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BCGワクチンのCOVID-19後遺症への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BCGの新型コロナ後遺症への有効性.jpg
Journal of Internal Mdicine誌に、
2022年5月22日ウェブ掲載された、
BCGワクチンを新型コロナウイルス感染症の後遺症に活用する、
という臨床試験の結果をまとめた論文です。

BCGワクチンというのは、
牛の結核菌由来の生ワクチンで、
結核の予防ワクチンとして開発されました。

そのまま他のワクチンのように接種すると、
皮膚が腫れあがったり水疱が出来るような副反応が強いので、
日本では独特の剣山のような器具を用いて、
複数の針を皮膚に押し当て、
判子を押すようにして注射する方法が開発され使用されています。
ただ、これは日本とその器具を輸入して使用している、
一部の国のみの接種法です。

日本では定期接種として、
1歳未満のお子さんの時期に接種が行われていますが、
こうした接種スケジュールも、
一部の結核の流行国以外では行われていません。

それはBCGを一旦打ってしまうと、
結核菌に対する身体の免疫が活性化されるので、
結核に実際に感染した際の診断が難しくなってしまうことと、
このワクチンの成人の結核の予防効果は、
充分に確認されていない、
という点がその主な理由です。

BCGワクチンは牛の結核菌を使用するという、
古い製法によるワクチンで副反応が強く、
その効果も現代の目で見るとそれほど高いものではないのです。
しかし、その後BCGを超える結核予防ワクチンが、
登場していないこともまた事実で、
そのためにやや消極的に使用されている、
というのが実際である訳です。

ところが…

BCGワクチンには、
結核予防以外に有効性があるのでは、
という見解が、
最近相次いで報告されるようになりました。

その幾つかは以前ブログでもご紹介しています。

複数の疫学研究において、
出生時にBCGワクチンを接種することにより、
子供の死亡リスクが減少する、
という報告が存在しています。
その後の解析によりこれは結核の予防効果のためではなく、
お子さんの時期の敗血症や呼吸器の感染症が、
トータルに減少したためと考えられています。

動物実験においても、
BCG接種がその後の死亡リスクを低下させ、
結核以外の細菌感染を予防するという結果が報告されています。

BCGはまた、
癌に対して非特異的免疫療法としても、
その効果が確認されています。
膀胱癌への補助的治療としてのBCGの効果は、
世界的に評価されている知見です。
更に疫学データにおいては、
出生時のBCGワクチンの接種が、
肺癌のリスクを低下させたという知見もあります。

それでは、
何故結核ワクチンのBCGが、
他の多くの感染症や癌に対して効果があるのでしょうか?

免疫には、
対象を選ばず相手を攻撃する自然免疫と、
相手に合わせて抗体を産生し、
次に同じ病原体の攻撃を受けた際には、
速やかに対応する獲得免疫という2種類があります。

これまでの研究により、
BCGは自然免疫の賦活による効果と、
獲得免疫の賦活による効果の、
両方があると想定されています。

最近になってBCGワクチンが注目されているのは、
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対しても、
BCGワクチンには一定の予防効果があるのではないか、
という考え方があるからです。

この点については幾つかの臨床試験が施行されていて、
その一部はブログでご紹介したことがあります。

結果は若干の有効性が確認された、
というようなものもありますが、
トータルに見て新型コロナウイルス感染症の、
感染予防や重症化予防に、
BCGワクチンを推奨する、というほどの、
明確な有効性は確認されていないのが実際です。

今回の臨床研究は南アメリカの複数施設において、
新型コロナウイルス感染症に感染後の、
嗅覚障害と味覚障害の持続に与える、
BCGワクチン接種の効果を検証したものです。

新型コロナウイルス感染症の378名の患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はBCGワクチンを皮内注射で施行し、
もう一方は偽の注射を施行して、
その後の経過を比較しています。

その結果、
6週間の時点での嗅覚障害の改善率は、
BCG接種群では83.1%であったのに対して、
偽注射群では68.7%となり、
同様に味覚障害の改善率も、
BCG接種群では81.2%、偽注射群では63.4%で、
いずれもBCGワクチン群で有意な改善が認められました。
BCG群では半年の時点での細胞性免疫の賦活があり、
より少ない量の抗体産生で、
新型コロナウイルスの中和が可能となるような効果が示唆されましたが、
こちらは有意な差ではありませんでした。

このように、
BCGワクチンの接種には、
細胞性免疫を賦活して、
多くのウイルス感染の予防に寄与するような効果のあることは、
ほぼ間違いがないのですが、
新型コロナウイルス感染症に限ってその有効性を見た時には、
単独でその使用を推奨するほどの、
有効性は確認されない、
という辺りが実際であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナワクチン4回目接種の有効性(イスラエルの短期データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン4回目接種の有効性.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年5月24日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン4回目接種の有効性についての論文です。

日本でも高齢者などに対象を限定して、
4回目の新型コロナワクチン接種が予定されていますが、
ワクチン接種で先行しているイスラエルでは、
2021年年末より2022年初から、
最初は免疫不全の患者に、
それから60歳以上の高齢者や、
医療従事者など感染リスクの高い対象に限定して、
ファイザー・ビオンテック社製新型コロナワクチンの接種が、
施行されました。
3回目接種から4か月以降経過していることが条件です。

その有効性はどのようなものだったのでしょうか?

今回の検証では、
年齢が60歳以上の4回目接種の対象者で、
4回目接種を施行した27876名と、
3回目接種のみを施行した69623名の、
オミクロン株流行期の感染予防効果を比較しています。

その結果、
遺伝子検査で診断された新型コロナウイルス感染症の、
感染予防と重症化予防を併せた有効率は、
3回接種のみの場合と比較して、
4回目接種後3週間の時点では、
65.1%(95%CI:63.0から67.1)と算出されました。
ただ、その時点をピークとして有効率は低下し、
4回目接種後10週間の時点では、
22.0%(95%CI:4.9から36.1)まで低下していました。
一方で重症化予防効果については10週の時点でも、
72%を超える有効率を維持していました。

このように、
4回目接種は3回目接種と比較して、
感染予防効果については有効ではあるものの、
3回目までの接種と比較するとその維持期間は非常に短く、
3か月はもたずに低下してしまうようです。
その一方で重症化予防効果についてはより安定して持続していますが、
オミクロン株流行期の重症化率自体は非常に低いものなので、
矢張り今のワクチンを利用した4回目接種は、
重症化リスクの高い対象に限って、
施行することが妥当であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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オミクロン株とデルタ株の超過死亡比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オミクロン株とデルタ株の超過死亡比較.jpg
JAMA誌に2022年5月20日ウェブ掲載された、
オミクロン株とデルタ株の超過死亡を比較したレターです。

2021年には重症化率が高いとされるデルタ株の感染拡大があり、
それが2021年暮れから2022年になり、
オミクロン株主体の感染にシフトしました。

一般的にはオミクロン株の感染は軽症である反面、
その感染力は非常に強く、
特に小児を含む若年者への感染拡大が特徴とされました。
一方で、いやいやオミクロン株の重症化も少なくはない、
と言う意見や、
後遺症と称されるような、
残存障害の比率は高い、というような意見もあります。

それでは、
デルタ株とオミクロン株の死亡率には、
実際にどのような違いがあるのでしょうか?

今回のデータはアメリカ、
マサチューセッツ州の疫学データを解析したもので、
デルタ株流行期とオミクロン株流行期の死亡数を、
通常の時期の死亡数と比較して、
その差を超過死亡として、
間接的にその死亡率を比較するという手法です。

その結果、
23週間のデルタ株の流行期に、
超過死亡は1975件と算出された一方、
8週間のオミクロン株の流行期の超過死亡は、
2294件と推計されました。
その比較により、
1週間当たりの超過死亡率は、
デルタ株に比較してオミクロン株の流行期には、
3.34倍(95%CI:3.14から3.54)有意に増加していたと算出されました。

これは勿論2020年の最初の新型コロナの流行時期には、
遥かに高い超過死亡が確認されているのですが、
その後の経過の中でみると、
デルタ株の流行期より、
むしろオミクロン株の流行期の方が、
新型コロナの影響で死亡する人の比率は、
数倍多い可能性があるというちょっと意外な結果です。

これがデータの取られたアメリカの一地域に限った現象であるのか、
それとも日本を含めてより大きな範囲で、
実際にはそうした傾向があるのかはまだ分かりませんが、
国内を含めてそうした検証は、
是非行われるべきではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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心血管疾患二次予防における地中海ダイエットの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心血管疾患二次予防における地中海ダイエットの有効性.jpg
Lancet誌に2022年5月14日掲載された、
地中海ダイエットの、
心血管疾患二次予防における有効性についての論文です。

地中海ダイエット(Mediterranean Diet)というのは、
ギリシャなど地中海地方の伝統的な食事パターンのことで、
その内容は必ずしも報告や研究で一致している訳ではありませんが、
ナッツやオリーブオイルを多く摂り、
野菜や果物、魚を多く摂り、
赤身肉な加工肉はあまり摂らない、
というような特徴は一定しています。

この地中海ダイエットに、
心血管疾患を予防する効果があり、
生命予後にも良い影響を与えるということは、
多くの精度の高い臨床試験や疫学データにおいて、
ほぼ実証されている事実です。

ただ、心血管疾患の再発予防効果について、
実証的に検証したような精度の高い臨床データは、
これまでにあまり存在していませんでした。

今回の臨床試験はスペインの単独施設において、
冠動脈疾患のある1002名を登録してくじ引きで2つの群に分けると、
一方は地中海ダイエットを栄養士が指導し、
もう一方は脂質のみを総カロリーの30%未満に制限して、
中間値で7年の経過観察を施行しています。

その結果、
低脂肪食と比較して地中海ダイエットは、
関連する因子を補正した上での心血管疾患リスクを、
0.719から0.753倍有意に低下させていました。
年間1000人当たりの発症率は、
地中海ダイエット群が28.1件に対して、
低脂肪食群が37.7件でした。

このように、
心血管疾患の再発予防効果が、
食事の脂肪は制限せずにその組成を変えることに力点を置いた、
地中海ダイエットにおいてより顕著であったことは、
大変興味深く、
今後地中海ダイエットのうちのどような成分が、
そうした健康影響に結び付いているのか、
より詳細な検証に期待したいと思います。

食事療養のトレンドは、
脂質制限から脂質を充分に摂った上でその組成に留意する、
という方向に変わって来ていることは、
間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アスピリンの心血管疾患一次予防の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの一次予防の有効性.jpg
JAMA誌に2022年4月26日掲載された、
アスピリンの一次予防の有効性についての提言です。

1日80から100mg程度のアスピリンを継続的に飲むことに、
心血管疾患や腺癌というタイプの癌の、
予防効果のあることは、
多くの疫学データや精度の高い臨床試験においても、
実証されている事実です。

ただ、その一方でアスピリンには出血系の合併症があり、
使用を継続することで、
消化管出血や脳出血などのリスクは増加します。

従って、アスピリンを服用することが、
その人にとって有益であるかどうかは、
その作用と有害事象とのバランスに掛かっています。

その有効性は一度そうした病気になった人の、
再発予防効果としては確立されていますが、
まだ病気にはなっていない場合の、
一次予防効果については、
どのような対象者を選ぶかによっても、
その結果は様々で統一した見解とはなっていません。

2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの一次予防効果を検証した論文では、
アスピリンを使用することにより、
心血管疾患は12%減少し、
その一方で出血系の合併症は29%増加していました。

2019年のJAMA誌に掲載された、
システマティック・レビューとメタ解析の論文では、
これまでの13の介入試験のトータル164225名のデータをまとめて解析した結果として、
アスピリンは心血管疾患のリスクを相対リスクで11%(95%CI: 0.84から0.95)、
絶対リスクで0.38%(95%CI: 0.20から0.55)、
それぞれ有意に低下させていました。
これは265人にアスピリンを使用することで、
1人の心血管疾患を予防出来る、
という確率と推計されます。

一方でアスピリンを使用することによる、
重篤な出血系合併症のリスクは、
相対リスクで1.43倍(95%CI: 1.30から1.56)、
絶対リスクで0.47%(95%CI: 0.34から0.62)、
それぞれ有意に増加していました。
これは210名にアスピリンを使用すると、
1人が出血系の合併症を発症する、
というくらいの確率と推計されます。

こうした予防効果と有害事象のバランスを、
どのように考えれば良いのでしょうか?

今回の提言は、
米国予防医学専門委員会(USPSTF)によるもので、
これまでの提言より一歩踏み込んで、
年齢が60歳以上での心血管疾患の一次予防目的のアスピリン使用開始は、
出血系合併症のリスクの方が、
その予防効果を上回るという判断から、
推奨はされないとしています。

また、40歳から59歳での同様のアスピリン使用についても、
その後の心血管疾患リスクが高い対象者に絞り、
個別に慎重に判断されるべきとしています。

アスピリンは一時万能薬のように言われたこともあり、
全ての中高年に推奨されるようなニュアンスで、
過大に評価されたこともありました。
今でも心血管疾患の二次予防(再発予防)については、
その有効性は揺らぐものではありませんが、
まだ病気にはなっていない段階での発症予防(一次予防)については、
その有効性と比較して出血系合併症のリスクは、
当初想定していたより高いものなので、
その使用は今後はより慎重に検討する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症に対するアンドロゲン抑制療法の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
朝から保育園の健診があり、
そこから老人ホームの診療に廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19に対するアンドロゲン抑制療法.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年4月19日ウェブ掲載された、
男性ホルモンを抑制することの、
新型コロナウイルス感染症への有効性についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の治療には、
多くの薬剤が使用されていますが、
一定の有効性はあるものの、
決定打のような治療法は開発されていません。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、
人間の身体の細胞にある、
ACE2という受容体に結合することにより感染します。
その後にもう1つのステップがあり、
コロナウイルスに特徴的な表面の突起(スパイク)が、
感染細胞にあるセリンプロテアーゼ(TMPRSS2)という酵素により、
変化(プライミング)を受け、
それにより細胞内に侵入することが出来ると考えられています。

このACE2とTMPRSS2と同じように、
人間の肺の上皮細胞に発現しているのが、
男性ホルモンであるアンドロゲンの受容体です。

アンドロゲンはTMPRSS2と相互に刺激する関係にあり、
アンドロゲンによりTMPRSS2の発現は増加します。

この知見からは、
新型コロナウイルス感染症の罹患時に、
アンドロゲンを抑制することによって、
その予後が改善するという可能性が示唆されます。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
18歳以上で新型コロナウイルス感染症に罹患し、
人工呼吸器は必要ないけれど、入院治療の適応と診断された男性患者を、
72時間以内にくじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の治療に上乗せして、
アンドロゲンを抑制するデガレリクスを使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
その予後を比較検証しています。

このデガレリクスは、
前立腺癌の治療薬として日本でも使用されている薬剤で、
ゴナドトロピンを抑制することにより、
強力にアンドロゲンを低下させる注射薬で、
今回は240㎎を皮下注射で使用しています。

試験は早期に中止されていますが、
96名の患者が解析されていて、
そのうちの62名はデガレリクス群に、
34名は偽薬群に割り付けられています。
その結果、治療開始後15日の時点で、
生命予後を含む患者の予後には、
明確な差は認められませんでした。

今回の臨床試験は大変興味深い試みでしたが、
少なくとも明確な差は両群で認められず、
現時点で推奨される治療とは言えません。
ただ、例数が少ないなど限界もあるため、
今後こうした治療の試みが、
意外に奏功するような報告が得られるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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夜勤を含む交代勤務と健康リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シフト制勤務と生命予後.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年5月4日ウェブ掲載された、
夜勤を含む交代制勤務が健康に与える影響についての論文です。

夜勤と昼勤、早出、遅出などを不規則に繰り返す、
交代制勤務は、
医学的には健康面での悪影響が指摘されています。

夜勤を含む交代制勤務は、
正常なホルモンなどによる日内リズムを乱し、
睡眠障害や他の精神疾患、
認知機能低下、慢性内臓疾患などのリスクを高め、
生命予後にも悪影響を与えることが、
これまでの疫学研究などにより報告されています。
WHOの専門部会は、
発癌のリスクにもなり得るという報告もしています。

ただ、そうしたデータの多くは比較的短期間のもので、
長期の夜勤を含む交代勤務が、
その後の健康にどのような影響を与えるのかについては、
データは限られているのが実際です。

今回の研究はこうした交代勤務の職種として代表格でもある、
看護師の大規模出来学データを活用して、
夜勤を含む交代勤務の長期の影響を検証しています。

対象は46318名の女性看護師で、
24年という長期の健康観察を施行し、
70歳の時点で明確な記憶障害や身体障害がなく、
多くの慢性病にも罹患していない状態を健康な加齢として、
その頻度を比較検証しています。

その結果、
夜勤を含む交代勤務をしていない看護師に比較して、
10年以上そうした勤務をしていると、
健康な加齢の比率が21%(95%CI:0.69から0.91)有意に低下していました
それより短い勤務でもそうした傾向は認められましたが、
統計的には有意ではありませんでした。
ここで認知機能低下も健康な加齢の除外要素として検討すると、
10年以上の夜勤を含む交代勤務は、
健康な加齢の比率を27%(95%CI:0.60から0.89)、
有意に低下させていました。

このように、
短期的な影響ばかりでなく、
夜勤を含む交代勤務は、
健康長寿の阻害要因ともなっている可能性があり、
今後こうした勤務をどのように考え、
その健康への悪影響を、
どのようにして修正するべきなのか、
より深い議論が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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治療中の甲状腺機能と心血管疾患の生命予後との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
甲状腺の治療と心血管疾患死亡リスク.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年5月12日ウェブ掲載された、
甲状腺ホルモン剤による治療と、
心血管疾患の生命予後との関連を検証した論文です。

甲状腺ホルモン製剤(通常はT4製剤)は、
主に甲状腺機能低下症の治療として用いられる薬剤で、
それ以外に甲状腺腫瘍の増大を抑えるために、
TSH抑制のために使用されることもあります。

甲状腺ホルモン製剤を内服中の患者さんは、
甲状腺機能の指標であるTSHの数値が基準値内のこともあり、
薬が不足していたり、飲み忘れがあったりすると、
甲状腺機能低下(TSH高値)となることもあり、
また薬が多すぎたり、もともとTSHを抑制する目的で使用されていると、
甲状腺機能更新(TSH低値)となることもあります。

一般的に甲状腺機能低下症も、
甲状腺機能亢進症も、
正常な甲状腺機能を持つ人と比較すると、
心血管疾患のリスクが増加すると考えられていて、
それを裏打ちするようなデータも存在しています。

それでは、
甲状腺ホルモン製剤を使用中の患者さんでも、
治療中の甲状腺機能によって、
心血管疾患のリスクには差があるのでしょうか?

今回の研究では、
アメリカの退役軍人の医療保険データを活用して、
甲状腺ホルモン製剤を使用中の患者さんの甲状腺機能と、
心血管疾患による死亡リスクとの関連を検証しています。
観察期間の中間値は4年で、年齢の中間値は67歳、
大多数は男性です。

18歳以上で甲状腺ホルモン製剤を使用している、
トータル705307名のデータを解析したところ、
甲状腺機能の指標であるTSHが0.5から5.5mIU/Lの基準値である場合と比較して、
0.1未満と医原性甲状腺機能亢進症の状態にあると、
心血管疾患による死亡リスクは、
1.39倍(95%CI:1.32から1.47)有意に増加していました。
一方でTSHが20を超えるという甲状腺機能低下症の状態では、
心血管疾患による死亡リスクは、
2.67倍(95%CI:2.55から2.80)こちらも有意に増加していました。

このように
甲状腺機能が治療により極端に機能低下や機能亢進に振れると、
それ自体が心血管疾患の死亡リスクを増加させる要因になるので、
甲状腺ホルモン製剤使用時の甲状腺機能は、
基準値をそれほど逸脱しない範囲に、
留めることが重要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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インフルエンザワクチンと心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザワクチンと心血管疾患リスク.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年4月29日ウェブ掲載された、
季節性インフルエンザワクチンの接種と、
心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

新型コロナの蔭に隠れている感じがありますが、
季節性インフルエンザワクチンの接種が、
毎年行われています。

今のワクチンはスプリットワクチンと呼ばれる不活化ワクチンで、
感染そのものを予防する効果は、
それほど高いものではないのですが、
集団免疫と重症化予防の観点からは、
一定の有効性があるとする評価が一般的です。

ただ、この数年は新型コロナの流行により、
その感染は非常に低いレベルで推移しているので、
それでも毎年の接種が必要なのか、
と言う点については、
こうした状況が今後も続くのであれば、
議論の必要はあるように思います。

最近指摘されることの多い知見として、
インフルエンザ感染と急性冠症候群などの心血管疾患との間には、
一定の関連があり、
インフルエンザ感染の予防により、
心血管疾患のリスクも低減出来るのでは、
という考え方があります。

今回の研究は2020年から2021年という、
最近の期間に施行された臨床試験のデータを、
まとめて解析したメタ解析の手法により、
この問題の検証を行っているものです。

その2年間に発表された、6つの介入試験に含まれる、
トータル9001名の臨床データをまとめて解析したところ、
インフルエンザワクチンの接種は、
心血管疾患の発症リスクを、
34%(95%CI:0.53から0.83)有意に低下させていました。
特に急性冠症候群に絞ってみると、
そのリスクを45%(95%CI:0.41から0.75)有意に低下させていました。

このように、
インフルエンザワクチンによる免疫刺激は、
その後の心血管疾患のリスクに影響を与えている可能性があり、
そのメカニズムや因果関係を含めて、
今後より詳細な検証する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者の高血圧治療はどのくらい続ければ効果があるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者の血圧コントロールの有効期間.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2022年5月9日ウェブ掲載された、
高齢者の降圧治療の心血管疾患予防効果と、
その発現までの治療期間を検証した論文です。

「高血圧の薬を飲むと、
死ぬまで止められないのですよね」
というような話は、
特にお薬を飲むことに抵抗のある患者さんからは、
よく聞かれる質問です。

僕は一応「薬の始め方・止め方」という本も書いているので、
「そんなことはありませんよ」というお話はするのですが、
勿論1か月程度の降圧治療に、
それほどの効果のないことは間違いがありません。

高血圧には、
上の血圧が200mmHgを超えるような、
すぐにでも下げないと、
脳卒中などのリスクがある、
もしくはもう起こっている可能性がある、
というような緊急を要するような状況もありますが、
多くの高血圧はそこまでの緊急性はなく、
生活改善と共に、降圧剤を使用して血圧コントロールをするのは、
主に脳卒中や心筋梗塞などの、
将来的な心血管疾患の予防のためです。

この心血管疾患の予防のためには、
ある程度の期間の血圧コントロールの継続が必要です。

通常心血管疾患の発症リスクを、
その後5年で算出することが多いのは、
概ね5年は血圧コントロールの継続が、
そのためには必要であることを意味しています。

特に治療の継続期間が問題となるのは、
患者が高齢者である場合で、
たとえば持病があって、
その後5年以内に亡くなる可能性が高いということになると、
その時点からの降圧剤の使用は、
必ずしも必要性があるとは言えなくなります。

今回の研究はこれまでの6つの精度の高い臨床試験に含まれる、
降圧治療を施行した60歳以上の27414名のデータを、
その観点からまとめて解析したものです。

その結果、
収縮期血圧が140mmHg未満を目標として、
降圧治療を施行すると、
心血管疾患の発症リスクを、
トータルでは21%(95%CI:0.71から0.81)、
有意に低下させていました。

これを治療開始後からの期間で解析すると、
500人の治療当たり1人の心血管疾患を減少させるためには、
平均で9.1ヶ月(95%CI:4.0から20.6)が必要で、
これを200人に1人とするには19.1ヶ月(95%CI:10.9から34.2)、
100人に1人とするには34.4ヶ月(95%CI:22.7から59.8)、
が必要と算出されました。

このように、
60歳以上での収縮血圧140mmHg未満を目指す降圧治療は、
予測される余命が3年以上ある患者には適している可能性がありますが、
余命が1年未満と想定されるような場合には、
あまり意味のない可能性が高いと考えられました。

これはやや極端で機械的な分析なので、
個別の事例によって判断される必要がありますが、
降圧剤による治療というものは、
その患者さんの今後の人生を必要な因子として考慮に入れた上で、
その継続を考える必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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