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「クロール-凶暴領域-」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
クロール.jpg
才人サム・ライミが製作に携わった、
サスペンスホラー映画を観て来ました。

これはまあ、真剣に観る感じの映画ではなく、
B級以下の娯楽作ですが、
なかなかこういうものを大スクリーンで観るという機会はないので、
このタイプの映画は機会があれば足を運ぶようにしています。

監督はスタイリッシュなスリラーを得意とする、
アレクサンドル・アジャで、
「ルイの9番目の人生」という映画は観ましたが、
内容は正直詰まらなかったものの、
監督のスタイリッシュなセンスには好印象でした。

今回の作品は巨大ハリケーン直撃の最中に、
父親を探していた大学の水泳選手の娘が、
ワニ園から逃亡して繁殖した巨大なワニの群れに襲われる、
というもので、
ジョーズのバリエーションである巨大ワニと、
ハリケーンによる暴風雨と河川の氾濫、
という災害の恐怖を、
同時に組み合わせたというアイデアがなかなか面白く、
上映時間は87分という最近ではあまりない短さの中に、
次々と見せ場を盛り込んだ脚色も悪くありません。

アジャ監督の演出も、
オープニングのスタイリッシュな感じが、
まず観客を引き込んで、
1つの場所に閉じ込められた場面が長いので、
単調になりやすいところを、
多角的な画面構成で変化を付け、
ラストまで緩みなく描ききったところがなかなかです。

CGを含む特殊効果もなかなか良く出来ていて、
残酷描写やパニック描写、ショッカー演出なども、
下品になりすぎるところがなく、
ハリケーンのスケール感もまずまずでした。

物語には特に意外性のあるような展開はなく、
出て来る怪物もただのワニなので、
その点は矢張り物足りなさはあるのですが、
この作品としては、ここに更に変な怪物などが登場すれば、
台無しであったことは間違いがありませんから、
この作品単独で言えば正解であったのだと思います。

日本公開は10月11日で、
翌12日には巨大台風により甚大な被害がありましたから、
かなり微妙なタイミングではありました。
しかし、それほど話題にならないB級映画だったので、
特に注目もされなかったのは幸いでした。

ただ、ハリケーンによる堤防の決壊と浸水などが、
リアルに描写されていますから、
台風の被害に遭われたような方には、
決してお薦めは出来ない映画です。

そんな訳で、
こうしたB級やC級のホラーやサスペンスの好きな方であれば、
「なかなかの拾いものですよ」とお薦め出来る作品です。

大作映画のように思われて鑑賞すればガッカリします。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「スペシャルアクターズ」(上田慎一郎監督) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
スペシャルアクターズ.jpg
2018年の邦画一番の話題となった、
「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督が、
オリジナル長編劇映画の第二作を発表しました。

そのロードショーに足を運びました。

「カメラを止めるな!」は、
映像的には如何にもチープなアマチュア映画でありながら、
その斬新な構成と意外に緻密な仕掛けで、
多くの映画ファンを驚かせました。

元ネタは小劇場では比較的お馴染みの趣向で、
ヒット後にパクリ疑惑も世間を賑わしました。
その真偽は分かりませんが、
この映画の本質が、
小劇場演劇を巧みに映像化したものであることは、
間違いがありません。

それでは2作目は一体何をやってくれるのか…
ということになるのですが、
今回はミステリーでお馴染みのコンゲームの世界で、
俳優の集団がその演技を武器にして、
怪しげな新興宗教の組織と対決する、
というようなお話になっています。

これは元ネタはミステリー小説ですが、
映画にもなりやすいテーマなので、
昔から映画の作例も多くあります。
従って、それほど目新しいという感じはありません。
ラストにはちょっとしたひねりが用意されていますが、
これも定番なのでさほどビックリするようなものではありません。

従って、
「カメラを止めるな!」を再び、
ということで期待をすると、
ガッカリ、という感じは否めません。

ただ、上田監督としては何とか土俵際で踏みとどまった、
と言うか、かなり頑張った作品であることは伝わって来ます。

編集や絵作りなど技術的には、
前作とはくらべものにならないくらい高度になっていますが、
それでいて自主製作映画のような感じを、
随所に漂わせて、意図的にチープに演出しています。
素人すれすれくらいの役者さんしか出演させず、
その存在自体の「あやうさ」のようなものが、
映画全体のトーンとなって、
それがラストになってみると、
映画のテーマそのものでもある、
というのはなかなか考え抜かれた趣向です。

前作はあまり考えずに勢いで切り抜けた、
という感じがありましたが、
今回は確実に計算した上で、
こうした結果を出しています。

ただ、素材がどうしても平凡で古めかしいので、
前作のような新鮮な驚きを、
観客に与えるには至っておらず、
今回は「ちょっとした拾い物」というレベルを、
超えてはいなかったように感じました。

多分主役の、緊張すると失神する青年役の役者さんが、
もう少し化けてくれるとより良かったと思いますが、
プロには決してない雰囲気はあるものの、
この役者さん自体がある枠組みを超える個性を発揮できなかった、
という辺りに、今回の作品の物足りなさはありそうです。

そんな訳で、
ややガッカリではありましたが、
期待を大きく持たなければまずまず面白く、
上田監督の次回作にも、
期待を持たせるような水準には達していたと思います。

自主映画に抵抗のない映画ファンであれば、
観て悪くない作品だと思います。
プロの映画を期待するとガッカリします。
また、「カメラを止めるな!」の再来を期待しても、
その期待は叶えられることはありません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「蜜蜂と遠雷」(2019年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ミツバチと遠雷.jpg
ピアノコンクールを題材にした、
恩田陸さんの直木賞受賞作のベストセラーを、
「愚行録」の石川慶監督が実写映画化しました。

原作を読んでから映画館に足を運びました。

恩田陸さんは何冊か読んでいますが、
伊坂幸太郎さんと一緒で、
僕はあまり相性が良くありません。

恩田さんに関しては人間の捉え方に関して、
とても性善説に立っているような感じがあって、
それがどうも違和感があって読み進むのがつらくなります。

ただ、今回の「蜜蜂と遠雷」はピアノコンクールという、
通常あまり小説には馴染まないような舞台を選び、
徹底的に音楽を文章化する、
という試みが面白くて、
恩田さんの作品としてはかなり面白く読み終えることが出来ました。
ただ、出て来る人が皆同じようなレベルの「善人」なので、
どうしても平板な感じにはなりますし、
何か如何にも素人めいた感想を、
音楽のプロが思ったり発言するような場面が多くて、
それにもちょっと違和感がありました。

演奏の心理描写も最初は面白いのですが、
予選の1次審査、2次審査、本選と、
同じような描写が延々と続く上に、
結局皆同じようなことを言っているのでダレて来ます。
最後はようやく読み切った、という感じでした。

今回の映画版はほぼ原作通りの内容ですが、
4人の主な登場人物のうち、
松岡茉優さん演じる一度引退した天才少女に物語を絞って、
長大な原作を2時間の尺に収めた台本が素晴らしく、
石川慶監督の映像センスも、
洗面所の鏡越しに女性2人を対話させたり、
ホールのガラスの奥に大雨を見せながら、
その前で静かなやり取りをさせたりと、
随所に技巧的な冴えを見せつつ、
原作にない本選前の指揮者とのトラブルを入れて盛り上げ、
ラストは松岡茉優さんの「顔芸」で、
シンプルな演奏シーンをクライマックスにしてしまったのも見事でした。

特に優れていたのは監督の手による台本で、
原作は最初の4人のコンクール前のエピソードが良いので、
どうしてもそこから始めたくなるところ、
それをバッサリカットして、
一次予選のしかも最後の演奏者である松岡さんが、
演奏に向かうところから始め、
演奏者のピアノの音色すら、
二次予選の場面まで聞かせない、
というオープニングがとても鮮やかで、
それ以降も台詞は最小限度で語らせて、
しかも映像と言葉に常に別の情報を表現させ、
コンパクトかつ重層的にまとめ上げた手腕が見事でした。
松岡さんの復帰をクライマックスにして、
原作にない幾つかの挿話を入れつつ、
そこに向けて盛り上げる作劇も冴えていました。

原作の恩田さんが感心した、
というのは決して嘘ではないと思います。
極めて完成度の高い台本です。

ただ、松岡さんをメインにした結果として、
タイトルの蜜蜂や遠雷の意味が、
ほとんど分からなくなってしまったのは、
原作でもタイトルの意味はやや不明なので、
仕方のないことなのですが、
少し誤算ではあったと思います。
また、本選の演奏中に、
審査員達が言葉を交わすというのも、
エチケット違反でとてもとてもあり得ない場面でした。
これは映画文法的には、
大事な台詞を大事な演奏と重ねているので、
正しい技法なのですが、
やってはいけないことだと思います。

キャストでは松岡さんが何と言っても抜群で、
とても上手く化けた、という感じです。
ピアノの天才少女のようにしか見えません。
唯一手があまりお綺麗ではないので、
とてもピアニストの手には見えず、
吹き替えとの違和感がありまくり、
という点のみが残念でした。
松岡さんは当代若手の演技派筆頭の1人ですが、
今回の演技はこれまででも、
最高と言って過言ではないと思います。

凄いですよ。

他のキャストも皆過不足のない熱演で、
特に出番はあまり多くないものの、
松坂桃李さんはいぶし銀の芝居でした。

今回の映画はただ、
肝心の音楽があまり良くなかったと感じました。

せっかく演奏のピアノの音色を、
かなり後まで聞かせていないのに、
効果音としては最初から結構ピアノの音を使っています。
これはよくないですよ。
ピアノの音色が1つの主役なのですから、
理想的にはそれ以外の音効は、
入れない方が良かったのではないでしょうか。
またプロのピアニストの演奏も、
ほとんどが叩きつけるような強い音ばかりで、
4人のキャストの音色の違いも感じられず、
ピアノの繊細さが感じられなかったのが残念でした。
オーケストラも吹き替えでリアリティがなかったですよね。
あれはせっかくだから、
本物のオケに現場で演奏してもらって、
本物の演奏家の顔を撮って欲しかったですね。
まあ予算の問題なのかも知れません。

監督は音楽はあまり得意分野ではないのかしら、
というようにちょっと感じました。

いずれにしても、
石川慶監督の手腕がいかんなく発揮された作品で、
キャストの演技も良く、
音楽など不満はあるものの、
今年公開された邦画では屈指の力作であることは間違いないと思います。

映画館はいびきの合唱も響いていましたから、
全ての方に楽しめる映画ではないかも知れませんが、
むしろすれた映画ファンにこそ見て欲しい力作です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「見えない目撃者」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
見えない目撃者.jpg
吉岡里帆さん主演のスリラー映画を、
ネットなどの評判も悪くなかったので観て来ました。

これは「ブラインド」という韓国映画が元になっているのですが、
製作にオリジナルの韓国のスタッフも関わっていて、
リメイクというより日韓合作の別ヴァージョン、
という方が近い感じの作品です。

交通事故で失明した警察官の女性が、
事件の「目撃者」となったことから、
猟奇殺人犯に狙われる、というプロットは同じですが、
その事件自体の内容も、
他の設定も原作とは異なっています。

ちょっと期待をしたのですが、
実際にはテレビの2時間ドラマと同レベルのクオリティで、
あまり映画として評価出来るような作品ではありませんでした。
見えない視野をCGで表現したりとか、
安っぽくてガッカリしました。

猟奇的な描写が、
テレビと比べれば過激にはなっていますが、
それも想定内の感じで、
別にビックリするようなものではありません。

人物描写も平板ですし、
犯人の設定などはオリジナルと異なっているのですが、
あまり意図のはっきりしない中途半端なものになっていました。

面白かったのは、
スマホを目の代わりに利用して、
犯人と追いかけっこをする場面ですが、
これは原作にある趣向なので、
褒めるべきは原作です。

主人公が盲目のサスペンスというと、
「暗くなるまで待って」が有名で、
元はアイリッシュの短編ですが、
その古典的な趣向を、
スマホを使ってリニューアルしているのが、
今風で斬新な趣向です。

吉岡里帆さんが演技派であることは、
この作品の芝居でも明確で、
視覚障害もとてもリアルに表現しています。
ラストのみ目が見えているとしか思えない表情をするのですが、
あれは何か狙いなのでしょうか?
よく分かりませんでした。
彼女はあまり映画には恵まれていなくて、
映画での代表作があまりないことが悔やまれます。
誰かもっと演技派の彼女に良い舞台を用意させてくれないでしょうか?

初舞台がアマチュアの時の唐先生の「吸血姫」のさと子なんでしょ。
見たかったですよね、吉岡さんのさと子。
「狂える引っ越し看護婦」
最高ですよね。
ラストの台詞、どんな顔をして言ったのかな?
絶対良かったと思います。

脇では田口トモロヲさんが、
円熟した芝居を見せていました。
素敵です。

そんな訳でついつい騙されて観てしまいました。

これならテレビのサスペンスでいいな。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごしください。

石原がお送りしました。
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「メランコリック」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
メランコリック.jpg
低予算のインディーズ映画で、
2018年の東京国際映画祭で監督賞(日本映画スプラッシュ部門)を獲得し、
昨年の「カメラを止めるな!」の再来と注目された、
「メランコリック」をアップリンク渋谷で鑑賞しました。

これはまあ如何にも低予算という感じの映画ですが、
絵作り自体はなかなか堂々としていて、
シネスコの横長画面の使い方も上手いと思います。
つまり、低予算ですが劇場公開用映画として、
一定の水準に達しています。

役者さんは如何にもアマチュアという感じの方のみで、
主役級の2人は作り手も兼ねているので、
インディーズホラーの傑作「死霊のはらわた」を、
彷彿とさせるようなところがあります。
ただ、あの作品のように、
稚拙ではあっても従来の同ジャンルの映画を、
吹き飛ばすようなインパクトがあるかと言うと、
そこまでのレベルではないように感じました。

「カメラを止めるな!」も役者さんのレベルや演出に関しては、
正直アマチュアレベルだったのですが、
観客の予想の遥かに上を行くような、
作り込みの鮮やかさで度肝を抜きました。

それを比較対象として考えると、
この映画にも意外な展開や他にないようなこだわり、
インディーズならではの破天荒さはあるのですが、
それが観客の想像を大きく超えていたり、
度肝を抜くというレベルには達していなかった、
というように思います。

「カメラを止めるな!」は小劇場演劇の趣向を、
映画に撮り込んだところに新しさがあったのですが、
この映画は敢くまで、
「映画好きが作ったマニアックな映画」
という枠を超えていない点に限界があったように感じました。

内容的には東大は出たけれど、
定職にも付かないでブラブラしている、
昔の高等遊民といった感じの無気力な若者が、
たまたま銭湯のバイトに入ったところから、
本来無縁な筈のバイオレンスでノワール的な世界に、
足を踏み入れることになります。
その銭湯は暴力団の殺しの後始末に使われていたのです。

深夜の銭湯が全く別の場所に変貌する、
という趣向はなかなか面白く、
実際の銭湯を使ったリアルな感じもグットです。
ただ、役者さんは皆素人レベルなので、
闇の世界の恐ろしさのようなものは、
あまり伝わって来ないのが弱いところです。
また、営業時間の銭湯の平和的な情景も、
もっと描かれないと面白くないと思うのですが、
この映画は低予算なのでエキストラが使えず、
撮影も銭湯が営業していない時間のみで行われているので、
そうした賑やかな感じに乏しいのも、
作品を単調にしていたように思いました。

ラストは通常の発想だと、
夢オチにしてしまいがちなところですが、
現実でありながら強引にハッピーエンド(それも束の間の)
にしているのは、
これは矢張り今の映画だな、
という気分は感じました。

総じてマニア向けの作品で、
一般の観客にお勧め出来るような水準ではありませんでした。

宝探し的なご興味の方にのみお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「真実」(是枝裕和監督) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

台風直撃ということですので、
今のところ予定通りの診療は行う予定ですが、
荒天での無理なご受診はされないように、
ご注意をお願いします。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
真実.jpg
是枝裕和監督がフランス・日本合作の映画を作りました。
舞台はフランスで、言語はフランス語と英語、
キャストも全員が海外キャストです。

これまでにもフランスで評価の高かった、
大島渚監督や黒沢清監督などは、
同様のフランス映画を作りましたが、
いずれも頑張ってはいるものの、
何処か居心地の悪そうな、
何処かギクシャクしているような作品でした。

その点今回の是枝作品は、
かなり立派にフランス映画として成立していて、
それでいて是枝監督のカラーも、
しっかり出ている家族映画にもなっていました。

これはなかなか出来ることではありません。

この映画の主人公は、
大女優役のカトリーヌ・ドヌーブで、
アメリカ在住の脚本家の娘がジュリエット・ビノシュ、
その夫でテレビ俳優にイーサン・ホークと、
全体にやや疲れた感じはするものの、
かなり豪華版の世界的なキャストです。

ほぼほぼカトリーヌ・ドヌーブのための映画、
という趣きで、
ドヌーブは彼女自身を重ね併せたような大女優を演じ、
彼女が自分に都合の良いような自伝を出版したことから、
それが娘との葛藤を生み、
彼女が出演中のSFテイストの映画の撮影風景とも、
重ね合わされて行きます。

是枝監督の作品としては「海よりも深く」に似ています。

死者を含めた家族の心理劇で、
是枝作品としては内容はとても分かり易く、
ラストも「万引き家族」のような「なで切り型」ではなく、
庭を歩く復活した家族像を、
俯瞰で捉えたカットで極めて穏当に終わります。

カトリーヌ・ドヌーブは、
演技を見ていても、
自由気ままにやっているのだろうな、
という気分屋さんの素顔が透けて見えるような感じで、
多分現場では是枝監督も、
相当苦労されたのではないでしょうか?
無雑作な芝居もあるのですが、
それでもその存在感や随所に見せる深い味わいはさすがで、
これだけの芝居を引き出した、
是枝監督の手腕には素直に感心させられます。

立派な作品ではあるものの、
やや「借りて来た猫」という印象は拭えない映画で、
是枝監督の本領発揮とは言えないのですが、
他流試合でここまでの作品をものしたことはさすがで、
今後の作品にはより期待が持てそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ジョーカー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジョーカー.jpg
バットマンのコミカルな悪役ジョーカーを、
70年代のアメリカニューシネマのスタイルで、
ひたすら救いなく暗い物語として再構築した、
話題の映画に足を運びました。

これはね、映像のスタイルからタイトルやエンドクレジットまで、
もろアメリカンニューシネマをなぞった映画で、
ほぼほぼ「タクシードライバー」です。
かつての「タクシードライバー」の主役であった、
ロバート・デ・ニーロを、
過去の笑いの帝王として登場させ、
彼を○○することにより、
新しい悪の象徴が誕生する、という物語になっています。

体裁は「バットマン」の前日談で、
ニューヨークの並行世界のような、
ゴッサムシティが登場し、
1970年代から80年代というテイストで、
少年期のブルース・ウェイン(バットマン)が登場します。

ジョーカーを演じたホアキン・フェニックスの怪演は、
好き嫌いはともかくかなりのインパクトがありますし、
彼がデニーロと対決する場面は、
色々な意味で象徴的であり衝撃的です。

バックグラウンドには色々と仕掛けがありますが、
冗談で渡された拳銃が不意に火を噴くところから、
社会の阻害された無垢な善人が、
悪の権化に変貌してゆくというのも、
犯罪映画の典型的なパターンで、
ワンカットで不意打ちのように銃が火を噴いて相手が倒れるのは、
黒沢清監督の映画も彷彿とさせます。
これを元をたどれば、
70年代のB級アクション映画のスタイルです。

このようにかなり意図的にノスタルジックで、
過去の再構築的な犯罪映画ですが、
問題はそれがあまりバットマンの世界と溶け合ってはいないことで、
ジョーカーの扮装にしても、
ウェインの大邸宅にしても、
そうしたものが登場する途端に、
画面は噓臭くなってしまいます。

この古典的な暗黒犯罪映画と、
DCコミックの世界の水と油の融合を、
「これもありだね」と思うか、
「いくら何でも無理があるじゃん」と思うかが、
この映画を容認出来るかどうかの分かれ目で、
個人的には僕は駄目でした。

何か珍妙な映画ですね。

「タクシードライバー」には、
何が起こるか分からないようなショックがあるでしょ。
予備知識なく観ていると、
ラストにあんな風な過激な描写になるとは想像出来ないので、
それが面白いんですよね。
今回の「ジョーカー」は話は同じなのですが、
最初から「悪の誕生」という前提が出来てしまっているので、
話に意外性や意外な展開が皆無でしょ。
それはもう仕方のないことなのですが、
矢張り映画としてはガッカリとは思うのです。

それから、笑いの世界を描いていながら、
スタンダップコメディの世界とか、
あまりそれらしく描かれていないですよね。
せっかくコメディ畑の監督を起用して、
おそらくそうした狙いが当初はあったのではないかと思うのですが、
それが全く活かされていないのが、
これも残念に感じました。
そこは主役の役作りのせいかも知れないですね。
彼の演技のトーンと、
笑いの世界は正反対のように思えるからです。

そんな訳で個人的にはあまり乗れませんでした。

ただ、完成度の高い映画ではあると思いますし、
好きな方は好きなタイプの映画ではないかと思います。

確実に万人向けではなく、
絶賛の著名人のコメントの8割くらいは、
多分「言わされコメント」なので、
その点は注意の上お出かけ下さい。
「とても仰々しくリメイクされたタクシードライバー」
というのがおそらくこの映画の本質です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ホテル・ムンバイ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ホテル・ムンバイ.jpg
2008年のインドの同時多発テロ事件を扱った、
オーストラリアとインド、アメリカの合作映画を観て来ました。

監督はオーストラリアの人で、
キャストは多国籍ですが、
ほぼインドで撮影され、
英語とヒンドゥー語の入り混じる、
とてもリアルな仕上がりになっています。

2008年の実話がモデルで、
イスラムの過激派の指示により、
10代くらいのテロリストがムンバイの町に送り込まれ、
駅などの街の中心地で無差別に銃を乱射し爆破を繰り返した後で、
高級ホテルに集結してホテルの客やスタッフを、
こちらも徹底的に無差別に殺戮してゆきます。

主人公はインド人のホテルマンで、
彼ばかりではなくテロリストを含めた多視点で、
この壮絶で悲惨なサバイバルが再現されます。

スタイルはハリウッドのアクション映画に近いような感じで、
ほぼ「ダイ・ハード」なのですが、
主人公のブルース・ウィリスのいない「ダイ・ハード」です。
後半は現実の映像とドラマの入り混じる、
昔のオリバー・ストーンみたいなタッチになります。

これは相当怖いです。

作りはアクション映画なのですが、
内容はリアリズムなのですよね。
必死で逃げるのですが、子供のような兵士に、
無雑作にバンバン殺されます。

僕達はもう昔観ていたアクション映画と同じ世界に生きていて、
いつ殺されるのかも分からない、という事実を、
とてもリアルに突き付けられます。
それでいて昔の映画のようなヒーローは何処にもいません。
いつ来るのかも分からない政府の特殊部隊を期待して、
必死に隠れ、逃げる以外にはないのです。

怖いですよね。

こんな身も蓋もないような映画は、
昔は成立しなかったと思うんですよね。

それを成立させてしまったのが凄いし、
今という時代はそこまで来てしまったのだな、
という気分にもなります。

ラストまで観ると、
主人公は矢張り多くのホテルマンで、
彼らが客を守ろうと必死に戦った、
ということが主眼になっていることが分かります。

ただ、それを殊更にフィクションにして盛り上げていない、
という点がこの映画の1つの美点で、
人間というのは結局与えられた役柄を生きていて、
それがテロリストであればそうなり、
「お客様が神様」であればそうなり、
「ホテルの従業員を見下す金持ち」であればそうなる、
というだけの話のようにも思えます。
命も確かに惜しいのだけれど、
子供のために自分を犠牲にしよう、
という気持ちにもなる一方、
家族がいるから、逃げてしまおう、
という気持ちにもなる訳です。
自己犠牲というのは1つの人間の美点であるけれど、
それを美化し過ぎるとテロリストにむしろ近づいてしまう。
そんな怖さも同時に感じました。

こうした多視点の魅力、
善悪や正義や人間はどうあるべき、
というような事項を1つに固めないで提示する、
というところがこの映画の素晴らしさだと思いますが、
その一方でピントのはっきりしない、
何かすっきりしない映画になっていることもまた事実です。
この辺は難しいところだと思います。

ディテールとしては、
テロリストを遠隔指示している指導者が、
CNNを見ていて、
閉じ込められた客からの情報などがテレビで流れてしまうので、
それで脱出作戦が見抜かれてしまう、
という件などは、
現代ならではの情報の怖さで印象に残りました。

いずれにしても現代の恐怖と、
その中での人間の本質をリアルに活写した力作で、
今年見逃せない1本であることは間違いがありません。

お時間のある方は是非。

怖いですよ。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「記憶にございません!」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
記憶にございません.jpg
三谷幸喜さんの新作映画「記憶にございません!」を観て来ました。

これはね、
どうせ詰まらないだろうな、という、
かなり低い期待で観に行って、
始まってみると期待の通りと言うのか、
格別笑えるという訳でもない、
低レベルの政治ギャグみたいなものが続くので、
こんな感じか…と、目を半分開くような感じで見ていたのですが、
ラストになってある仕掛が明らかになると、
なるほどそういうことなのね、
とそのテーマ性に素直に感銘を受け、
仕掛というか筋のひねり加減が、
決してただのどんでん返しのようなものではなくて、
僕たちがそれまで先入観で見ていたものを、
問い直されるような気分になるのが鮮やかでした。

なかなかやるじゃん。

素直にそう思えた一作で、
それが分かるきっかけが、
小学生の時の作文というのも面白く、
ラストの台詞の複雑な意味合いも、
三谷さんの真骨頂と言って良いものでした。

テーマは要するに「人間は変われる!」ということなのですが、
それをこうしたストーリーの中で表現して、
老若男女を問わずそれぞれのレベルで受け止められるような、
心に響く作品に仕上げるというのは、
なかなか通常の創作者に出来ることではないと思います。

しかも、その作品を、
実際に試写会で現職の総理大臣に見せているでしょ。
これは凄いですよね。
力がなければ出来ることではないですし、
こうして人間の心に1つの爪痕を残すというのが、
本当の意味で藝術家がやらなくてはいけないことではないかしら。

三谷さん本当に凄いと思います。

ただ、作品としては、
いつものメンバーがいつものお芝居をして、
いつものクスグリをしているけれど笑えない、
という感じはありますね。

今回予備知識なく見たので、
何人かどうしても誰なのか分からないようなキャストがあり、
それがエンドクレジットで明かされて、
「よく化けたのね」と感心するようなお楽しみはありました。

でも、それだけがお楽しみじゃね、という気はしました。

作品の舞台はちょっとレトロな日本で、
現代とは言っていないのがミソです。
今は日本の立ち位置も微妙で、
地勢的に食うか食われるかというところがあり、
政治の世界を舞台に取って、
日本の中だけで面白おかしく描く、
というのは難しいというか、
おそらくフィクションとしては不可能ですよね。

その辺の配慮がこうした設定につながったのかな、
という気はします。
これは仕方がないですね。

そんな訳で、
個人的には三谷幸喜さんの映画としては、
最良と思える1本で、
いつもの不満はいつも通りにあるのですが、
そのテーマ性とある種の心意気のようなもの、
そして何より1人の藝術家としての矜持のようなものに、
とても感銘を受けた作品でした。

面白さは保証できません。
ただ、今見る価値のある映画であることは断言出来ます。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ダンスウィズミー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら、
ダンスウィズミー.jpg
娯楽映画の名人矢口史靖監督の新作が、
今ロードショー公開されています。

多分「ラ・ラ・ランド」が発想の原点と思われますが、
等身大の人間味のあるミュージカルを、
これまでにない切り口で娯楽映画にしよう、
というような方向性の作品です。

よくミュージカル映画の悪口として、
「普通にお芝居をしているのに、急に歌ったり踊ったりするのは、変だよね」
というパターン化された発言がありますが、
それを逆手に取って、
過去にミュージカルへのトラウマのある主人公が、
催眠術によって、
「音楽が聞こえると、どこでもいつでも歌って踊り出す」
という状態になり、
そのために人生の危機が訪れるので、
催眠術を解いてもらおうと、
借金で姿をくらましている催眠術師を追いかけて、
全国を旅するというロードムービーにしています。

主人公は三吉彩花さん演じる若いOLなので、
女性主人公の自分探しという定番の女性映画の要素に、
楽しいミュージカルの要素と、
これも定番のロードムービーの要素を、
一緒にしてしまえばヒットするだろう、
というそれだけ聞いても、
ちょっと安易だな、大丈夫かしら、
と思ってしまうような企画です。

観た感想としては、
予想をはるかに下回る詰まらなさで、
今年一番と言っていいくらい、
落胆して劇場を後にしました。

ネットで良い感想をいくつか読んだので見ることにしたのですが、
…騙されました。
いわゆるステマであったようです。

勿論個人的感想ですので、
面白かったと思われる方もあれば、
意外に悪くなかった、と思われる方もあるかと思います。

個人的な感想ですのでご容赦下さい。

以下少し悪口になります。
ご不快な方は飛ばして下さい。

これね、そもそも企画として成立していないと思うのです。

催眠術で音楽が聞こえると歌って踊るんでしょ。
でも周囲の人は催眠術には掛かっていないので、
おそらく呆れて見ているだけになる筈です。
それじゃミュージカルにならないので、
最初の2つくらいの場面については、
周囲の人も歌って踊るという、
一生の「妄想シーン」にしているのです。
ただ、妄想ではこれまでのミュージカル映画と変わらないので、
音楽が終わってみると、
みんなは呆れていて、辺りは散らかり放題、
という感じになっています。
でも、結局実際に行われたことはどうだったのかしら。
その辺が胡麻化されているのでよく分かりません。

主人公はレストランで歌って踊った時に、
シャンデリアや高価な食器やワインなどを、
大量に破壊してしまうので、
それで一文無しになってしまう、という設定です。

そこまで破壊的な言動をしているのに、
その後の歌唱シーンは至って穏当で、
ストリートミュージシャンとキャンディーズを歌うところなど、
別に普通の人の歌や踊りと何ら変わるところはありません。

こうした部分を見ると、
凶悪な催眠術で歌わされているというより、
もっと周囲を理解しつつ理性を持って歌っているとしか、
思えないんですよね。

催眠術による歌と踊りというのが、
どういうものなのか、
ただ、普通に歌って踊るだけなのか、
それとも「ジキルとハイド」のように、
別人格が浮かび上がって、
秘められていた力が解放されて、
超人的な身体能力を発揮するものなのか、
その辺りも不明です。

レストランの時はアクロバティックな大暴れをしているので、
超人的な能力が発揮されたようにも思います。
その一方でダンスも歌もお世辞にも上手いように見えませんし、
レストラン以外の場面では、
普通のカラオケか、それ以下のクオリティなので、
とても超人的とは思えません。

この辺りもまるで整合性がないのです。

実際ミュージカル映画という割には、
ミュージカルの場面は極めて少なく、
予告編で流れているのがほぼ全て、と言って、
言い過ぎではないくらいです。

後半のロードムービーの部分では、
もう設定自体をあきらめたのかしら、
と思ってしまうくらいです。

人間ドラマもかなりお寒い感じで、
ちょっと背伸びをして良い会社に入ったOL、
という設定ですが、
仕事や職場の描写にリアリティがないので、
ラストに主人公のする決断にも、
何ら説得力がありません。
やしろ優の役柄もありきたりですし、
「ウェディングベル」を歌って、
不実な男性の結婚式に殴り込むなど、
あまりに捻りのない設定には開いた口が塞がりませんでした。

総じてノスタルジックでベタな感じを売りにしているのですが、
そもそも日本にミュージカルの伝統などはなく、
仮にあるとすれば、
劇団四季と東宝ミュージカルでしょうから、
パロディにするならそうした部分に切り込むべきで、
今回題材になっているのは、
歌謡曲が全盛の時代の「歌謡ショー」ですよね。
歌謡ショーがテーマであるなら、
それをもっと前面に打ち出すべきではなかったのかな、
というように感じました。
今回の作品で描かれているミュージカル部分は、
歌謡ショーなのかミュージカルなのかが不明瞭で、
その点が一番の計算違いであったように思います。

多分企画の時点で迷走したのでしょうが、
設定が思いつきの域を出ないままに作品化され、
最後まであいまいなまま終わってしまった、
という作品であったように思います。

テレビで見る価値もないかな、というようには思いますが、
勿論三吉彩花さんのファンであれば、
必見とは思います。
でも、どこかのCMの三吉さんの方が、
正直100倍良かったですね。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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