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C型肝炎治療成功後の生命予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
C型肝炎の予後.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年8月2日ウェブ掲載された、
C型肝炎の抗ウイルス治療後の生命予後を検証した論文です。

慢性C型肝炎は長く難治性の病気でしたが、
2014年以降インターフェロンを使用しない、
内服の抗ウイルス剤による治療が導入され、
95%を超える高いウイルス除去率が達成されました。

慢性C型感染の治療は劇的に変わったのです。

従来は治療困難であった、
診断の時点で肝機能が低下していて、
肝硬変の状態であっても、
ウイルス除去治療は可能となりました。

しかし、肝機能が一定レベル低下した状態で、
ウイルスが除去されても、
その後完全に肝機能が正常化するという訳ではありません。

それでは、
慢性C型肝炎で抗ウイルス剤治療により、
ウイルスが徐去された患者さんの予後は、
実際にはどのようなものなのでしょうか?

今回の研究はアメリカのブリティッシュコロンビア州と、
スコットランド、イギリスにおいて、
2014年から2019年の間に、
インターフェロンを用いない抗ウイルス剤治療を施行し、
ウイルスが除去されたことを確認した、
C型肝炎患者トータル21790名のその後の生命予後を、
肝機能で分類して検証しているものです。
平均の観察期間はブリティッシュコロンビア州で2.2年、
スコットランドで2.5年、イギリスで3.9年です。

その結果、
観察期間中に患者さんの7%に当たる、
1572名が死亡されていて、
死因は薬物由来によるものが24%、肝不全によるものが18%、
肝臓癌によるものが16%となっていました。
薬物由来というのは、
対象となっている患者さんに、
違法薬物などの依存者やアルコール依存症の患者さんが多い、
という特殊事情があるようです。
従って、これは日本でそのまま当て嵌まるようなデータではない、
という点には注意が必要です。

総死亡のリスクは、
慢性C型肝炎のない年齢などをマッチングさせたコントロール群では、
ブリティッシュコロンビア州で人口1000人当たり年間31.4人、
スコットランドで22.7人、イギリスで39.6人でしたが、
慢性C型肝炎治療成功後の患者さんでは総じて高く、
肝硬変のないブリティッシュコロンビア州の患者では、
コントロール群の2.96倍(95%CI:2.71から3.23)、
肝硬変のあるブリティッシュコロンビア州の患者では、
13.61倍(95%CI:11.94から15.49)となっていました。

このように、
慢性C型肝炎の患者さんの予後は、
ウイルス除去治療に成功後も、
決して良いものではなく、
特に肝機能の低下した患者さんにおいては、
継続な検査や治療、
生活改善の指導などの継続が、
重要であると考えられます。

最後に再度確認となりますが、
これは敢くまで海外データであり、
日本の状況と一致するものではないことに、
ご注意の上お読み下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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