ナカゴー「まだ出会っていないだけ」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日2本目の記事は演劇の話題です。
それがこちら。
唯一無二の変な舞台を見せる大好きなナカゴーの本公演が、
今下北沢の駅前劇場で公演されています。
これは昨年の「ていで」に似た、
ナカゴー印の家庭劇で、
ハイバイでの不思議な芝居もなじみ深い、
上田遙さんが客演で、
主役の定食屋をきりもりする女性を演じ、
長く決別していた妹と、
再会して仲直りしようと心の中では思いながら、
結果としてまた喧嘩をしてしまうという心理を、
ナカゴーらしいガジェットは散りばめながら、
本筋は極めて繊細かつ正攻法の心理劇として描いています。
天才鎌田順也さんのお芝居は、
その破天荒な展開とシュールなギャグが魅力ですから、
河童や悪霊や人面痘や口さけ女の集団などが登場する方が、
楽しくて本筋のようにも思うのですが、
数年前からどうやらこうした心理劇や家庭劇に興味が移り、
全うにそれを追求しようとしているようです。
また、これも少し前から、
最初に前説として、
あらすじを最後まで喋ってしまったり、
舞台上で役者が練習として、
本番の台詞を喋ってしまうなど、
普通は「それをしたら台無しだろう」
と思えるようなことをするようになりました。
ただ、
昨年の「ていで」ではそれが全くの失敗で、
何の意味もなく感じられたのですが、
今回の作品を見ると、
最初に予行練習はあるのですが、
大事な台詞は省いていましたし、
最初に登場する前説の女性が、
あらすじを喋ってしまうこと自体は一緒でも、
その女性自体が未来の分かる「予知能力者」だということになっていて、
同じ予知能力者の女性と対決して、
劇中で「予め決まっている未来」を、
変えようとして対決する、
という趣向になっているので、
なるほどそうしたことがしたいのかと、
ようやく腑に落ちるような気分になったのです。
鎌田さんはどうやら、
自分に身近な感情のありかを、
追求するような文学的な芝居を、
エンタメとして成立させる取り組みをしていると共に、
予め書かれた戯曲を演じる、
という行為に対する深い懐疑を、
それ自体テーマとしようとしているようです。
普通考えると、
そんなことをしても意味ないじゃん、
と思えるところですが、
そこが天才の天才たるゆえんで、
その凡人には無意味に見える葛藤が、
全く新しい芝居の萌芽となりつつあるように、
今回は感じました。
昨年の「ていで」を足場にしながら、
今回の作品は数段レベルアップして、
完成度の高い作品となっていましたし、
新劇的な家庭劇としても高い水準で成立しながら、
それがある懐かしさを感じさせるような、
シュールで前衛的な芝居としても成立していたのです。
鎌田さんの新たな境地を見る思いがありました。
役者は主役の上田遙さんが抜群に良く、
重鎮の篠原正明さんもいつもながらの迫力でした。
座組の水準もしっかりと上がっているようです。
正直もっと破天荒さを期待したい部分も正直あるのですが、
今回の舞台はナカゴーの1つの新たな側面の、
現時点での到達点として、
非常に完成度の高い、
素敵なお芝居になっていたと思います。
楽しめました。
それでは次はもう1本、
映画の記事に続きます。
北品川藤クリニックの石原です。
今日2本目の記事は演劇の話題です。
それがこちら。
唯一無二の変な舞台を見せる大好きなナカゴーの本公演が、
今下北沢の駅前劇場で公演されています。
これは昨年の「ていで」に似た、
ナカゴー印の家庭劇で、
ハイバイでの不思議な芝居もなじみ深い、
上田遙さんが客演で、
主役の定食屋をきりもりする女性を演じ、
長く決別していた妹と、
再会して仲直りしようと心の中では思いながら、
結果としてまた喧嘩をしてしまうという心理を、
ナカゴーらしいガジェットは散りばめながら、
本筋は極めて繊細かつ正攻法の心理劇として描いています。
天才鎌田順也さんのお芝居は、
その破天荒な展開とシュールなギャグが魅力ですから、
河童や悪霊や人面痘や口さけ女の集団などが登場する方が、
楽しくて本筋のようにも思うのですが、
数年前からどうやらこうした心理劇や家庭劇に興味が移り、
全うにそれを追求しようとしているようです。
また、これも少し前から、
最初に前説として、
あらすじを最後まで喋ってしまったり、
舞台上で役者が練習として、
本番の台詞を喋ってしまうなど、
普通は「それをしたら台無しだろう」
と思えるようなことをするようになりました。
ただ、
昨年の「ていで」ではそれが全くの失敗で、
何の意味もなく感じられたのですが、
今回の作品を見ると、
最初に予行練習はあるのですが、
大事な台詞は省いていましたし、
最初に登場する前説の女性が、
あらすじを喋ってしまうこと自体は一緒でも、
その女性自体が未来の分かる「予知能力者」だということになっていて、
同じ予知能力者の女性と対決して、
劇中で「予め決まっている未来」を、
変えようとして対決する、
という趣向になっているので、
なるほどそうしたことがしたいのかと、
ようやく腑に落ちるような気分になったのです。
鎌田さんはどうやら、
自分に身近な感情のありかを、
追求するような文学的な芝居を、
エンタメとして成立させる取り組みをしていると共に、
予め書かれた戯曲を演じる、
という行為に対する深い懐疑を、
それ自体テーマとしようとしているようです。
普通考えると、
そんなことをしても意味ないじゃん、
と思えるところですが、
そこが天才の天才たるゆえんで、
その凡人には無意味に見える葛藤が、
全く新しい芝居の萌芽となりつつあるように、
今回は感じました。
昨年の「ていで」を足場にしながら、
今回の作品は数段レベルアップして、
完成度の高い作品となっていましたし、
新劇的な家庭劇としても高い水準で成立しながら、
それがある懐かしさを感じさせるような、
シュールで前衛的な芝居としても成立していたのです。
鎌田さんの新たな境地を見る思いがありました。
役者は主役の上田遙さんが抜群に良く、
重鎮の篠原正明さんもいつもながらの迫力でした。
座組の水準もしっかりと上がっているようです。
正直もっと破天荒さを期待したい部分も正直あるのですが、
今回の舞台はナカゴーの1つの新たな側面の、
現時点での到達点として、
非常に完成度の高い、
素敵なお芝居になっていたと思います。
楽しめました。
それでは次はもう1本、
映画の記事に続きます。
2018-07-29 13:11
nice!(1)
コメント(0)
コメント 0