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非びらん性胃食道逆流症の食道癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
非びらん性胃食道逆流症の食道癌リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年9月13日付で掲載された、
胃酸の食道への逆流のリスクについての論文です。

胃食道逆流症というのは、
本来胃の中だけで働く筈の胃酸が、
胃の入り口の緩みなどを原因として食道に逆流し、
胸やけや咽頭痛などの症状を出すことをそう呼んでいます。

そうした症状があって胃カメラの検査をすると、
食道の粘膜にびらんや潰瘍などの変化が見られることがあり、
バレット食道と言って、
食道の粘膜が胃の粘膜のように、
赤く変性しているような所見が見られることもあります。
このように食道の粘膜に目で見て分かるような変化のあるものを、
「逆流性食道炎」と呼んでいます。
一方で同じように胃酸が逆流して症状があっても、
胃カメラをしてみると食道粘膜は全く正常、
ということもあります。
これを「非びらん性胃食道逆流症」と呼んでいます。

胃食道逆流症は、
食道腺癌のリスクになることが知られています。

ただ、それが全ての胃食道逆流症について当て嵌まるものなのか、
それとも胃カメラで所見のある、
逆流性食道炎に限定したものなのか、
という点については、
それほど確かなことが分かっていません。

今回の臨床研究は、
北欧のデンマーク、フィンランド、スウェーデンにおいて、
胃内視鏡検査で「非びらん性胃食道逆流症」と診断された、
トータル285811名の患者を、
31年を上限とする長期の観察を行って、
その間の食道腺癌発症のリスクを、
病気のない一般集団と比較検証しているものです。

その結果、
非びらん性胃食道逆流症の患者における食道腺癌の発症リスクは、
年間10万人当たり11.0件と算出され、
これは一般住民で算出された発症リスクと、
有意な差はありませんでした。
一方でびらん性の逆流性食道炎の患者における同様のリスクは、
年間10万人当たり31.0件で、
これは一般住民と比較して、
2.36倍(95%CI:2.17から2.57)有意に増加していました。

このように、
胃食道逆流症で食道癌のリスクが高くなるのは、
びらん性の逆流性食道炎に限定された現象で、
非びらん性胃食道逆流症においては、
そのリスクは一般と同等と、
そう考えて大きな誤りはないようです。

逆に言えば胃食道逆流症を疑わせる症状のある時は、
可能な限り胃内視鏡検査でのチェックを行い、
そのリスクの判定を行うことが重要であると言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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