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大腸ポリープの家族歴と大腸癌との関連(スウェーデンの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ポリープと大腸癌.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年5月4日ウェブ掲載された、
大腸ポリープの家族歴と大腸癌リスクとの関連についての論文です。

大腸癌はスクリーニング(検診)の有効性が、
確認されている数少ない癌の1つです。

大腸癌の多くは、
腺腫性ポリープから遺伝子変異が集積して、
発癌に至ることが分かっています。
そのため、大腸内視鏡検査でポリープを早期発見し、
それを内視鏡的に切除することにより、
大腸癌は予防され、
検診による生命予後の改善も確認されているのです。

家族性腺腫性ポリポーシスという遺伝性の疾患があり、
これは大腸などにポリープが多発して、
放置すれば高率に癌化するという病気です。

ただ、そうした病気がなくても、
通常の腺腫性ポリープも家族で発生しやすい傾向はあり、
大腸ポリープの家族歴は、
大腸癌発症の一定のリスクであると想定されていますが、
それではどのくらいのリスクがあるのか、
という点については、
あまり明確なことが分かっている訳ではありません。

今回の研究は、
国民総背番号制が取られているスウェーデンにおいて、
大腸癌の事例68060名を、
条件をマッチさせた333753名のコントロールとマッチングさせて、
大腸ポリープの家族歴と、
その後の大腸癌リスクとの関連を比較検証しています。

その結果、
親など一親等に大腸ポリープがあると、
その後の大腸癌リスクは1.40倍(95%CI:1.35から1.45)、
有意に増加していました。
ポリープの種類で分けると、
過形成性ポリープは1.23倍に対して、
腺腫性ポリープは1.44倍となっています。

この大腸ポリープの家族歴と大腸癌との関連は、
一親等の大腸ポリープ患者が2人以上では、
1.70倍(95%CI:1.52から1.90)、
家族の大腸ポリープの診断が50歳未満であると、
1.77倍(95%CI:1.57 から1.99)と、
それぞれ高くなっていました。

特に年齢が50歳未満で診断された大腸癌のリスクに限って解析すると、
一親等の大腸ポリープ患者が2人以上では、
3.34倍(95%CI:2.05から5.43)とより高くなっていました。

このように一親等に大腸ポリープの患者さんが、
特に2人以上いる場合の大腸癌発症リスクは高く、
大腸癌スクリーニングをどのような対象者に行う必要があるかは、
こうしたデータも取り入れつつ、
検証される必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ヒスタミンと運動との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ヒスタミンと運動.jpg
Science Advances誌に、
2021年4月14日掲載された、
ヒスタミンと運動との関連についての論文です。

とても面白くて刺激的な内容だと思います。

運動が健康に良いということは、
多くの疫学データにより実証されている事実です。

適度な運動習慣は、
心血管疾患や糖尿病、気管支喘息などの慢性疾患の多くにおいて、
その予防にもなると共に、
治療でも有効であることが実証されています。

しかし、こうした運動の慢性効果のメカニズムが、
実際にどのようなものであるのかについては、
必ずしも明確なことが分かっていません。

運動というのは基本的に身体に負荷を掛ける行為です。
運動により筋肉の血流は増加し、
細胞内のミトコンドリアのエネルギー産生は増し、
インスリンの感受性は高まり、
全身の血流状態も改善します。

これは基本的には筋肉に負荷が掛かることに対する、
身体の適応(順応)のシステムが関連していると想定されていますが、
その詳細なメカニズムは不明の点が多いのが実際です。

それ以外に筋肉由来の一種のホルモンが、
脂肪の燃焼を促すような仕組みも、
報告されています。

さて、運動に伴う血流増加の仕組みにおいて、
最近注目されているのがヒスタミンの働きです。

ヒスタミンはヒスチジンというアミノ酸から合成される生体アミンで、
その多くは白血球に蓄えられて刺激により分泌され、
それ以外に少量が胃粘膜と脳に存在しています。
ヒスタミンの増加は、
じんま疹や鼻水などのアレルギー症状を引き起こし、
脳では覚醒アミンとして覚醒状態のコントロールを行い、
胃粘膜では胃酸の分泌を刺激します。

ヒスタミンには複数の受容体があり、
H1受容体が刺激されると主にじんま疹や鼻水などの反応が起こり、
H2受容体が刺激されると胃酸の分泌が主に抑制されます。
そのためH1受容体の阻害剤が、
風邪や花粉症の治療には使用され、
H2受容体の阻害剤が、
胃潰瘍や胃炎の薬として使用されているのです。

さて、このヒスタミンは、
運動後の血流増加を引き起こす原因物質の1つであることが、
以前より指摘されています。

しかし、運動後に起こる全身変化のうち、
ヒスタミンがどの程度影響しているのかの実際については、
まだあまり明確なことが分かっていません。

そこで今回の検証では、
健康なボランティアを被験者として、
運動による急性の身体の変化と、
それを繰り返した場合の慢性の変化を、
くじ引きで2つの群に分け、
一方はH1受容体とH2受容体の、
両方の阻害剤を服用後に運動し、
もう一方は偽薬を服用後に運動して、
血流や血管内膜機能、インスリン感受性、
ミトコンドリアのエネルギー産生能などを、
比較検証しています。
例数は急性影響で8名、慢性影響でも20名と少ないのですが、
非常に詳細な生理学的分析がされています。

使用されている薬剤は、
H1受容体の阻害剤としてフェキソフェナジン(商品名アレグラなど)を、
単回で540㎎使用し、
H2受容体の阻害剤としてはラニチジン(商品名ザンタックなど)を単回で300㎎、
もしくはフェモチジン(商品名ガスターなど)を単回で40mgが、
使用されています。
これは胃薬は通常の日本での1日量を1回という量で、
フェキソフェナジンは日本での1日量は、
120mgから240mgなのでかなり多いのですが、
海外では180mgの単回投与が一般的なので、
その3錠分を1回で、ということになります。
ただ、この薬は単回で800mgまでは、
人体に有害な影響はないとされています。

その結果、
試験開始後6週間後の運動機能の改善度や、
ミトコンドリアのエネルギー産生能などは、
偽薬に比較してヒスタミン拮抗薬使用群では、
有意に低下していました。

また、
抹消のインスリン感受性やブドウ糖の取り込み能、
末梢血管の血流や内膜機能においても、
その改善度はヒスタミン拮抗薬使用群で有意に低下していました。

そして急性影響についても、
運動後の血流増加は、
ヒスタミン拮抗薬の使用により抑制されていました。

つまり、運動による健康影響のうち、
糖代謝や血流改善、エネルギー代謝の増加などは、
主にヒスタミンの増加によりコントロールされていて、
通常の使用量の倍量程度の、
一般的なヒスタミン阻害剤の服用により、
かなり大きな影響が出ることが確認されたのです。

この結果はまた別個のデータにより、
検証される必要がありますが、
H1ブロッカーとH2ブロッカーの併用により、
これだけ大きな影響があるという指摘は重要視する必要があり、
今後その適正使用についても、
問題となる可能性を秘めていると思います。

今後の検証に注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症に有効な予防薬はあるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの予防薬.jpg
British Medical Journal誌に2021年4月26日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の予防薬についてのメタ解析の論文です。

新型コロナウイルス感染症の治療は、
現状有用性が明確なのは、
重症の事例におけるステロイド治療のみで、
抗ウイルス剤のレムデシビルが、
こちらも重症の事例のみで若干の有効性が期待される、
という程度です。

つまり、軽症から中等症の事例で、
明確な効果のある薬剤は確認されていません。

また、現状の日本のように、
市中感染が拡大しているような状況では、
濃厚接触者や、
濃厚接触とまではいかなくても、
感染のリスクが高い対象者に、
予防的に使用するような薬が、
感染防御と社会活動を両立させるためには、
非常に必要性が高いのですが、
ワクチン以外の予防薬も、
現状では明確に有効性の確認されたものはありません。

今回の研究は、
これまでの精度の高い介入研究のみをまとめて解析した、
システマティックレビューとネットワークメタ解析で、
最新の手法を用いて、
新型コロナウイルス感染症の予防薬の候補を、
比較検証しているものです。

その結果、
9つの介入試験がネットワークメタ解析の対象となり、
そのうちの6つの試験はヒドロキシクロロキンを対象としたもので、
1つはイベルメクチンとカラギーナン点鼻の併用、
2つはイベルメクチン単独の予防効果を検証したものでした。

ヒドロキシクロロキンはマラリア治療薬ですが、
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用があるとされ、
治療と予防の双方で臨床試験が行われています。
イベルメクチンはマクロライド系抗菌薬の一種で、
寄生虫症の治療薬として使用されている薬剤ですが、
基礎実験において多くの抗ウイルス作用を持つことから、
こちらも予防薬として期待されているものです。
カラギーナンというのはゲル状の多糖類で、
食品添加物ですが、
そのウイルス吸着作用を期待して、
スプレーとして鼻の粘膜に噴霧して、
感染を予防するという期待から、
イベルメクチンと併用された介入試験が存在しています。

解析の結果、
ヒドロキシクロロキンの使用は、
明確に新型コロナウイルス感染症を予防したり、
入院や死亡のリスクを減少させるような効果は、
確認されませんでした。
(あるとしても僅かな有効性か、もしくはないか、という表現です)
その有効性はほぼないと判断される一方で、
消化器症状などの有害事象で治療が継続されないケースは、
その有用性を明らかに上回っていました。
イベルメクチンについては比較的小規模のデータしかなく、
その範囲では明確な効果は確認されませんでした。

最近吸入ステロイドで軽症事例の予後が改善された、
という報告はあり、
そちらは少し期待したい部分はありますが、
その有効性と有害事象とのバランスから考えて、
ヒドロキシクロロキンとイベルメクチンの現状での予防効果は、
精度の高い臨床試験においては確認されていない、
というように理解して大きな問題はなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症の再感染率(デンマークの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス感染症の再感染率.jpg
Lancet誌に2021年3月17日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の再感染率についての論文です。

先日はアメリカ海兵隊の新兵のデータをご紹介しました。
そこでは一度新型コロナウイルス感染症に感染すると、
その後の再感染は82%予防された、という結果が報告されています。

今回のデータは、
国民の69%に当たるおよそ400万人が、
新型コロナウイルス感染症のRT-PCR検査を施行されたデンマークで、
その後の再感染率を計算したものです。

第1波とされる2020年6月以前の期間に、
533381名がRT-PCR検査を受け、
そのうちの2.11%に当たる11727名が陽性となっています。
その後の第2波まで525339名は観察されていて、
第1波で陽性で第2波まで観察された11068名のうち、
0.65%に当たる72名が、
再度RT-PCR検査で陽性が確認されました。
一方で第1波で検査陰性で第2波でも検査を施行した514271名のうち、
RT-PCR検査で今度は陽性となったのは、
3.27%に当たる16819名でした。
ここから、一度感染することにより、
その3か月以降での再感染予防効果は、
80.5%(95%CI:75.4から84.5)と算出されました。

別個の解析法により、
感染のリスクを3か月以上前の感染のあるなしで、
分けて解析しても、
この再感染予防効果は、
78.8%(95%CI:74.9から82.1)と、
ほぼ同等の結果で算出されました。

ここで性別と再感染予防効果との間には、
明確な差はありませんでしたが、
年齢について見ると、
65歳以上での再感染予防効果は、
47.1%(95%CI:24.7から62.8)と、
明確に低くなっていました。
初感染からの時間で見ると、
3から6か月が79.3%で、
7か月以上が77.7%と、
若干期間と共に低下する傾向はあるものの、
明確なものではありませんでした。

これは国民総背番号制のデンマークのデータなので、
例数は圧倒的ですし、
米国海兵隊のデータとは違い、
年齢の差も解析されているのが特徴です。

結果はトータルでは海兵隊のデータと一致していて、
新型コロナウイルス感染症に感染すると、
その後しばらくの再感染は8割程度は予防され、
罹り難い状態にはなるけれど、
絶対に罹らないという訳ではない、
ということが分かります。

また、今回のデータでは65歳以上では、
再感染予防率はより低く5割弱ですから、
高齢者は一度罹っても、
2度罹ることは稀ではなく、
ワクチン接種ほどの効果もない、
という結果になっています。

このデータはしかし、
変異株のことは考慮はされていませんし、
稀に3か月を超えてRT-PCR検査が陽性を持続することがありますが、
その検証はされていないので、
再感染事例とされるものが、
全て本当に別のウイルスに感染したものなのか、
という点は実証されている訳ではありません。

ただ、いずれにしても、
このウイルスが一度罹ってそれで安心、
というようなものではないことは確かで、
一度感染された方も、
現状は感染したことのない方と同じように、
感染予防には気を付けて頂く必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アスピリンと経口抗凝固剤併用治療のリスクと有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンと抗凝固剤の併用治療.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年4月19日ウェブ掲載された、
アスピリンと直接作用型経口抗凝固剤の併用による、
有害事象と効果を評価した論文です。

アスピリンは心血管疾患の二次予防などに、
広く使用されている抗血小板剤です。

一方で心房細動という不整脈における、
脳塞栓症などの予防や、
下肢静脈血栓塞栓症における、
肺血栓塞栓症の予防などには、
抗凝固剤という、
より強力に血液の凝固を抑える薬が使用されます。

古くから使用されているのが、
注射薬のヘパリンと経口薬のワルファリンで、
最近その利便性からその利用が増えているのが、
直接作用型経口抗凝固剤と呼ばれる薬です。
プラザキサやイグザレルト、エリキュース(いずれも商品名)、
などがそれに当たります。

仮に心房細動の患者さんが心筋梗塞を起こしたり、
心臓の弁置換術を行ったような場合には、
より強力な抗凝固療法が必要との観点から、
アスピリンと経口抗凝固剤を併用することもあります。
こうした併用は出血のような合併症のリスクを高めるのですが、
それ以上に血栓症のリスクが勝る、
という判断があるからです。

ただ、これは欧米でより多い現象であると思いますが、
この基準を満たさない事例であっても、
心房細動や静脈血栓症でリスクの高いケースでは、
それだけでアスピリンと経口抗凝固剤が併用されることが、
多いのが実際であるようです。

これまでの臨床データにより、
ワルファリンとアスピリンの併用は、
ワルファリン単独使用と比較して、
出血リスクが高まることが示されています。

しかし、直接作用型経口抗凝固剤とアスピリンの併用については、
そのような検証がまだあまり行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカの4カ所の専門クリニックにおいて、
心房細動や静脈血栓塞栓症のために、
アスピリンと直接作用型経口抗凝固剤を併用されていて、
心筋梗塞の最近の既往や人工弁の手術などの既往のない1047名を、
他の条件をマッチさせた直接作用型経口抗凝固剤のみ使用の1047名と、
その経過を比較検証しています。

その結果、
平均で20.9ヶ月の経過観察期間において、
出血系の合併症は、
抗凝固剤単独では年間患者100人当たり26.0件に対して、
アスピリンとの併用療法では31.6件で、
併用療法では有意に出血系合併症が増加していました。
一方で塞栓症の発症は、
両群で有意な差がありませんでした。

要するに、
特別な場合を除き、
心房細動や静脈血栓塞栓症の塞栓症予防には、
経口抗凝固剤の単剤で充分で、
アスピリンとの併用は出血系合併症を増やす上に、
その予防効果には差がないので、
使用にはより慎重であるべきではないか、というのが、
今回の臨床研究の結果となっています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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mRNAワクチン接種後感染事例のゲノム解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン無効変異ウイルスの事例.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年4月21日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン2回接種後の感染事例の報告です。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
ファイザー社とモデルナ社による2つのmRNAワクチンについては、
稀に生じるアナフィラキシー以外、
特に問題となるような有害事象も少なく、
その有効性は有症状の発症抑制で90%を超えるデータが、
確認されています。

ただ、この高い有効性は、
敢くまで従来型のウイルスによる感染が、
主体である場合の話です。

英国型と呼ばれる「B.1.1.7」変異株では、
それほど違いのない有効性がありそうですが、
それ以外の変異株に対する有効性は、
散発的データはあるもののまだ明確ではありません。

特に南アフリカ型やブラジル型の変異株に認められる、
E484K変異は、
他のウイルス株による中和抗体を無力化するとされ、
ワクチンや従来株による免疫が、
有効ではない可能性が示唆されています。

今回のデータはニューヨークにおいて、
ファイザー社もしくはモデルナ社のmRNAワクチンの2回の接種を終えた、
417名のその後の経過を観察したもので、
2回の接種後2週間以上が経過した時点で、
2例の新型コロナウイルスの、
有症状感染事例が確認され、
その事例を解析したものです。

この時点でニューヨークでは、
新規感染事例の72%が変異株による感染で、
26.2%は「B.1.1.7」変異株による感染、
42.9%はニューヨークで独自に発生したとされる、
「B.1.526」変異株による感染と報告されています。

ワクチン無効例の1例目は健康な51歳の女性で、
モデルナ社のワクチンを2回接種し、
その19日後に咽頭痛と発赤、頭痛が出現し、
新型コロナウイルス感染症と診断されました。

2例目も健康は65歳の女性で、
ファイザー社のワクチンを2回接種し、
その35日後に全身倦怠感や結膜充血、頭痛で発症しています。
同居するワクチン未接種のパートナーからの感染でした。

この2例の感染ウイルスの、
ゲノム解析の結果がこちらです。
ワクチン無効変異ウイルス解析表.jpg
この2名の患者は、
T95I、del142-144、D614Gという3種類の変異を共に有していて、
事例1のみE484K変異が認められています。

これはいずれもニューヨークで流行している変異株とは、
性質の異なる別の変異株で、
これが別個の流行株であるのか、
それとも突然変異的なウイルスに過ぎないのか、
その点はまだ明確ではありません。

現状新型コロナウイルス感染症の征圧のためには、
変異株の広がりを的確に把握し分析する体制と、
ワクチン接種の着実な進行との2本柱が何より重要で、
現状そうした対応が日本においてどの程度実行されているかは不明ですが、
体制の充実を是非に望みたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(補足)
記載に不正確な点がありました。
コメント欄でご指摘を受け修正しました。
(2021年4月26日午前9時修正)
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小児への短期ステロイド治療の有害事象 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ステロイド治療の小児の副作用.jpg
JAMA Pediatrics誌に、
2021年4月19日ウェブ掲載された、
小児への短期間のステロイド使用と、
その有害事象についての論文です。

糖質コルチコイドは副腎由来のストレスホルモンで、
強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を持ち、
特にその抗炎症作用を強化した、
デキサメサゾンやプレドニゾロンなどの合成ステロイドは、
古くから喘息などのアレルギー性疾患、
膠原病や炎症性腸疾患などの慢性炎症性疾患の治療には、
広く使用され、
新薬が多く開発された今日においても、
その有用性は失われていません。

最近では新型コロナウイルス感染症の重症事例においても、
このステロイド治療のみが、
国際的ガイドラインにおいて、
明確な治療効果を有するとして評価されています。

ただ、ステロイド治療には多くの有害事象や副作用もあります。

特に長期の継続的治療においては、
医原性クッシング症候群や消化管出血、
感染症、緑内障、耐糖能異常、心血管疾患、骨粗鬆症など、
非常に多くの有害事象や副作用が起こることが分かっています。

ただ、ステロイドほど安価で有効性のある薬剤が、
他には存在していないこともまた事実で、
多くの病気においてステロイドはまだ使用されていますが、
それはそのリスクとメリットを天秤に掛けて、
慎重な判断の元に行われているのです。

さて、たとえば気管支喘息を例に取ると、
以前はステロイドの飲み薬が、
継続的に使用されていましたが、
現在はそれが全身的影響の少ない吸入ステロイド剤に変更され、
ステロイドの飲み薬や注射薬は、
急性増悪と呼ばれる悪化時のみに、
短期間使用されるのが一般的になっています。

このステロイドの短期使用というのは、
概ね14日以内の使用のことで、
この方法であれば多くのステロイドの有害事象は、
健康上の問題にはならないと想定されています。
ただ、その根拠はそれほど精度の高い臨床データによって、
実証されているという訳ではありません。

今回の研究は台湾において、
18歳未満に使用された14日以内の経口ステロイド剤の使用履歴と、
その後の有害事象の頻度を検証したものです。

解析されたトータル4542623名の小児のうち、
23%に当たる1064587名が、
ステロイド剤の短期使用を受けていました。

その主な使用目的は、
急性呼吸器感染症とアレルギー性疾患でした。

その結果、未使用と比較した、
使用後5から30日以内のステロイド剤治療による有害事象のリスクは、
消化管出血が1.41倍(1.27から1.57)、
敗血症が2.02倍(95%CI:1.55から2.64)、
肺炎が9.35倍(95%CI:9.19から9.51)、
それぞれ有意に増加していました。

使用後31から90日の同様のリスクは、
消化管出血が1.10倍(95%CI:1.02から1.19)、
肺炎が1.09倍(95%CI:1.07から1.11)と、
30日以内よりは低いものの有意に増加が認められ、
敗血症については有意な増加は認められませんでした。

これは絶対値でみると、
処方1000人当たり年間で、
最も多い肺炎でも、
9.35件の増加にとどまっていますから、
それほど頻度の高いものではないのですが、
短期間のステロイド使用でも、
このように明確な有害事象の増加が認められることは重要視するべきで、
短期間のステロイド投与についても、
その必要性とリスクとを天秤に掛けた上で、
慎重に使用することが望ましいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症の再感染率(米国海兵隊員のコホート研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの再感染リスク.jpg
Lancet Respiratory Medicine誌に、
2021年4月15日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の再感染率を、
アメリカ海兵隊の新兵を対象としたコホート研究で、
検証した論文です。

これは2021年1月に査読前の論文サーバーに公開された知見で、
その時にも一度記事にしています。
今回ほぼ同じ内容で査読を受け一流誌に掲載となりましたので、
再度ご紹介させて頂きます。

自然感染の場合の、新型コロナウイルス感染症の免疫が、
1年は保たないというのはほぼ間違いのない事実ですが、
それでは一度感染してから数ヶ月以内という短期間で、
どのくらいの再感染が起こるのでしょうか?

今回の疫学研究はアメリカ海兵隊の新兵を対象としたもので、
2週間の隔離により、その時点での感染有無を確認し、
その後6週間の経過観察を行って、
その間の再感染率を検証しています。

対象は3076名の新兵で、
年齢は18から20歳、92%は男性です。
そのうちの189名が新型コロナウイルスの抗体が陽性で、
感染の既往ありと判断されました。
勿論観察開始の段階で複数回のRT-PCR検査を行い、
陰性であることは確認されています。
6週の観察期間中に、
10%に当たる19名がRT-PCR検査で陽性と確認、
つまり、10人に1人は再感染した、
ということになります。
一方で登録時に抗体陰性で未感染の2247名中では、
48%に当たる1079名が感染しています。
要するに集団感染が起こってしまったのです。

ここから、
一度感染して抗体が出来ると、
短期的な感染リスクは、
未感染者の18%(95%CI:0.11から0.28)に減少したと推計されます。

つまり、
感染リスクは既感染により5分の1になりますが、
それでも10%の抗体陽性者が、
6週間という短期間で再感染しているのですから、
集団感染が発症したような場合には、
再感染も稀ではない、
という認識を持っていた方が良いようです。

ただ、抗体陽性者の再感染では、
検出されたウイルス量は初感染より明らかに少なく、
一定の防御は働いていると思われます。

前回の既感染者に1回のワクチン接種でブースター効果が確認された、
という知見も併せて考えると、
一度新型コロナウイルス感染症に罹患した人でも、
1回のワクチン接種を行うことは、
有効性の高い予防策であるように考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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尿酸値と認知症との関連(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
尿酸と認知症.jpg
2021年のFrontiers in Aging Neuroscience誌に掲載された、
血液の尿酸値と認知症リスクとの関連についての論文です。

尿酸というのはプリン体の代謝産物で、
強い抗酸化作用を持つ物質でもあります。

血液中には常に一定レベル存在していて、
過剰な尿酸は尿や便から排泄されます。
尿酸が過剰に体内に存在すると、
それが関節内で結晶化し、
自己炎症による関節炎を起こします。
これが痛風発作です。

尿酸の過剰は尿管結石の原因にもなり、
腎臓に蓄積した尿酸は、
痛風腎とも呼ばれる腎機能低下の原因ともなります。

また、最近の疫学データからは、
高血圧や心血管疾患のリスクと、
尿酸の高値との間には関連がある、
というような知見も多くなっています。

その一方で尿酸には強い抗酸化作用があり、
身体の酸化を防いで、
病気の予防に繋がるのでは、という、
逆の考え方もあります。

実際に尿酸の低値は、
癌のリスク増加と関連しているという報告もあります。

それでは、認知症と尿酸値との間にはどのような関連がるのでしょうか?

その点については、
これまでにあまり精度の高いデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
これまでの臨床データをまとめて解析する、
システマティックレビューとメタ解析の手法を用いて、
血液の尿酸値と認知症との関連を検証しています。

これまでの23の臨床研究に含まれる、
トータルで5575名のデータをまとめて解析したところ、
認知症のない人と比較して、
認知症の患者では血液の尿酸値が有意に低い、
という相関が認められました。

これを認知症のタイプによってサブ解析すると、
アルツハイマー型認知症と、
パーキンソニズムを伴う認知症では、
尿酸値が低いことで認知症リスクは増加していましたが、
血管性認知症ではそうした関連は認められませんでした。

また血液の尿酸値を4分割しての検討では、
尿酸値が4.91mg/dL未満においては、
尿酸が低いほどアルツハイマー型認知症やパーキンソン病のリスクが増し、
その一方で尿酸値が最も高い5.31mg/dLを超える群では、
尿酸値が高いほど認知症のリスクも増す、
という逆の相関が認められました。

このように、
尿酸値がかなり低値であることは、
認知症のリスクの増加と関連があり、
それは血管病変ではなく、
変性疾患に限った現象であるようです。

一方で、少なくとも7mg/dLを超えるような高尿酸血症は、
認知症を含めて多くの病気のリスクになることは、
今回のデータからも否定されるものではありません。

他の多くの検査データと同じように、
尿酸値も高いことも低いことも、
程度こそ違えいずれも健康上のリスクになるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナワクチン接種後の抗体価に対する感染の影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン後の中和抗体の差.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年4月14日掲載されたレターですが、
新型コロナウイルス感染症の既感染者が、
ワクチンを接種した場合の免疫反応についての報告です。

日本でも少しずつ、
新型コロナウイルスワクチンの接種が開始されていますが、
そこで1つ問題となるのは、
明確に新型コロナウイルス感染症に罹患した人が、
ワクチンを接種することに意味があるのだろうか、
という点です。

この病気が一生に一回しか感染しない、
というものではなく、
一度感染すれば一定期間は感染しないものの、
時間が経てば再感染するという性質のものであることは、
ほぼ間違いのない事実と考えられています。

そうであれば、
既感染者でも追加でワクチンを接種することにより、
抗体の反応を高め、
予防効果を持続させることが可能ではないかと思われます。

しかし、
実際に感染したことのない人がワクチンを接種した場合と、
数ヶ月以内に感染した人がワクチンを接種した場合とで、
どのような差があるのかは、
現時点では明確ではありません。

今回のミニレポートでは、
新型コロナウイルス感染症の既往のある37名に、
ファイザー社のワクチンを1回接種して10日後と、
これまで感染していない62名に、
同じワクチンを2回接種して10日後の血清を採取し、
その中和抗体価を比較しています。

その結果、
既感染者が1回のみワクチンを接種した後の中和抗体価は、
未感染者が2回ワクチンを接種した後の中和抗体価より、
有意に高くなっていました。
また、既感染者をその感染からの期間により、
1から2ヶ月以内、2から3ヶ月以内、3ヶ月より以前、
で分けて検討したところ、
有意ではないものの、
3ヶ月より以前の感染者の方が、
より中和抗体が上昇している傾向が認められました。

以上を図示したものがこちらになります。
ワクチン後の中和抗体の差の図.jpg

要するに、
感染後3ヶ月以降くらいのタイミングで、
ワクチン接種を行うと、
通常より高い中和抗体活性が期待されるので、
そうした患者さんでは、
1回のワクチン接種で必要にして充分と、
そう考えて良いようです。

変異株でも同様の現象があるのか、
というような点についてはまだ不明ですが、
今後こうしたデータが蓄積されることにより、
ワクチンの適切な接種スケジュールが、
確立されることに期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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