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2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演 いのうえ歌舞伎「天號星(てんごうせい)」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
天號星②.jpg
劇団☆新感線の本公演が、
歌舞伎町タワーにあるTHEATER MILANO-ZAで、
今上演されています。

これは劇団公演のメインストリームである、
中島かずき作・いのうえひでのり演出の、
いのうえ歌舞伎の新作です。

舞台となったTHEATER MILANO-ZAは、
その名の通り昔映画館ミラノ座のあった場所に誕生した劇場で、
キャパは800席程度とシアターコクーンを一回り大きくしたくらい、
最近劇団☆新感線が公演している劇場の中では、
一番小さな小屋と言って良いと思います。
そのアットホームな感じが、
昔を感じさせて悪くありませんでした。

作品は必殺仕事人をベースにした暗殺集団同士の抗争に、
2人の主人公の心と体が入れ替わるという、
「転校生」の趣向を取り込んだもので、
ダークな殺し屋役の早乙女太一さんと、
気弱なおじさん役の古田新太さんが、
入れ替わるというのが演劇的にはとても豪華な趣向です。

早乙女太一さん、友貴さんの兄弟が顔を揃え、
山本千尋さんが女剣士として参戦しますから、
アクション抜群の3人の美しい体技が、
一番の見どころで、
そこに座長の古田新太さんが硬軟織り交ぜた、
貫禄の座長芝居で踏ん張りを見せ、
人気者の久保史緒里さんが踊り巫女として、
3曲のオリジナルを歌うというサービスも用意されています。

内容的には今回はかなり実際の歌舞伎に寄せた台本で、
黙阿弥の世話物のような味わいがあります。
ただ、古典のようなドロドロした話には出来ないので、
どうしても薄味になってしまう、というきらいはあります。
前半はそれでもかなり人物描写が上手く嚙み合っていて、
本家の歌舞伎よりむしろ歌舞伎味においては、
優れた部分を感じるほどでしたが、
後半は正直物足りなさを感じてしまいました。
舞台転換も段取りのみというところが散見されましたし、
絵面も最後まで地味でした。
それを超える情念のようなものがもっと迸らないと、
こうした物語は成立しないと思うのですが、
その点は本家の歌舞伎劇には及びませんでした。

矢張り新感線は、
仰々しく圧倒的に強い敵との大バトルにならないと、
盛り上がりには欠けるという気がしました。
最後は結局早乙女兄弟の対決で締め括られるので、
勿論それがレベル的には最上の対決ではあるのですが、
新感線の本公演でそれではなあ…という気がしてしまうのです。

でも、最近の新感線の作品の中では、
シンプルにまとまった良作と言って良く、
見どころ満載でまずは楽しく観ることの出来た1本でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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若年発症癌増加の傾向について(アメリカの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
50歳未満の癌急増.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年8月16日付で掲載された、
若年発症の癌の疫学についての論文です。

例外として小児癌や血液系の癌などはありますが、
癌は基本的には中高年の病気と考えられています。

多くの癌は遺伝子の変異が、
経年的に積み重なって生じる性質があるので、
ある程度の長い期間を掛けて、
発生するものと考えられているからです。

そのため世界的には多くの癌検診(スクリーニング)は、
50歳以上の年齢層で施行されているのが実際です。

そして通常の癌と区別する意味で、
例外的に50歳未満で発症する癌を、
若年発症癌のように呼んでいます。

ところが…

1990年代以降、世界的に若年発症の癌が増加していて問題となっています。

今回の研究はアメリカにおいて、
国立癌研究所のデータを元に、
2010年から2019年の動向を調査しているものです。

その結果、
2010年から2019年の10年で、
毎年人口10万人当たりの年齢標準化癌罹患率は、
50歳未満で診断された癌では1年で0.28%増加していましたが、
50歳以上で診断された癌では0.87%低下していました。
つまり癌の発症は若年化しているというデータです。

2019年の若年発症癌で最も多かったのは乳癌ですが、
2010年から2019年の10年で最も増加していたのは、
消化器系の癌で、
人口10万人当たりの年齢標準化罹患率は、
1年で2.16%増加していると計算されました。
特に増加が著明であったのは、
虫垂癌で15.61%、肝内胆管癌で8.12%、膵臓癌2.53%の順でした。

このように今回のアメリカのデータにおいては、
この10年で若年発症の癌は毎年増加していて、
特に虫垂癌などの比較的診断の困難な消化器系の癌において、
その増加が顕著に認められました。

アメリカのみならず世界的に、
癌の発症年齢の低年齢化とその頻度分布が、
変化しつつあるのは確かなことで、
今後こうしたデータを元にして、
癌の予防戦略が現実に即した、
より精度の高いものになることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者が接種するワクチンの認知症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン接種と認知症リスク.jpg
Journal of Alzheimer's Disease誌に2023年8月7日掲載された、
成人が接種するワクチンの、
認知症リスクとの関連についての論文です。

アルツハイマー型認知症の病因については、
色々な仮説がありますが、
その1つとして細菌やウイルス、真菌などによる感染症が、
脳神経系組織の炎症を来し、
それが発症の誘因となっているのではないか、
という考え方があります。

実際に複数の感染症の罹患歴と、
アルツハイマー型認知症の発症との間に、
一定の関連があったとする報告もあります。

仮に感染症が認知症の誘因であるとすると、
感染を予防することが認知症の予防にも繋がる可能性があります。

それでは現行高齢者に推奨されているワクチンの接種に、
認知症の予防効果はあるのでしょうか?

今回の検証はアメリカの医療データを活用して、
アメリカで高齢者に推奨されている、
3種類のワクチンの接種と、
その後の認知症発症リスクとの関連を比較検証しているものです。

その対象となっているワクチンは、
Td(破傷風とジフテリアの2種混合)と、
Tdap(破傷風、ジフテリア、百日咳の3種混合)ワクチン、
帯状疱疹予防ワクチン、
肺炎球菌ワクチンの3種類です。

登録の時点で65歳以上で、
過去2年間に認知症と診断されていない、
トータル1651991人のデータを解析したところ、
2種混合もしくは3種混合ワクチンの接種は、
その後のアルツハイマー型認知症のリスクを、
30%(95%CI:0.68から0.72)、
帯状疱疹予防ワクチンの接種は、
25%(95%CI:0.73から0.76)、
肺炎球菌ワクチンの接種は、
27%(95%CI:0.71から0.74)、
それぞれ有意に低下させていました。

こうしたワクチンを接種している高齢者は、
他の健康リスクにも敏感で、
健康への意識も高いと想定されるため、
そうしたバイアスの影響も考えられますが、
複数のワクチンに同等の認知症予防効果があるとする、
今回のデータは非常に興味深く、
今後のより詳細な検証にも期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者の座位時間と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
座位時間と認知症リスク.jpg
JAMA誌に2023年9月12日付で掲載された、
高齢者の座っている時間の長さと、
認知症リスクとの関連についての論文です。

1日の多くの時間を座って過ごすことが、
総死亡のリスクの増加や、
糖尿病や癌や心血管疾患のリスクの増加に繋がることが、
多くの疫学データにおいて示されています。

つまり、座る時間が長いほど、
健康には悪影響を与えることになるのです。

心血管疾患のリスクと認知症リスクとの間には関連があり、
その点から考えると、
高齢者が座っている時間が長いことも、
認知症のリスクになると想定されます。

しかし、実際には座位時間と認知症リスクとの関連は、
それほど明確に証明されている事項ではありません。

今回の研究は大規模な健康情報や遺伝情報を収集している、
UKバイオバンクの住民データを活用して、
ウェアラブル端末の加速度計で正確に測定された、
座位時間とその後の認知症リスクとの関連を検証しています。

対象は登録の時点で認知症のない、
年齢60歳以上の49841名で、
1週間のデータから座位時間の計測を施行し、
その後の認知症の発症との関連を検証しています。
平均観察期間は6.72年です。

その結果、
1日の平均座位活動時間9.27時間に対して、
1日10時間の座位時間では、
認知症リスクは1.08倍(95%CI:1.04から1.12)、
1日12時間では1.63倍(95%CI:1.35から1.97)、
1日15時間では3.21倍(95%CI:2.05から5.04)となっていました。
つまり、座位時間が平均より長くなるに従って、
認知症リスクは明確に増加している、
という結果です。

今回のデータからは座位時間の長さが、
認知症の原因であるとは言い切れず、
認知症の症状として意欲低下などがあることを考えると、
ごく初期の認知症症状に伴う座時時間の延長が、
こうした現象として表れているという可能性もあります。

従って、この問題についてはより詳細な検証が、
今後必要と考えられますが、
座位時間が年齢と共に長くなることは、
色々な意味で健康リスクとなることは間違いがなく、
その対策は健康維持の面で、
大きな課題であることは間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症に対する吸入ステロイドの有効性(2023年介入試験データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19に対する吸入ステロイドの有効性2023.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年9月21日付で掲載された、
新型コロナウイルス感染症の初期治療として、
吸入ステロイドを使用する臨床試験結果についての論文です。

新型コロナウイルス感染症対応の柱は、
予防のためのワクチン接種と、
抗ウイルス剤などの急性期治療ですが、
この感染症がトータルには軽症化している現在、
軽症の患者さんにも気軽に使用が可能で、
その病状の早期回復に一定の有効性があるような、
そうした治療が求められている現状があります。

特に低所得国では現行の抗ウイルス剤は、
非常に高価で使用が困難であるため、
より安価で有効性のある治療が求められているのです。

多くの薬剤がその候補として検討されていますが、
今のところ精度の高い臨床試験において、
その有効性が確認された薬剤はありません。

ステロイドのデキサメサゾンは、
重症の肺炎の事例においては、
その予後改善の有効性が確認されています。
ただ、より軽症の事例における有効性は不明です。
また、気管支喘息などの治療薬として用いられている、
吸入ステロイド剤を軽症から中等症の事例に使用することで、
その予後が改善したとする報告がある一方で、
無効であったとする報告が複数発表されています。

今回の研究はアメリカの91の医療施設において、
30歳以上で有症状の新型コロナの外来事例を登録し、
症状出現7日以内に、
吸入ステロイドであるフルチカゾンを1日200μg使用する群と、
偽の吸入を使用する群とに分けて、
その28日後までの経過を比較検証しています。
患者本人にも治療者にも明かさずに、
くじ引きで2つの群に分けるという、
厳密な方法で施行された試験です。

その結果、フルチカゾンを使用してもしなくても、
症状が改善するまでの期間も、
28日の時点までの重症化や死亡などの予後にも、
有意な差は認められませんでした。

このように今回の臨床試験においては、
吸入ステロイドの使用の有効性は示されませんでした。

外来での新型コロナウイルス感染症に対して、
現状安価で有効性のある初期治療は、
今のところ確立されたものはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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銅像阿弥陀如来坐像(百草八幡神社奉安殿安置本地仏) [仏像]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
銅像阿弥陀如来坐像ちらし.jpg
東京日野市にある百草(もぐさ)八幡神社のお祭りが、
2023年は9月16日に催され、
それに伴って本地仏として境内の奉安殿に安置されている、
国指定重要文化財の銅像阿弥陀如来坐像が、
公開されました。

これは神社の近くの壁に貼られていたご案内です。

それからもう1枚。
銅造阿弥陀如来座座像解説.jpg
こちらは奉安殿の傍に立てられていた、
解説の立て札です。

もともと古くから近くにあった、
真慈悲寺というお寺に安置されていた仏様で、
鎌倉時代の1250年に造られたことが銘文で証明されています。
真慈悲寺が廃寺となった後、
本地仏として神社の境内に安置されるようになったようです。

その由来が明確な点もあって、
国の重要文化財に指定されています。

たまたま時間的に可能だったので、
急に思い立って拝観させて頂いたのですが、
非常に素晴らしくて感銘を受けました。

地元のお祭りが盛大に行われていて、
その傍らで御開帳もある、という感じなのですが、
小さな収蔵庫の扉が開かれていて、
中に入ることは出来ませんが、
格子やガラスなどはなく、
間近からストレスなく拝観することが出来ました。
傍に懐中電灯が置かれていて、
地元の人が「それで照らして見ると良く見えますよ」
と言ってくれました。

像高は40センチですから比較的小さな仏様ですが、
実際に相対してみると、
決して小さいという感じは受けなくて、
むしろかなり堂々とした力感を感じます。
そのフォルムの繊細な美しさを含めて、
古仏の素晴らしさを堪能出来る逸品でした。

いずれにしても周囲の華やいだ雰囲気や、
近所の人達がたのしげに集う感じ、
そこで御開帳が行われるという、
その特別感が何より素晴らしく、
これこそ御開帳というものの1つの理想形ではないかしら、
という気持ちにさせられたのです。

素敵でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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非ステロイド系消炎鎮痛剤と経口避妊薬併用の血栓症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
経口避妊薬の血栓リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年9月6日付で掲載された、
経口避妊薬と非ステロイド系消炎鎮痛剤の、
血栓症リスクについての論文です。

日本では専ら低用量ピルが使用されている経口避妊薬は、
基本的には安全性の高い薬ですが、
深部静脈血栓症や肺塞栓症などの、
静脈血栓症のリスクがあることは知られています。
そのため血栓症の傾向やリスクがないかどうかを、
検査しながら使用する必要があります。

非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
プロスタグランジンなどの炎症物質を抑えることで、
解熱と鎮痛の効果のある薬剤で、
解熱剤や痛み止めとして広く使用されています。
ロキソニンやボルタレンはその代表です。

この非ステロイド系消炎鎮痛剤も安全性の高い薬ですが、
経口避妊薬と同様に、
若干ながら静脈血栓症や肺塞栓症の、
リスクを高めることが知られています。

生理のある女性では、
経口避妊薬と非ステロイド系消炎鎮痛剤を、
併用するケースは多いと考えられますが、
併用した場合にどの程度血栓症のリスクが高まるかについては、
これまであまり正確なデータ存在していませんでした。

今回の研究はデンマークにおいて、
15から49歳の女性2029065名を対象とし、
経口避妊薬と非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用と、
静脈血栓症のリスクとの関連を検証しているものです。

非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用していない女性と比較して、
使用歴のある女性は、
深部静脈血栓症と肺塞栓症を併せたリスクが、
経口避妊薬の併用のない場合でも7.2倍(95%CI:6.0から8.5)、
有意に増加していましたが、
高リスクの経口避妊薬使用者では、
11.0倍(95%CI:9.6から12.6)とより高い増加を認めていました。
中リスクの経口避妊薬の併用でも、
血栓症リスクは7.9倍(95%CI:5.9から10.6)と、
非ステロイド系消炎鎮痛剤単独より増加する傾向を示しましたが、
低リスク(日本で使用されている低用量ピルは多くがこの区分)
の経口避妊薬の併用では、
血栓症リスクは4.5倍(95%CI:2.6から8.1)の増加に留まっていました。

非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用していない場合と比較して、
使用開始後1週間における血栓症の発生は、
10万人当たり4件(3から5)増えると推計され、
高リスク経口避妊薬併用群では23件(19から27)、
中リスク経口避妊薬併用群では11件(7から15)、
そして低リスク避妊薬併用群では3件(0から5)、
更に多くなると推計されました。

このように経口避妊薬を使用している患者さんでは、
一時的な非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用により、
血栓症のリスクは増加していて、
特に高用量のホルモン剤を含む製剤の使用において、
そのリスク増加は顕著に認められました。

今回のデータは痛み止めの30錠のパッケージをいつ購入したか、
という処方データを元にしているものなので、
厳密にその使用が確認されている訳ではない、
という点には注意が必要ですが、
経口避妊薬と痛み止めの併用は血栓症のリスクを高めるという情報は、
もっと周知される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アルコールとの併用にリスクのある薬剤と飲酒習慣 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコール関連薬剤のリスク.jpg
JAMA誌に2023年9月14日付で掲載されたレターですが、
アルコールとの併用にリスクのある薬の、
飲酒歴との関連についての内容です。

お酒は多くの薬との間で相互作用のあることが知られています。

有名なところでは、
アセトアミノフェンという非常に安全性の高い解熱鎮痛薬が、
大量もしくは持続的な飲酒により、
肝臓への毒性を生じることが報告されています。
また睡眠剤や抗不安薬、抗けいれん剤などの薬剤は、
その鎮静作用が飲酒により増強して、
危険な場合のあることが知られています。

こうした薬を、
アルコール相互作用薬(Alcohol-Interactive Medications)と呼ぶことがあります。

こうした薬剤は、
常習的な飲酒や大量飲酒時は原則として使用不可ですが、
実際には個々の患者さんにそうした管理をすることは難しく、
アルコールと薬を併用しているようなケースは、
多いことが想定されます。

今回の研究はアメリカにおいて、
大規模な疫学データを解析することで、
アルコール相互作用薬の使用と飲酒習慣との関連を検証しています。
対象となっているアルコール相互作用薬は、
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬、
抗けいれん剤、痛み止めのオピオイドの3種類です。

健康リスクの高い飲酒としては、
一度に女性で4ドリンク以上、男性で5ドリンク以上の飲酒、
もしくは週に女性で8ドリンク以上、男性で15ドリンク以上の飲酒習慣が適応されています。

この1ドリンクはアルコール10グラム程度(国により違いあり)で、
日本酒1合、ビール中瓶1本が、
2ドリンク程度というのは大体の目安です。

1種類以上のアルコール相互作用薬を使用している、
20歳以上の2141名を対象として解析したところ、
前年に健康リスクの高い飲酒習慣があったのは、
ベンゾジアゼピン系作動薬の使用群で28.6%、
オピオイド使用群で17.5%、
抗けいれん剤使用群で20.2%、
2種類以上の併用群で15.3%に及んでいました。

また前月の健康リスクの高い過量飲酒も、
ベンゾジアゼピン系作動薬の使用群で16.9%、
オピオイド使用群で9.2%、
抗けいれん剤使用群で12.3%、
2種類以上の併用群で8.2%に認められました。

このようにアルコールとの併用が危険な薬が、
実際には多くの事例で過度の飲酒習慣のある患者に処方されており、
こうした状況は日本においても同様であると考えられます。

今後どのようにしてこうした事例を減らしてゆくべきなのか、
早急な議論が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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砂糖や甘味料の腎結石リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
腎結石と砂糖との関係.jpg
Frontiers in Nutrition誌に2023年8月4日付で掲載された、
腎結石のリスクと食事の砂糖などの甘味料との、
関連についての論文です。

腎結石(腎尿路結石)は上記文献の記載によれば、
アメリカでは生涯で10人に1人が感染するという報告があるほど、
その罹患率の高い病気です。
腎結石は再発をし易い病気で、
一度痛みを伴う発作を起こすと、
半数は10年以内に再発するというデータも報告されています。

腎結石の正確な原因は不明で、
複数の生活習慣や食事の因子が、
関連のあるとする疫学データが存在していますが、
個々の根拠はそれほど確かなものではありません。
そうした食習慣の1つが、
砂糖などの甘味料の摂取です。

今回の臨床研究では、
アメリカの再規模な健康調査のデータを活用して、
この問題の検証を行っています。

対象は28303人の一般住民で、
砂糖などの甘味料を添加した、
ジュースなどの清涼飲料水やお菓子などからの、
添加された糖質の摂取量と、
腎結石の発症リスクとの関連を比較検証しています。

その結果、
砂糖などの添加糖からの接種カロリーが、
4分割して最も多かった群は、
最も少ない群と比較して、
腎結石の発症リスクが1.39倍(95%CI:1.17から1.65)
有意に増加していました。

このように腎結石は生活習慣病の一種、
という捉え方をすることが可能で、
肥満や心血管疾患を予防する食事療法は、
腎結石を予防する食事でもあると、
そう考えることが必要であるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ヴェルディ「椿姫」(ローマ国立歌劇場2023年来日公演) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ローマ椿姫.jpg
イタリアのローマ国立歌劇場の日本公演が、
NBSの主催で今上演されています。

そのヴェルディ「椿姫」の公演に足を運びました。

これはなかなか良かったです。

久しぶりに良いオペラを生で聴いた、
という気分になりました。

コロナ禍以降、最近になって幾つかの、
海外歌劇場の来日公演と題されたものはありましたが、
実際にはそれほど大掛かりなものではなかった印象でした。

今回の公演はオケも舞台装置も合唱もバレエもほぼ持ち込みで、
全体にクオリティは高く保たれていました。
その意味ではコロナ禍以降初めての、
海外歌劇場の本格的な来日公演、
という言い方をしてそれほど間違いではないと思います。

キャストはヴィオレッタ役のリセット・オロペサが、
ヴィジュアルも役柄にピッタリですし、
豪華な衣装の着こなしも美しく、
肝心の歌も装飾歌唱などは抜群とは言えないのですが、
それでもクオリティの高い歌唱で聴きごたえがありました。

テノールのフランチェスコ・メーリは、
以前よりかなり翳のある2枚目という感じになっていましたが、
今回は非常にフォルムの端正な見事な歌唱で、
僕は来日の度にメーリの声は聴いていますが、
今回が間違いなく一番良かったと思います。
絶好調と言っても言い過ぎではありません。

演出は2018年にも一度日本で上演されたもので、
その時も結構好印象でした。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2018-09-17
今回も改めてこの演出の演劇的に優れた点を確認しました。
音楽の構成もその時とほぼ同じで、
3幕はかなりオリジナルに近いヴァージョンでしたが、
1幕と2幕1場はカットの多いヴァージョンでした。
音楽の完成度は間違いなく前回を凌いでいたと思いますが、
特に1幕の大アリアのカヴァレッタが、
短縮版だったのは少し残念でした。

ミケーレ・マリオッティの指揮は、
抑揚の豊かな表現が素晴らしく、
歌手に合わせて調整する職人芸もなかなかでした。

もう多分こうした引っ越し公演を、
日本で聴く機会は、
経済状況や将来の見通しを考えると、
あまりないのではないかと思われるので、
その少ない機会をしっかりと噛み締めて、
目と耳に残したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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