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高齢者の心臓カテーテル治療の方法とその予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
責任病変以外のカテーテル治療の有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年9月7日付で掲載された、
高齢者における心筋梗塞の治療戦略についての論文です。

急性心筋梗塞というのは、
心臓を栄養する冠動脈という血管が、
動脈硬化などを原因として狭窄し、
そこに血栓が詰まるなどして、
完全に狭窄部より先の血流が途絶した状態のことで、
通常急性心筋梗塞と診断された患者さんは、
速やかに専門施設で心臓カテーテル検査を行い、
途絶した部位の血流を、
再開させるような治療を行います。

特に高齢者の場合、
ある部位の血管が詰まった心筋梗塞を疑って検査を行い、
確かにその部位に高度の狭窄や閉塞はあるものの、
冠動脈の他の複数の部位にも、
将来閉塞の可能性があるような、
狭窄病変が見つかることがあります。
この場合、心筋梗塞の原因となっている病変のことを、
「責任病変」と呼んでいます。

このような多枝病変をどのように治療すれば良いのでしょうか?

高齢で治療のリスクもあるような患者さんの場合、
責任病変のみを治療して、
他の狭窄病変については、
保存的な治療で様子をみる、
というのが1つの考え方です。

もう1つの考え方は、
将来狭窄を来す可能性のあるような、
50%以上の狭窄のある病変については、
責任病変以外も漏れなくカテーテル治療を施行する、
という考え方です。

患者さんの予後という観点から見た時に、
そのどちらがより予後の改善に結び付いているのでしょうか?

今回の研究はイタリア、スペイン、ポーランドの複数の専門施設において、
75歳以上で急性心筋梗塞に罹患し、
カテーテル検査の結果多枝病変であった、
トータル1445名の患者をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は責任病変のみの血流再開の治療を施行し、
もう一方は責任病変以外の狭窄病変も全て治療して、
その1年後の時点での予後を比較検証しています。

その結果、
術後1年の時点での死亡、心筋梗塞の再発、脳梗塞、
心臓カテーテル治療の施行を併せたリスクは、
責任病変のみ施行群の21.0%に発症したのに対して、
完全治療群では15.7%の発症に留まっていて、
多枝病変の全てを治療することは責任病変のみの治療と比較して、
そのリスクを27%(95%CI:0.57から0.93)有意に低下させていました。
両群の合併症の発症には有意な差はありませんでした。

このように、
リスクの高い高齢者においては、
多枝病変の全てを治療する治療戦略の方が、
責任病変のみの治療に留める戦略よりも、
1年後の予後においては優れていることが確認されました。

今後の心臓カテーテル治療の施行において、
非常に参考になる知見であると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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