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妊娠糖尿病と心血管疾患リスク(2022年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
妊娠糖尿病と心血管疾患リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年9月21日ウェブ掲載された、
妊娠糖尿病と心血管疾患リスクについての論文です。

妊娠糖尿病というのは、
糖尿病という名前は付いていますが、
実際には糖尿病にまでは至らない糖代謝の異常のことです。

糖尿病にまでは至らなくても、
妊娠中に一時的な耐糖能異常があると、
正常妊娠と比較して流早産や巨大児などの、
母体や胎児双方の異常が、
多くなることが報告されているので、
対応が必要な「病気」として捉えられているのです。

現行世界的に最も広く使用されている基準は、
国際糖尿病妊娠学会が2010年にまとめたもので、
妊娠24週以降くらいの時期に75グラム糖負荷試験を施行して、
負荷前の血糖値が92㎎/dL以上、負荷後1時間値が180mg/dL以上、
負荷後2時間値が153mg/dL以上のいずれかを満たすとき、
というように規定されています。

この基準が現行日本においても適応されていて、
通常まず血糖値などを測定して、
上昇が疑われる場合には糖負荷試験が施行され、
上記の基準を満たせば「妊娠糖尿病」とするのが一般的です。

妊娠糖尿病になった女性は、
その後顕性の糖尿病になるリスクが、
通常より高くなることが知られています。

つまり、妊娠糖尿病は糖尿病の予備群として捉えることが出来るのです。

近年この糖尿病に移行するリスク以外に、
妊娠糖尿病自体が心筋梗塞や脳卒中、
女性に多く深部静脈血栓症などのリスクになるのではないか、
という疫学データが報告されて注目を集めています。

ただ、実際に個別の疾患において、
そのリスクがどの程度存在するのかについては、
これまであまり精度の高いデータが存在していませんでした。

今回の研究はこれまでの臨床データをまとめて解析した、
システマティックレビューとメタ解析という手法で、
この問題の検証を行っているものです。

これまでの15の臨床研究に含まれる、
513324名の妊娠糖尿病患者データを、
800万人を超える正常妊娠のデータと比較したところ、
妊娠等糖尿病により、
その後の心血管疾患(脳血管疾患を含む)のトータルなリスクは、
1.45倍(95%CI:1.36から1.53)有意に増加していました。
内訳では冠動脈疾患のリスクが1.40倍(95%CI:1.18から1.65)、
心筋梗塞のリスクが1.74倍(95%CI:1.37から2.20)、
心不全のリスクが1.62倍(95%CI:1.29から2.05)、
狭心症のリスクが2.27倍(95%CI:1.79から2.87)、
カテーテル治療などのリスクが1.87倍(95%CI:1.34から2.62)、
脳卒中のリスクが1.45倍(95%CI:1.29から1.63)、
虚血性梗塞のリスクが1.49倍(95%CI:1.29から1.71)、
深部静脈血栓症のリスクが1.28倍(95%CI:1.13から1.46)、
それぞれ有意に増加していました。

妊娠糖尿病の患者のうち、
糖尿病にその後進行しなかった事例のみで解析すると、
トータルな心血管疾患(脳血管疾患を含む)のリスクは、
1.45倍から1.09倍(95%CI:1.06から1.13)の増加に減弱しました。

このように、
妊娠糖尿病はその後の心血管疾患のリスクを、
疾患に問わず幅広く増加させていました。
このリスク増加の大きな部分は、
その後の糖尿病の発症によるものですが、
一部はそれによらない影響も想定され、
今後妊娠糖尿病の疾患としての評価は、
糖尿病そのものとは別個に考える必要があるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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イキウメ「天の敵」(2022年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
天の敵.jpg
イキウメの本公演として「天の敵」が、
下北沢の本多劇場で上演されています。

前川知大さんがもともとは短編集の1つとして描いた戯曲を、
2017年に同題の長編として初演、
今回がイキウメとしての再演となります。

イキウメには結構複雑で抽象的なお芝居も多いのですが、
この作品は120歳を超えて若さを保っている謎の男が、
ジャーナリストに自分の人生を語る、
という物語構造がシンプルで、
特有の哲学的な部分もあるのですが、
比較的観客には優しい作品になっていると思います。

前川さんに幾つか作例のある吸血鬼テーマの1つで、
他には「太陽」などがありますが、
不死と引き換えに何かを犠牲にしている、
という共通点はあっても、
吸血鬼そのものということではなく、
今回の作品では完全食を求めた結果として、
血液だけを飲むという食生活を持続して、
それに身体が適応して不老不死となる、
という趣向になっています。

イキウメの主軸俳優である浜田信也さんが、
主人公の不死の男を演じ、
その無機的な感じが役柄にマッチして、
代表作の1つと言って良い出来栄えです。
周辺のキャストにも手練れが揃っていて、
質の高い舞台となっていました。
僕の大好きな瀧内公美さんの出演も楽しく、
2時間15分を長いと感じることなく、
充実した観劇を楽しむことが出来ました。

全編に不思議な哀感のようなものが漂っていて、
全てのキャラが哀しい影を背負っているのが切なく、
人間の生まれながらに背負う業のようなものを、
シンプルに感じさせる作品に仕上がっていたのが印象的でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「沈黙のパレード」(2022年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
沈黙のパレード.jpg
東野圭吾さんのガリレオシリーズの長編「沈黙のパレード」が、
福山雅治さん主演のテレビドラマの映画版として、
今ロードショー公開されています。

これはまずまずだったと思います。

テレビドラマの映画化は、
他の局よりフジテレビのものが、
頭一つ抜けてクオリティが高いんですよね。
特にミステリーに関しては、
抜群という印象があります。

今回の作品も女刑事などの設定を除けば、
ほぼほぼ忠実に原作を映像化しているのですが、
よくもまああの複雑な原作を、
綺麗に2時間強にまとめたな、と感心しました。
唯一何だこりゃと思ったのは、
タイトルバックの変な踊りですが、
それを除けば文句のつけようがありません。

伏線も忠実に再現していて、
解決編で説明に元に戻るとことがあるのですが、
ちゃんと同じカットを使っているんですよね。
ちょっとした表情にも意味合いを残していて、
しかもとても分かり易く映像化しています。

ここまで本格ミステリーを忠実に映像化して、
しかも破綻なく分かり易く観客に伝えられるというのは、
かなり奇跡的と言って良いレベルの偉業で、
それだけで個人的にはこの作品は、
元は取ったという気分になりました。

ただ…
映画として抜群かと言うとそれはまた別の話です。

今回は原作がちょっと地味だったんですよね。
刊行当時非常に評価は高かったのですが、
僕の読後感としては今一つかな、
という印象を持ちました。
このシリーズは犯人のキャラの強烈さが、
1つの特徴であるのですが、
今回はキャラがかなり分散されている印象で、
そこまでの強烈さや凄味を感じない、
というところがあるんですね。
内容的にも「真夏の方程式」にかなり似通った部分があって、
映像化した場合に新味を感じにくい、
というきらいがあります。
主人公の湯川教授もキャラがかなり変わってきていて、
もう「新参者」とほぼ見分けがつかない感じでしょ。
その辺りにもシリーズの限界を感じました。

それからラストにお話しが2回ひっくり返るでしょ。
2回目のひねりがちょっと弱くて、
かなり無理矢理感があるんですね。
これは原作自体がそうなのですが、
その弱さが映像化されると、
余計目立ってしまった、という感がありました。

ですから今回は、
映画としては120%頑張った感じで、
忠実な映像化を実現したので、
却って原作のアラが目立ってしまった、
という感じの作品になっていたと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コーヒーの種類と健康効果の差 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーの種類と健康効果.jpg
European Journal of Preventive Cardiology誌に、
2022年9 月27日ウェブ掲載された、
コーヒーの種類とその健康効果の差を検証した論文です。

1日3から4杯程度までのコーヒーを飲む習慣が、
心血管疾患や癌、糖尿病などのリスクを低下させ、
生命予後にも良い影響を与えることは、
これまでの多くの精度の高い疫学データにおいて、
ほぼ立証されたと言って良い知見です。

コーヒーが健康に良い飲み物であるというのは、
現在では科学的常識と言って過言ではないのです。

ただし…

それがコーヒーのどのような成分によっているのか、
という点についてはまだ明確な結論は出ていません。

カフェインやその代謝産物の量と、
健康効果が一致するとする研究は多くあり、
この点からはコーヒーの健康効果の主体は、
カフェインであると想定されます。

ただ、他にもカフェインを含む飲み物はありますが、
コーヒーに匹敵するような健康効果は確認されていません。
また、レギュラーコーヒーでもカフェインレスやデカフェのコーヒーでも、
その健康効果には差はなかったというデータもあり、
このことからは、
カフェイン以外の成分の方が、
コーヒーの健康効果の主体ではないか、
という考え方も成り立つのです。

今回のデータはイギリスの有名な大規模医療データである、
UKバイオバンクのデータを活用して、
コーヒーの健康効果を、
レギュラーコーヒーとインスタントコーヒー、
デカフェのコーヒーに分けて検証しています。

対象は449563名の一般住民で、
年齢の中間値は58歳、
観察期間は12.5±0.7年の大規模なものです。

その結果、
3種類のコーヒー全てにおいて、
心血管疾患のリスク低下が有意に認められました。
コーヒー全体では、
心血管疾患のリスク低下は1日5杯まで認められ、
最もリスクが低下していたのは、
1日2から3杯で11%(95%CI:0.86から0.91)でした。
また総死亡のリスクも1日5杯まで認められ、
最もリスクが低下していたのは、
1日2から3杯で14%(95%CI:0.83から0.89)、
心血管疾患による死亡のリスク低下は、
1日1杯が最も大きく、
18%(95%CI:0.74から0.90)、
有意に低下していました。

レギュラーコーヒーのみでみると、
総死亡のリスクは1日2から3杯で最も大きく、
27%(95%CI:0.69から0.78)有意に低下していて、
心血管疾患による死亡のリスクは、
1日4から5杯で最も大きく、
35%(95%CI:0.69から0.78)有意に低下していました。

インスタントコーヒーのみでみると、
総死亡のリスク低下は1日2から3杯で最も大きく、
11%(95%CI:0.86から0.93)有意に低下していて、
心血管疾患による死亡のリスクは、
9%(95%CI:0.88から0.94)有意に低下していました。

デカフェのコーヒーのみでみると、
総死亡のリスク低下は1日2から3杯で最も大きく、
14%(95%CI:0.80から0.91)有意に低下していました。
心血管疾患による死亡のリスク低下は、
1日1から3杯で認められ1日1杯で最も大きく、
26%(95%CI:0.61から0.89)有意に低下していました。

興味深いことに同時に検証された、
心房細動を含む不整脈のリスクについては、
レギュラーコーヒーとインスタントコーヒーでは、
1日1から5杯の範囲で有意なリスク低下が認められましたが、
デカフェのコーヒーではリスクの低下は認められませんでした。

データの解釈は難しいところがあるのですが、
トータルにコーヒーに心血管疾患予防効果と、
生命予後の改善効果のあることは、
今回も疑う余地なく確認されています。
総死亡のリスクでみると、
レギュラーコーヒーと比較して、
インスタントコーヒーとデカフェのコーヒーでは、
その低下効果はやや低い傾向は認められます。
このことは、カフェインがコーヒーの健康効果において、
一定の役割を示していることを示唆していますが、
カフェイン抜きのコーヒーでも有効性は認められていて、
これはクロロゲン酸など、
カフェイン以外の成分にも、
コーヒーの健康効果の理由はあることを示しているように思われます。
また従来カフェインは不整脈のリスクを高めるのでは、
と想定されることが多かったのですが、
今回の検証ではデカフェ以外で、
不整脈リスクの低下が認められていました。

これまでのデータの多くは、
コーヒーの健康効果はその種類によらない、
というものだったので、
今回の検証結果は非常に興味深く、
今後より詳細な分析にも期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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スタチンと筋肉痛との関連(臨床試験メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは用の話題です。
今日はこちら。
スタチンの筋肉系有害事象の頻度.jpg
Lancet誌に2022年8月26日ウェブ掲載された、
コレステロール降下剤の良く知られた有害事象についての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
強力に血中コレステロールを低下させる作用を持ち、
それ以外に抗炎症作用などを併せ持つことにより、
動脈硬化性疾患の再発予防などに、
高い有効性が確認されている薬剤です。

ただ、そのメカニズムから、
筋肉細胞が不安定となって炎症を起こし、
稀に横紋筋融解症という、
重症の筋肉系の有害事象の原因となることが知られています。

このためスタチンの使用時には、
筋肉の痛みや脱力などの症状がないかを患者さんに聞き取りし、
症状が見られた時には血液検査をして、
横紋筋融解症に見られる筋肉系の酵素クレアチニンキナーゼなどが、
上昇しているかどうかを確認することが行われています。

確かにスタチンの使用時には、
筋肉痛などの訴えをする患者さんは多く、
クレアチニンキナーゼが軽度上昇していることも、
しばしばあるのですが、
高度に上昇するような事例は、
当初想定されていたより少なく、
血液検査では異常がなく、
症状のみが見られる、
というケースも多いのが実際です。

しかし、こうした血液検査に異常がなかったり、
クレアチニンキナーゼの上昇が軽度に留まる場合にも、
スタチンの使用は中止されることが多いのが実際だと思います。

この判断は正しいものなのでしょうか?

今回の研究はこれまでに行われた、
スタチンの有効性を長期に渡って確認した臨床試験のデータを、
まとめて解析するメタ解析の手法により、
この問題の検証を行っているものです。

偽薬とスタチンとを比較した、
これまでの19の臨床試験に含まれる、
トータル123940例のデータをまとめて解析したところ、
中間値で4.3年の観察期間において、
スタチン使用群の27.1%、偽薬群の26.6%で筋肉痛もしくは筋力低下が認められ、
スタチン使用により3%(95%CI:1.01から1.06)
筋肉症状は有意に増加していました。

スタチン使用開始1年以内には、
偽薬と比較して筋肉痛もしくは筋力低下は、
相対リスクで7%(95%CI:1.04から1.10)増加し、
これは年1000人当たり11件スタチン使用により増加した、
というように推計されます。
こうしたデータからの推計では、
スタチン使用時に筋肉痛などの症状を訴える患者さんのうち、
実際にスタチンが原因であったのは、
その15分の1程度だと考えられます。
そしてスタチン使用1年後以降では、
スタチン使用による筋肉痛や筋力低下の、
有意な増加は認められませんでした。

今回のデータは臨床試験の解析なので、
通常の診療のデータではない点に注意が必要ですが、
スタチン使用後早期に筋肉痛などを訴える患者さんは多いものの、
実際にそれがスタチンによる筋肉病変である可能性は、
それほど高いものではないことは、
これまでの他の臨床データでも一致している知見で、
ほぼ間違いのないことのように思われます。

臨床医としては、
患者さんの個々の症状に対して、
慎重に向き合う必要がありますし、
稀ではあるものの横紋筋融解症が生じることは事実であるので、
その可能性も常に念頭には起きつつ、
スタチンと無関係と思われる場合には、
患者さんを説得する努力も怠らないようにしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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