確かに一度は受け入れを認めたけれど、
状況が変わったので受け入れは出来ません。
何処か別の病院を探すか、
元のクリニックに戻って下さい』と言われました。
今クリニックの前に停まって病院を探しています」
という唖然とするしかないようなご返事です。
救急隊でも、
「そんな馬鹿な」と抗議をしたのですが、
「挿管の必要な患者さんが来院されたので、
そちらの対応で手一杯なので受け入れ出来ません」
という一点張りです。
仮にそれが事実だとしても、
一度通常のルートで受け入れの依頼をして同意をして頂いたのに、
依頼したクリニックには何の連絡もせず、
それを一方的に反故にする、
というのは尋常ではありません。
それもせいぜい30分くらいの間の出来事なのです。
短時間にどうしても受け入れ出来ない事態になる、
というのはあり得ないことではありませんが、
それであればもう少し対応の方法がある筈です。
ほったらかしておいて、
救急隊からの連絡を待ち、
それを断って何のフォローもなくお終いというのは、
あまりに非礼な態度ではないでしょうか?
何より救急隊に対して、
あまりに礼を欠いた対応であるように思います。
それから救急隊とクリニックの看護師が協力して、
再び受け入れ可能な病院を探し、
何とか近隣の総合病院で受け入れをして頂くことが可能となりました。
紹介状の宛名を書き直し、
救急隊に向かって頂いて、
何とか入院の運びとなったのです。
こうした地域医療に、
もうかれこれ25年くらい関わっていますが、
一度受け入れを確認している病院で、
救急隊の要請が直前で拒否される、
というのはこれまでに一度も経験のない事態でした。
世の中には信じられないことがあるものです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「リボルバー・リリー」(行定勲監督映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
長浦京さんの同題のミステリー小説を映画化した、
綾瀬はるかさん主演の話題作が、
今ロードショー公開されています。
これは大正時代を舞台にして、
伝説の女殺し屋が帝国陸軍の陰謀から、
少年を守って戦うという荒唐無稽なお話で、
「グロリア」や「レオン」みたいな感じもありますし、
「るろうに剣心」の女主人公版を狙った、
というような感じもあります。
この映画は評判は散々で、
お客さんも入っていないようですが、
個人的な感想としては、
かなり頑張って作っているな、と思いましたし、
確かにアクションはかなりトホホの感じで、
どのような映画にしたいのかも、
絞り切れていない感じはありましたが、
日本の大作娯楽映画というジャンルとしては、
水準以上の仕上がりにはなっていたと思います。
鈴木清順監督みたいな馬鹿馬鹿しさがあるでしょ。
女殺し屋というジャンル物を、
徹底した様式美で撮ろう、という趣旨ですよね。
だから、拳銃をぶっ放すと敵だけがバタバタ倒れて、
敵の弾は一切当たらない、というのは、
それはそれでいいんですよね。
ただ、敵の弾なんて当たらなくていい筈なのに、
最後は主人公は血まみれになって、
それでいて全然死にそうではないので、
ちょっと、どうしたかったのか分からないな、
というような気はするのです。
ストーリーは決して悪くないんですよね。
見せ場の構成も悪くない感じだし。
最初に列車の活劇があって、
脱出すると草原でまた活劇、というのはいいですよね。
ラストは霧の中での撃ち合いから、
段々霧が晴れて集団戦に持ち込む、
というのも、行定監督らしい様式美だったと思います。
ただ、アクションがねえ…
最初の列車の場面から、
何かとても間抜けでセンスがないんですよね。
そこは「るろうに剣心」との致命的な違いですね。
それから悪役が弱いんですね。
そこも「るろうに剣心」との違いで、
もっとアクの強い、怪物みたいな敵が欲しかったですね。
キャストは皆好演と言って良いのですが、
綾瀬さんがね、何と言うのか、
こうしたどシリアスは、
ちょっと厳しい感じなんですね。
何処か真面目にやっていても、
それがかくし芸の演技、みたいな感じがあるのです。
総じて、美術にしても映像にしても、
相当頑張った映画なのですが、
監督がアクションに不慣れな感じが、
ちょっと致命的になってしまったかな、
という感じの映画でした。
でも、映画館ではガッカリですが、
ちょっとカルト的な雰囲気はあって、
配信で観直すと、
結構何度も見てしまうような、
そんな中毒性はある作品だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
長浦京さんの同題のミステリー小説を映画化した、
綾瀬はるかさん主演の話題作が、
今ロードショー公開されています。
これは大正時代を舞台にして、
伝説の女殺し屋が帝国陸軍の陰謀から、
少年を守って戦うという荒唐無稽なお話で、
「グロリア」や「レオン」みたいな感じもありますし、
「るろうに剣心」の女主人公版を狙った、
というような感じもあります。
この映画は評判は散々で、
お客さんも入っていないようですが、
個人的な感想としては、
かなり頑張って作っているな、と思いましたし、
確かにアクションはかなりトホホの感じで、
どのような映画にしたいのかも、
絞り切れていない感じはありましたが、
日本の大作娯楽映画というジャンルとしては、
水準以上の仕上がりにはなっていたと思います。
鈴木清順監督みたいな馬鹿馬鹿しさがあるでしょ。
女殺し屋というジャンル物を、
徹底した様式美で撮ろう、という趣旨ですよね。
だから、拳銃をぶっ放すと敵だけがバタバタ倒れて、
敵の弾は一切当たらない、というのは、
それはそれでいいんですよね。
ただ、敵の弾なんて当たらなくていい筈なのに、
最後は主人公は血まみれになって、
それでいて全然死にそうではないので、
ちょっと、どうしたかったのか分からないな、
というような気はするのです。
ストーリーは決して悪くないんですよね。
見せ場の構成も悪くない感じだし。
最初に列車の活劇があって、
脱出すると草原でまた活劇、というのはいいですよね。
ラストは霧の中での撃ち合いから、
段々霧が晴れて集団戦に持ち込む、
というのも、行定監督らしい様式美だったと思います。
ただ、アクションがねえ…
最初の列車の場面から、
何かとても間抜けでセンスがないんですよね。
そこは「るろうに剣心」との致命的な違いですね。
それから悪役が弱いんですね。
そこも「るろうに剣心」との違いで、
もっとアクの強い、怪物みたいな敵が欲しかったですね。
キャストは皆好演と言って良いのですが、
綾瀬さんがね、何と言うのか、
こうしたどシリアスは、
ちょっと厳しい感じなんですね。
何処か真面目にやっていても、
それがかくし芸の演技、みたいな感じがあるのです。
総じて、美術にしても映像にしても、
相当頑張った映画なのですが、
監督がアクションに不慣れな感じが、
ちょっと致命的になってしまったかな、
という感じの映画でした。
でも、映画館ではガッカリですが、
ちょっとカルト的な雰囲気はあって、
配信で観直すと、
結構何度も見てしまうような、
そんな中毒性はある作品だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
血圧低下に最も有効なトレーニング法 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
British Journal of Sports Medicine誌に、
2023年掲載された、
血圧降下に最も有効な運動法を検証したメタ解析のレビューです。
高血圧などの生活習慣病の予防や治療には、
適切な運動が有効であると言われています。
しかし、それではどのような運動をすれば良いのでしょうか?
よく言われているのは、
ジョギングなどの有酸素運動です。
また意識的に運動をしなくても、
1日5000歩以上歩くことで、
心血管疾患リスクの低下など、
生活習慣病の予防効果があるとする報告もあります。
ただ、生活習慣病と言っても様々です。
高血圧に対する運動療法と、
糖尿病に対する運動療法、
高コレステロール血症に対する運動療法は、
果たして同じで良いのでしょうか?
こうした点についての科学的検証というのは、
実はあまり行われていません。
今回の研究は、
これまでの主だった臨床試験結果をまとめて解析したメタ解析ですが、
血圧の降下作用のみに力点を置いて、
個々のトレーニング法の有効性を比較したものです。
これまでの270の介入試験に含まれる、
トータル15827名の臨床データをまとめて解析したところ、
高強度インターバルトレーニングや、有酸素運動などよりも、
アイソメトリックトレーニングが、
最も血圧低下作用が強い、
という結果が得られました。
アイソメトリックトレーニングというのは、
たとえば両手の掌を胸の正面で合わせて、
両側から力を加えて10秒くらい維持する、
というような運動を各筋肉で繰り返すもので、
関節を動かさずに筋肉を収縮させる、
というトレーニングの方法です。
従来は高血圧の運動療法には、
ジョギングのような有酸素運動が良いとされ、
推奨されていましたから、
その常識とは違った結果となっていました。
今回のデータはメタ解析ですから、
また単独の研究結果で別個に確認される必要がありますが、
今後病気の予防や治療のための運動療法については、
再検証され、これまでの常識が覆る、
ということがあるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
British Journal of Sports Medicine誌に、
2023年掲載された、
血圧降下に最も有効な運動法を検証したメタ解析のレビューです。
高血圧などの生活習慣病の予防や治療には、
適切な運動が有効であると言われています。
しかし、それではどのような運動をすれば良いのでしょうか?
よく言われているのは、
ジョギングなどの有酸素運動です。
また意識的に運動をしなくても、
1日5000歩以上歩くことで、
心血管疾患リスクの低下など、
生活習慣病の予防効果があるとする報告もあります。
ただ、生活習慣病と言っても様々です。
高血圧に対する運動療法と、
糖尿病に対する運動療法、
高コレステロール血症に対する運動療法は、
果たして同じで良いのでしょうか?
こうした点についての科学的検証というのは、
実はあまり行われていません。
今回の研究は、
これまでの主だった臨床試験結果をまとめて解析したメタ解析ですが、
血圧の降下作用のみに力点を置いて、
個々のトレーニング法の有効性を比較したものです。
これまでの270の介入試験に含まれる、
トータル15827名の臨床データをまとめて解析したところ、
高強度インターバルトレーニングや、有酸素運動などよりも、
アイソメトリックトレーニングが、
最も血圧低下作用が強い、
という結果が得られました。
アイソメトリックトレーニングというのは、
たとえば両手の掌を胸の正面で合わせて、
両側から力を加えて10秒くらい維持する、
というような運動を各筋肉で繰り返すもので、
関節を動かさずに筋肉を収縮させる、
というトレーニングの方法です。
従来は高血圧の運動療法には、
ジョギングのような有酸素運動が良いとされ、
推奨されていましたから、
その常識とは違った結果となっていました。
今回のデータはメタ解析ですから、
また単独の研究結果で別個に確認される必要がありますが、
今後病気の予防や治療のための運動療法については、
再検証され、これまでの常識が覆る、
ということがあるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
成人の胸腺切除の影響について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年9月3日付で掲載された、
胸腺切除のその後の影響についての論文です。
胸腺というのは、
胸の中央の胸骨の裏側で心臓の前にある、
リンパ組織で、
小児期の細胞性免疫の成立に大きな役割を果たし、
T細胞と呼ばれるリンパ球を産生すると、
通常は30歳くらいまでに萎縮して脂肪に置き換わります。
小児期を過ぎると、
年齢を重ねるに従って、
胸腺からのT細胞の産生は減少し、
代わりに末梢で複製されたT細胞が、
細胞性免疫の主体を担うようになります。
従って、大人における胸腺は、
特に必要不可欠な組織ではない、
という見解があり、
そのため心臓や縦郭などの手術の際には、
胸腺に特に病気がなくても、
胸腺の切除を行うことがしばしば行われて来ました。
しかし、このように成人以降で胸腺を切除した場合の、
その後の健康影響については、
これまであまり厳密な検証が行われていませんでした。
そこで今回の研究では、
アメリカのマサチューセッツ総合病院において、
成人(18歳)以降で心臓手術などの際に胸腺の切除を受けた、
トータル1146例の患者の予後を、
心臓手術を同様に施行して胸腺は温存された、
1146例のコントロール群の患者と、
年齢などをマッチングさせて比較検証しています。
その結果、
術後5年の時点での死亡率は、
胸腺切除群で8.1%に対してコントロール群では2.8%で、
胸腺切除群の総死亡リスクはコントロールと比較して、
2.9倍(95%CI:1.7から4.8)有意に増加していました。
また術後5年の時点までの癌リスクも、
胸腺切除群で7.4%に対してコントロール群では3.7%で、
胸腺切除後の癌リスクはコントロールと比較して、
2.0倍(95%CI:1.3から3.2)有意に増加していました。
自己免疫疾患のリスクについては有意な差はありませんでしたが、
術前に感染症、癌、自己免疫疾患のあった患者を除外して解析すると、
胸腺切除群での自己免疫疾患発症リスクも、
1.5倍(95%CI:1.02から2.2)有意に増加していました。
これは術後5年以内の解析ですが、
その後の長期経過を追えた事例について、
一般住民の標準的なリスクと比較した解析においても、
総死亡リスクも癌リスクも胸腺切除群で高くなっていました。
このように成人以降であっても、
胸腺の切除はその後の生命予後に、
悪影響を与える可能性があり、
今後どのような事例においてそのリスクが高いのか、
といったより詳細な解析を含めて、
この問題はより深い検証が必要だと考えられます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年9月3日付で掲載された、
胸腺切除のその後の影響についての論文です。
胸腺というのは、
胸の中央の胸骨の裏側で心臓の前にある、
リンパ組織で、
小児期の細胞性免疫の成立に大きな役割を果たし、
T細胞と呼ばれるリンパ球を産生すると、
通常は30歳くらいまでに萎縮して脂肪に置き換わります。
小児期を過ぎると、
年齢を重ねるに従って、
胸腺からのT細胞の産生は減少し、
代わりに末梢で複製されたT細胞が、
細胞性免疫の主体を担うようになります。
従って、大人における胸腺は、
特に必要不可欠な組織ではない、
という見解があり、
そのため心臓や縦郭などの手術の際には、
胸腺に特に病気がなくても、
胸腺の切除を行うことがしばしば行われて来ました。
しかし、このように成人以降で胸腺を切除した場合の、
その後の健康影響については、
これまであまり厳密な検証が行われていませんでした。
そこで今回の研究では、
アメリカのマサチューセッツ総合病院において、
成人(18歳)以降で心臓手術などの際に胸腺の切除を受けた、
トータル1146例の患者の予後を、
心臓手術を同様に施行して胸腺は温存された、
1146例のコントロール群の患者と、
年齢などをマッチングさせて比較検証しています。
その結果、
術後5年の時点での死亡率は、
胸腺切除群で8.1%に対してコントロール群では2.8%で、
胸腺切除群の総死亡リスクはコントロールと比較して、
2.9倍(95%CI:1.7から4.8)有意に増加していました。
また術後5年の時点までの癌リスクも、
胸腺切除群で7.4%に対してコントロール群では3.7%で、
胸腺切除後の癌リスクはコントロールと比較して、
2.0倍(95%CI:1.3から3.2)有意に増加していました。
自己免疫疾患のリスクについては有意な差はありませんでしたが、
術前に感染症、癌、自己免疫疾患のあった患者を除外して解析すると、
胸腺切除群での自己免疫疾患発症リスクも、
1.5倍(95%CI:1.02から2.2)有意に増加していました。
これは術後5年以内の解析ですが、
その後の長期経過を追えた事例について、
一般住民の標準的なリスクと比較した解析においても、
総死亡リスクも癌リスクも胸腺切除群で高くなっていました。
このように成人以降であっても、
胸腺の切除はその後の生命予後に、
悪影響を与える可能性があり、
今後どのような事例においてそのリスクが高いのか、
といったより詳細な解析を含めて、
この問題はより深い検証が必要だと考えられます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
早期アルツハイマー病に対するドナネマブの有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年7月17日ウェブ掲載された、
認知症の新薬の臨床試験結果についての論文です。
アルツハイマー型認知症の新薬としては、
エーザイとバイオジェン社が開発したレカネマブという新薬が、
こうした薬剤として初めてアメリカのFDAで承認され、
大きな話題となりました。
それについては以前記事にしています。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-01-09-2
今回のドナネマブという薬剤は、
脳のアミロイドプラークのみに発現している、
不溶性のβアミロイド蛋白に対するIgG抗体です。
従って、レカネマブとはターゲットの蛋白質が若干異なりますが、
ほぼ同等の薬という言い方が出来るのです。
今回の第3相臨床試験においては、
世界8か国の277の専門施設において、
軽度の認知機能低下を伴う軽度のアルツハイマー型認知症の患者、
トータル1736名をくじ引きで2つの群に分けると、
本人にも主治医にも分からないように、
一方はドナネマブを4週間に一度静脈注射で使用し、
もう一方は偽の注射を同様に使用して、
72週間の経過を観察としています。
その結果、
認知機能と日常生活機能の両指標において、
ドナネマブの治療は認知症の進行を
有意に低下させていました。
有害事象については、
これまでのアミロイド除去薬で見られている、
脳浮腫などの異常が治療群の24.0%(偽注射群では1.9%)、
微小出血などの異常が治療群の19.7%(偽注射群では7.4%)で、
認められました。
今回の結果はレカネマブの臨床試験とほぼ同等のもので、
対象がより軽症である点などに少し違いがあり、
脳浮腫などの有害事象はやや多いという印象はあります。
このように、
これまでとは異なるメカニズムで、
脳の異常蛋白の沈着自体を、
改善する可能性のある薬剤が続けて登場したことは、
認知症治療の今後に、
期待を持たせるものであることは間違いがありませんが、
その安全性を含めた患者さんの予後については、
今後も慎重に検証する必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年7月17日ウェブ掲載された、
認知症の新薬の臨床試験結果についての論文です。
アルツハイマー型認知症の新薬としては、
エーザイとバイオジェン社が開発したレカネマブという新薬が、
こうした薬剤として初めてアメリカのFDAで承認され、
大きな話題となりました。
それについては以前記事にしています。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-01-09-2
今回のドナネマブという薬剤は、
脳のアミロイドプラークのみに発現している、
不溶性のβアミロイド蛋白に対するIgG抗体です。
従って、レカネマブとはターゲットの蛋白質が若干異なりますが、
ほぼ同等の薬という言い方が出来るのです。
今回の第3相臨床試験においては、
世界8か国の277の専門施設において、
軽度の認知機能低下を伴う軽度のアルツハイマー型認知症の患者、
トータル1736名をくじ引きで2つの群に分けると、
本人にも主治医にも分からないように、
一方はドナネマブを4週間に一度静脈注射で使用し、
もう一方は偽の注射を同様に使用して、
72週間の経過を観察としています。
その結果、
認知機能と日常生活機能の両指標において、
ドナネマブの治療は認知症の進行を
有意に低下させていました。
有害事象については、
これまでのアミロイド除去薬で見られている、
脳浮腫などの異常が治療群の24.0%(偽注射群では1.9%)、
微小出血などの異常が治療群の19.7%(偽注射群では7.4%)で、
認められました。
今回の結果はレカネマブの臨床試験とほぼ同等のもので、
対象がより軽症である点などに少し違いがあり、
脳浮腫などの有害事象はやや多いという印象はあります。
このように、
これまでとは異なるメカニズムで、
脳の異常蛋白の沈着自体を、
改善する可能性のある薬剤が続けて登場したことは、
認知症治療の今後に、
期待を持たせるものであることは間違いがありませんが、
その安全性を含めた患者さんの予後については、
今後も慎重に検証する必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
脳卒中患者の転院搬送時間とその問題点 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年8月15日付で掲載された、
脳卒中の患者さんの転院搬送時間についての論文です。
急病で救急車を呼んだ全ての患者さんが、
その患者さんの病状に適した医療機関に、
運ばれるという訳ではありません。
たとえば頭痛やふらつきなどの症状があるとして、
今のような夏場であれば、
熱中症の可能性もありますし、
ウイルス感染症などの可能性もあります。
また、検査をしてみると、
実は脳梗塞が見つかる、というようなケースもあります。
最初から虚血性梗塞であることが分かっていれば、
その発症からの時間によって、
血栓溶解剤による治療や、
カテーテルによる血管内治療などを、
検討して行うことが可能です。
救急隊もそうした治療が施行可能な、
専門施設や病院に患者さんを運ぶことが出来ます。
しかし、そうした情報はないことの方が多く、
救急病院は何処も受け入れが難しい状況ということになると、
取り敢えず受け入れが可能が病院に搬送するということになります。
そこで診察をして検査を行って、
急性期の脳梗塞であると判明した場合、
どうすれば良いのでしょうか?
当然対応が可能な病院に、
可及的速やかに転送することが必要、
ということになります。
ただ、これはそう簡単なことではありません。
最初に対応した病院の医師やスタッフが、
対応が可能な高次病院に連絡を取り、
受け入れの可否を確認して、
再度救急車を要請して転院搬送しなければいけないのですが、
そうした移送が円滑に可能な仕組みがある訳ではなく、
他の患者さんの対応もしながら、
夜間であれば最小限のスタッフで、
そうした作業を同時進行しないとならないからです。
上記文献にあるアメリカの状況の説明では、
虚血性梗塞で救急受診した患者さんの13%は、
他の病院への転送が必要となり、
血管内治療が必要な患者さんに限ると、
その比率は更に高くなるようです。
アメリカのガイドラインでは、
こうした脳梗塞の患者さんが、
最初の病院に到着してから高次病院に搬送開始されるまでの時間は、
2時間以内である必要があると規定されています。
しかし、実際にはどの程度の時間が掛かっているのでしょうか?
今回の研究では、
2019年から2021年において、
登録されたアメリカの救急病院から、
虚血性梗塞や出血性梗塞のために高次病院に転院搬送された、
トータル10893名の患者さんの、
登録病院への到着から、
転院のために病院を出るまでに要した時間を、
計測しています。
その結果、
転院搬送までに要した時間の中間値は174分で、
ガイドラインにある120分以内であったのは、
全体の27.3%に過ぎませんでした。
特に年齢が80歳以上、女性、人種差が、
転院搬送までの時間が長くなることと関連していました。
日本においてもこうした検証が是非必要であると思いますし、
脳卒中の急性治療のように、
発症から適切な治療までの時間に制限があるような病気については、
治療そのものの進歩だけでは不充分で、
患者さんが適切に搬送され治療を受けられるような、
社会的システムの構築が不可欠なものであることを、
こうしたデータは明確に示しているように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年8月15日付で掲載された、
脳卒中の患者さんの転院搬送時間についての論文です。
急病で救急車を呼んだ全ての患者さんが、
その患者さんの病状に適した医療機関に、
運ばれるという訳ではありません。
たとえば頭痛やふらつきなどの症状があるとして、
今のような夏場であれば、
熱中症の可能性もありますし、
ウイルス感染症などの可能性もあります。
また、検査をしてみると、
実は脳梗塞が見つかる、というようなケースもあります。
最初から虚血性梗塞であることが分かっていれば、
その発症からの時間によって、
血栓溶解剤による治療や、
カテーテルによる血管内治療などを、
検討して行うことが可能です。
救急隊もそうした治療が施行可能な、
専門施設や病院に患者さんを運ぶことが出来ます。
しかし、そうした情報はないことの方が多く、
救急病院は何処も受け入れが難しい状況ということになると、
取り敢えず受け入れが可能が病院に搬送するということになります。
そこで診察をして検査を行って、
急性期の脳梗塞であると判明した場合、
どうすれば良いのでしょうか?
当然対応が可能な病院に、
可及的速やかに転送することが必要、
ということになります。
ただ、これはそう簡単なことではありません。
最初に対応した病院の医師やスタッフが、
対応が可能な高次病院に連絡を取り、
受け入れの可否を確認して、
再度救急車を要請して転院搬送しなければいけないのですが、
そうした移送が円滑に可能な仕組みがある訳ではなく、
他の患者さんの対応もしながら、
夜間であれば最小限のスタッフで、
そうした作業を同時進行しないとならないからです。
上記文献にあるアメリカの状況の説明では、
虚血性梗塞で救急受診した患者さんの13%は、
他の病院への転送が必要となり、
血管内治療が必要な患者さんに限ると、
その比率は更に高くなるようです。
アメリカのガイドラインでは、
こうした脳梗塞の患者さんが、
最初の病院に到着してから高次病院に搬送開始されるまでの時間は、
2時間以内である必要があると規定されています。
しかし、実際にはどの程度の時間が掛かっているのでしょうか?
今回の研究では、
2019年から2021年において、
登録されたアメリカの救急病院から、
虚血性梗塞や出血性梗塞のために高次病院に転院搬送された、
トータル10893名の患者さんの、
登録病院への到着から、
転院のために病院を出るまでに要した時間を、
計測しています。
その結果、
転院搬送までに要した時間の中間値は174分で、
ガイドラインにある120分以内であったのは、
全体の27.3%に過ぎませんでした。
特に年齢が80歳以上、女性、人種差が、
転院搬送までの時間が長くなることと関連していました。
日本においてもこうした検証が是非必要であると思いますし、
脳卒中の急性治療のように、
発症から適切な治療までの時間に制限があるような病気については、
治療そのものの進歩だけでは不充分で、
患者さんが適切に搬送され治療を受けられるような、
社会的システムの構築が不可欠なものであることを、
こうしたデータは明確に示しているように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。