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デルタ株に対する新型コロナワクチンの有効性(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デルタ株に対するコロナワクチンの効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年7月21日ウェブ掲載された、
新型コロナワクチンのデルタ株に対する有効性についての論文です。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
ファイザー・ビオンテック社と、
モデルナ社の2種類のmRNAワクチンと、
アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンについては、
その高い有効性が臨床試験においても、
その後の疫学データにおいても確認されています。

ただ、現時点でクリアでない問題は、
数ヶ月を超える有効性が不明であるという点と、
変異株、特にその性質に違いのあるとされるデルタ株に対する、
有効性が明確ではないという点です。

今回の検証は、
主にファイザー・ビオンテック社ワクチンと、
アストラゼネカ社ワクチンが接種されているイギリスにおいて、
RT-PCR検査のパターンからアルファ株とデルタ株を同定して、
両者に対する2種類のワクチンの有効性を比較しているものです。

その結果、
新型コロナワクチン1回接種後の有効性は、
アルファ株に対するものが48.7%(95%CI: 45.5から51.7)、
デルタ株に対するものが30.7%(95%CI: 25.2から35.7)で、
ファイザー社とアストラゼネカ社ワクチンの間で、
明確な差は認められませんでした。

ファイザー・ビオンテック社ワクチンの、
2回目接種後の有効性は、
アルファ株に対するものが93.7%(95%CI: 91.6から95.3)、
デルタ株に対するものが88.0%(95%CI: 85.3から90.1)であったのに対して、
アストラゼネカ社ワクチンの2回目接種後の有効性は、
アルファ株に対するものが74.5%(95%CI: 68.4から79.4)、
デルタ株に対するものが67.0%(95%CI:61.3から71.8)と推計されました。

それを図示したものがこちらになります。
デルタ株に対するコロナワクチン2回の効果グラフ.jpg

今回の検証からは、
数ヶ月という期限付ですが、
デルタ株に対する新型コロナワクチンの有効性は、
アルファ株のそれと比較すると劣るものの、
2回接種以降については、
一定の水準には達していると、
現時点ではそう考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コーヒーと不整脈リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーと不整脈.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年7月19日ウェブ掲載された、
コーヒーと不整脈リスクとの関連についての論文です。

久しぶりの一流誌に載ったコーヒー関連論文です。

コーヒーが多くの健康に良い効果を持ち、
1日3杯程度のコーヒーを飲むことが、
健康に良い習慣として世界中の専門機関に認められていることは、
このブログをお読みの皆さんには、
改めて言うまでもないことかと思います。

ただ、まだコーヒーやカフェインを含む飲み物が、
良くないとされている知見もあって、
その1つがカフェインによる不整脈誘発リスクです。

一部の専門学会のガイドラインには今も、
コーヒーなどのカフェインを含む飲み物は、
不整脈を誘発するリスクがあると記載されています。

ただ、
確かにカフェインには交感神経の刺激作用があるので、
心臓を刺激して不整脈を増やすのでは、
という可能性はあります。
しかし、それは推測であって証明されたものではなく、
こうしたリスクの裏打ちとなっているデータは、
1980年代の古い観察研究があるだけです。

今回の研究はこの問題の再検証を行なったもので、
大規模な遺伝子多型を含む臨床データである、
UKバイオバンクのデータを活用して、
トータル386258名の一般住民を平均で4.5年観察し、
不整脈の発症リスクとコーヒーやカフェイン含有飲料の摂取習慣との関連を、
カフェイン代謝に関わる遺伝子多型を含めて、
比較検証しています。

その結果、
他の不整脈リスクに関わる関連因子を補正した結果として、
習慣的なコーヒーの摂取は、
1杯当たり3%、不整脈の発症リスクを低下させていました。
このリスク低下は、
特に心房細動や上室性頻拍で強く認められていました。
カフェインの代謝酵素の遺伝子多型による解析では、
カフェインの代謝と不整脈リスクとの間には、
明確な関連は認められませんでした。

このように、
少なくとも一般住民での解析では、
コーヒーの摂取は不整脈リスクを、
用量依存的に抑制していて、
その抑制効果はカフェインとは、
無関係である可能性が高いという結果です。

コーヒーが不整脈を誘発するという考え方は、
今後ガイドラインなどにおいても、
書き直される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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小児における新型コロナウイルス罹患後症候群の頻度 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ロングCOVIDの実態.jpg
JAMA誌に2021年7月15日ウェブ掲載されたレターですが、
新型コロナウイルス感染症罹患後に、
持続する症状の頻度を解析した短報です。

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、
だるさや微熱などの症状が長期間持続することや、
肺疾患や生活習慣病などの全身疾患が、
新たに生じることも多いことは、
これまでにも多くの報告があります。

主にヨーロッパでは、COVID-19罹患後症候群という概念で、
初発から12週間以上持続する症状を定義していましたが、
以前ご紹介したアメリカの研究では、
より広く発症から21日以上持続する体調不良を、
シンプルに後遺症と表現していました。
それ以外にロングCOVID(long COVID)、
というような表現も使用されています。
要するに、まだ統一された概念ではないようです。

新型コロナウイルス感染症には、
年齢による発症の違いがあります。

ただ、この新型コロナウイルス感染症罹患後症候群に、
年齢による発症の差があるのかという点については、
これまであまりデータがありませんでした。

今回の研究はスイスにおいて、
55か所の学校を無作為に抽出し、
そこに通う6歳から16歳の小児1355名に、
CIVID-19の抗体検査を施行し、
陽性であった109名と陰性であった1246名の、
その後の経過を比較検証しています。

その結果、
抗体が陽性であった109名のうち4%に当たる4名と、
抗体が陰性であった1246名のうち2%に当たる28名に、
1つ以上の症状が12週間以上に渡って持続していました。

抗体陽性例で持続が見られた症状は、
3%でだるさ、2%で集中力の低下、
2%で睡眠不足、などとなっていました。

このように、今回の検証では、
新型コロナウイルス感染症後に持続していた症状は、
6歳から16歳くらいの小児においては、
それほど頻度の多いものではなく、
また、抗体陰性のコントロールと比較して、
明確に上昇しているとは言えませんでした。

ただ、今回のデータは、
ある時点で抗体陽性であった学生のうち、
明らかに過去の感染を除外しただけなので、
厳密にその時点で感染したことが、
証明されている訳ではありません。

従って、今回の結果のみで、
小児における新型コロナウイルス感染症の後遺症は少ない、
というように言い切ることは出来ませんが、
現時点で後遺症が多いと言う根拠はない、
という言い方はして問題はないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症に対する亜鉛とビタミンCの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
亜鉛とビタミンCの新型コロナに対する効果.jpg
JAMA Network Open誌に、
2021年2月ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する。
高用量の亜鉛とビタミンCの有効性を検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症に対する治療は、
現状重症の事例のみに、
早期の回復を期待して使用するものがあるだけで、
軽症の患者さんに使用して、
早く症状を消退させたり、
回復を早めるような治療薬は、
現状では確認されていません。

そこで多くの治療薬がその候補として、
臨床試験の対象になっています。

亜鉛は欧米では古くから「風邪薬」として販売されていて、
咳などの風邪の諸症状の、
緩和に繋がるという報告も複数存在しています。

ビタミンCは風邪の予防に有効とする報告が、
運動選手のみ対象であったりと、
その信頼性においてはやや疑問があるものの、
これも複数存在しています。

今回の研究ではアメリカにおいて、
遺伝子検査で新型コロナウイルス感染症と診断され、
入院は要しないと判断された214名を登録し、
くじ引きで4つの群に分けると、
通常治療のみと、1日50㎎の亜鉛、1日8000㎎のビタミンC,
そして亜鉛とビタミンC併用に割り付けて、
感染症状が50%以上改善するまでの期間を、
比較検証しているものです。

その結果、亜鉛もビタミンCも両者の併用も、
通常治療と比較して、
新型コロナウイルス感染症の予後に、
明確な影響を与えることはありませんでした。

ビタミンCの高用量は尿路結石などのリスクはあるので、
この試験のような高用量を飲むことは、
通常の目的ではお勧め出来ませんが、
亜鉛やビタミンCのサプリメント的な使用については、
有効性は確認されないものの、
有害性もまあありませんから、
感染時の自己責任での使用は、
特に問題はないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルスワクチンの肝硬変患者への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
肝硬変患者への新型コロナワクチンの有効性.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年7月13日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチンの、
肝硬変の患者さんに対する有効性についての論文です。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
mRNAワクチンである、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社のワクチンが、
感染予防に高い有効性を示していることは、
臨床試験と市販後の疫学データを含めて、
実証されている事実です。

ただ、その臨床試験においては、
重い内臓疾患があったり、免疫不全のあるような患者さんは、
最初から除外されているので、
そうした患者さんに対する有効性は、
実際に接種が拡大して以降のデータを解析しないと分かりません。

そうした臨床試験の除外疾患の1つが、
肝臓の機能が高度に低下した状態である肝硬変です。

肝硬変の患者さんでは、
免疫の主体である抗体を作る機能も低下しているので、
免疫力は弱く、
新型コロナウイルス感染症も重症化を来しやすいと想定されます。

この点からは、
肝硬変の患者さんは積極的にワクチンを接種するべき対象である、
ということになります。

その一方で肝硬変の患者さんでは、
免疫の働きが低下しているので、
ワクチン接種後の身体の免疫反応も弱いことが想定されます。

つまり、ワクチンの有効性も、
肝硬変のない人より低くなる、
という可能性が高い訳です。

ここにワクチン接種においての1つのジレンマがあります。

免疫の低下したような患者さんは、
積極的にワクチンを接種するべき対象ですが、
ワクチンの有効性もまた低い可能性があるのです。

それでは、実際に肝硬変の患者さんへのワクチンの有効性は、
肝硬変のない人と比較してどの程度のものなのでしょうか?

今回のデータはアメリカの退役軍人を対象とした、
肝疾患の疫学データを活用して、
肝硬変を持ち、1回以上ファイザー社もしくはモデルナ社の、
mRNAワクチンの接種を行なった20037名を、
肝疾患や年齢などの要素をマッチングさせた、
20037名のワクチン未接種者と比較して、
ワクチンの有効性を検証しているものです。

その結果、
ワクチンの初回接種後28日以降においては、
肝硬変患者のワクチンによる、
遺伝子検査で診断された新型コロナウイルス感染症予防効果は64.8%で、
新型コロナウイルス感染症に伴う入院や死亡のリスクの、
予防効果は100%でした。
ただ、肝硬変の状態で分けて解析すると、
非代償性肝硬変の感染予防効果は50.3%で、
代償性肝硬変の66.8%と比較して低率になっていました。
これを2回目の接種後7日以降で解析すると、
感染症予防効果は78.6%で、
入院や死亡のリスクの予防効果は100%でした。

このように、
臨床試験での95%程度と比較すると、
肝硬変の患者さんのワクチン予防効果は、
少し落ちることは間違いがありませんが、
それでも重症化予防という意味では高い有効性を示していて、
mRNAワクチンは肝硬変の患者さんにおいても、
接種に意義のあることは間違いがなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス流行と喘息治療との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナ感染と喘息.jpg
Lancet Respiratory Medicine誌に、
2021年7月9日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症と気管支喘息についての解説記事です。

新型コロナウイルス感染症が流行することにより、
増える病気もあり、また減る病気もあります。

増えている病気の代表は痛風で、
新型コロナウイルス感染症が流行して以降、
クリニックでも痛風発作で受診される患者さんが、
多分3倍くらいには増えています。

おそらくはコロナの流行で在宅ワークが増え、
運動不足になった上に、
間食でお菓子を食べたり、
夜遅くにインスタントラーメンを食べるような食生活が、
内臓脂肪の増加に拍車を掛けて、
尿酸値がボーダーラインであったような人が、
高尿酸血症に進行して、
痛風の増加に繋がったのではないかと思われます。

その一方で減っている病気もあります。

その代表が気管支喘息の急性増悪です。

これは日本ばかりでなく、
世界の多くの国で小児喘息、成人喘息を問わず認められている現象です。

何故こうした現象が起こっているのでしょうか?

喘息の急性増悪はウイルス感染などの感染症が、
きっかけとなることが多いのですが、
新型コロナウイルス感染症対策で、
マスクをしたり密を避けたり、
手洗いをしたりの予防習慣が定着することにより、
コロナ以外のウイルス感染の機会が減り、
それが急性増悪の減少に繋がっていると想定されています。

これは喘息の患者さんにとっては朗報ですが、
喘息患者を診る医療者からすると、
それを本当の喘息の改善と考えて良いのか、
迷うところでもあります。

通常小児の喘息治療のガイドラインにおいては、
喘息のコントロールが改善し、急性増悪がなければ、
薬の減量などの措置を取ることが一般的です。

ただ、新型コロナウイルス感染症の流行期において、
同じ理屈は当て嵌まらない可能性もあります。

新型コロナ流行期の他のウイルス感染の減少は、
一時的な現象である可能性もありますし、
環境要因が一時的に変化しただけで、
喘息そのものの状態が、
改善した訳ではないという考え方もあります。

たとえば秋に喘息コントロールが改善しても、
安易に薬の減量はするべきではない、という考え方があります。
冬にはインフルエンザなどのウイルス感染症が増加するので、
そのリスクを考えるべきだと言うのです。

同様に、今の新型コロナ流行による環境変化は、
一時的な現象であると考える必要があるのではないでしょうか?

新型コロナウイルス感染症流行期の、
喘息急性増悪減少は、
非常に興味深い現象ですが、
その解釈と治療変更への考え方については、
今後慎重に検証される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス不活化ワクチンの有効性(チリでの第2相臨床試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナ不活化ワクチンの有効性チリ.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年7月7日ウェブ掲載された、
中国製不活化ワクチンの、
南米チリでの臨床試験結果をまとめた論文です。

新型コロナウイルスワクチンとして、
最もその有効性が確立されているのは、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
mRNAワクチンであることは間違いがありません。
次にデータが豊富であるのは、
アストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンで、
それ以外に途上国を中心として、
ワクチン外交的な戦略もあって、
広く使用されているのが中国製の不活化ワクチンです。

中国の不活化ワクチンは幾つかの種類がありますが、
代表的なものの1つが、
シノバック・バイオテックス社による、
コロナバックと命名されたワクチンです。

このワクチンの第3相臨床試験は、
ブラジル、チリ、インドネシア、トルコで行なわれていて、
その結果はまだ部分的にしか公表されていません。

今回のデータはコロナバックの国を挙げての集団接種が、
2021年2月からスタートしたチリのもので、
16歳以上トータル1000万人余の健康保険のデータを解析し、
ワクチン未接種の547万人余と、
1回のみ接種した54万人余、
2回の接種を終えた417万人を比較して、
3か月間の新型コロナウイルス感染症の発症との関連を検証しているものです。

ワクチンの有効性については、
2回の接種終了後14日以上経過した時点での、
感染の有無で評価を行なっています。

その結果、
コロナバックの2回接種により、
新型コロナウイルス感染症の診断事例で検証した予防効果は、
65.9%(95%CI:65.2から66.6)で、
新型コロナウイルス感染症による入院の予防効果は、
87.5%(95%CI:86.7から88.2)、
感染により集中治療室に入室するリスクの予防効果は、
90.3%(95%CI:89.1から91.4)、
新型コロナウイルス感染症による死亡の予防効果は、
86.3%(95%CI:84.5から87.9)と算出されました。

チリにおいては別個にファイザー社ワクチンの接種も行われていて、
同様の解析を行なったところ、
感染予防効果は92.6%、入院の予防効果は95.1%、
集中治療室に入室するリスクの予防効果は96.2%、
死亡の予防効果は91.0%とそれぞれ算出されています。

変異株はアルファ株が3割程度認められていて、
それ以外の問題となる変異株は少数という集団のようです。

このデータは実際に接種を行なった時の有効性を見ていて、
例数も非常に多いと言う点で意義のあるものですが、
3か月の期間が取られていても、
実際に感染した患者は、
接種完了後せいぜい1から2か月と思われますから、
長期の有効性については情報を提供してはくれません。

他の発表データを併せて考えると、
現状新型コロナウイルス不活化ワクチンの、
有症状感染予防効果は、
概ね60%程度と思われ、
90%を超えるファイザーやモデルナのmRNAワクチンと比較すると、
明らかに見劣りはしますが、
安定した供給が可能で、
価格も安く抑えられるという点は利点です。

ただ、ファイザー社のワクチンが、
6か月程度でその有効性をかなり低下させるのでは、
という趣旨の報道がありましたが、
不活化ワクチンがより短期間で、
そうした有効性の低下を来すという可能性も否定は出来ず、
変異株に対する効果も未知数であることに変わりはありません。

今後の検証を待ちたいと思いますが、
ワクチンは外交の道具として使われている側面もあり、
何処まで信頼性のあるデータが提出されるのか、
今後のデータ発表の経緯にも注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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デルタ株に対する新型コロナワクチンの効果(スコットランドの住民データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デルタ株への新型コロナワクチンの効果.jpg
Lancet誌に2021年6月26日掲載された、
デルタ株に対する新型コロナワクチンの有効性についての解説記事です。

新型コロナワクチンの接種は世界的に進行していますが、
最近危惧されているのは、
複数の遺伝子が従来型から変異していて、
その性質自体が変化したウイルスが、
従来型に置き換わって感染を拡大する、
所謂変異株の問題です。

特にインドで最初に感染拡大が報告された、
B1.617.2変異は、
WHOの呼称ではデルタ株と呼ばれていますが、
若年者に対する感染力と重症化率が高いとされ、
世界中で深刻な問題となりつつあります。

日本においても、
正確な疫学データはないので不明な点が多いのですが、
東京においてはB.1.1.7変異(アルファ株、以前の英国型)から、
デルタ株へ主体の流行に、
切り替わりつつあると想定されています。

デルタ株について問題となるのは、
現状使用されているワクチン、
特に有効性が高いファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンが、
どの程度の有効性を示すのか、
と言う点です。

アルファ株については、
従来型よりは劣るものの、
それほどは遜色のない有効性が、
イギリスの疫学データからは確認されています。

ただ、デルタ株に対する有効性については、
データが乏しいのが実際なのです。

今回紹介されているのは、
スコットランドにおける疫学データで、
スコットランドにおいては、
アルファ株主体の流行から、
現在はデルタ株主体の流行に置き換わっているようです。

これは全て遺伝子解析をして確認したデータではなく、
RT-PCR検査における、
その反応のパターンの違いからの推測で同定しているものですが、
全例に近い検証が行われている点がポイントです。

そこからの検証では、
デルタ株の感染により入院するリスクは、
アルファ株と比較して1.85倍(95%CI:1.39から2.47)有意に増加していました。

つまり、アルファ株と比較して、
デルタ株による感染は重症化のリスクが高いことを、
示唆するデータです。

ワクチンの有効率について現時点の情報で解析すると、
2回目接種から14日以上経過した時点で、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンの、
遺伝子検査で診断された新型コロナ感染予防効果は、
アルファ株に対しては92%(95%CI:90から93)、
デルタ株に対しては79%(95%CI:75から82)と算出されました。

これは主に有症状感染の予防効果と同義と思われます。

一方でアストラゼネカ社ワクチンの同様の予防効果は、
アルファ株に対して73%(95%CI:66から78)、
デルタ株に対しては60%(95%CI:53から66)と算出されています。

このように、
ファイザー社のワクチンに関しては、
デルタ株に対しても一定の有効性が保たれている一方で、
mRNAワクチンの以外の有効性については、
甚だ心許ないというのが現状ですが、
今後変異株に対するワクチンの製造が急務であるとともに、
多くのワクチンをどのように使い分け、
どのような効果を期待するのかについては、
より詳細かつ実践的な検証が、
これも急務であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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インターロイキン6受容体拮抗薬の新型コロナウイルス感染症への有効性(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
IL6抗体治療のコロナへの有効性.png
JAMA誌に2021年7月6日ウェブ掲載された、
サイトカインを抑制する生物学的製剤の、
新型コロナウイルス感染症に対する有効性を検証した、
メタ解析の論文です。

現状新型コロナウイルス感染症に有効とされる治療薬は、
ステロイド(糖質コルチコイド)剤と、
抗ウイルス剤のレムデシビルのみですが、
ステロイドと共に過剰な炎症を抑制する薬剤として、
複数の臨床試験が施行されているのが、
炎症性サイトカインのインターロイキン6を抑制する薬です。

最も広く使用されているのは、
インターロイキン受容体拮抗薬と言われる、
生物学的製剤の注射薬で、
その代表のトシリツマブ(商品名アクテムラ)と、
サリルマブ(商品名ケブザラ)は、
日本でも関節リウマチ治療薬として使用されています。

それでは、このタイプの薬には、
新型コロナウイルス感染症に対して、
どの程度の有効性があるのでしょうか?

今回の研究は、
これまでの主な精度の高い臨床試験のデータを、
まとめて解析したメタ解析です。

これまでの27の介入試験に含まれる、
トータルで10930名の新型コロナウイルス感染症事例を、
まとめて解析したところ、
インターロイキン6受容体拮抗薬による治療は、
偽薬もしくは通常治療のみと比較して、
治療開始後28日の時点での総死亡リスクを、
14%(95%CI:0.79から0.95)有意に低下させていました。

これを基礎治療としてステロイドが使用されている場合と、
使用されていない場合とに分けて解析すると、
使用している場合のインターロイキン6受容体拮抗薬の使用は、
偽薬もしくは通常治療のみと比較して、
治療開始後28日の時点での総死亡リスクを、
より大きく22%(95%CI:0.69から0.88)低下させている一方、
ステロイド未使用の場合のみの解析では、
死亡リスクの有意な低下は認められませんでした。

このように、
インターロイキン6受容体拮抗薬の使用は、
一定の生命予後の改善効果が認められますが、
それはステロイドの併用により顕著に認められ、
ステロイドとの併用が、
治療の大きな選択肢として、
注目される流れになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナワクチン接種後の急性心筋炎(米軍接種23例報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチン後心筋炎23例.jpg
JAMA Cardiology誌に、
2021年6月29日掲載された、
新型コロナのmRNAワクチン接種後に報告された、
23例の急性心筋炎事例をまとめた報告です。

ファイザー社とモデルナ社による、
新型コロナウイルスmRNAワクチンは、
その有効性が世界中の臨床データにより実証されています。

ワクチンの歴史上、
これだけの有効性が確認されたワクチンは、
他にはないと断言しても誤りではないと思います。

ただ、勿論100%安全なワクチンがないことは、
これはもう間違いのない事実で、
mRNAワクチンについても、
アナフィラキシーなど稀な有害事象について、
検証が行われていることは、
皆さんもご存じの通りです。

最近その報告が注目されているのが、
ワクチン接種後の急性心筋炎の事例です。

前回7例のアメリカでの小児事例をまとめた論文をご紹介しました。

今回もアメリカでの事例ですが、
米軍ののべ281万回接種における、
23例の急性心筋炎の事例が解析されています。
これは母数が明確である点で重要なデータです。

これは1回、2回に関わらず、
接種後4日以内に発症した急性の胸の痛みを検査し、
心筋の逸脱酵素であるトロポニンなどの上昇があり、
MRI検査などで心筋炎とほぼ確定した事例のみを抽出しているものです。
その結果23事例が抽出され、
その年齢の中間値は25歳で20から51歳に分布しています。
報告の多い10代は含まれていないという点が1つのポイントです。

このうち7例はファイザー・ビオンテック社ワクチン接種後で、
残りの16例はモデルナ社ワクチン接種後の発症です。
これまでの事例はファイザー社が主体でしたが、
今回はむしろモデルナ社が多く、
これはmRNAワクチンに共通する有害事象である、
と言うことが分かります。

死亡事例などはありませんが、
16例が1週間くらいの経過で完治している一方、
7例は調査の段階でまだ胸部不快感が残存している、
と記載されています。

事例は全て男性で、
19例は2回目接種後に発症しています。

これを一般的な急性心筋炎の発症リスクと比較してみると、
トータル281万回接種全てを対象とした場合には、
2から52件の心筋炎が、ワクチンと無関係に発症する可能性があり、
実際の発生が23件であるとすると、
偶発的な所見の可能性が高い、という判断になります。
ただ、これを男性で2回目の接種を受けた436000回のみを対象とすると、
ワクチンと無関係な発症が0から8件と推測される一方で、
実際の発症は19件なので、
明らかに自然発症より頻度は多く、
ワクチン接種との関連がある可能性が高い、
という判断になります。

この頻度は単純計算で23000回の2回目接種当たり1件、
ということになり、
以前ご紹介したイスラエルでの報告が、
若年男性で2万人に1人ということでしたから、
ほぼ同じ発症率ということになります。

このように、
まだ因果関係は不明ですが、
若年(概ね20代くらいまで)の男性の、
mRNAワクチン2回目接種後に起こる、
胸部痛や胸部不快感などの症状は、
急性心筋炎の可能性を疑う必要があり、
心電図や血液トロポニンの測定を、
迅速に行ってその可能性を精査する必要があると思います。

クリニックでも、
滅多に急性心筋梗塞などの事例はないので、
これまでは用意していなかったのですが、
トロポニンの迅速キットを購入して、
その備えをしているところです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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