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スタチンと認知症リスク(2025年メタ解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Alzheimer's & Dementia誌に2025年1月16日付で掲載された、
コレステロール降下剤と認知症との関連についての論文です。
スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤ですが、
コレステロールを下げるばかりではなく、
抗炎症作用などの多面的な作用を持ち、
それが動脈硬化の進行予防などに結び付いていると考えられています。
スタチンの心筋梗塞などの心疾患の予防効果は、
間違いなく実証された事実ですが、
認知症に対する効果についてはまだ議論があります。
スタチンの効果の1つとして、
コレステロールの中間代謝産物のイソプレノイドを抑制し、
これが認知症の発症に伴うβアミロイドなどの異常蛋白の蓄積を、
抑制する効果があるのではないか、
という考え方があります。
これが事実であるとすれば、
スタチンは認知症、特にアルツハイマー型認知症に対しては、
その発症を抑制するような効果が期待出来ます。
しかし、その一方でスタチンに使用において、
認知機能の低下が生じるような事例も報告されています。
また、疫学データにおいても、
スタチンの使用により一定の認知症予防効果が認められた、
という報告がある一方で、
そうした効果は認められなかった、
というような報告もあります。
たとえば、2024年に発表された、
日本の診療報酬のデータを元にした研究では、
スタチンの30日以内の使用では、
むしろ使用者の方が認知症リスクは増加していた一方で、
それを超える長期の処方においては、
認知症リスクは有意に低下していました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38968046/
この問題はまだ結論が出ているとは言えないのです。
今回の研究は、
これまでの主な臨床データを、
まとめて解析するメタ解析の手法で、
この問題の現時点での検証を行っているものです。
これまでに発表された55の観察研究に含まれる、
トータルで700万例を超える臨床データをまとめて解析したところ、
スタチンを使用している人は、していない人と比較して、
その後の認知症のリスクが14%(95%CI:0.82から0.91)、
有意に低下していました。
個別の認知症毎の解析では、
スタチンの使用はアルツハイマー型認知症のリスクを、
18%(95%CI:0.74から0.90)有意に低下させていましたが、
脳血管性認知症のリスクについては、
低下の傾向はあるものの有意ではありませんでした。
条件毎の解析では、
スタチンの使用はその後の認知症のリスクを、
2型糖尿病の患者さんにおいて13%(95%CI:0.85から0.89)、
3年以上スタチンを継続している患者さんにおいて、
67%(95%CI:0.30から0.46)、
アジア人の集団において16%(95%CI:0.80から0.88)、
それぞれ有意に低下させていました。
また、スタチンの種別毎の解析では、
ロスバスタチンが最も認知症予防効果が高く、
28%(95%CI:0.60から0.88)、
認知症リスクを有意に低下させていました。
このように、
スタチンを数年を超えて使用することにより、
認知症、特にアルツハイマー型認知症のリスク低下に結び付くことは、
今回の大規模な解析でもほぼ間違いのない事実で、
今後そのメカニズムを含め、
より緻密で実証的な研究の進捗に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Alzheimer's & Dementia誌に2025年1月16日付で掲載された、
コレステロール降下剤と認知症との関連についての論文です。
スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤ですが、
コレステロールを下げるばかりではなく、
抗炎症作用などの多面的な作用を持ち、
それが動脈硬化の進行予防などに結び付いていると考えられています。
スタチンの心筋梗塞などの心疾患の予防効果は、
間違いなく実証された事実ですが、
認知症に対する効果についてはまだ議論があります。
スタチンの効果の1つとして、
コレステロールの中間代謝産物のイソプレノイドを抑制し、
これが認知症の発症に伴うβアミロイドなどの異常蛋白の蓄積を、
抑制する効果があるのではないか、
という考え方があります。
これが事実であるとすれば、
スタチンは認知症、特にアルツハイマー型認知症に対しては、
その発症を抑制するような効果が期待出来ます。
しかし、その一方でスタチンに使用において、
認知機能の低下が生じるような事例も報告されています。
また、疫学データにおいても、
スタチンの使用により一定の認知症予防効果が認められた、
という報告がある一方で、
そうした効果は認められなかった、
というような報告もあります。
たとえば、2024年に発表された、
日本の診療報酬のデータを元にした研究では、
スタチンの30日以内の使用では、
むしろ使用者の方が認知症リスクは増加していた一方で、
それを超える長期の処方においては、
認知症リスクは有意に低下していました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38968046/
この問題はまだ結論が出ているとは言えないのです。
今回の研究は、
これまでの主な臨床データを、
まとめて解析するメタ解析の手法で、
この問題の現時点での検証を行っているものです。
これまでに発表された55の観察研究に含まれる、
トータルで700万例を超える臨床データをまとめて解析したところ、
スタチンを使用している人は、していない人と比較して、
その後の認知症のリスクが14%(95%CI:0.82から0.91)、
有意に低下していました。
個別の認知症毎の解析では、
スタチンの使用はアルツハイマー型認知症のリスクを、
18%(95%CI:0.74から0.90)有意に低下させていましたが、
脳血管性認知症のリスクについては、
低下の傾向はあるものの有意ではありませんでした。
条件毎の解析では、
スタチンの使用はその後の認知症のリスクを、
2型糖尿病の患者さんにおいて13%(95%CI:0.85から0.89)、
3年以上スタチンを継続している患者さんにおいて、
67%(95%CI:0.30から0.46)、
アジア人の集団において16%(95%CI:0.80から0.88)、
それぞれ有意に低下させていました。
また、スタチンの種別毎の解析では、
ロスバスタチンが最も認知症予防効果が高く、
28%(95%CI:0.60から0.88)、
認知症リスクを有意に低下させていました。
このように、
スタチンを数年を超えて使用することにより、
認知症、特にアルツハイマー型認知症のリスク低下に結び付くことは、
今回の大規模な解析でもほぼ間違いのない事実で、
今後そのメカニズムを含め、
より緻密で実証的な研究の進捗に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
有酸素運動の体重減少効果(2024年メタ解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は介護保険の審査会などに出席の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Network Open誌に、
2024年12月26日付で掲載された、
有酸素運動の体重減少効果についての論文です。
健康的なダイエットにおいて、
食事と運動は最も重要な生活習慣の両輪です。
ただ、低糖質やカロリー制限などの体重減少効果は、
ほぼ実証された事実と言って良い知見ですが、
運動の減量効果は明確に証明されているとは言えません。
勿論運動そのものの健康効果は、
多くの点で実証されていますが、
運動するだけで体重が減るのか、
という点については明確ではないのです。
運動には幾つかの種類がありますが、
最も健康効果の確認されているのは、
ジョギングや水泳、サイクリングなどの、
有酸素運動です。
それでは、どのくらい有酸素運動を行えば、
明確な減量効果が得られるのでしょうか?
2009年に公開されたアメリカのスポーツ関連学会のガイドラインでは
週に150分以上の中等度以上の強度の有酸素運動を行うことにより、
2から3キロの体重減少効果が期待出来る、
とされています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19127177/
これは逆に言えば、
それを下回るような運動量では、
減量効果は期待出来ないという意味合いです。
それは事実でしょうか?
今回の研究ではこれまでの主だった介入試験という、
精度の高い臨床試験のデータをまとめて解析することで、
この問題の検証を行っています。
これまでの116の臨床研究に含まれる、
トータルで6880名のデータをまとめて解析したところ、
週に30分以上の有酸素運動を行う毎に、
体重は0.52kg(95%CI:-0.61から-0.44)、
腹囲は0.56cm(95%CI:-0.67から-0.45)、
体脂肪率は0.37%(95%CI:-0.43から-0.31)、
それぞれ有意に低下が認められました。
体脂肪は内臓脂肪、皮下脂肪とも同等に減少が認められました。
つまり、少なくとも週に30分以上の有酸素運動を行えば、
それに伴って健康的に体重は減少する、
という結果です。
ただ、矢張り臨床的に意味のあるレベルで体重減少を期待するのであれば、
週に150分以上の中強度以上の有酸素運動が必要であることも、
同時に確認がされています。
有酸素運動は、
仮に短時間であっても、
体重減少に一定の効果が期待出来ますが、
運動だけで体重と体脂肪を減少させるためには、
最低でも週に150分以上の、
ある程度負荷の高いトレーニングが必要であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は介護保険の審査会などに出席の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Network Open誌に、
2024年12月26日付で掲載された、
有酸素運動の体重減少効果についての論文です。
健康的なダイエットにおいて、
食事と運動は最も重要な生活習慣の両輪です。
ただ、低糖質やカロリー制限などの体重減少効果は、
ほぼ実証された事実と言って良い知見ですが、
運動の減量効果は明確に証明されているとは言えません。
勿論運動そのものの健康効果は、
多くの点で実証されていますが、
運動するだけで体重が減るのか、
という点については明確ではないのです。
運動には幾つかの種類がありますが、
最も健康効果の確認されているのは、
ジョギングや水泳、サイクリングなどの、
有酸素運動です。
それでは、どのくらい有酸素運動を行えば、
明確な減量効果が得られるのでしょうか?
2009年に公開されたアメリカのスポーツ関連学会のガイドラインでは
週に150分以上の中等度以上の強度の有酸素運動を行うことにより、
2から3キロの体重減少効果が期待出来る、
とされています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19127177/
これは逆に言えば、
それを下回るような運動量では、
減量効果は期待出来ないという意味合いです。
それは事実でしょうか?
今回の研究ではこれまでの主だった介入試験という、
精度の高い臨床試験のデータをまとめて解析することで、
この問題の検証を行っています。
これまでの116の臨床研究に含まれる、
トータルで6880名のデータをまとめて解析したところ、
週に30分以上の有酸素運動を行う毎に、
体重は0.52kg(95%CI:-0.61から-0.44)、
腹囲は0.56cm(95%CI:-0.67から-0.45)、
体脂肪率は0.37%(95%CI:-0.43から-0.31)、
それぞれ有意に低下が認められました。
体脂肪は内臓脂肪、皮下脂肪とも同等に減少が認められました。
つまり、少なくとも週に30分以上の有酸素運動を行えば、
それに伴って健康的に体重は減少する、
という結果です。
ただ、矢張り臨床的に意味のあるレベルで体重減少を期待するのであれば、
週に150分以上の中強度以上の有酸素運動が必要であることも、
同時に確認がされています。
有酸素運動は、
仮に短時間であっても、
体重減少に一定の効果が期待出来ますが、
運動だけで体重と体脂肪を減少させるためには、
最低でも週に150分以上の、
ある程度負荷の高いトレーニングが必要であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
「ファーストキス」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。

坂元裕二さんの脚本を塚原あゆ子さんが監督し、
松たか子さんと松村北斗さんが主演を勤めた恋愛映画が、
今公開されています。
45歳の設定の松たか子さんが、
ひょんなことからタイムスリップして、
事故で亡くなった夫の松村北斗さんに、
初めて出逢った15年前に再会し、
未来を変えようと奮闘するという物語で、
円熟の域にある松たか子さんの、
相性の良い坂元裕二さんとのタッグで見せる、
抜群の演技が見どころの映画です。
極めてありきたりの設定であるように、
予告などを見る限りは思うのですが、
そこはさすがに坂元裕二さんで、
タイムスリップしたとは言え、
15歳の年の差のあるカップルの恋愛、
というのが含みのある感じですし、
普通事故死した夫を愛するがあまりタイムスリップ、
という感じになるところ、
2人の仲は冷めきっていて、
そうではない、という辺りも捻りが効いています。
ただ、SFチックな設定自体はかなり雑で、
テレビで「バックトゥザフューチャー」辺りを流しながら、
その勢いで書いてしまった、
という感じのイージーな設定でした。
これはタイムリープと言うよりも、
松たか子さんを主役した台本を、
途中で何度も書き直してラストを変えようとする、
というような創作遊戯的な作品なんですね。
そう思って割り切って観ないと、
多分最後までモヤモヤする気分になるかも知れません。
SF的な設定があると、
どうしてもそこでの展開を期待してしまうので、
それが何もないというのも、
矢張り物足りないものは感じてしまいました。
そんな訳で坂元裕二さんの作品としては、
正直完成度は今一つという感じで、
SF的設定との相性もあまり良くなかったかな、
という印象はあるのですが、
塚原監督の巧みな演出と、
松たか子さんと松村北斗さんの抜群な演技を見るだけで、
観て損はなかった、
という気分にはさせてくれる作品でした。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。

坂元裕二さんの脚本を塚原あゆ子さんが監督し、
松たか子さんと松村北斗さんが主演を勤めた恋愛映画が、
今公開されています。
45歳の設定の松たか子さんが、
ひょんなことからタイムスリップして、
事故で亡くなった夫の松村北斗さんに、
初めて出逢った15年前に再会し、
未来を変えようと奮闘するという物語で、
円熟の域にある松たか子さんの、
相性の良い坂元裕二さんとのタッグで見せる、
抜群の演技が見どころの映画です。
極めてありきたりの設定であるように、
予告などを見る限りは思うのですが、
そこはさすがに坂元裕二さんで、
タイムスリップしたとは言え、
15歳の年の差のあるカップルの恋愛、
というのが含みのある感じですし、
普通事故死した夫を愛するがあまりタイムスリップ、
という感じになるところ、
2人の仲は冷めきっていて、
そうではない、という辺りも捻りが効いています。
ただ、SFチックな設定自体はかなり雑で、
テレビで「バックトゥザフューチャー」辺りを流しながら、
その勢いで書いてしまった、
という感じのイージーな設定でした。
これはタイムリープと言うよりも、
松たか子さんを主役した台本を、
途中で何度も書き直してラストを変えようとする、
というような創作遊戯的な作品なんですね。
そう思って割り切って観ないと、
多分最後までモヤモヤする気分になるかも知れません。
SF的な設定があると、
どうしてもそこでの展開を期待してしまうので、
それが何もないというのも、
矢張り物足りないものは感じてしまいました。
そんな訳で坂元裕二さんの作品としては、
正直完成度は今一つという感じで、
SF的設定との相性もあまり良くなかったかな、
という印象はあるのですが、
塚原監督の巧みな演出と、
松たか子さんと松村北斗さんの抜群な演技を見るだけで、
観て損はなかった、
という気分にはさせてくれる作品でした。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
高齢者はどのくらい卵を食べるのが健康的なのか?(2025年オーストラリアの疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Nutrients誌に2025年1月17日付で掲載された、
高齢者はどのくらい卵を食べるのが健康的かについての論文です。
卵と健康との関連については、
色々な見方があります。
卵黄には1個に200ミリグラムを超えるコレステロールが含まれています。
血液のコレステロールが高いと、
動脈硬化が進行しやすいという知見が得られてから、
食事のコレステロールを制限しようという動きが、
世界的に高まり、
そこで提唱された基準が、
食事のコレステロールを1日300ミリグラム以下にする、
というものです。
これを達成するためには、
卵をなるべく食べないことが、
必要不可欠ですから、
卵の制限が、
健康のためには必要であると考えられたのです。
ところが
2016年に公表されたアメリカのガイドラインにおいては、
食事のコレステロールを制限しても、
血液のコレステロールを減らせるという根拠は乏しいとして、
その目標値は削除されました。
2020年の段階でその根拠となるデータをまとめた、
米国心臓病学会の総説がこちらになります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31838890/
このガイドラインの変更は、
「コレステロールの食事制限は不要」として、
一般にも報道されました。
その報道には誤解を招く点があり、
実際には数値目標が外れただけで、
コレステロールの制限自体は推奨されていたのですが、
コレステロールに制限は要らない、
という誤ったメッセージに受け取られたことは、
残念でした。
その後様々の研究データが発表されましたが、
概ね1日1個を超えない卵の摂取については、
大きな健康リスクはない、
というのがほぼ一致した考え方になっています。
ただ、その元になっているデータの多くは現役世代のもので、
高齢者でも同じとは限りません。
高齢者は摂取する蛋白量が低下していて、
それが体力低下の一因であるという指摘があります。
卵は簡単に蛋白質を摂ることの出来る食品なので、
その意味では卵を食べる習慣は健康に資すると考えることが出来ます。
一方で高齢者ではコレステロールが高い人は多く、
動脈硬化も進行している人が多いことが想定されるので、
コレステロールを多めに摂ることは、
矢張り良くないのではないか、
という考え方もあるのです。
実際にはどうなのでしょうか?
今回の研究はオーストラリアにおいて、
高齢者の健康調査のデータを活用することで、
卵の摂取量と生命予後との関連を検証しています。
対象は登録の時点で70歳以上の一般住民8756例です。
中間値で5から9年の観察期間において、
卵を殆ど食べない人と比較して、
毎週1から6回食べている人は、
心血管疾患による死亡のリスクが29%(95%CI:0.54から0.92)、
総死亡のリスクが17%(95%CI:0.71から0.96)、
それぞれ有意に低下していました。
その一方で毎日卵を食べる習慣のある人は、
殆ど食べない人と比較して、
心血管疾患による死亡リスクも総死亡のリスクも、
やや高い傾向が認められました。
ただ統計的に有意な増加ではありませんでした。
このように、
70歳以上の高齢者を対象とした今回の研究では、
毎日1回を超えないレベルで卵を食べることは、
むしろ健康長寿に役立つ可能性がある、
という結果が得られました。
これは回数のみの質問を元にしているので、
正確な卵の摂取量は不明ですが、
概ね毎日1個以上継続的に食べることは良くない可能性があるものの、
それを超えなければ健康に害はなく、
むしろ健康に資する可能性もある、
というくらいに考えて頂くのが良いと思います。
卵は食べ過ぎず、美味しく食べるのが吉であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Nutrients誌に2025年1月17日付で掲載された、
高齢者はどのくらい卵を食べるのが健康的かについての論文です。
卵と健康との関連については、
色々な見方があります。
卵黄には1個に200ミリグラムを超えるコレステロールが含まれています。
血液のコレステロールが高いと、
動脈硬化が進行しやすいという知見が得られてから、
食事のコレステロールを制限しようという動きが、
世界的に高まり、
そこで提唱された基準が、
食事のコレステロールを1日300ミリグラム以下にする、
というものです。
これを達成するためには、
卵をなるべく食べないことが、
必要不可欠ですから、
卵の制限が、
健康のためには必要であると考えられたのです。
ところが
2016年に公表されたアメリカのガイドラインにおいては、
食事のコレステロールを制限しても、
血液のコレステロールを減らせるという根拠は乏しいとして、
その目標値は削除されました。
2020年の段階でその根拠となるデータをまとめた、
米国心臓病学会の総説がこちらになります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31838890/
このガイドラインの変更は、
「コレステロールの食事制限は不要」として、
一般にも報道されました。
その報道には誤解を招く点があり、
実際には数値目標が外れただけで、
コレステロールの制限自体は推奨されていたのですが、
コレステロールに制限は要らない、
という誤ったメッセージに受け取られたことは、
残念でした。
その後様々の研究データが発表されましたが、
概ね1日1個を超えない卵の摂取については、
大きな健康リスクはない、
というのがほぼ一致した考え方になっています。
ただ、その元になっているデータの多くは現役世代のもので、
高齢者でも同じとは限りません。
高齢者は摂取する蛋白量が低下していて、
それが体力低下の一因であるという指摘があります。
卵は簡単に蛋白質を摂ることの出来る食品なので、
その意味では卵を食べる習慣は健康に資すると考えることが出来ます。
一方で高齢者ではコレステロールが高い人は多く、
動脈硬化も進行している人が多いことが想定されるので、
コレステロールを多めに摂ることは、
矢張り良くないのではないか、
という考え方もあるのです。
実際にはどうなのでしょうか?
今回の研究はオーストラリアにおいて、
高齢者の健康調査のデータを活用することで、
卵の摂取量と生命予後との関連を検証しています。
対象は登録の時点で70歳以上の一般住民8756例です。
中間値で5から9年の観察期間において、
卵を殆ど食べない人と比較して、
毎週1から6回食べている人は、
心血管疾患による死亡のリスクが29%(95%CI:0.54から0.92)、
総死亡のリスクが17%(95%CI:0.71から0.96)、
それぞれ有意に低下していました。
その一方で毎日卵を食べる習慣のある人は、
殆ど食べない人と比較して、
心血管疾患による死亡リスクも総死亡のリスクも、
やや高い傾向が認められました。
ただ統計的に有意な増加ではありませんでした。
このように、
70歳以上の高齢者を対象とした今回の研究では、
毎日1回を超えないレベルで卵を食べることは、
むしろ健康長寿に役立つ可能性がある、
という結果が得られました。
これは回数のみの質問を元にしているので、
正確な卵の摂取量は不明ですが、
概ね毎日1個以上継続的に食べることは良くない可能性があるものの、
それを超えなければ健康に害はなく、
むしろ健康に資する可能性もある、
というくらいに考えて頂くのが良いと思います。
卵は食べ過ぎず、美味しく食べるのが吉であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
痛み止めと胃薬併用の下部消化管出血リスク [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Gut and Liver誌に2025年1月3日付でウェブ掲載された、
頻用されている痛み止めと胃薬の併用で、
下血のリスクが高まるという、
ちょっと気になる報告です。
アスピリンや、
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)と呼ばれる消炎鎮痛剤は、
安全で即効性のある痛み止めや解熱剤として、
幅広く使用されています。
ただ、幾つか無視できない副作用や有害事象があり、
その1つが胃潰瘍などの消化管出血です。
これは私自身も臨床で何度も経験していますが、
たとえばロキソプロフェンなどの痛み止めを、
短期間使用しただけでも、
胃の中に小さな潰瘍が無数に出来ていたりするのです。
痛み止めを使用しているので、
潰瘍が出来てもあまり痛みを感じず、
出血による貧血で初めて発見される、
というような事例も稀ではありません。
その予防のためには勿論、
消炎鎮痛剤の使用を最小限に留めることが第一ですが、
継続的な使用が止むを得ない、というケースも多く、
その時にしばしば行われる方法が、
胃酸の分泌を強力に抑えて潰瘍を治療する、
プロトンポンプ阻害剤という胃薬を、
痛み止めと併用するという考え方です。
こうした方法を取ることにより、
確かに痛み止めの使用による、
胃潰瘍などの上部消化管出血は減少しました。
ところが…
上部消化管の出血は減少した一方で、
十二指腸より下部の消化管からの出血(小腸や大腸からの出血)は、
むしろ増えているのではないか、
という指摘が最近見られるようになりました。
2023年に発表されたメタ解析の論文では、
これまでに発表された12の臨床研究に含まれる、
トータルで341063名の症例をまとめて解析したところ、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
下部消化管出血のリスクは3.23倍(HR95%CI:1.56から6.71)、
有意に増加していて、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の単独使用と比較して、
プロトンポンプ阻害剤の併用は、
下部消化管出血のリスクを6.55倍(HR95%CI:2.01から21.33)、
有意に増加させていました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37553807/
今回の検証は韓国において、
5つの医療機関のデータをまとめて解析することにより、
この問題の実地医療での検証を行っているものです。
非ステロイド系消炎鎮痛剤と、
プロトンポンプ阻害剤を併用した事例8728例を、
年齢などをマッチングさせた、
非ステロイド系消炎鎮痛剤のみ使用している同じ8728例と、
比較検証したところ、
プロトンポンプ阻害剤併用群は、
非ステロイド系消炎鎮痛剤単独使用群と比較して、
下部消化管出血のリスクが、
2.843倍(HR95%CI:1.998から4.044)有意に増加していました。
つまり、今回の検証においても、
矢張り痛み止めとプロトンポンプ阻害剤という胃薬の併用は、
下部消化管出血の危険性を増していたのです。
それでは、
何故胃酸を抑える薬で、
腸の出血が増加するのでしょうか?
カプセル内視鏡などを使用したこれまでの研究によると、
出血部位の多くは小腸であると考えられています。
これは仮説ですが、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
胃酸が強力に抑えられ、
それによって腸内細菌叢の変化などが起こり、
それが小腸の粘膜に悪影響を与えた可能性が指摘されています。
これはまだ実証された事実とは言えませんが、
非ステロイド系消炎鎮痛剤とプロトンポンプ阻害剤を併用することは、
胃などの上部消化管の出血は減らす一方で、
下部消化管特に小腸の出血は増やす可能性があり、
そうした併用は今後はより慎重に行う必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Gut and Liver誌に2025年1月3日付でウェブ掲載された、
頻用されている痛み止めと胃薬の併用で、
下血のリスクが高まるという、
ちょっと気になる報告です。
アスピリンや、
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)と呼ばれる消炎鎮痛剤は、
安全で即効性のある痛み止めや解熱剤として、
幅広く使用されています。
ただ、幾つか無視できない副作用や有害事象があり、
その1つが胃潰瘍などの消化管出血です。
これは私自身も臨床で何度も経験していますが、
たとえばロキソプロフェンなどの痛み止めを、
短期間使用しただけでも、
胃の中に小さな潰瘍が無数に出来ていたりするのです。
痛み止めを使用しているので、
潰瘍が出来てもあまり痛みを感じず、
出血による貧血で初めて発見される、
というような事例も稀ではありません。
その予防のためには勿論、
消炎鎮痛剤の使用を最小限に留めることが第一ですが、
継続的な使用が止むを得ない、というケースも多く、
その時にしばしば行われる方法が、
胃酸の分泌を強力に抑えて潰瘍を治療する、
プロトンポンプ阻害剤という胃薬を、
痛み止めと併用するという考え方です。
こうした方法を取ることにより、
確かに痛み止めの使用による、
胃潰瘍などの上部消化管出血は減少しました。
ところが…
上部消化管の出血は減少した一方で、
十二指腸より下部の消化管からの出血(小腸や大腸からの出血)は、
むしろ増えているのではないか、
という指摘が最近見られるようになりました。
2023年に発表されたメタ解析の論文では、
これまでに発表された12の臨床研究に含まれる、
トータルで341063名の症例をまとめて解析したところ、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
下部消化管出血のリスクは3.23倍(HR95%CI:1.56から6.71)、
有意に増加していて、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の単独使用と比較して、
プロトンポンプ阻害剤の併用は、
下部消化管出血のリスクを6.55倍(HR95%CI:2.01から21.33)、
有意に増加させていました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37553807/
今回の検証は韓国において、
5つの医療機関のデータをまとめて解析することにより、
この問題の実地医療での検証を行っているものです。
非ステロイド系消炎鎮痛剤と、
プロトンポンプ阻害剤を併用した事例8728例を、
年齢などをマッチングさせた、
非ステロイド系消炎鎮痛剤のみ使用している同じ8728例と、
比較検証したところ、
プロトンポンプ阻害剤併用群は、
非ステロイド系消炎鎮痛剤単独使用群と比較して、
下部消化管出血のリスクが、
2.843倍(HR95%CI:1.998から4.044)有意に増加していました。
つまり、今回の検証においても、
矢張り痛み止めとプロトンポンプ阻害剤という胃薬の併用は、
下部消化管出血の危険性を増していたのです。
それでは、
何故胃酸を抑える薬で、
腸の出血が増加するのでしょうか?
カプセル内視鏡などを使用したこれまでの研究によると、
出血部位の多くは小腸であると考えられています。
これは仮説ですが、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
胃酸が強力に抑えられ、
それによって腸内細菌叢の変化などが起こり、
それが小腸の粘膜に悪影響を与えた可能性が指摘されています。
これはまだ実証された事実とは言えませんが、
非ステロイド系消炎鎮痛剤とプロトンポンプ阻害剤を併用することは、
胃などの上部消化管の出血は減らす一方で、
下部消化管特に小腸の出血は増やす可能性があり、
そうした併用は今後はより慎重に行う必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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