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三浦大輔「ハザカイキ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ハザカイキ.jpg
元ポツドールの三浦大輔さんの3年ぶりの舞台新作が、
今歌舞伎町タワーのTHEATER MILANO-Zaで上演されています。

ポツドールの「愛の渦」の初演は、
大人計画の「愛の罰」の初演と並んで、
個人的にはかつてないくらいの衝撃を受けた舞台で、
その後しばらくは大人計画とポツドールと共に生きている、
という感じすらあるほどでした。

ただ、それはもう当たり前ではあるのですが、
僕と同じように、大人計画の松尾スズキさんも、
ポツドールの三浦大輔さんも年を取り、
あのギラギラした小劇場のるつぼのような世界からは、
かなり遠くに来てしまいました。

三浦大輔さんは、
松坂桃李さんに舞台上で全裸の性行為を延々と演じさせた、
「娼年」という怪作がありましたが、
その後は映像に軸足を移した感じで、
舞台の仕事は企画公演がたまにあるだけ、
という感じになっています。

ただ、今回の作品は、
これまでの作品とは少し傾向が変わっていて、
今のキャンセルカルチャーや文春砲、性加害などのテーマに、
真向から取り組んでいると共に、
どうしようもないダメ男を主役に据える点は、
これまでと違いはないのですが、
今回は恒松祐里さん演じるアイドルの少女に、
かなり力点が置かれていて、
長大な長台詞を一気にまくしたてさせながら、
涙を流さないといけないという無茶ブリをしていて、
それに応えた恒松さんの芝居が素晴らしく、
久しぶりに「凄いお芝居を観た」
という気分にさせられました。

クドカンの「不適切にもほどがある」に、
近いスタンスで作られた作品だと思うのですが、
今の基準で考えれば、
相当不適切で際どい作品を連発してきた三浦さんなので、
今の社会の捉え方は、
クドカンとはまた少し違っているんですね。
リアルなパワハラと性加害を舞台上で演じて来た劇作家なので、
それを含めて今をどう考えているのか、
という点に興味を持つのです。
リアルで攻撃的な感情が、
突き刺さるような表現も多く、
その生々しさは三浦さん特有のものですが、
それでいて物語的にはかなり予定調和的で穏当な感じもあり、
過去には想像も出来なかったような、
ハッピーエンドに近い終わり方になります。
登場する俳優たちは、
その役柄毎にニュアンスを変えながら、
何か執拗に「謝罪」を繰り返すのですが、
これは攻撃をされたら謝罪をするしかない、
という今の最適解を、
三浦さんなりに咀嚼した結果のようにも思いますし、
三浦さん自身が、
過去の何かに向けたメッセージのようにも、
捉えられなくはありません。

スタイル的には、
今回はつかこうへい戯曲のタッチに、
長台詞などかなり近い感じになっていました。
ヒロインの無茶ブリ長台詞など、
その典型的な感じですし、
主人公の丸山隆平さんと勝地涼さんの絡みは、
「いつも心に太陽を」と彷彿とさせました。
風間杜夫さんを出しているのも、
そうした意図の表れのように感じました。

総じて過去の過激さはないものの、
如何にも三浦さんらしく現在と格闘した力作で、
今年これまでに観た演劇作品の中では、
個人的には最も感銘を受けた1本です。
これは多分映像化も考えていますよね。

ご興味のある方がいれば是非!

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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