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新型コロナウイルス感染症に対する吸入ステロイドの有効性(2023年介入試験データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19に対する吸入ステロイドの有効性2023.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年9月21日付で掲載された、
新型コロナウイルス感染症の初期治療として、
吸入ステロイドを使用する臨床試験結果についての論文です。

新型コロナウイルス感染症対応の柱は、
予防のためのワクチン接種と、
抗ウイルス剤などの急性期治療ですが、
この感染症がトータルには軽症化している現在、
軽症の患者さんにも気軽に使用が可能で、
その病状の早期回復に一定の有効性があるような、
そうした治療が求められている現状があります。

特に低所得国では現行の抗ウイルス剤は、
非常に高価で使用が困難であるため、
より安価で有効性のある治療が求められているのです。

多くの薬剤がその候補として検討されていますが、
今のところ精度の高い臨床試験において、
その有効性が確認された薬剤はありません。

ステロイドのデキサメサゾンは、
重症の肺炎の事例においては、
その予後改善の有効性が確認されています。
ただ、より軽症の事例における有効性は不明です。
また、気管支喘息などの治療薬として用いられている、
吸入ステロイド剤を軽症から中等症の事例に使用することで、
その予後が改善したとする報告がある一方で、
無効であったとする報告が複数発表されています。

今回の研究はアメリカの91の医療施設において、
30歳以上で有症状の新型コロナの外来事例を登録し、
症状出現7日以内に、
吸入ステロイドであるフルチカゾンを1日200μg使用する群と、
偽の吸入を使用する群とに分けて、
その28日後までの経過を比較検証しています。
患者本人にも治療者にも明かさずに、
くじ引きで2つの群に分けるという、
厳密な方法で施行された試験です。

その結果、フルチカゾンを使用してもしなくても、
症状が改善するまでの期間も、
28日の時点までの重症化や死亡などの予後にも、
有意な差は認められませんでした。

このように今回の臨床試験においては、
吸入ステロイドの使用の有効性は示されませんでした。

外来での新型コロナウイルス感染症に対して、
現状安価で有効性のある初期治療は、
今のところ確立されたものはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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