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「沈黙のパレード」(2022年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
沈黙のパレード.jpg
東野圭吾さんのガリレオシリーズの長編「沈黙のパレード」が、
福山雅治さん主演のテレビドラマの映画版として、
今ロードショー公開されています。

これはまずまずだったと思います。

テレビドラマの映画化は、
他の局よりフジテレビのものが、
頭一つ抜けてクオリティが高いんですよね。
特にミステリーに関しては、
抜群という印象があります。

今回の作品も女刑事などの設定を除けば、
ほぼほぼ忠実に原作を映像化しているのですが、
よくもまああの複雑な原作を、
綺麗に2時間強にまとめたな、と感心しました。
唯一何だこりゃと思ったのは、
タイトルバックの変な踊りですが、
それを除けば文句のつけようがありません。

伏線も忠実に再現していて、
解決編で説明に元に戻るとことがあるのですが、
ちゃんと同じカットを使っているんですよね。
ちょっとした表情にも意味合いを残していて、
しかもとても分かり易く映像化しています。

ここまで本格ミステリーを忠実に映像化して、
しかも破綻なく分かり易く観客に伝えられるというのは、
かなり奇跡的と言って良いレベルの偉業で、
それだけで個人的にはこの作品は、
元は取ったという気分になりました。

ただ…
映画として抜群かと言うとそれはまた別の話です。

今回は原作がちょっと地味だったんですよね。
刊行当時非常に評価は高かったのですが、
僕の読後感としては今一つかな、
という印象を持ちました。
このシリーズは犯人のキャラの強烈さが、
1つの特徴であるのですが、
今回はキャラがかなり分散されている印象で、
そこまでの強烈さや凄味を感じない、
というところがあるんですね。
内容的にも「真夏の方程式」にかなり似通った部分があって、
映像化した場合に新味を感じにくい、
というきらいがあります。
主人公の湯川教授もキャラがかなり変わってきていて、
もう「新参者」とほぼ見分けがつかない感じでしょ。
その辺りにもシリーズの限界を感じました。

それからラストにお話しが2回ひっくり返るでしょ。
2回目のひねりがちょっと弱くて、
かなり無理矢理感があるんですね。
これは原作自体がそうなのですが、
その弱さが映像化されると、
余計目立ってしまった、という感がありました。

ですから今回は、
映画としては120%頑張った感じで、
忠実な映像化を実現したので、
却って原作のアラが目立ってしまった、
という感じの作品になっていたと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ヘルドッグス」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ヘルドッグス.jpg
原田眞人監督と岡田准一さんのコンビによるバイオレンスアクション映画が、
今ロードショー公開されています。

ヤクザ組織壊滅のために、
警官が身分を隠して潜入するというお話で、
「何を今更…」という感じは少しあるのですが、
昔は日本が本場であったヤクザ映画を、
世界標準で海外にも売れる作品として復活させたい、
という意欲と意図は強く感じました。

138分という上映時間ですが、
原田監督としては上手くまとめたな、という印象はあります。
本筋に入るまでの段取りが結構長いのですが、
見せ場を絞ってじっくり描くことで、
徐々に観客を引き込んでゆきます。
後半の交通整理はかなり難しかったと思うのですが、
それほどの破綻なくまとめ上げていて感心しました。

台詞が聞こえないのは原田監督の通常運転、
特に必要ない歌や踊りを挿入するのもいつもの悪い癖で、
今回もヤクザの秘書にオペラのアリアを歌わせたり、
告別式でヤクザが合唱したり、
変な動きの踊りがあったりするのはいつも通りですが、
比較的内容にはマッチしていて、
それほどヘンテコリンにはなっていなかったのは幸いでした。
原田さんの変な趣味と、
今回の作品世界は比較的マッチしていたのだと思います。

ただ、素材は極めて平凡で展開にも意外性はなく、
アクションや暴力描写を含めて、
それほどオリジナリティも感じないので、
メインキャストのファンでない方には、
やや辛い鑑賞になるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ブレット・トレイン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ブレット・トレイン.jpg
伊坂幸太郎さんの小説を原作に、
異世界のような日本を舞台にしたハリウッド映画が作られました。
主役はブラッド・ピットで、
ラストにサンドラ・ブロックが華を添え、
真田広之さんも見事な立ち回りを繰り広げます。

これはもうもろにタランティーノ、
という感じの映画なんですね。
どう考えてもインチキな日本を舞台に、
エンタメ列車のような極彩色の新幹線で、
個性豊かな殺し屋同士のバトルロワイアルが展開されます。

非常に軽快に物語は展開されますし、
個性豊かな殺し屋の面々の、
その生い立ちがドラマとしてババッと展開されるのも楽しく、
入り組んだ人間関係と物語が、
パズルのように組み合わされ、
絵解きされるのも爽快感があります。

ただ、タランティーノに特徴的な、
時間軸が錯綜するような妙味や、
ラストに残るある種のやるせなさのようなものは、
この作品には全くなく、
ラストはあっさりとしたハッピーエンドに帰着しますし、
キャラの変態度や偏執狂的な情熱も希薄です。

前半はとてもワクワクしながら観ていたのですが、
物語的にはそれほどの捻りはなく、
ラストも予定調和的に集束するので、
ちょっと拍子抜けという感じはありました。

キャストはいずれも非常に魅力的で、
アクションにも迫力があり、
適度な過激さも利いています。
何より懐メロ主体の音効や、
多くのサブカル的なガジェットが楽しく、
何度観ても楽しめる、
カルト的な魅力のある1作に仕上がっています。

こうした遊びに満ちた娯楽アクションのお好きな方なら、
文句なくお勧め出来る快作で、
頭を空にして楽しむのが吉だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「異動辞令は音楽隊!」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
異動辞令は音楽隊.jpg
「ミッドナイトスワン」の内田英治監督の、
今度は刑事ドラマとヒューマンドラマをミックスさせた新作映画が、
今ロードショー公開されています。

「ミッドナイトスワン」は印象的な作品でしたから、
これは是非と思っていたのですが、
もうすぐに公開は終わってしまいそうなので、
慌てて都合を付けて映画館に足を運びました。

これはかなり素晴らしいですよ。

「ミッドナイトスワン」はフランス映画的味わいでしたが、
今回の作品はしっかりベタな日本映画をやっていて、
日本映画全盛期の松竹人情映画的雰囲気と、
「Shall we ダンス?」的な周防映画の雰囲気がミックスされ、
しかもそれが随所で現代的にブラッシュアップされていて、
生き方を変えなければならない事態に陥った時に、
どう行動するべきかという、
古典的かつ現代的なテーマにも切り込んでいます。

オリジナルの脚本が本当に素晴らしい仕上がりで、
登場人物は多いのですがキャラが全て立っていて、
その絡め方が絶妙ですし、
ミステリーではないのですが伏線回収の完成度も高く、
これはもう充分世界水準の台本だと思います。

主人公の阿部寛演じる刑事は、
絵に描いたような叩き上げの暴力刑事で、
家庭も顧みずに仕事に執念を燃やして、
案の定妻には捨てられ、娘とも不和で、
上司にもへつらわず、部下は罵倒し、
当然の帰結として問題を起こして、
左遷をされてしまいます。

ここまでは、これまでに、
何度となく描かれて来た、
もう手垢の付きまくった設定です。

しかし、その左遷先が警察音楽隊というのが意表を付いていて、
そこでは殆ど兼務の警察官が、
嫌々音楽の練習をしているのですが、
そこで昔和太鼓の経験のある主人公は、
ドラマーとして練習を続けることに次第に喜びを見出し、
自分を変えようとするきっかけを見出すようになるのです。

前半は刑事ドラマとして始まり、
音楽隊に舞台が移ると、
今度は素人音楽隊の音楽群像ドラマが始まります。
ただ、環境は変わっても生きるということには違いがない、
ということが分かってくると、
どんな環境でも変わろうとする意思さえあれば人間は変われる、
というある意味これも手垢に塗れたメッセージが、
非常に説得力を持って観客の心に届くのです。

非常にクレヴァーな作劇だと思います。

ただ、勿論話はそこでは終わらずに、
前半の刑事ドラマの部分とその後の音楽群像ドラマの部分が、
最後になって綺麗に結びついて来るのですね。
この辺りも非常に冴えていて、
しっかり刑事ドラマとしてのクライマックスも見せつつ、
ラストは演奏会本番という、
定番の締め括りに至ります。

上映時間が119分。
これ、絶対に2時間は切る映画にする、
という強い意志で作られているんですね。
それでいて端折ったという感じはなく、
全てが十全に語られていて、
全ての登場人物に「しどころ」が用意されています。
台本、演出、編集、どれも高いレベルでないと、
こうした結果にはなりません。
映像は少しアンバートーンに沈んで美しく、
さりげないカットも非常に精緻に丹念に撮られています。

キャストも手練れが揃っていて、
主役の阿部寛は安定感のある芝居で良かったですし、
こうした人情劇には今欠かせない感じのする、
清野菜名さん、磯村勇斗さんの2人が、
それぞれ抜群の芝居をしています。
清野さんはこういう人情劇のサブが抜群にいいですね。

そんな訳でトータルに高い水準で完成された、
極めて日本映画的な人情劇で、
古い日本娯楽映画のお好きな方には、
これはもう絶対の贈り物です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジュラシックワールド.jpg
「ジュラシック・パーク」のシリーズ6作目で、
「ジュラシック・ワールド」3部作の完結編が、
今ロードショー公開されています。

もう終了の近いような雰囲気なので、
慌てて映画館に足を運びました。
通常スクリーンの吹き替え版での鑑賞です。

これはまあ、想定内という感じで、
今更遺伝子から再生された恐竜が出て来てもなあ、
という感じが抜けませんでした。
過去作の登場人物が出られる人は全員出る、
という感じなので、
祝祭的大団円という感じはあるのですが、
結局ラストは恐竜と人間とが上手く共存しましょう、
というだけのことですから、
怪獣映画のラストと一緒で、
まだまだ幾らでも続編は作れそうな感じです。
でも、また作ったところで然程ヒットはしないでしょうから、
これで打ち止めで良いのかなあ、という印象です。

僕はシリーズの6作のうち5作は映画館で観ています。
第1作は映画としてはそう大したことはなかったのですが、
CGで恐竜を再現するというのが、
当時としては画期的で、
そのころのCGというのは、
アニメの模造品程度の印象しかありませんでしたから、
それであのTレックスの完成度には、
文字通り観客は驚愕したのです。

2作目は前半が島で、後半が都会という、
「キング・コング」を意識した構成で、
ああ続編て、まあこんな感じね、
という印象しかありませんでした。
それで3作目は、もういいや、という感じでスキップしました。

新シリーズになった「ジュラシック・ワールド」は、
要するに第1作のリメイクに近いのですが、
技術は進歩していますし、3Dも全盛という感じの頃ですから、
イベント的な盛り上がりがありました。

次の「ジュラシック・ワールド 炎の王国」は、
個人的にはシリーズ一番のお気に入りで、
これ、前半は明らかに「怪獣総進撃」を意識していますよね。
怪獣島がおどろおどろしくて、
前半で派手に火山噴火で壊滅して、
後半は大富豪の屋敷での、
ゴシックホラーのRPGみたいな雰囲気になるんですね。
前半と後半をガラリと変えたのが成功で、
僕は両方の世界観が共に大好物だったので、
いいな、いいな、という感じで堪能しました。

今回は…

トータルには007みたいな感じなんですね。
巨大なバイオ企業が悪党で、
それと対決するお話になっていて、
狭い路地でのカーチェイスから、
世界を巡って後半はイタリアの秘密基地でしょ。
もろスパイアクションのパターンです。
そこに恐竜を絡めているんですが、
これだと恐竜が全くの添え物的扱いですよね。
目先を変えて失敗、という典型的なパターンなのですが、
じゃあ、どうすれば良かったのかと考えると、
正直やれることは皆やってしまって、
これしかやりようがなかった、
というのが実際ではなかったかと思います。

ただ、映像のクオリティは高いですし、
恐竜も「えっ、こんな大胆なフォルムの恐竜が本当にいたの?」
と驚くような新人がぞろぞろ登場しますし、
キャストも懐かしい顔ぶれが楽しそうに演じていますから、
過去作のファンであれば、
まずまず楽しめる内容には仕上がっていたと思います。

シリーズの過去作が好きな人のみお勧めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ジョーダン・ピール監督「ノープ」(ネタばれ注意) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ノープ.jpg
アリ・アスター監督と並んで、
世界のホラーを牽引する鬼才ジョーダン・ピール監督の新作が、
今ロードショー公開されています。

これまでの「ゲット・アウト」も「アス」も傑作で、
ブラックバーンの小説を思わせるような、
SFスリラーの世界が極めて僕好みで大好きなのですが、
製作に関わった昨年の「キャンディマン」は、
オヤオヤという感じのチープな内容だったので、
今回は期待半分不安半分という感じでの鑑賞となりました。

シャマラン監督も「シックスセンス」、「アンブレイカブル」と、
独特の世界観の力作を続けて期待したのですが、
エイリアンを扱った「サイン」が、
思わせぶりだけの失敗作でとてもガッカリしたのですね。
今回も何となく異星人ものみたいな予告ですし、
シャマランの二の舞になるのではないかしら、
という不安があったのです。

でも、さすがジョーダン・ピール、
今回もなかなかの力作で、
シャマランよりは数段格上であることは、
間違いないと感じました。

ただ、前作の「アス」が大傑作であったので、
どうしてもちょっと落ちる感じはあるのですね。
今回は前2作と比べると通常の娯楽大作という感じがあって、
その枠は崩さずに作られているので、
その点の物足りなさがあるんですね。
後半はパニック大作みたいな感じになりますしね。
そうなると、その割には大したことないな、
という印象をどうしても持ってしまうんですね。
パニック映画はスケール感の勝負ですから、
予算もそこまでではないと思いますし、
後半でボルテージが下がるという感じがあるのです。

ただ、それでも監督の凄みは充分感じられる仕上がりになっていて、
特に悪夢の正体が分かるまでの、
前半の不気味さと捉えどころのない感じは、
さすが、という思いがしてスクリーンに惹き付けられました。

映像表現もリアルでありながらシュールでもあって、
高い美意識を感じさせますし、
中途半端な真似事をしない唯一無二な感じが、
とても素晴らしいと思います。

以下少し内容に触れます。
この映画は予備知識なく観た方が絶対に良いので、
鑑賞予定の方は鑑賞後にお読み下さい。

これ、ベースは明らかに「ジョーズ」なんですね。
パニック映画を再構成した内容になっています。
ただ、そのベースに「動物を飼って芸を仕込む」という、
如何にも人間らしい行為、
それは差別意識や残酷さを多分に含んだ行為なのですが、
その行為の裏にある感情があるんですね。

これまでの2作でも、
差別や科学や宗教という、
人間ならではの行為の裏にある、
曖昧で不気味な物をテーマとしてきたジョーダン・ピールですが、
今回も動物を飼うという行為の中に、
そうした人間の本質的に持つ不気味さと残虐さのようなものを、
裏テーマとして描いているのです。

主人公は馬を飼って調教をしている黒人で、
他にアジア人の謎の男が、
かつてはテレビに出演していた類人猿が、
自分の意図を汲んで人殺しをしたのに味をしめ、
今は宇宙から飛来した謎の人食い生物を調教して、
馬を食べさせるショーをしているんですね。

しかし、類人猿が暴走したように、
結局人食い生物を調教することは出来ずに、
男は殺され、空飛ぶ人食い生物が暴走して村を襲うのです。

動物を調教するという行為の裏にある不気味さと差別感情を、
重層的に描くのが、
さすがジョーダン・ピールですよね。

暴力的な衝動も差別感情も、
ある意味とても人間らしい感情なんですね。
だから、口では「戦争反対!」とか「差別をなくせ!」と言っていても、
戦争も差別もなくならないのは当たり前で、
それは人間でなくなれ、と言っているのとかなり近いことで、
僕達が戦争のない世界や差別のない世界を想像すると、
何か無機的で人間味のない世界しかイメージ出来ないのもそのためなのです。

最初に類人猿の殺人を小出しに見せて、
怪物の体内をチラリと見せて、
それから急に何かが空から降って来て、
主人公の父親が殺される場面を見せるんですね。
後から繋がるお話の断片をバラバラに見せて、
それが全て別種の怖さを秘めているんですね。
上手いですよね。
「ジョーズ」の恐怖は海でしたが、
今回は空で、空は無防備でしょ、
いきなりコインが降って来て、
眼球を直撃して死に至るのです。

生理的な怖さを感じさせますし、
そうしたエピソードの裏に、
極めて人間らしい残酷な感情が潜んでいる、
というのがこの作品の面白さです。

恐怖の正体が明らかになると、
後半はパニック映画のパターンになるので、
正直少しありきたり感があります。
ただ、映像はクオリティが高く維持されていて、
最後まで緩みなく展開されるので、
まずはそう失望することなく、
最後まで鑑賞することが出来ました。

いずれにしても、
今年最も興奮して鑑賞した1本で、
ジョーダン・ピール監督の今後にも、
ますます目が離せなくなりました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「トップガン マーヴェリック」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
トップガン.jpg
1986年に公開された「トップガン」の、
36年ぶりの続編が今絶賛公開中です。

「トップガン」は僕が大学時代のヒット作で、
クラスメートは挙って観に行きましたし、
演劇部の僕の先輩は、
そのパロディを新人公演で上演していました。
そのくらい当時人気があった、
アメリカ映画らしいアメリカ映画でした。

ただ、僕はこういうのは割と苦手で、
その時には映画館に足を運びませんでした。

今回の続編は何と言うのか、
「アメリカ馬鹿一代」という感じの壮大なおバカ映画で、
「ランボー」と同じように、
超人的な主人公が、
「ならず者国家」の悪だくみを、
1人で基地ごと破壊して解決するというおバカ話です。

こういう映画は昔は沢山あったのですが、
今は殆どありません。
あまりにリアリティに欠けるという判断があるからで、
リアリティ度外視のアメコミ映画でも、
もっと複眼的で複雑な構造のお話を作っています。

これ、ベースは「スターウォーズ」なんですね。
それも最初の続編などない筈だった「スターウォーズ」。
そのデススター攻略のクライマックスを、
リアル化しているのです。
あのシンプルなお話、良かったですよね。
「スターウォーズ」も続編が作られる毎に構造はより複雑になって、
こういう単純なお話からは遠ざかったしまったのです。

今回の映画は「アメリカの身勝手な正義」などと、
非難されることは織り込んだ上で、
単純バカに徹した映画を、
湯水の如くお金を使って成立させているのです。

観る側の気持ちは正直複雑で、
「こんなものに素直に喜んでいいの?」という思いもありながら、
複雑な映画を単純に観るよりは、
単純な映画を複雑に観る方が、
映画の正しい観方であるような気もするのです。

いずれにしても今のところ今年を代表する娯楽映画の地位は、
揺るがないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ベイビー・ブローカー」(是枝裕和監督) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ベイビー・ブローカー.jpg
是枝裕和監督の新作の韓国映画で、
赤ちゃんを売買するブローカーを副業としている、
クリーニング店の男をソン・ガンホさんが演じ、
訳ありの女性や児童養護施設の子供などと、
得意の「疑似家族」となって旅をする話です。

「真実」でヨーロッパ映画、今度は韓国映画と、
海外での仕事が多い最近の是枝監督ですが、
「真実」も何かモヤモヤする感じの映画でしたが、
今回の「ベイビー・ブローカー」も、
確かに是枝監督らしい映画ではあるものの、
何かやり切れていないような、
モヤモヤする作品になっていました。

全体に山田洋二監督が昔作った家族物映画、
みたいなタッチなんですよね。
赤ちゃんが急に熱を出して、
でも身分を偽っているから病院に行けない、とか、
そっくりのパートがありましたよね。
それから観覧車の長回しとか、
勿論印象的な場面ではあって、さすがと思わなくもないのですが、
でも今更こんな手垢の付いたようなことをしなくても、
というようにはどうしても思ってしまいます。

赤ちゃん売り渡しの現場を押さえようとして、
女性2人組の刑事が追って来るんですね。
追われている女性は男を殺している訳ですし、
もっと緊迫感があっても良い筈ですが、
殆どそうしたものはないんですね。
刑事も女性に同情してしまったりもして、
大した犯罪とも思えないのに、
随分と時間を掛けておとり捜査みたいなことまでして、
どうにもリアリティを感じませんし、
コメディにしては笑えるところがありません。
後半はかなりグッタリしてしまいました。

トータルには「万引き家族」の劣化版という感じで、
新しい魅力はあまり感じませんでした。
多分監督もなかなかご苦労があったのだと推察しますが、
おそらくはやりたいことの、
半分程度しか出来ていなかったのではないかと、
そんな風にも感じました。

こういう欲求不満的な作品になるようであれば、
日本で新作を撮ってくれればいいのに、
というようには思いますが、
色々と事情はあるのだと思いますので、
どのような形であれ、
また是枝ワールドの新作を期待したいとは思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「神は見返りを求める」(ネタばれ注意) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
神は見返りを求める.jpg
昨年の「空白」の感銘と衝撃も記憶に新しい吉田恵輔監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
今回も監督のオリジナルの脚本です。

これは「空白」が大傑作なのでとても期待したのですが、
抜群に面白い映画ではあるものの、
監督自身迷いながら、手探りをしながら作っていった、
という感じがあって、
構成にも着地にもまだ揺らぎのようなものが強くあり、
吉田監督としてはまだ完成形とは言えない作品でした。

ただ、今年必見の映画の1本では間違いなくあると思います。

以下少しネタバレがありますので、
未見の方は鑑賞後にお読みください。

子供がなりたい職業の一位がユーチューバーという、
どう考えても正常とは思えない今の社会に、
真向から切り込んでいる意欲作で、
そこで翻弄され自滅する主人公を、
ムロツヨシさん演じる広告会社の中年サラリーマンと、
岸井ゆきのさん演じる新人ユーチューバーが演じて、
後半には心が凍り付くような衝撃的な展開が、
つるべ打ちのように観客を待っています。

テーマはかなり複雑で、
1つにはディストピアとしての、
それもやや間抜けなディストピアとしての、
現在日本を描くということ、
それから題名にもなっている、
見返りを求めない人間関係というものはあるのか、
見返りも代償も求めない愛情というものは、
ただの愚行に過ぎないのか、
という、昔から何度も問い直されている、
人間と愛情との関係を深堀するようなテーマ、
そして、現代がディストピアだとするなら、
アメコミ的な読み替えをして、
この世界を遊んでしまうことも出来るのでは、
という企みです。

他の方も言っているように、
この映画の構造は明らかに「ジョーカー」の影響を受けていて、
ムロツヨシさんがダークヒーローになる、
という余地は映画の最後まで残されているんですね。
ただ、じゃあそうなるのか、と言うと、
映画の中ではそうはなっていなくて、
作り手の躊躇いが、
そこには見え隠れしているような気がするのです。

この映画はそうした異なる3つのテーマを追求しながら、
そのどれかに特化する、ということをしていないのですね。
それがこの映画のやや物足りなく感じる部分です。
昨年の「空白」では、
ちょっとベタな感じはしましたが、
主人公達が新しい人生を踏み出す姿を描いて、
観客もホッとするようなラストに帰着して成功したのですが、
この作品ではディストピアの今後も不明ですし、
主人公2人の関係性も、
何か宙ぶらりんのまま終わり、
ムロツヨシさん演じる主人公が、
何かに変貌することが出来たのかも、
明らかではありません。

それでも映像的には見どころ満載で、
オープニングの趣向も洒落ていますし、
画像の炎上が縫いぐるみの炎上に繋がり、
もっと悲惨な炎上にも繋がる、
という仕掛けも鮮やかです。
もう1つの重要なアイコンは岸井さんの「肌」で、
見返りのために画面の外で服を脱ぐ、
という印象的な場面から、
ブレイクのきっかけとなったボディペイント、
それが幾つか構図を変えて繰り返され、
最後はその肌は悲惨な形で刻印を押されます。

主人公の2人を、
ムロツヨシさんと岸井ゆきのさんが演じる、
というのが非常に豪華で、
ムロさんも勿論良いのですが、
岸井さんの売れない時と売れている時の振幅が素晴らしく、
撮影は2年ほど前とのことですから、
多分この映画に記録されている、
岸井さんの「売れない時の顔」を、
今の岸井さんが再現することは、
おそらく不可能ではないかと思います。
それだけでも、この映画が撮られた意義はある、
とそんな風にも思えます。

いずれにしても吉田監督にしてなしえた、
現代と真正面から格闘した意欲作であることは間違いがなく、
ただ、この作品を通過点として、
監督がよりこのテーマを深化させて、
「空白」に匹敵する傑作を生みだすことを期待して待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「FLEE フリー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
フリー.jpg
2021年のデンマーク・フランスなどの合作映画で、
実在のアフガニスタンから亡命した男性のインタビューを、
アニメに一部実写映像を混ぜるという手法で描いた、
セミ・ドキュメンタリー映画です。

主人公は研究者として成功した青年で、
アフガニスタンに生まれ、
タリバンが政権を取って迫害されたことから、
ロシアに亡命するのですが、
不法滞在者として迫害と差別を受け、
ヨーロッパへの密入国を求めて、
何度も失敗をしながら新天地を目指します。

確かに壮絶な物語で、
実話であるという凄みがありますし、
悪質な密入国業者の手配により、
船に閉じ込められて出国を図る場面などは、
観ているこちらも息が詰まるような思いがします。

幾つか興味深い情報もあって、
ソ連崩壊直後のロシアが出て来るのですが、
経済もどん底で酷い状態なのですね。
それを曲りなりにも改善したのが、
エネルギーと穀物と武器の輸出を積極的に推進したプーチン氏なので、
幾ら経済制裁と言ったところで、
当時と比べれば遥かに良い状況ではある筈で、
それで戦争が終結などとてもしないのだろうな、
と感じましたし、
この映画の主人公は、
難民として受け入れてもらうために、
タリバンに家族を皆殺しにされた、と嘘を言うのですね。
それはそう言わないと送還されてしまうからで、
なるほど、良い意味でも悪い意味でも、
「家族を皆殺しにされた」という難民の発言は、
常に真実とは限らないもので、
実際には複雑な背景を持っているのだな、
と感じました。

ただ、この映画の主人公は結構恵まれてもいるのですね。
家族は父親以外は助かりますし、
アフガニスタンでもタリバン以前の政権に重用される立場で、
かなり良い暮らしをしていた人達なのです。
親族がヨーロッパに定住していて、
その伝手もありお金もある程度あったので、
亡命が可能であったという側面もあります。

それから勿論それが一面の事実ではあるのでしょうが、
アフガニスタンやロシアと比較した時の、
欧米の素晴らしさを単純に賛美しているような側面があって、
これを素直に全て事実として受け取って良いものなのかと、
懐疑的になる部分もあります。

そんな訳で、
不用意に観るにはちょっと危険も感じる映画で、
単純に良かったとか悪かったとかとは言いにくいのですが、
問題作であることは確かで、
興味のある方には鑑賞をお勧めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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