「デューン 砂の惑星 PART2」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ドゥニ・ビルヌーブ監督による、
スペースオペラの古典「デューン砂の惑星」映画化のパート2が、
今ロードショー公開されています。
ビルヌーブ監督は「メッセージ」も「ブレードランナー2049」も大好きで、
「デューン」の1作目もとても楽しみに鑑賞したのですが、
ほぼほぼプロローグだけ、という、
「ゴールデンカムイ」状態で、
正直かなりガッカリしました。
ただ、戦闘シーンなどは、
もっと幾らでも盛り上げようはあった筈で、
原作からドラマチックな要素を、
かなり削ぎ落したような作劇は、
ビルヌーブ監督はこういうものは、
あまり得意ではないのかしら、
という危惧を感じる出来栄えでした。
今回の続編は、一応原作の1作目のラストまで描かれているので、
前作よりまとまった感じがあって、
それなりの満足感はある仕上がりになっていました。
ただ、最後怒涛の戦闘シーンを期待したものの、
段取りだけで紙芝居的に、
「戦いがありまして、こちらが勝ちました」
というようにあっさりと終わってしまうので、
かなり落胆を感じたことは確かでした。
考えてみればビルヌーブ監督の作品で、
あまり集団の戦闘場面などは観たことがないので、
どうもこうした場面はあまり得意ではないし、
それほど興味もないのかしら、
というように感じました。
これ、欧米とアラブとの対立と和解、
みたいなものを描いている作品ですよね。
原作自体にもそうした要素はあるのですね。
でも、この映画版はよりその要素を拡大して描いていて、
キリスト教とイスラム教の対立からキリスト教の没落、
みたいなものが描かれ、
救世主は誰か、みたいな話もあります。
香料というのは、要するに石油のことですよね。
今の社会の構図をより明確に取り込んでいて、
それが今回の映画化の意図ではあると思うのですが、
そのせいでSF的設定やセンスオブワンダーの部分が、
何かとても矮小化されてしまった、
という感じはあります。
パート3もあるかも知れない、
というような流れですが、
この上「アラビアのロレンス」の後半みたいな展開が、
延々と続くことになるのもしんどいなあ、
という感じがありますし、
個人的にはビルヌーブ監督には、
「デューン」はこのくらいで終わりにしてもらって、
また新たな異世界を見せて欲しいな、
というように思います。
映像は確かに凄いですが、
「紙芝居」なので、
かなり観客を選ぶ映画だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ドゥニ・ビルヌーブ監督による、
スペースオペラの古典「デューン砂の惑星」映画化のパート2が、
今ロードショー公開されています。
ビルヌーブ監督は「メッセージ」も「ブレードランナー2049」も大好きで、
「デューン」の1作目もとても楽しみに鑑賞したのですが、
ほぼほぼプロローグだけ、という、
「ゴールデンカムイ」状態で、
正直かなりガッカリしました。
ただ、戦闘シーンなどは、
もっと幾らでも盛り上げようはあった筈で、
原作からドラマチックな要素を、
かなり削ぎ落したような作劇は、
ビルヌーブ監督はこういうものは、
あまり得意ではないのかしら、
という危惧を感じる出来栄えでした。
今回の続編は、一応原作の1作目のラストまで描かれているので、
前作よりまとまった感じがあって、
それなりの満足感はある仕上がりになっていました。
ただ、最後怒涛の戦闘シーンを期待したものの、
段取りだけで紙芝居的に、
「戦いがありまして、こちらが勝ちました」
というようにあっさりと終わってしまうので、
かなり落胆を感じたことは確かでした。
考えてみればビルヌーブ監督の作品で、
あまり集団の戦闘場面などは観たことがないので、
どうもこうした場面はあまり得意ではないし、
それほど興味もないのかしら、
というように感じました。
これ、欧米とアラブとの対立と和解、
みたいなものを描いている作品ですよね。
原作自体にもそうした要素はあるのですね。
でも、この映画版はよりその要素を拡大して描いていて、
キリスト教とイスラム教の対立からキリスト教の没落、
みたいなものが描かれ、
救世主は誰か、みたいな話もあります。
香料というのは、要するに石油のことですよね。
今の社会の構図をより明確に取り込んでいて、
それが今回の映画化の意図ではあると思うのですが、
そのせいでSF的設定やセンスオブワンダーの部分が、
何かとても矮小化されてしまった、
という感じはあります。
パート3もあるかも知れない、
というような流れですが、
この上「アラビアのロレンス」の後半みたいな展開が、
延々と続くことになるのもしんどいなあ、
という感じがありますし、
個人的にはビルヌーブ監督には、
「デューン」はこのくらいで終わりにしてもらって、
また新たな異世界を見せて欲しいな、
というように思います。
映像は確かに凄いですが、
「紙芝居」なので、
かなり観客を選ぶ映画だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「セッション」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
デイミアン・チャゼルを有名にした、
2014年のアメリカ映画で、
再上映が行われていたので、
これは映画館で是非と思い足を運びました。
師弟の壮絶な対決を描いた音楽映画で、
最初から最後までまさに才気迸るという感じです。
プロのジャズドラマーを目指す、
屈折した家庭環境を持つ青年が、
一流の音楽学校で強烈な個性を持つ教師と出会い、
そのパワハラとしか思えないような指導を受けるうちに、
精神の均衡を崩してゆきます。
最初から全く無駄のない作劇で、
ぐいぐいと作品世界に引き込まれますし、
教師を演じたJ・K・シモンズさんの個性が強烈で、
素材がドラム演奏というのが、
また非常に映像的で素晴らしいのです。
上映時間は107分なのですが、
非常に作劇が濃密なので、
良い意味でもっと長いような印象があります。
前半を観ると「フルメタルジャケット」みたいな感じなんですね。
これだと追い詰められた主人公が、
最後に狂気に陥って暴力的に反逆して、
それで終わりではないか、
というように思ってしまうのですが、
確かにそうしたパートはありながら、
物語はそれで終わらず、
その後でもっと良いお話に着地しかけ、
それはそれで良いのかしら、
と思っていると、
更にそれがひっくり返されて、
殆どの観客の想像を超えるような、
鮮やかなラストに着地します。
後半の展開には特にしびれるものがあるのですが、
何と言ってもラストが素晴らしいですよね。
これ以上はないという鮮やかなタイミングで終わります。
最近はいつ終わったのか分からないような、
タラタラしたエンディングの作品も多く、
それはそれで時代なのかな、とも思うのですが、
この映画のようにビシッとラストの決まった作品を観ると、
やっぱりこれだよね、という気持ちになります。
いずれにしても天才監督の才気が迸る傑作で、
かなりインテリ臭が強いので、
その辺りの好き嫌いは分かれるところですが、
必見であることは間違いがありません。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
デイミアン・チャゼルを有名にした、
2014年のアメリカ映画で、
再上映が行われていたので、
これは映画館で是非と思い足を運びました。
師弟の壮絶な対決を描いた音楽映画で、
最初から最後までまさに才気迸るという感じです。
プロのジャズドラマーを目指す、
屈折した家庭環境を持つ青年が、
一流の音楽学校で強烈な個性を持つ教師と出会い、
そのパワハラとしか思えないような指導を受けるうちに、
精神の均衡を崩してゆきます。
最初から全く無駄のない作劇で、
ぐいぐいと作品世界に引き込まれますし、
教師を演じたJ・K・シモンズさんの個性が強烈で、
素材がドラム演奏というのが、
また非常に映像的で素晴らしいのです。
上映時間は107分なのですが、
非常に作劇が濃密なので、
良い意味でもっと長いような印象があります。
前半を観ると「フルメタルジャケット」みたいな感じなんですね。
これだと追い詰められた主人公が、
最後に狂気に陥って暴力的に反逆して、
それで終わりではないか、
というように思ってしまうのですが、
確かにそうしたパートはありながら、
物語はそれで終わらず、
その後でもっと良いお話に着地しかけ、
それはそれで良いのかしら、
と思っていると、
更にそれがひっくり返されて、
殆どの観客の想像を超えるような、
鮮やかなラストに着地します。
後半の展開には特にしびれるものがあるのですが、
何と言ってもラストが素晴らしいですよね。
これ以上はないという鮮やかなタイミングで終わります。
最近はいつ終わったのか分からないような、
タラタラしたエンディングの作品も多く、
それはそれで時代なのかな、とも思うのですが、
この映画のようにビシッとラストの決まった作品を観ると、
やっぱりこれだよね、という気持ちになります。
いずれにしても天才監督の才気が迸る傑作で、
かなりインテリ臭が強いので、
その辺りの好き嫌いは分かれるところですが、
必見であることは間違いがありません。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「落下の解剖学」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
フランスのジュスティーヌ・トリエ監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
2023年のカンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作です。
カンヌのパルムドールというのは、
かなり異常でヘンテコな作品が多く、
アメリカのアカデミー賞の受賞作が、
最近は流行に合わせて変なものもありますが、
概ね倫理的な「良いお話」が選ばれるのに対して、
突飛で通常の倫理観からは逸脱した怪作が選ばれることが多い、
という特徴があります。
カンヌのパルムドールは芥川賞で、
アカデミー賞は直木賞、くらいの違いがあります。
カンヌのパルムドールを数年間分一気見すると、
頭が正常ではなくなること必定です。
その系譜の中では今回の作品は、
比較的破綻のなくまとまっている、
割合と優等生的な作品で、
米アカデミー賞を取ることはないと思いますが、
取っても不思議はないくらいの映画にはなっています。
フランスの田舎の山荘に、
ドイツ人の夫と高名なドイツ出身の作家の妻、
そして4歳の時の事故のために高度の弱視となった息子が住んでいます。
ある日息子が愛犬と散歩をしていた間に、
屋根裏部屋から転落した夫が死亡し、
家で寝ていたと主張する作家の妻に、
夫殺しの嫌疑が掛かります。
舞台は雪の山荘で密室ですから、
夫の死は、事故死か自殺か妻による殺人の、
3択しかないのですが、
妻が殺人容疑で起訴され、
彼女と旧知の間柄の弁護士が立つことで、
事件は裁判の場に舞台を移してゆきます。
どんでん返しのあるミステリーのような出だしですが、
勿論そうではなく、
裁判自体は決着が付きますが、
「真相」は明らかにされることなく終わります。
大岡昇平さんの「事件」に近い感じのお話ですね。
少年がキーになるところも似ています。
ただ、内容は「事件」よりもっとモヤモヤしていて、
観客のカタルシスは一切ありません。
それでも真相を観客が推測するための情報は、
過剰なくらいに与えられているので、
実際に起こった事件を、
報道からああだこうだと、
茶の間で議論しているのと同じような水準と、
言えなくもありません。
役者の演技は非常に卓越していて、
一家の愛犬がまた、
人間に匹敵する芝居をしています。
1つの家族の悲劇が克明に描かれるのですが、
作り手が誰かに肩入れしているという感じではなくて、
それこそ解剖するように、
人間の心理の綾が切り分けられてゆくので、
観た側がそれを自分で物語に仕立てて理解する、
という趣向の映画なんですね。
作り手の視点を排除しているので、
居心地の良くない感じはあるのですが、
それはそれと割り切って観ることが出来れば、
なかなかの魅力を感じることが出来る映画だと思います。
勿論これならノンフィクションでいいではないか、
という批判は成立するのですね。
でも、ノンフィクションでは実際の人間に、
迷惑やストレスが掛かる結果になるでしょ。
それがないのがフィクションの魅力だと思いますし、
それを言いたいので、
主人公も現実を元にして創作する作家にして、
そこにテーマを語らせているんですね。
そんな訳でなかなかの骨太な力作で、
個人的には楽しめましたが、
「何が言いたいんだ!」と怒る方もあるかと思います。
観る人を選ぶ映画の1つなので、
くれぐれも真相の明らかになるお話ではない、
自分で自分なりの真相を作る作品なのだ、
ということを理解して鑑賞するのが吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
フランスのジュスティーヌ・トリエ監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
2023年のカンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作です。
カンヌのパルムドールというのは、
かなり異常でヘンテコな作品が多く、
アメリカのアカデミー賞の受賞作が、
最近は流行に合わせて変なものもありますが、
概ね倫理的な「良いお話」が選ばれるのに対して、
突飛で通常の倫理観からは逸脱した怪作が選ばれることが多い、
という特徴があります。
カンヌのパルムドールは芥川賞で、
アカデミー賞は直木賞、くらいの違いがあります。
カンヌのパルムドールを数年間分一気見すると、
頭が正常ではなくなること必定です。
その系譜の中では今回の作品は、
比較的破綻のなくまとまっている、
割合と優等生的な作品で、
米アカデミー賞を取ることはないと思いますが、
取っても不思議はないくらいの映画にはなっています。
フランスの田舎の山荘に、
ドイツ人の夫と高名なドイツ出身の作家の妻、
そして4歳の時の事故のために高度の弱視となった息子が住んでいます。
ある日息子が愛犬と散歩をしていた間に、
屋根裏部屋から転落した夫が死亡し、
家で寝ていたと主張する作家の妻に、
夫殺しの嫌疑が掛かります。
舞台は雪の山荘で密室ですから、
夫の死は、事故死か自殺か妻による殺人の、
3択しかないのですが、
妻が殺人容疑で起訴され、
彼女と旧知の間柄の弁護士が立つことで、
事件は裁判の場に舞台を移してゆきます。
どんでん返しのあるミステリーのような出だしですが、
勿論そうではなく、
裁判自体は決着が付きますが、
「真相」は明らかにされることなく終わります。
大岡昇平さんの「事件」に近い感じのお話ですね。
少年がキーになるところも似ています。
ただ、内容は「事件」よりもっとモヤモヤしていて、
観客のカタルシスは一切ありません。
それでも真相を観客が推測するための情報は、
過剰なくらいに与えられているので、
実際に起こった事件を、
報道からああだこうだと、
茶の間で議論しているのと同じような水準と、
言えなくもありません。
役者の演技は非常に卓越していて、
一家の愛犬がまた、
人間に匹敵する芝居をしています。
1つの家族の悲劇が克明に描かれるのですが、
作り手が誰かに肩入れしているという感じではなくて、
それこそ解剖するように、
人間の心理の綾が切り分けられてゆくので、
観た側がそれを自分で物語に仕立てて理解する、
という趣向の映画なんですね。
作り手の視点を排除しているので、
居心地の良くない感じはあるのですが、
それはそれと割り切って観ることが出来れば、
なかなかの魅力を感じることが出来る映画だと思います。
勿論これならノンフィクションでいいではないか、
という批判は成立するのですね。
でも、ノンフィクションでは実際の人間に、
迷惑やストレスが掛かる結果になるでしょ。
それがないのがフィクションの魅力だと思いますし、
それを言いたいので、
主人公も現実を元にして創作する作家にして、
そこにテーマを語らせているんですね。
そんな訳でなかなかの骨太な力作で、
個人的には楽しめましたが、
「何が言いたいんだ!」と怒る方もあるかと思います。
観る人を選ぶ映画の1つなので、
くれぐれも真相の明らかになるお話ではない、
自分で自分なりの真相を作る作品なのだ、
ということを理解して鑑賞するのが吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
「ボーはおそれている」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
鬼才アリ・アスター監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
アリ・アスター監督は、
「ヘレディタリー継承」が、
ポランスキー監督の某作を見事に換骨奪胎した大傑作で、
次の「ミッドサマー」も「ウィッカーマン」を、
極彩色でリニューアルした、
大ほら吹きのようなカルトでした。
それで次はどうするつもりだろうと、
待ちわびていたのですが、
今回はボーという、
ホアキン・フェニックスさん演じる謎の中年男が、
母親を求めて奇怪な旅を続ける様を、
アメリカ映画の全ての要素を詰め込んで、
それをグロテスクに解体したような異様な肌触りで、
3時間に渡り綴られた大作でした。
感想は…
うーん…
大好きなんだけど、
出来としてはモヤモヤする、
という感じがありました。
今回はそう「地獄の黙示録」みたいな感じですね。
圧倒的な迫力の地獄巡りが、
挿話を連ねたような様式で、
次々と終わることなく続いて行くのですが、
最後までその本質みたいなものには、
触れないままに終わったしまった、
というような感じがある映画でした。
個人的にはとても面白くて全く退屈は感じなかったんですね。
3時間も長いという感じはしなくて、
むしろもっと長くてもいいと思ったくらい。
逆に言うと、この程度で終わったしまったら、
ちょっと残念だな、
という感じが最後まで残ってしまいました。
まずボーという人がどういう人なのか、
良く分からないんですよね。
生活の輪郭が全く分からなくて、
働いているのかいないのかも分からないし、
貧乏なのか裕福なのかも分からないですよね。
最後になって、こういうことでした、
みたいなネタばらしが一応あるのですが、
それを聞いても、やはり良く分からないんですね。
通常の映画にあるような、
「この人はこういう人です」みたいな説明が、
この映画には一切ないからなんですね。
普通はこういう主人公の設定の良く分からない話というのは、
最後になると、ネタバレがあって、
それが分かるように出来ているんですが、
この映画はネタバレはあっても、
それがまたあまり辻褄があっていない感じなので、
腑に落ちた、というようなカタルシスがないのです。
屋根裏に秘密があって、
最後に上って行くのですが、
そこにある秘密というのが、
これもとても納得のゆくものじゃないんですね。
この辺りも「地獄の黙示録」に良く似ていて、
物凄く勿体ぶった前振りをしているのに、
「えっ、これで終わりなの?」
という感じがあるのです。
多くのアリ・アスター監督のファンにとって、
おそらく今回の映画は、
納得のゆくものではなかったと思うんですね。
次作は同じホアキン・フェニックスさんの主演で、
ウェスタンだそうですから、
「またどうなのかなあ」という危惧はあるのですが、
それでも熱烈なファンの1人としては、
その公開を心待ちにしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
鬼才アリ・アスター監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
アリ・アスター監督は、
「ヘレディタリー継承」が、
ポランスキー監督の某作を見事に換骨奪胎した大傑作で、
次の「ミッドサマー」も「ウィッカーマン」を、
極彩色でリニューアルした、
大ほら吹きのようなカルトでした。
それで次はどうするつもりだろうと、
待ちわびていたのですが、
今回はボーという、
ホアキン・フェニックスさん演じる謎の中年男が、
母親を求めて奇怪な旅を続ける様を、
アメリカ映画の全ての要素を詰め込んで、
それをグロテスクに解体したような異様な肌触りで、
3時間に渡り綴られた大作でした。
感想は…
うーん…
大好きなんだけど、
出来としてはモヤモヤする、
という感じがありました。
今回はそう「地獄の黙示録」みたいな感じですね。
圧倒的な迫力の地獄巡りが、
挿話を連ねたような様式で、
次々と終わることなく続いて行くのですが、
最後までその本質みたいなものには、
触れないままに終わったしまった、
というような感じがある映画でした。
個人的にはとても面白くて全く退屈は感じなかったんですね。
3時間も長いという感じはしなくて、
むしろもっと長くてもいいと思ったくらい。
逆に言うと、この程度で終わったしまったら、
ちょっと残念だな、
という感じが最後まで残ってしまいました。
まずボーという人がどういう人なのか、
良く分からないんですよね。
生活の輪郭が全く分からなくて、
働いているのかいないのかも分からないし、
貧乏なのか裕福なのかも分からないですよね。
最後になって、こういうことでした、
みたいなネタばらしが一応あるのですが、
それを聞いても、やはり良く分からないんですね。
通常の映画にあるような、
「この人はこういう人です」みたいな説明が、
この映画には一切ないからなんですね。
普通はこういう主人公の設定の良く分からない話というのは、
最後になると、ネタバレがあって、
それが分かるように出来ているんですが、
この映画はネタバレはあっても、
それがまたあまり辻褄があっていない感じなので、
腑に落ちた、というようなカタルシスがないのです。
屋根裏に秘密があって、
最後に上って行くのですが、
そこにある秘密というのが、
これもとても納得のゆくものじゃないんですね。
この辺りも「地獄の黙示録」に良く似ていて、
物凄く勿体ぶった前振りをしているのに、
「えっ、これで終わりなの?」
という感じがあるのです。
多くのアリ・アスター監督のファンにとって、
おそらく今回の映画は、
納得のゆくものではなかったと思うんですね。
次作は同じホアキン・フェニックスさんの主演で、
ウェスタンだそうですから、
「またどうなのかなあ」という危惧はあるのですが、
それでも熱烈なファンの1人としては、
その公開を心待ちにしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「夜明けのすべて」(三宅唱監督映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
瀬尾まい子さんのベストセラーを、
「ケイコ 目を澄ませば」の斬新な映像表現が印象的だった、
気鋭の三宅唱監督が映画化しました。
原作のPMSとパニック障害の主人公2人を、
人気者で演技派でもある、
上白石萌音さんと松村北斗さんが演じています。
これは映画を観てとても感銘を受けたので、
原作を後から読んだのですが、
映画は原作をかなり大きく改変していて、
読後の印象は映画と別物と言って良いほど違っていたので、
映画の評価もちょっと悩ましいものになってしまいました。
原作を読んでお好きな方が、
この映画をご覧になると、
多分かなりショックを受けるのではないかと思います。
なので、ご覧になる時には、
別物と割り切って鑑賞するのが吉です。
逆に先に映画をご覧になって感動された方は、
是非原作をお読み下さい。
映画の方が良いな、と思われる方もいると思いますし、
その反対の方もいると思います。
映画単体として考えると、
三宅唱監督らしいドキュメンタリー的な映像表現が、
非常に完成度高く駆使されていて、
随所にハッとさせる場面もあり、
特に観客の生理を計算し尽くしたような、
編集が素晴らしいと思います。
ホリプロが主体の映画なので、
分かり易さを重視しながら、
監督の個性はしっかり出されている、
という点にも感心しました。
主役2人の演技がまた素晴らしく、
特に松村北斗さんは、
最初の如何にも関わると面倒そうな雰囲気から、
ラストの笑顔までの振幅の大きさが見事で、
これまでの代表作と言って良い仕上がりでした。
ただ、前述のように原作とはほぼ別物で、
それもかなり根幹の部分を変えてしまっているので、
その点について以下少し比較してみます。
ネタバレになりますので、
これから原作を読まれる予定の方や、
映画を鑑賞予定の方はご注意下さい。
よろしいでしょうか?
では続けます。
映画を観ると、
「ははあ、これは恋愛感情なしの男女の交流を描いた映画なのね」
というように思うのですね。
そうした台詞もありますし、
普通は最後は一緒になるか、
ならなくてもちょっといい雰囲気にはなるか、
一度別れても最後には再会するのか、
そのどれかになると思うでしょ。
でもそうならないんですね。
上白石さんのお母さんがパーキンソン病で介護が必要となり、
実家に戻ってしまう一方、
松村さんの方は最初は馬鹿にしていた中小工場に残ることになり、
特別な感慨もなく、2人は別々の道を歩んで、
それで終わってしまうのです。
ある意味斬新な終わり方で、
現実なんて多分そんなものでしょうし、
悪い気分にはならないんですね。
でも、原作を読むと全然違っていて、
そちらは最後、
2人は中小工場でそのまま働き続け、
何となくいい感じになって終わるんですね。
とても普通の終わり方です。
映画の上白石さんの役の母親も、
原作ではぴんぴんしていて、
別に介護が必要にもならないのですね。
そもそも2人の勤めている会社も、
ネジなどを作って売っている中小企業で、
プラネタリウムなどとは何の関係もないんですね。
クライマックスは上白石さんの役の女性が盲腸で入院して、
一念発起した松村さん役の男性が、
初めて頑張って病院まで遠出する、
というエピソードになっています。
まあ、ベタな感じではあるのですが、
それを映画はバッサリ切って、
プラネタリウムの話を創出しているのです。
そこで朗読される題名に結び付く感動的なメッセージも、
勿論原作にはありません。
他にも改変箇所は山のようにあって、
パニック障害の男性が、
薬を飲みながら軽トラを運転している、
という原作の設定などは、
怒られてしまうのが必定ですから、
変えて仕方がないのですが、
ほぼほぼ全ての設定を変えまくっていて、
残っているのは、
松村さんの髪を上白石さんが切る場面と、
上白石さんのイライラを、
行動療法的なアプローチで、
松村さんが解消して上げるという場面ですね。
この2つは映画でも非常に印象的ですが、
この場面の鮮烈さは、
原作の良さなのです。
端的に言えば、この2つの場面を残して、
他の全ては総とっかえしたのが、
映画版の「夜明けのすべて」です。
これは原作もいいし、映画もいいんですね。
でもその良さはかなり異なるフェーズのものなので、
これは是非両者を味わうのが吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
瀬尾まい子さんのベストセラーを、
「ケイコ 目を澄ませば」の斬新な映像表現が印象的だった、
気鋭の三宅唱監督が映画化しました。
原作のPMSとパニック障害の主人公2人を、
人気者で演技派でもある、
上白石萌音さんと松村北斗さんが演じています。
これは映画を観てとても感銘を受けたので、
原作を後から読んだのですが、
映画は原作をかなり大きく改変していて、
読後の印象は映画と別物と言って良いほど違っていたので、
映画の評価もちょっと悩ましいものになってしまいました。
原作を読んでお好きな方が、
この映画をご覧になると、
多分かなりショックを受けるのではないかと思います。
なので、ご覧になる時には、
別物と割り切って鑑賞するのが吉です。
逆に先に映画をご覧になって感動された方は、
是非原作をお読み下さい。
映画の方が良いな、と思われる方もいると思いますし、
その反対の方もいると思います。
映画単体として考えると、
三宅唱監督らしいドキュメンタリー的な映像表現が、
非常に完成度高く駆使されていて、
随所にハッとさせる場面もあり、
特に観客の生理を計算し尽くしたような、
編集が素晴らしいと思います。
ホリプロが主体の映画なので、
分かり易さを重視しながら、
監督の個性はしっかり出されている、
という点にも感心しました。
主役2人の演技がまた素晴らしく、
特に松村北斗さんは、
最初の如何にも関わると面倒そうな雰囲気から、
ラストの笑顔までの振幅の大きさが見事で、
これまでの代表作と言って良い仕上がりでした。
ただ、前述のように原作とはほぼ別物で、
それもかなり根幹の部分を変えてしまっているので、
その点について以下少し比較してみます。
ネタバレになりますので、
これから原作を読まれる予定の方や、
映画を鑑賞予定の方はご注意下さい。
よろしいでしょうか?
では続けます。
映画を観ると、
「ははあ、これは恋愛感情なしの男女の交流を描いた映画なのね」
というように思うのですね。
そうした台詞もありますし、
普通は最後は一緒になるか、
ならなくてもちょっといい雰囲気にはなるか、
一度別れても最後には再会するのか、
そのどれかになると思うでしょ。
でもそうならないんですね。
上白石さんのお母さんがパーキンソン病で介護が必要となり、
実家に戻ってしまう一方、
松村さんの方は最初は馬鹿にしていた中小工場に残ることになり、
特別な感慨もなく、2人は別々の道を歩んで、
それで終わってしまうのです。
ある意味斬新な終わり方で、
現実なんて多分そんなものでしょうし、
悪い気分にはならないんですね。
でも、原作を読むと全然違っていて、
そちらは最後、
2人は中小工場でそのまま働き続け、
何となくいい感じになって終わるんですね。
とても普通の終わり方です。
映画の上白石さんの役の母親も、
原作ではぴんぴんしていて、
別に介護が必要にもならないのですね。
そもそも2人の勤めている会社も、
ネジなどを作って売っている中小企業で、
プラネタリウムなどとは何の関係もないんですね。
クライマックスは上白石さんの役の女性が盲腸で入院して、
一念発起した松村さん役の男性が、
初めて頑張って病院まで遠出する、
というエピソードになっています。
まあ、ベタな感じではあるのですが、
それを映画はバッサリ切って、
プラネタリウムの話を創出しているのです。
そこで朗読される題名に結び付く感動的なメッセージも、
勿論原作にはありません。
他にも改変箇所は山のようにあって、
パニック障害の男性が、
薬を飲みながら軽トラを運転している、
という原作の設定などは、
怒られてしまうのが必定ですから、
変えて仕方がないのですが、
ほぼほぼ全ての設定を変えまくっていて、
残っているのは、
松村さんの髪を上白石さんが切る場面と、
上白石さんのイライラを、
行動療法的なアプローチで、
松村さんが解消して上げるという場面ですね。
この2つは映画でも非常に印象的ですが、
この場面の鮮烈さは、
原作の良さなのです。
端的に言えば、この2つの場面を残して、
他の全ては総とっかえしたのが、
映画版の「夜明けのすべて」です。
これは原作もいいし、映画もいいんですね。
でもその良さはかなり異なるフェーズのものなので、
これは是非両者を味わうのが吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
「哀れなるものたち」(2024年日本公開映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した、
ギリシャ出身の鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の新作映画が、
今ロードショー公開されています。
イギリス・アメリカなどの合作ですが、
基本ヨーロッパ映画なのだと思います。
「逆転のトライアングル」などにも通底する、
退廃と終末感に溢れた作品で、
全てのディテールは過剰で装飾的で、
それでいて知的に世界を読み解こう、
この世界の終末を分析しよう、
という理知的な手触りも共通しています。
この理屈っぽく知的な部分が、
アメリカ映画にはない、
ヨーロッパ映画の昔からの魅力です。
原作は未読ですが、
1990年代初頭に書かれていて、
フランケンシュタインの物語を現代に読み替えた、
偽古典のような作品であるようです。
舞台は19世紀末のロンドン、
エマ・ストーン演じる、
夫から虐待を受けていた女性は、
自分の娘を身ごもったまま、
身を投げて自殺するのですが、
それをウィリアム・デフォー演じるマッドサイエンティストが、
胎児の脳を移植することで蘇生します。
この母親の身体に娘の脳を持つ人造人間は、
マッドサイエンティストを父親として育つのですが、
彼女に思いを寄せる男達に翻弄され、
その狂暴で無垢な個性のままに、
ヨーロッパ世界を旅することになるのです。
要するに「男にとって都合の良い女性」は、
男によって造られた人造人間だ、
ということなのですね。
物語は彼女が世界を旅して自我に目覚め、
自立した女性として生まれ変わるまでを、
滅びゆくヨーロッパ世界の、
熟し過ぎた果実のような退廃的な魅力と共に描きます。
こういうお話の常で、
登場する男どもはほぼ全てろくでなしかクズなので、
一応男の端くれとしては、
観ていてあまり居心地の良い感じはしません。
ただ、それを脇に置いておけば、
物語は豊饒なロマンの魅力に満ち、
残酷やエロス、グロテスクや見世物的過剰さも、
フェリーニの映画を観ているようで、
懐かしく鑑賞することが出来ました。
ただ、基本的に「ヨーロッパなんてもう終わりさ」
という雰囲気が濃厚に感じられる映画なので、
基調音はかなり重苦しくも感じられます。
総じてヨーロッパ映画(とてもザックリの括りですが)のお好きな方には、
完成度も高くお勧め出来る作品です。
ただ、この監督の常で、
魚眼レンズを駆使した撮影や読みづらいタイトルなど、
かなり癖のある絵作りなので、
それほど観易い作品ではないことは、
一応理解の上鑑賞して頂くのが吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した、
ギリシャ出身の鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の新作映画が、
今ロードショー公開されています。
イギリス・アメリカなどの合作ですが、
基本ヨーロッパ映画なのだと思います。
「逆転のトライアングル」などにも通底する、
退廃と終末感に溢れた作品で、
全てのディテールは過剰で装飾的で、
それでいて知的に世界を読み解こう、
この世界の終末を分析しよう、
という理知的な手触りも共通しています。
この理屈っぽく知的な部分が、
アメリカ映画にはない、
ヨーロッパ映画の昔からの魅力です。
原作は未読ですが、
1990年代初頭に書かれていて、
フランケンシュタインの物語を現代に読み替えた、
偽古典のような作品であるようです。
舞台は19世紀末のロンドン、
エマ・ストーン演じる、
夫から虐待を受けていた女性は、
自分の娘を身ごもったまま、
身を投げて自殺するのですが、
それをウィリアム・デフォー演じるマッドサイエンティストが、
胎児の脳を移植することで蘇生します。
この母親の身体に娘の脳を持つ人造人間は、
マッドサイエンティストを父親として育つのですが、
彼女に思いを寄せる男達に翻弄され、
その狂暴で無垢な個性のままに、
ヨーロッパ世界を旅することになるのです。
要するに「男にとって都合の良い女性」は、
男によって造られた人造人間だ、
ということなのですね。
物語は彼女が世界を旅して自我に目覚め、
自立した女性として生まれ変わるまでを、
滅びゆくヨーロッパ世界の、
熟し過ぎた果実のような退廃的な魅力と共に描きます。
こういうお話の常で、
登場する男どもはほぼ全てろくでなしかクズなので、
一応男の端くれとしては、
観ていてあまり居心地の良い感じはしません。
ただ、それを脇に置いておけば、
物語は豊饒なロマンの魅力に満ち、
残酷やエロス、グロテスクや見世物的過剰さも、
フェリーニの映画を観ているようで、
懐かしく鑑賞することが出来ました。
ただ、基本的に「ヨーロッパなんてもう終わりさ」
という雰囲気が濃厚に感じられる映画なので、
基調音はかなり重苦しくも感じられます。
総じてヨーロッパ映画(とてもザックリの括りですが)のお好きな方には、
完成度も高くお勧め出来る作品です。
ただ、この監督の常で、
魚眼レンズを駆使した撮影や読みづらいタイトルなど、
かなり癖のある絵作りなので、
それほど観易い作品ではないことは、
一応理解の上鑑賞して頂くのが吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「ゴールデンカムイ」(2024年映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アニメの「ゴールデンカムイ」が、
実写映画として今ロードショー公開されています。
原作は読んでいます。
コミック版は31巻で完結していますが、
今回の映画版は3巻目までの、
主に人物紹介のパートのみの実写化です。
それも少し先のエピソードを再構成して挿入した程度で、
後はほぼほぼ原作通りに、
全てのシーンを再現しています。
もう続編も撮っているようで、
ラストにはその紹介的なカットも入っています。
同じ山崎賢人さん主演の「キングダム」に近い構想ですが、
あちらはオープニングが割と綺麗に完結したエピソードだったので、
第一作から映画としてのまとまりがありましたが、
この作品は原作が割と串団子的な構成と言うのか、
小山を連ねて物語が進んで行くので、
個々のエピソードのみで映画にするには弱い、
という欠点があります。
脚本の黒岩勉さんは、
こうした原作物の構成には卓越した才があり、
トリッキーな展開も得意なので、
敢えて今回はプロローグのみの作品でじっくりキャラを描き、
続編で怒涛の展開に移行するのではないかと推測しています。
こうした先を見越した映画製作は、
以前はかなり難しかったと思うのですが、
この作品は製作にWowowが付いていて、
仮に続編が公開されない事態となったとしても、
それ以降は配信のドラマとして継続、
という選択肢が残っているので、
最初から長期の計画を立てやすかった、
という側面があるのかも知れません。
単独の映画としてはクライマックスが弱い感じがしますし、
もう少し映画ならではのスケール感が欲しいな、
と感じる部分はあるのですが、
キャストの好演や水準の高い絵作りを含めて、
堂々たる娯楽映画に仕上がっている点は、
映画館で鑑賞する価値は充分にある1本だと思います。
これ、西部劇なんですね。
それもマカロニウエスタンに近いテイストの、
和製ごった煮西部劇です。
そう考えると、
まあアイヌの人達はインディアンの役割ですし
(アイヌの人達とインディアンが同じという意味ではありません。
勿論違うのですが、西部劇という見立ての中では相似性がある、
という意味です)、
北海道の開拓と西部の開拓は重ね合わせられる部分があるでしょ。
そうした意味で、
海外の人にも受け入れられやすい素材だと思うのですね。
戦争帰りの風来坊というのも、
とても西部劇的な設定です。
製作陣も勿論そのことは理解していて、
世界での配収も想定しているように推測されます。
続編が非常に楽しみです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アニメの「ゴールデンカムイ」が、
実写映画として今ロードショー公開されています。
原作は読んでいます。
コミック版は31巻で完結していますが、
今回の映画版は3巻目までの、
主に人物紹介のパートのみの実写化です。
それも少し先のエピソードを再構成して挿入した程度で、
後はほぼほぼ原作通りに、
全てのシーンを再現しています。
もう続編も撮っているようで、
ラストにはその紹介的なカットも入っています。
同じ山崎賢人さん主演の「キングダム」に近い構想ですが、
あちらはオープニングが割と綺麗に完結したエピソードだったので、
第一作から映画としてのまとまりがありましたが、
この作品は原作が割と串団子的な構成と言うのか、
小山を連ねて物語が進んで行くので、
個々のエピソードのみで映画にするには弱い、
という欠点があります。
脚本の黒岩勉さんは、
こうした原作物の構成には卓越した才があり、
トリッキーな展開も得意なので、
敢えて今回はプロローグのみの作品でじっくりキャラを描き、
続編で怒涛の展開に移行するのではないかと推測しています。
こうした先を見越した映画製作は、
以前はかなり難しかったと思うのですが、
この作品は製作にWowowが付いていて、
仮に続編が公開されない事態となったとしても、
それ以降は配信のドラマとして継続、
という選択肢が残っているので、
最初から長期の計画を立てやすかった、
という側面があるのかも知れません。
単独の映画としてはクライマックスが弱い感じがしますし、
もう少し映画ならではのスケール感が欲しいな、
と感じる部分はあるのですが、
キャストの好演や水準の高い絵作りを含めて、
堂々たる娯楽映画に仕上がっている点は、
映画館で鑑賞する価値は充分にある1本だと思います。
これ、西部劇なんですね。
それもマカロニウエスタンに近いテイストの、
和製ごった煮西部劇です。
そう考えると、
まあアイヌの人達はインディアンの役割ですし
(アイヌの人達とインディアンが同じという意味ではありません。
勿論違うのですが、西部劇という見立ての中では相似性がある、
という意味です)、
北海道の開拓と西部の開拓は重ね合わせられる部分があるでしょ。
そうした意味で、
海外の人にも受け入れられやすい素材だと思うのですね。
戦争帰りの風来坊というのも、
とても西部劇的な設定です。
製作陣も勿論そのことは理解していて、
世界での配収も想定しているように推測されます。
続編が非常に楽しみです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
「TALK TO ME トーク・トゥ・ミー」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
これは年末に公開されたホラーで、
アメリカで大ヒットしたオーストラリア映画です。
謎の手の作り物を握って、
特定の言葉を発すると、
死者が一時的に憑依するという設定があって、
それが麻薬のように悪い学生の遊びで使われている、
というのが如何にも現代的な趣向です。
ある取り決めを守っていれば、
それほどの危険はないのですが、
こうしたお話の常で、
取り決めは破られてしまうので、
大変な事態が出来してしまいます。
格別新しいという感じはないのですが、
主役の女子高生が、
関わる人を不幸に巻き込む、
かなり強烈な「困ったちゃん」に設定されていて、
皆放っておけばいいのに構ってしまうので、
それでどんどん状況が悪化する、
という段取りがなかなか巧みに出来ていて、
オープニングは分かり難くてちょっとイライラしますが、
後は楽しく鑑賞することが出来ました。
95分という上映時間も手頃で、
それでいて短過ぎるという感じはありません。
少しどぎつい描写もあるので、
万人向けではありませんが、
こうしたジャンル物のお好きな方には、
観て損はない1本だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
これは年末に公開されたホラーで、
アメリカで大ヒットしたオーストラリア映画です。
謎の手の作り物を握って、
特定の言葉を発すると、
死者が一時的に憑依するという設定があって、
それが麻薬のように悪い学生の遊びで使われている、
というのが如何にも現代的な趣向です。
ある取り決めを守っていれば、
それほどの危険はないのですが、
こうしたお話の常で、
取り決めは破られてしまうので、
大変な事態が出来してしまいます。
格別新しいという感じはないのですが、
主役の女子高生が、
関わる人を不幸に巻き込む、
かなり強烈な「困ったちゃん」に設定されていて、
皆放っておけばいいのに構ってしまうので、
それでどんどん状況が悪化する、
という段取りがなかなか巧みに出来ていて、
オープニングは分かり難くてちょっとイライラしますが、
後は楽しく鑑賞することが出来ました。
95分という上映時間も手頃で、
それでいて短過ぎるという感じはありません。
少しどぎつい描写もあるので、
万人向けではありませんが、
こうしたジャンル物のお好きな方には、
観て損はない1本だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「サンクスギビング」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
イーライ・ロス監督による新作ホラー映画が、
2023年の年末から公開されています。
これは仮面を付けた殺人鬼によって、
アメリカの田舎町の住民が次々と殺されるという、
1980年代くらいに大流行した、
低予算ホラー映画をリスペクトしつつ、
現代に合わせてリニューアルした作品で、
これといった目新しさはないのですが、
平均点以上の仕上がりにはなっていて、
ホラー映画のファンには、
まずは楽しめる作品になっていたと思います。
こうした殺人鬼物は、
1978年の「ハロウィン」という作品が、
今思うとパイオニアで、
マスクを被った殺人鬼の正体が、
その素顔を含めて最後まで分からない、
ある意味人間かどうかすら分からない、
という点が、公開当時観た時には、
拍子抜けに感じてガッカリした覚えがあるのですが、
今思うとかなり画期的であったのです。
脅かしの技巧という点では、
続編の「ハロウィン2」が、
非常に完成度が高く、
今観ても見ごたえがあります。
1980年には有名な「13日の金曜日」が公開され、
その後シリーズ化されますが、
最初は仮面の殺人鬼は登場せず、
そのパターンが確立するのは3作目以降です。
この作品も仮面の殺人鬼の正体は基本的には不明なのですが、
実は影響された別の人物が犯人、
というような犯人捜しを交えた作品も含まれています。
今回の作品と最も似ている過去作としては、
1980年に「プロムナイト」というカナダ映画があって、
ちょっと青春映画的な切なさを持った作品でした。
過去の惨劇が現代の殺人のきっかけとなっている、という点、
仮面の殺人鬼の正体が最後には明かされると言う点、
ある関係性を持つ若者の集団が、
次々と復讐のために殺されると言う点など、
多くの共通点のある作品です。
今回の映画は殺人シーンのバリエーションに工夫があり、
犯人の設定は、
途中の段取りではかなり無理のある感じもするのですが、
もう続編の製作も決まったようですし、
ひょっとすると続編で、
その辺りが伏線として回収される可能性もあります。
悪趣味であることは間違いがないので、
好みは分かれると思いますが、
こうしたジャンル物のお好きな方には、
ホラーへの愛と情熱を感じられる良作として、
お薦めしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
イーライ・ロス監督による新作ホラー映画が、
2023年の年末から公開されています。
これは仮面を付けた殺人鬼によって、
アメリカの田舎町の住民が次々と殺されるという、
1980年代くらいに大流行した、
低予算ホラー映画をリスペクトしつつ、
現代に合わせてリニューアルした作品で、
これといった目新しさはないのですが、
平均点以上の仕上がりにはなっていて、
ホラー映画のファンには、
まずは楽しめる作品になっていたと思います。
こうした殺人鬼物は、
1978年の「ハロウィン」という作品が、
今思うとパイオニアで、
マスクを被った殺人鬼の正体が、
その素顔を含めて最後まで分からない、
ある意味人間かどうかすら分からない、
という点が、公開当時観た時には、
拍子抜けに感じてガッカリした覚えがあるのですが、
今思うとかなり画期的であったのです。
脅かしの技巧という点では、
続編の「ハロウィン2」が、
非常に完成度が高く、
今観ても見ごたえがあります。
1980年には有名な「13日の金曜日」が公開され、
その後シリーズ化されますが、
最初は仮面の殺人鬼は登場せず、
そのパターンが確立するのは3作目以降です。
この作品も仮面の殺人鬼の正体は基本的には不明なのですが、
実は影響された別の人物が犯人、
というような犯人捜しを交えた作品も含まれています。
今回の作品と最も似ている過去作としては、
1980年に「プロムナイト」というカナダ映画があって、
ちょっと青春映画的な切なさを持った作品でした。
過去の惨劇が現代の殺人のきっかけとなっている、という点、
仮面の殺人鬼の正体が最後には明かされると言う点、
ある関係性を持つ若者の集団が、
次々と復讐のために殺されると言う点など、
多くの共通点のある作品です。
今回の映画は殺人シーンのバリエーションに工夫があり、
犯人の設定は、
途中の段取りではかなり無理のある感じもするのですが、
もう続編の製作も決まったようですし、
ひょっとすると続編で、
その辺りが伏線として回収される可能性もあります。
悪趣味であることは間違いがないので、
好みは分かれると思いますが、
こうしたジャンル物のお好きな方には、
ホラーへの愛と情熱を感じられる良作として、
お薦めしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2023年に観た映画を振り返る [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
クリニックは年末年始の休診期間中です。
今日は昨年観た映画を振り返ります。
昨年映画館で観た映画がこちらです。
1.かがみの孤城
2.イチケイのカラス
3.レジェンド&バタフライ
4.イニシェリン島の精霊
5.THE FIRST SLAM DUNK
6.アントマン&ワスプ クアントマニア
7.エンパイア・オブ・ライト
8. バビロン
9. #マンホール
10.ベネデッタ
11.エゴイスト
12.RRR
13.エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
14.ボーンズ アンド オール
15. シン・仮面ライダー
16.ケイコ 目を澄ませて
17.シャザム2
18. フェイブルマンズ
19.Winny
20.映画 ネメシス 黄金螺旋の謎
21.search #サーチ2
22.逆転のトライアングル
23.ロストケア
24.ヴィレッジ
25.TAR ター
26.最後まで行く
27.せかいのおきく
28.ザ・ホエール
29.ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
30. ザ・フラッシュ
31.M3GAN ミーガン
32.インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
33.岸辺露伴 ルーヴルへ行く
34.1秒先の彼
35.君たちはどう生きるか
36.ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE
37.Pearl パール
38.イノセンツ
39.ヴァチカンのエクソシスト
40. キングダム 運命の炎
41. クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
42. リボルバー・リリー
43. アステロイド・シティ
44. ブギーマン
45. スイート・マイホーム
46. バービー
47. 福田村事件
48. アリスとテレスのまぼろし工場
47. BAD LANDS バッド・ランズ
48. 栗の森のものがたり
49. キリエのうた
50. 月
51. キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
52. お前の罪を自白しろ
53. 愛にイナズマ
54. ゴジラ−1.0
55. ドミノ
56. 首
57. 怪物の木こり
58. 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
59. トーク・トゥ・ミー
60. ナポレオン
61. PERFECT DAYS
62. サンクスギビング
63. 枯れ葉
以上の63本です。
昨年も何かせわしなく、
何とか毎日を凌ぐという感じで過ごした1年でした。
かなり映画館に行ける時間は減りましたが、
昨年よりは多くの作品を観ています。
良かった5本を洋画と邦画とに分けて、
エントリーしてみます。
2023年に公開された新作に限っています。
それではまず洋画編です。
①ザ・ホエール
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-05-28-1
これは舞台劇の映画化ですが、
肥大した知性を持つ孤独な男が、
絶望した人生の最後に、
人生を踏み外した娘を救おうと格闘する物語で、
その伏線が張り巡らされた密度の高い作劇と、
ラストの盛り上がりが素晴らしく、
昨年最も興奮して観終えた1本でした。
②フェイブルマンズ
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-05-28-1
巨匠スピルバーグの自伝的映画という触れ込みですが、
両親との葛藤が非常にシリアスに描かれ、
その生々しさには驚かされましたし、
如何にもスピルバーグらしい映像技巧も盛沢山で、
まさに見応え満点の
巨匠の傑作の1つであることは間違いがないと思います。
③TAR ター
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-05-28-1
エリートの女性指揮者が、
学生へのパワハラを指摘されたことをきっかけとして、
その地位の全てを失うことになる、
今の時代の狂気を象徴するようなドラマで、
外連味たっぷりの作風は、
ちょっとアクどいという感じもするのですが、
ポランスキーの妄想恐怖映画を思わせるようなスタイルも魅力で、
ケイト・ブランシェットの演技も圧倒的でした。
④逆転のトライアングル
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-04-22
ヨーロッパの白人特有の恐怖を、
グロテスクに煽情的に描いた怪作で、
かなり悪趣味なので好みは分かれる映画ですが、
その追求の仕方は純ヨーロッパ的で魅力に溢れていました。
船上の嘔吐シーンには唖然とさせられましたね。
⑤キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-11-05-1
スコセッシ監督のもと、
デ・ニーロとディカプリオが共演した大作で、
アメリカ開拓時代の歴史の暗部を、
堂々たるタッチで描いた力作です。
ちょっと長過ぎる感じはあるのですが、
こういう映画をもっと観たいと、
心から思わされました。
それでは次は日本映画のベスト5です。
最近は日本における封切りの映画は、
良くも悪くも邦画が主体になっていますね。
①Winny
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-04-01
新鋭松本優作監督が、
ファイル共有ソフトWinnyの開発者が逮捕起訴され、
7年の裁判を戦った実話を、
極めて刺激的で感動的な社会派ドラマとして映画化した作品で、
その見事な構成力と取材の重み、
主演の東出昌大さんを初めとする役者陣の入魂の演技に、
今年一番の深い感銘を受けました。
事実の重みがリアルに感じられながら、
ノンフィクションではなく、
敢くまでフィクションの魅力にも溢れた力作でした。
②PERFECT DAYS
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2024-01-01-2
ヴェンダース監督が描いた、
東京を舞台にした人生スケッチで、
日本人には描けない切り口と映像表現が魅力です。
石川さゆりさんがバーのママ役で歌ったり、
田中泯さんが踊ったりと、
脇もある意味とても贅沢な布陣です。
③キリエのうた
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-10-22
岩井俊二さんの映画の中では、
個人的にはとても好きな1本です。
特に前半は大好きな「リップヴァンウィンクルの花嫁」
に似た奇談の雰囲気があって、
即興的な映像も音楽も最高でした。
現実感のない震災の描き方には、
納得のいかない部分はあるのですが、
長く心に残るとても愛しい作品でした。
④エゴイスト
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-03-26-1
ドキュメンタリー映画出身の松永大司監督が、
高山真さんの自伝的な小説を元にして、
特異な執着と愛の形を描いた、
感性豊かで刺激的劇映画を撮りました。
河瀨直美監督に近いアップのみを偏執狂的に連ねた演出は、
好みはかなり分かれるところですが、
主役の2人を演じた鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんが圧倒的で、
この2人の芝居と映像に酔う映画です。
⑤首
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-11-26
本当に心待ちにしていた北野武監督の時代劇映画で、
思っていた以上にぶっ飛んだカルト映画でした。
ちょっと石井輝男監督の残酷時代劇のような、
「悪趣味な爽快さ」があって、
一般受けは絶対にしませんが、
カルトとして長く語り継がれる怪作です。
今年はもう少し沢山の映画を観たいと思いますし、
また良い作品に出逢えればと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
クリニックは年末年始の休診期間中です。
今日は昨年観た映画を振り返ります。
昨年映画館で観た映画がこちらです。
1.かがみの孤城
2.イチケイのカラス
3.レジェンド&バタフライ
4.イニシェリン島の精霊
5.THE FIRST SLAM DUNK
6.アントマン&ワスプ クアントマニア
7.エンパイア・オブ・ライト
8. バビロン
9. #マンホール
10.ベネデッタ
11.エゴイスト
12.RRR
13.エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
14.ボーンズ アンド オール
15. シン・仮面ライダー
16.ケイコ 目を澄ませて
17.シャザム2
18. フェイブルマンズ
19.Winny
20.映画 ネメシス 黄金螺旋の謎
21.search #サーチ2
22.逆転のトライアングル
23.ロストケア
24.ヴィレッジ
25.TAR ター
26.最後まで行く
27.せかいのおきく
28.ザ・ホエール
29.ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
30. ザ・フラッシュ
31.M3GAN ミーガン
32.インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
33.岸辺露伴 ルーヴルへ行く
34.1秒先の彼
35.君たちはどう生きるか
36.ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE
37.Pearl パール
38.イノセンツ
39.ヴァチカンのエクソシスト
40. キングダム 運命の炎
41. クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
42. リボルバー・リリー
43. アステロイド・シティ
44. ブギーマン
45. スイート・マイホーム
46. バービー
47. 福田村事件
48. アリスとテレスのまぼろし工場
47. BAD LANDS バッド・ランズ
48. 栗の森のものがたり
49. キリエのうた
50. 月
51. キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
52. お前の罪を自白しろ
53. 愛にイナズマ
54. ゴジラ−1.0
55. ドミノ
56. 首
57. 怪物の木こり
58. 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
59. トーク・トゥ・ミー
60. ナポレオン
61. PERFECT DAYS
62. サンクスギビング
63. 枯れ葉
以上の63本です。
昨年も何かせわしなく、
何とか毎日を凌ぐという感じで過ごした1年でした。
かなり映画館に行ける時間は減りましたが、
昨年よりは多くの作品を観ています。
良かった5本を洋画と邦画とに分けて、
エントリーしてみます。
2023年に公開された新作に限っています。
それではまず洋画編です。
①ザ・ホエール
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-05-28-1
これは舞台劇の映画化ですが、
肥大した知性を持つ孤独な男が、
絶望した人生の最後に、
人生を踏み外した娘を救おうと格闘する物語で、
その伏線が張り巡らされた密度の高い作劇と、
ラストの盛り上がりが素晴らしく、
昨年最も興奮して観終えた1本でした。
②フェイブルマンズ
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-05-28-1
巨匠スピルバーグの自伝的映画という触れ込みですが、
両親との葛藤が非常にシリアスに描かれ、
その生々しさには驚かされましたし、
如何にもスピルバーグらしい映像技巧も盛沢山で、
まさに見応え満点の
巨匠の傑作の1つであることは間違いがないと思います。
③TAR ター
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-05-28-1
エリートの女性指揮者が、
学生へのパワハラを指摘されたことをきっかけとして、
その地位の全てを失うことになる、
今の時代の狂気を象徴するようなドラマで、
外連味たっぷりの作風は、
ちょっとアクどいという感じもするのですが、
ポランスキーの妄想恐怖映画を思わせるようなスタイルも魅力で、
ケイト・ブランシェットの演技も圧倒的でした。
④逆転のトライアングル
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-04-22
ヨーロッパの白人特有の恐怖を、
グロテスクに煽情的に描いた怪作で、
かなり悪趣味なので好みは分かれる映画ですが、
その追求の仕方は純ヨーロッパ的で魅力に溢れていました。
船上の嘔吐シーンには唖然とさせられましたね。
⑤キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-11-05-1
スコセッシ監督のもと、
デ・ニーロとディカプリオが共演した大作で、
アメリカ開拓時代の歴史の暗部を、
堂々たるタッチで描いた力作です。
ちょっと長過ぎる感じはあるのですが、
こういう映画をもっと観たいと、
心から思わされました。
それでは次は日本映画のベスト5です。
最近は日本における封切りの映画は、
良くも悪くも邦画が主体になっていますね。
①Winny
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-04-01
新鋭松本優作監督が、
ファイル共有ソフトWinnyの開発者が逮捕起訴され、
7年の裁判を戦った実話を、
極めて刺激的で感動的な社会派ドラマとして映画化した作品で、
その見事な構成力と取材の重み、
主演の東出昌大さんを初めとする役者陣の入魂の演技に、
今年一番の深い感銘を受けました。
事実の重みがリアルに感じられながら、
ノンフィクションではなく、
敢くまでフィクションの魅力にも溢れた力作でした。
②PERFECT DAYS
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2024-01-01-2
ヴェンダース監督が描いた、
東京を舞台にした人生スケッチで、
日本人には描けない切り口と映像表現が魅力です。
石川さゆりさんがバーのママ役で歌ったり、
田中泯さんが踊ったりと、
脇もある意味とても贅沢な布陣です。
③キリエのうた
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-10-22
岩井俊二さんの映画の中では、
個人的にはとても好きな1本です。
特に前半は大好きな「リップヴァンウィンクルの花嫁」
に似た奇談の雰囲気があって、
即興的な映像も音楽も最高でした。
現実感のない震災の描き方には、
納得のいかない部分はあるのですが、
長く心に残るとても愛しい作品でした。
④エゴイスト
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-03-26-1
ドキュメンタリー映画出身の松永大司監督が、
高山真さんの自伝的な小説を元にして、
特異な執着と愛の形を描いた、
感性豊かで刺激的劇映画を撮りました。
河瀨直美監督に近いアップのみを偏執狂的に連ねた演出は、
好みはかなり分かれるところですが、
主役の2人を演じた鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんが圧倒的で、
この2人の芝居と映像に酔う映画です。
⑤首
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-11-26
本当に心待ちにしていた北野武監督の時代劇映画で、
思っていた以上にぶっ飛んだカルト映画でした。
ちょっと石井輝男監督の残酷時代劇のような、
「悪趣味な爽快さ」があって、
一般受けは絶対にしませんが、
カルトとして長く語り継がれる怪作です。
今年はもう少し沢山の映画を観たいと思いますし、
また良い作品に出逢えればと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。