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鎌田順也さんを偲んで [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。
明日月曜日まで夏季の休診期間になります。
ご迷惑をお掛けしますがご了承下さい。

休みの日は趣味の話題です。

今日は先日亡くなった小演劇の鬼才、
ナカゴーの鎌田順也さんを偲びます。

鎌田順也さんは小劇場演劇の歴史に残る怪人で、
その唯一無二のシュールで破天荒な世界は、
強い中毒性を持って多くの観客に衝撃を与えました。

鎌田さんの作品に最初に接したのは2013年で、
野鳩との合同公演でした。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2013-01-20
この時はナカゴーのことは良く知らなかったので、
出演もされた鎌田さんの、
強烈なキャラクターに衝撃を受けました。
何と言うか、演技も風貌もキャラクターも、
尋常ではありませんでした。

作品自体は何かモヤモヤした仕上がりで、
あまり感心しなかったのですが、
鎌田さんの強烈なキャラクターに魅せられて、
それからナカゴーの舞台に足を運ぶようになりました。

翌2014年には3本のナカゴーの作品に足を運びました。
「ノット・アナザー・ティーン・ムービー」
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2014-06-29
「ベネディクトたち」
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2014-09-13
「森」
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2014-10-25
の3本です。

最初の2つの作品は、
誰でも借りられる公共の会議室のような場所で、
照明やセット、小道具なども、
殆どなく上演されたもので、
ナカゴーの作品の多くは、
そうした場所で上演されています。
僕は俳優としての鎌田さんに魅せられたのですが、
「ノット・アナザー・ティーン・ムービー」にチラと出演して以降、
一度も舞台に登場することはありませんでした。

ナカゴーを代表する怪優と言えば篠原正明さんで、
「ベネディクトたち」で彼が演じた、
超人であるのかただの変態であるのか、
判別不明の奇怪なキャラクターは、
その圧倒的な体技と共に強烈に心に刻まれました。

「森」は近藤芳正さんが小劇場4組の芝居をそれぞれ演じる、
という青山円形劇場の企画公演で、
そこで2人のサラリーマンが、
口裂け女の大群に襲われるという短編が演じられました。
ただ単に次々と口裂け女が襲って来て、
それを次々とハンマーで叩いて撃退する、
というだけの話なのですが、
それが無性に面白くて、
少し危険な味わいもあって、
抜群に感銘を受けました。
馬鹿馬鹿しくも凄いお芝居でした。

この時初めて、まともな劇場で、
音効やセット、照明効果も備わった、
鎌田さんの芝居を鑑賞したのですが、
矢張り会議室で蛍光灯の明かりの下で観るのとは、
数段上の感銘がありました。

2015年にはナカゴー以外の新しいユニット旗揚げされました。
それがほりぶんで、
登場するのは基本的に全て女性で、
それもワンピースを着ている、という変な拘りです。
その旗揚げ公演「とらわれた夏」に足を運びました。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2015-02-07

2016年には久しぶりのナカゴーの本公演、
「いわば堀船」が上演されました。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2016-07-10-3
ピザ屋の店員が見えない壁と戦うという話で、
その破天荒な迫力はさすがナカゴーという感じでしたが、
矢張り会議室での上演が物足りなさを感じさせました。

2017年には、
ほりぶんの第3回公演の「得て」に足を運びました。
これはビデオを活用した「リング」のパロディのようなお芝居で、
小劇場での公演で音響や照明効果もあり、
内容的にはやや保守的な感じがしましたが、
舞台自体の出来はそれまでにない高レベルのものでした。

同年には
ナカゴー特別劇場と題された「地元のノリ」、
と題された作品が上演されました。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2017-09-03

これは個人的には僕の観た鎌田さんの作品で、
最も好きな1本でした。
人間の振りをしている河童の話なのですが、
最初は人間として登場した人物達が、
実は河童であったことが次々と明らかになり、
そこに更に別の怪物まで登場して、
演劇版妖怪大戦争のような、
壮絶で爽快で奇怪な物語が、
波乱万丈に展開される傑作です。
もとは演舞ゼミナールの卒業公演だった作品なので、
新人主体の座組でしたが、
ナカゴーの怪人、篠原正明さんが特別出演的に加わり、
大いに気を吐いていました。

同年にはほりぶんの第4回公演「牛久沼」も上演されました。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2017-10-22
こちらも牛久沼の鰻を巡る怪女優達による大攻防戦で、
壮絶なロマネスク的大風呂敷の世界に魅了されました。

更に同年にナカゴーの本公演として、
「ていで」という作品が上演されたのですが、
これは小津安二郎的家庭劇で、
最初にあらすじを全て説明してしまう、
という不思議な作品でした。

それ以降多くの作品で鎌田さんは最初にあらすじを、
オチを含めて説明してしまう、
という手法を取るようになります。

2018年には、
ナカゴーの本公演として、
「まだ出会っていないだけ」という作品が上演され、
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2018-07-29-4
ほりぶん第6回公演として、
「牛久沼3」も上演されました。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2018-09-24
ただ、本公演は「ていで」と同じように、
最初にあらすじを公開してしまう家庭劇のスタイルで、
もっとシュールで破天荒な世界を期待していた、
以前のナカゴーマニアとしては、
やや納得のいかない思いがありました。

それで2019年には、
ナカゴーの作品には足を運ぶことはありませんでした。
それからコロナ禍もあって多くの公演が中止となり、
2022年に紀伊国屋ホールで上演された、
ほりぶん第9回公演「かたとき」が、
僕が最後に観た鎌田さんの作品となりました。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2022-02-27

これはきたろうさんや又吉直樹さんが客演するという、
ほりぶんの公演の豪華特別編というべき作品で、
最初にあらすじを説明する家庭劇、
というスタイルは一貫していました。

これを良いきっかけとして、
これからまた鎌田さんのお芝居に、
続けて足を運ぼうと思っていたのですが、
今回の急な訃報となり、
それが叶わなくなったことは非常に残念です。

心からお悔やみ申し上げます。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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