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若年発症大腸癌を疑う症状は? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大腸癌の初期症状.jpg
Journal of the National Cancer Institute誌に、
2023年5月4日付で掲載された、
若年発症の大腸癌を疑う兆候についての論文です。

通常大腸癌は50歳以上の年齢層で増加すると報告されていて、
そのため現行の大腸癌のスクリーニングは、
世界的には50歳以上で施行されていることが殆どです。
一方で日本では厚労省の指針により、
40歳以上で市町村の大腸癌検診が施行されています。

ただ、世界的にも50歳未満での大腸癌の診断が、
増加しているという傾向があります。
アメリカの統計によると、
2011年から2016年の調査において、
年間2%ずつ若年発症大腸癌は増加していて、
2030年までには倍増すると試算されています。

そこでアメリカの専門部会では、
スクリーニングの推奨年齢を2018年から45歳以上に変更しました。

しかし、若年層の検診受診率は低く、
更に若年発症大腸癌の半数は45歳未満で発症しているので、
これだけでは若年発症大腸癌の対策として不充分です。

それでは日本のように対象年齢を40歳まで下げれば、
と思うところですが、
それでは有効性が実証されず、
コスパ的にも問題がある、
というのが欧米の考え方です。

そこで早期発症大腸癌に、
特徴的な症状が何かあれば、
そうした症状のある人のみを対象として、
スクリーニングを施行することで、
有効でコスパ的にも問題の少ない検診となるのではないか、
という考えが成立します。

今回の研究ではアメリカの医療保険のデータを活用して、
50歳未満で診断された早期発症大腸癌の事例、
トータル5075例を、
年齢などをマッチングさせたコントロールと比較して、
診断される3か月以前2年までの間に、
予め設定した腹痛などの17の症状のうち、
どれが最も早期発症大腸癌の診断と関連が深いかを、
比較検証しています。

その結果、
単独の兆候としては、
腹痛、肛門からの出血、下痢、鉄欠乏性貧血の4つが、
その後の大腸癌の診断と一定の関連があり、
複数あるほどそのリスクは高まる、
データが得られました。

具体的には、
上記4つのうち1つがあると、
何もない場合と比較して1.97倍(95%CI:1.80から2.15)、
2つあると3.66倍(95%CI:2.97から4.51)、
3つ以上あると6.96倍(95%CI:4.07から11.91)、
大腸癌診断のリスクは増加していました。

このように複数の兆候と、
若年発症大腸癌との間には一定の関連があり、
今後そうした兆候のある対象に絞って、
若年でも大腸癌のスクリーニングを行うという方法が、
議論される運びになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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