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若年発症癌増加の傾向について(アメリカの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
50歳未満の癌急増.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年8月16日付で掲載された、
若年発症の癌の疫学についての論文です。

例外として小児癌や血液系の癌などはありますが、
癌は基本的には中高年の病気と考えられています。

多くの癌は遺伝子の変異が、
経年的に積み重なって生じる性質があるので、
ある程度の長い期間を掛けて、
発生するものと考えられているからです。

そのため世界的には多くの癌検診(スクリーニング)は、
50歳以上の年齢層で施行されているのが実際です。

そして通常の癌と区別する意味で、
例外的に50歳未満で発症する癌を、
若年発症癌のように呼んでいます。

ところが…

1990年代以降、世界的に若年発症の癌が増加していて問題となっています。

今回の研究はアメリカにおいて、
国立癌研究所のデータを元に、
2010年から2019年の動向を調査しているものです。

その結果、
2010年から2019年の10年で、
毎年人口10万人当たりの年齢標準化癌罹患率は、
50歳未満で診断された癌では1年で0.28%増加していましたが、
50歳以上で診断された癌では0.87%低下していました。
つまり癌の発症は若年化しているというデータです。

2019年の若年発症癌で最も多かったのは乳癌ですが、
2010年から2019年の10年で最も増加していたのは、
消化器系の癌で、
人口10万人当たりの年齢標準化罹患率は、
1年で2.16%増加していると計算されました。
特に増加が著明であったのは、
虫垂癌で15.61%、肝内胆管癌で8.12%、膵臓癌2.53%の順でした。

このように今回のアメリカのデータにおいては、
この10年で若年発症の癌は毎年増加していて、
特に虫垂癌などの比較的診断の困難な消化器系の癌において、
その増加が顕著に認められました。

アメリカのみならず世界的に、
癌の発症年齢の低年齢化とその頻度分布が、
変化しつつあるのは確かなことで、
今後こうしたデータを元にして、
癌の予防戦略が現実に即した、
より精度の高いものになることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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