ストレス潰瘍へのプロトンポンプ阻害剤とH2ブロッカーの差 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のJAMA誌に掲載された、
2種類の胃薬のストレス潰瘍予防効果と生命予後を、
比較検証した論文です。
ストレスで胃が痛くなるという経験は、
多くの方がされていると思います。
実際にストレスは胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となります。
そのため、
強いストレスが掛かるような状況においては、
予防的に胃酸を抑えるような胃薬が処方されます。
その代表は重病で集中治療室に入院している、
患者さんのようなケースです。
上記論文の記載によれば、
海外データで集中治療室で治療を受けている人の、
2.5%は胃潰瘍などの消化管出血を起こし、
その予防のためにそうした患者の7割では、
胃酸を抑えるような胃薬が処方されています。
現行使用頻度が最も多いのは、
プロトンポンプ阻害剤と呼ばれる薬です。
プロトンポンプ阻害剤は強力に胃酸を抑えるような作用があり、
そのために抗血小板剤の使用時など、
通常より消化管出血を起こしやすいような状態において、
使用することにより消化管出血の予防効果のあることが、
信頼のおける臨床試験において確認されています。
一方でプロトンポンプ阻害剤は、
多くの有害事象や副作用のある薬でもあり、
その中には肺炎リスクの増加や、
デフィシル菌による難治性の大腸炎の増加、
など、集中治療室においても、
看過できない疾患のリスク増加が報告されています。
このため、
潰瘍予防効果においては、
プロトンポンプ阻害剤よりやや劣っていても、
トータルな患者さんへのリスクを勘案して、
H2ブロッカーという胃酸抑制剤を、
代わりに使用するという考えもあります。
そもそもプロトンポンプ阻害剤の潰瘍予防の有効性も、
集中治療室に入院するような重症の患者さんにおいて、
介入試験のような厳密な方法で、
これまでに検証されたことはありませんでした。
そこで今回の研究では、
世界5か国の50カ所の集中治療室において、
入院から24時間以内に人工呼吸器を装着した患者、
トータル26982名を登録し、
施設毎に消化管出血の予防として、
プロトンポンプ阻害剤かH2ブロッカーのいずれかを推奨し、
一定期間後に施設の推奨薬剤を入れ替えるという手法で、
両者の薬剤の開始後90日の時点での生命予後と、
消化管出血の発症率を比較検証しています。
その結果、
観察期間中に死亡したのは、
プロトンポンプ阻害剤推奨群では18.3%に対して、
H2ブロッカー推奨群では17.0%で、
この結果はプロトンポンプ阻害剤推奨施設でやや多かったものの、
有意な差はないと判断されました。
臨床的に意味のある上部消化管出血は、
プロトンポンプ推奨群では1.3%に対して、
H2ブロッカー推奨群では1.8%で、
プロトンポンプ阻害剤はH2ブロッカーと比較して、
上部消化管出血のリスクを27%(95%CI:0.57から0.92)、
有意に低下させていました。
デフィシル菌の感染症や入院期間の長さには、
両群で明確な差は認められませんでした。
この研究ではプロトンポンプ推奨施設でも、
主治医の判断でH2ブロッカーが使用可能なため、
プロトンポンプ推奨群の4.1%はH2ブロッカーを使用し、
H2ブロッカー推奨群の20.1%は、
実際にはプロトンポンプ阻害剤を使用していました。
従って、そのバイアスが、
少なからず結果に影響していることは否定出来ませんが、
プロトンポンプ阻害剤の方が潰瘍予防効果には優れていても、
生命予後については若干劣っている可能性もある、
という今回の結果はとても興味深く、
今後また試験のデザインを変えて、
同種の研究が行われることが望ましいと思いますし、
消化管出血予防にどの薬剤が適切かという問題は、
今後再検証される必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のJAMA誌に掲載された、
2種類の胃薬のストレス潰瘍予防効果と生命予後を、
比較検証した論文です。
ストレスで胃が痛くなるという経験は、
多くの方がされていると思います。
実際にストレスは胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となります。
そのため、
強いストレスが掛かるような状況においては、
予防的に胃酸を抑えるような胃薬が処方されます。
その代表は重病で集中治療室に入院している、
患者さんのようなケースです。
上記論文の記載によれば、
海外データで集中治療室で治療を受けている人の、
2.5%は胃潰瘍などの消化管出血を起こし、
その予防のためにそうした患者の7割では、
胃酸を抑えるような胃薬が処方されています。
現行使用頻度が最も多いのは、
プロトンポンプ阻害剤と呼ばれる薬です。
プロトンポンプ阻害剤は強力に胃酸を抑えるような作用があり、
そのために抗血小板剤の使用時など、
通常より消化管出血を起こしやすいような状態において、
使用することにより消化管出血の予防効果のあることが、
信頼のおける臨床試験において確認されています。
一方でプロトンポンプ阻害剤は、
多くの有害事象や副作用のある薬でもあり、
その中には肺炎リスクの増加や、
デフィシル菌による難治性の大腸炎の増加、
など、集中治療室においても、
看過できない疾患のリスク増加が報告されています。
このため、
潰瘍予防効果においては、
プロトンポンプ阻害剤よりやや劣っていても、
トータルな患者さんへのリスクを勘案して、
H2ブロッカーという胃酸抑制剤を、
代わりに使用するという考えもあります。
そもそもプロトンポンプ阻害剤の潰瘍予防の有効性も、
集中治療室に入院するような重症の患者さんにおいて、
介入試験のような厳密な方法で、
これまでに検証されたことはありませんでした。
そこで今回の研究では、
世界5か国の50カ所の集中治療室において、
入院から24時間以内に人工呼吸器を装着した患者、
トータル26982名を登録し、
施設毎に消化管出血の予防として、
プロトンポンプ阻害剤かH2ブロッカーのいずれかを推奨し、
一定期間後に施設の推奨薬剤を入れ替えるという手法で、
両者の薬剤の開始後90日の時点での生命予後と、
消化管出血の発症率を比較検証しています。
その結果、
観察期間中に死亡したのは、
プロトンポンプ阻害剤推奨群では18.3%に対して、
H2ブロッカー推奨群では17.0%で、
この結果はプロトンポンプ阻害剤推奨施設でやや多かったものの、
有意な差はないと判断されました。
臨床的に意味のある上部消化管出血は、
プロトンポンプ推奨群では1.3%に対して、
H2ブロッカー推奨群では1.8%で、
プロトンポンプ阻害剤はH2ブロッカーと比較して、
上部消化管出血のリスクを27%(95%CI:0.57から0.92)、
有意に低下させていました。
デフィシル菌の感染症や入院期間の長さには、
両群で明確な差は認められませんでした。
この研究ではプロトンポンプ推奨施設でも、
主治医の判断でH2ブロッカーが使用可能なため、
プロトンポンプ推奨群の4.1%はH2ブロッカーを使用し、
H2ブロッカー推奨群の20.1%は、
実際にはプロトンポンプ阻害剤を使用していました。
従って、そのバイアスが、
少なからず結果に影響していることは否定出来ませんが、
プロトンポンプ阻害剤の方が潰瘍予防効果には優れていても、
生命予後については若干劣っている可能性もある、
という今回の結果はとても興味深く、
今後また試験のデザインを変えて、
同種の研究が行われることが望ましいと思いますし、
消化管出血予防にどの薬剤が適切かという問題は、
今後再検証される必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
マクロライドを妊娠中に使用することのリスクについて [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
妊娠中の抗菌剤使用のリスクについての論文です。
妊娠中の抗菌剤の使用にはリスクがありますが、
それでも感染症の時には、
使用が必要となるケースがあります。
そうした時に安全性が比較的確認されている抗菌剤は、
ペニシリン系の抗生物質であることは、
世界的にほぼ一致している事実です。
ただ、ペニシリンには特有の薬疹やアレルギーがあり、
その使用が困難なケースで、
現状多く使用されているのがマクロライド系の抗菌剤です。
エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンが、
その代表になります。
それでは、マクロライド系抗菌剤の、
妊娠中の安全性については、
どのくらいのことが分かっているのでしょうか?
これまでの複数の介入試験やシステマティックレビューの結果として、
マクロライド系抗菌剤の使用が、
妊娠の有無に関わらず、
不整脈のリスクを増加させ、
心疾患に伴う死亡のリスクを増加させる、
という知見が得られています。
このため、アメリカとイギリスにおいて、
心血管疾患のリスクが高い患者さんに、
マクロライドを使用することは警告の扱いとなっています。
妊娠中のマクロライドの使用についての、
最近のシステマティックレビューによると、
その使用により流産のリスクが増加することは、
ほぼ間違いのない事項とされていますが、
それ以外の先天奇形などについては、
明確な結論が得られていません。
そこで今回の研究では、
イギリスの医療データベースを活用して、
マクロライドもしくはペニシリンの処方を、
妊娠4週から出産までの間に受けた104605名の、
妊娠中の女性とその子供と、
母親が妊娠前にマクロライドもしくはペニシリンを処方された、
82314名の子供、
そしてその兄弟を比較して、
この問題の検証を行っています。
その結果、
お子さんの主な身体奇形のリスクは、
母親が妊娠初期にペニシリンを使用した場合、
新生児1000人当たり17.65件に対して、
母親が妊娠初期にマクロライドを使用した場合には、
新生児1000人当たり27.65件で、
妊娠中のマクロライド使用の、
ペニシリンと比較した新生児の身体奇形発症リスクは、
1.55倍(95%CI:1.19から2.03)有意に増加していました。
マクロライドの妊娠中の使用は、
その全期間において、
新生児の性器奇形のリスクを、
1.58倍(95%CI:1.14から2.19)有意に増加させ、
その多くは尿道下裂の増加でした。
エリスロマイシンの妊娠初期における使用は、
赤ちゃんの主要な身体奇形のリスクを、
ペニシリンと比較して1.50倍(95%CI: 1.13から1.99)、
こちらも有意に増加させていました。
このようにマクロライド系の抗菌剤の妊娠中の使用は、
その時期にかかわらず胎児の発達に一定の影響を与え、
複数の身体奇形のリスクを上昇させることは、
今回の結果ではほぼ間違いがなく、
妊娠中のマクロライド系抗菌剤の使用は、
今後より慎重に考えた方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
妊娠中の抗菌剤使用のリスクについての論文です。
妊娠中の抗菌剤の使用にはリスクがありますが、
それでも感染症の時には、
使用が必要となるケースがあります。
そうした時に安全性が比較的確認されている抗菌剤は、
ペニシリン系の抗生物質であることは、
世界的にほぼ一致している事実です。
ただ、ペニシリンには特有の薬疹やアレルギーがあり、
その使用が困難なケースで、
現状多く使用されているのがマクロライド系の抗菌剤です。
エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンが、
その代表になります。
それでは、マクロライド系抗菌剤の、
妊娠中の安全性については、
どのくらいのことが分かっているのでしょうか?
これまでの複数の介入試験やシステマティックレビューの結果として、
マクロライド系抗菌剤の使用が、
妊娠の有無に関わらず、
不整脈のリスクを増加させ、
心疾患に伴う死亡のリスクを増加させる、
という知見が得られています。
このため、アメリカとイギリスにおいて、
心血管疾患のリスクが高い患者さんに、
マクロライドを使用することは警告の扱いとなっています。
妊娠中のマクロライドの使用についての、
最近のシステマティックレビューによると、
その使用により流産のリスクが増加することは、
ほぼ間違いのない事項とされていますが、
それ以外の先天奇形などについては、
明確な結論が得られていません。
そこで今回の研究では、
イギリスの医療データベースを活用して、
マクロライドもしくはペニシリンの処方を、
妊娠4週から出産までの間に受けた104605名の、
妊娠中の女性とその子供と、
母親が妊娠前にマクロライドもしくはペニシリンを処方された、
82314名の子供、
そしてその兄弟を比較して、
この問題の検証を行っています。
その結果、
お子さんの主な身体奇形のリスクは、
母親が妊娠初期にペニシリンを使用した場合、
新生児1000人当たり17.65件に対して、
母親が妊娠初期にマクロライドを使用した場合には、
新生児1000人当たり27.65件で、
妊娠中のマクロライド使用の、
ペニシリンと比較した新生児の身体奇形発症リスクは、
1.55倍(95%CI:1.19から2.03)有意に増加していました。
マクロライドの妊娠中の使用は、
その全期間において、
新生児の性器奇形のリスクを、
1.58倍(95%CI:1.14から2.19)有意に増加させ、
その多くは尿道下裂の増加でした。
エリスロマイシンの妊娠初期における使用は、
赤ちゃんの主要な身体奇形のリスクを、
ペニシリンと比較して1.50倍(95%CI: 1.13から1.99)、
こちらも有意に増加させていました。
このようにマクロライド系の抗菌剤の妊娠中の使用は、
その時期にかかわらず胎児の発達に一定の影響を与え、
複数の身体奇形のリスクを上昇させることは、
今回の結果ではほぼ間違いがなく、
妊娠中のマクロライド系抗菌剤の使用は、
今後より慎重に考えた方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
麻疹由来ワクチンで新型コロナウイルスを予防する [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2018年のMicrobe and Infection誌に掲載された、
新型コロナウイルスワクチンの開発に繋がる可能性のある、
技術についての総説です。
現状SARSやMERSを始めとするコロナウイルスに対して有効なワクチンは、
その開発に成功していません。
その原因は単一ではありませんが、
風邪症候群の原因であるコロナウイルスは、
同一の人間に何度も感染するという性質があり、
麻疹や水痘のように、
一度感染して中和抗体が作られれば、
それで一生罹ることはない、
というような病気とは違うという点が、
大きいと考えられます。
先日一度新型コロナウイルスに感染して回復してから、
またほどなく新型コロナウイルスに再感染した、
という事例が報道されていました。
その真偽はまだ分かりませんが、
コロナウイルスに感染して誘導される免疫の予防効果は、
インフルエンザほども長持ちはしない可能性が高いのです。
つまり、単純にインフルエンザワクチンのような手法で、
コロナウイルスに対するワクチンを作ることは出来ないのです。
それでは、どうすればいいのでしょうか?
1つのヒントはSARSと同じように、
今回の新型コロナウイルス(COVID-19)も、
小児には感染しにくいか、
感染しても軽症で改善する可能性が高い、
という現象にあります。
その理由は現時点では不明ですが、
1つの仮説として、
赤ちゃんが1歳半くらいまでの時期に、
風疹や麻疹のワクチン、ポリオワクチン、日本脳炎ワクチン、
インフルエンザワクチンなどの、
多くのコロナウイルスと同じRNAワクチンの接種を、
受けていることと関連があるのではないか、
という考え方があります。
こうしたワクチンで誘導される免疫が、
他のRNAウイルスの予防にも、
一定の役割を果たしているという可能性があるのです。
中でも麻疹の生ワクチンは、
2回の接種を行うだけで、
非常に強く中和抗体を誘導し、
長期に渡り感染予防効果を示すことが知られています。
この麻疹ワクチンの有効性を利用して、
麻疹ワクチンを土台としたワクチンに、
別のRNAワクチンの抗原を発現させることで、
有効性の高いワクチンを作るという試みが、
これまでに複数行われています。
SARSについても、
これまでに複数の麻疹ワクチン由来のワクチンが開発され、
動物実験などでは高い有効性が確認されています。
ただ、現状人間への臨床試験においては、
まだ明確な有効性と安全性とが確認されたものはないようです。
現状WHOは18ヶ月以内に、
新型コロナウイルスのワクチンの実用化を、
目標として掲げていますが、
SARSやMERSのワクチンも、
結局は実用化されていない現状を考えると、
その実現性は、
それほど楽観出来るようなものではなさそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2018年のMicrobe and Infection誌に掲載された、
新型コロナウイルスワクチンの開発に繋がる可能性のある、
技術についての総説です。
現状SARSやMERSを始めとするコロナウイルスに対して有効なワクチンは、
その開発に成功していません。
その原因は単一ではありませんが、
風邪症候群の原因であるコロナウイルスは、
同一の人間に何度も感染するという性質があり、
麻疹や水痘のように、
一度感染して中和抗体が作られれば、
それで一生罹ることはない、
というような病気とは違うという点が、
大きいと考えられます。
先日一度新型コロナウイルスに感染して回復してから、
またほどなく新型コロナウイルスに再感染した、
という事例が報道されていました。
その真偽はまだ分かりませんが、
コロナウイルスに感染して誘導される免疫の予防効果は、
インフルエンザほども長持ちはしない可能性が高いのです。
つまり、単純にインフルエンザワクチンのような手法で、
コロナウイルスに対するワクチンを作ることは出来ないのです。
それでは、どうすればいいのでしょうか?
1つのヒントはSARSと同じように、
今回の新型コロナウイルス(COVID-19)も、
小児には感染しにくいか、
感染しても軽症で改善する可能性が高い、
という現象にあります。
その理由は現時点では不明ですが、
1つの仮説として、
赤ちゃんが1歳半くらいまでの時期に、
風疹や麻疹のワクチン、ポリオワクチン、日本脳炎ワクチン、
インフルエンザワクチンなどの、
多くのコロナウイルスと同じRNAワクチンの接種を、
受けていることと関連があるのではないか、
という考え方があります。
こうしたワクチンで誘導される免疫が、
他のRNAウイルスの予防にも、
一定の役割を果たしているという可能性があるのです。
中でも麻疹の生ワクチンは、
2回の接種を行うだけで、
非常に強く中和抗体を誘導し、
長期に渡り感染予防効果を示すことが知られています。
この麻疹ワクチンの有効性を利用して、
麻疹ワクチンを土台としたワクチンに、
別のRNAワクチンの抗原を発現させることで、
有効性の高いワクチンを作るという試みが、
これまでに複数行われています。
SARSについても、
これまでに複数の麻疹ワクチン由来のワクチンが開発され、
動物実験などでは高い有効性が確認されています。
ただ、現状人間への臨床試験においては、
まだ明確な有効性と安全性とが確認されたものはないようです。
現状WHOは18ヶ月以内に、
新型コロナウイルスのワクチンの実用化を、
目標として掲げていますが、
SARSやMERSのワクチンも、
結局は実用化されていない現状を考えると、
その実現性は、
それほど楽観出来るようなものではなさそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
新型コロナウイルスの目を介した感染リスクについて [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Br J Ophthalmol 誌に2020年2月21日にウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの、
目からの感染リスクについての解説記事です。
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染は、
中国本土のみならず、
日本、韓国、イタリアでも広がりを見せ、
その世界的な深刻度も増していることは、
皆さんも良くご存じの通りです。
欧米の医学の一流誌も、
連日のようにこの問題の記事や論文を載せていますが、
正直この2月に入って以降、
それほど特筆に値するような情報はありません。
実際世界の一般的な認識よりも、
日本の状況は遙かに先を行っているので、
今既に発表されてる情報は、
もう周回遅れのように思えてしまうのかも知れません。
今回の解説記事は短いものですが、
時々指摘されることがある、
新型コロナウイルスの目の粘膜(結膜)
からの感染の可能性についてまとめたものです。
新型コロナウイルスの人から人への感染は、
物を介した接触感染と飛沫感染が主体であると、
考えられています。
これはいずれも、
鼻や咽を介してウイルスが身体に侵入する、
ということを意味しています。
しかし、SARSやMERSの感染の検証でも、
それでは説明が困難な感染事例があり、
皮膚や粘膜を介した感染の可能性が、
推測されることがありました。
粘膜面を介しての感染として、
最も可能性があるのは目の結膜からの感染です。
SARSとMERSのいずれも、
明確に目の粘膜からの感染は証明されていません。
しかし、SARSの感染者の涙から、
PCRでウイルス遺伝子が検出された、
という報告はあり、
これは目からの感染の可能性を示唆するものです。
また、風邪症候群の原因であるコロナウイルスNL63では、
その小児感染事例の17%でウイルス性結膜炎が認められた、
という報告もあります。
新型コロナウイルスの患者と濃厚な接触をした医療者では、
防護服やN95マスクなどを使用した感染対策を取っていても、
感染を防げなかった事例が報告されています。
現時点でその感染経路は不明ですが、
今後は粘膜や体液を介した感染の可能性についても、
その予防に充分な配慮をする必要があるのではないか、
というのが上記論考の結論となっています。
要するに、
現時点で証明はされていませんが、
新型コロナウイルスが目の結膜を介して感染する可能性は、
決して否定は出来ないものなのです。
だからどうするのか、
日常診療もゴーグルを付けてしないといけないのかしら、
と診療の前に考えても埒が明かないのですが、
手指消毒や換気や接触感染予防などに留意しつつ、
結膜も感染のリスクがあることを念頭に置きながら、
可能な限りの慎重さを持って、
今日も診療には当たりたいと思っています。
でもね、怖いのは風邪ですね。
少しでも風邪症状があったら、
診療は止めてクリニックも閉めるのが正解なのかしら。
今の指針は要するにそういうことですよね?
違うのかな?
幸い今は風邪症状はないのですが、
明日はもう分からないですよね。
まあ明日のことは明日考えるしかないですね。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Br J Ophthalmol 誌に2020年2月21日にウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの、
目からの感染リスクについての解説記事です。
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染は、
中国本土のみならず、
日本、韓国、イタリアでも広がりを見せ、
その世界的な深刻度も増していることは、
皆さんも良くご存じの通りです。
欧米の医学の一流誌も、
連日のようにこの問題の記事や論文を載せていますが、
正直この2月に入って以降、
それほど特筆に値するような情報はありません。
実際世界の一般的な認識よりも、
日本の状況は遙かに先を行っているので、
今既に発表されてる情報は、
もう周回遅れのように思えてしまうのかも知れません。
今回の解説記事は短いものですが、
時々指摘されることがある、
新型コロナウイルスの目の粘膜(結膜)
からの感染の可能性についてまとめたものです。
新型コロナウイルスの人から人への感染は、
物を介した接触感染と飛沫感染が主体であると、
考えられています。
これはいずれも、
鼻や咽を介してウイルスが身体に侵入する、
ということを意味しています。
しかし、SARSやMERSの感染の検証でも、
それでは説明が困難な感染事例があり、
皮膚や粘膜を介した感染の可能性が、
推測されることがありました。
粘膜面を介しての感染として、
最も可能性があるのは目の結膜からの感染です。
SARSとMERSのいずれも、
明確に目の粘膜からの感染は証明されていません。
しかし、SARSの感染者の涙から、
PCRでウイルス遺伝子が検出された、
という報告はあり、
これは目からの感染の可能性を示唆するものです。
また、風邪症候群の原因であるコロナウイルスNL63では、
その小児感染事例の17%でウイルス性結膜炎が認められた、
という報告もあります。
新型コロナウイルスの患者と濃厚な接触をした医療者では、
防護服やN95マスクなどを使用した感染対策を取っていても、
感染を防げなかった事例が報告されています。
現時点でその感染経路は不明ですが、
今後は粘膜や体液を介した感染の可能性についても、
その予防に充分な配慮をする必要があるのではないか、
というのが上記論考の結論となっています。
要するに、
現時点で証明はされていませんが、
新型コロナウイルスが目の結膜を介して感染する可能性は、
決して否定は出来ないものなのです。
だからどうするのか、
日常診療もゴーグルを付けてしないといけないのかしら、
と診療の前に考えても埒が明かないのですが、
手指消毒や換気や接触感染予防などに留意しつつ、
結膜も感染のリスクがあることを念頭に置きながら、
可能な限りの慎重さを持って、
今日も診療には当たりたいと思っています。
でもね、怖いのは風邪ですね。
少しでも風邪症状があったら、
診療は止めてクリニックも閉めるのが正解なのかしら。
今の指針は要するにそういうことですよね?
違うのかな?
幸い今は風邪症状はないのですが、
明日はもう分からないですよね。
まあ明日のことは明日考えるしかないですね。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
動物性タンパク質の摂取と健康影響(2020年アメリカの疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
肉や魚といった動物性タンパク質の摂取量と、
心血管疾患リスクと生命予後との関連を検証した論文です。
ソーセージやベーコンのような加工肉を多く摂ることが、
心血管疾患のリスクを増やし、
死亡リスクも増加させるということは、
これまでの多くの疫学データにおいて、
ほぼ実証されている事項です。
ただ、加工肉以外の動物性蛋白源、
牛肉や豚肉などの赤身肉、鳥肉、貝を含む魚などに、
同じようなリスクがあるのかどうか、
というような点については、
未だ明らかではありません。
そこで今回の研究では、
アメリカで施行された6つのコホート研究に含まれる、
トータル29682名の住民データを活用することで、
動物性タンパク質の摂取と健康との関係を検証しています。
加工肉はベーコンが13グラム(2枚)、
ホットドッグが45グラム(1本)、
サラミやソーセージは28グラム(1本)が、
1サービング(1人前)として計算されています。
赤身肉と鳥肉は1サービングが102グラム、
魚は1サービングが74グラムとなっています。
中央値で19.0年の観察期間において、
週に2サービングの加工肉を増やすことにより、
心血管疾患のリスクは7%(95%CI:1.04から1.11)、
同じように週に2サービングの赤身肉を増やすことにより、
心血管疾患のリスクは3%(95%CI:1.01から1.06)、
鳥肉を増やすことにより4%(95%CI:1.01から1.06)、
それぞれ有意に増加していました。
一方で貝を含む魚を多く摂っても、
心血管疾患のリスクの増加は有意には認められませんでした。
総死亡のリスクについては、
週に2サービングの加工肉を増やすことにより、
総死亡のリスクは3%(95%CI:1.02から1.05)、
週に2サービングの赤身肉を増やすことにより、
総死亡のリスクは3%(95%CI:1.01から1.05)、
それぞれ有意に増加していました。
一方で鳥肉や魚を多く摂っても、
総死亡のリスクの増加は有意には認められませんでした。
このように、今回の検証においては、
加工肉以外に赤身肉や鳥肉の摂取量増加も、
若干ながら心血管疾患のリスクの増加に繋がり、
加工肉と赤身肉の摂取量増加は、
総死亡リスクの増加にも結び付いていました。
しかし、そのリスク増加はそれほど大きなものではなく、
こうした食品は「食べ過ぎない」ということに力点を置いて、
上手に付き合うことが肝要であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
肉や魚といった動物性タンパク質の摂取量と、
心血管疾患リスクと生命予後との関連を検証した論文です。
ソーセージやベーコンのような加工肉を多く摂ることが、
心血管疾患のリスクを増やし、
死亡リスクも増加させるということは、
これまでの多くの疫学データにおいて、
ほぼ実証されている事項です。
ただ、加工肉以外の動物性蛋白源、
牛肉や豚肉などの赤身肉、鳥肉、貝を含む魚などに、
同じようなリスクがあるのかどうか、
というような点については、
未だ明らかではありません。
そこで今回の研究では、
アメリカで施行された6つのコホート研究に含まれる、
トータル29682名の住民データを活用することで、
動物性タンパク質の摂取と健康との関係を検証しています。
加工肉はベーコンが13グラム(2枚)、
ホットドッグが45グラム(1本)、
サラミやソーセージは28グラム(1本)が、
1サービング(1人前)として計算されています。
赤身肉と鳥肉は1サービングが102グラム、
魚は1サービングが74グラムとなっています。
中央値で19.0年の観察期間において、
週に2サービングの加工肉を増やすことにより、
心血管疾患のリスクは7%(95%CI:1.04から1.11)、
同じように週に2サービングの赤身肉を増やすことにより、
心血管疾患のリスクは3%(95%CI:1.01から1.06)、
鳥肉を増やすことにより4%(95%CI:1.01から1.06)、
それぞれ有意に増加していました。
一方で貝を含む魚を多く摂っても、
心血管疾患のリスクの増加は有意には認められませんでした。
総死亡のリスクについては、
週に2サービングの加工肉を増やすことにより、
総死亡のリスクは3%(95%CI:1.02から1.05)、
週に2サービングの赤身肉を増やすことにより、
総死亡のリスクは3%(95%CI:1.01から1.05)、
それぞれ有意に増加していました。
一方で鳥肉や魚を多く摂っても、
総死亡のリスクの増加は有意には認められませんでした。
このように、今回の検証においては、
加工肉以外に赤身肉や鳥肉の摂取量増加も、
若干ながら心血管疾患のリスクの増加に繋がり、
加工肉と赤身肉の摂取量増加は、
総死亡リスクの増加にも結び付いていました。
しかし、そのリスク増加はそれほど大きなものではなく、
こうした食品は「食べ過ぎない」ということに力点を置いて、
上手に付き合うことが肝要であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
牛乳の健康影響について(2020年の総説) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
牛乳と乳製品と健康との関連についての総説です。
乳製品の健康への影響という問題については、
これまでに相反するデータがあり、
まだ結論に至ってはいません。
乳製品は吸収の良いカルシウムが豊富で、
リンやビタミンDも含んでいるため、
骨粗鬆症の予防に良いとかつては言われていましたが、
最近の疫学データにおいては、
乳製品の摂取で骨粗鬆症のリスクが、
明確に低下するというような結果は得られていません。
一方で乳製品は動物性脂肪を主体とする食品ですから、
脂質代謝に悪影響を与える可能性があり、
その摂取によりコレステロールが増加した、
というようなデータもあります。
このため心血管疾患の予防という観点からは、
現行のガイドラインにおいて、
その摂取の一定の制限が推奨されています。
チーズやヨーグルトなどの乳製品由来の発酵食品は、
生乳とは異なって動脈硬化に悪影響を与えず、
認知症予防にも良い効果が期待できるのでは、
というような報告もあります。
2018年のLancet誌に掲載された、
世界5大陸で13万人以上を解析した大規模疫学データでは、
乳製品の摂取量が多い群では未摂取と比較して、
心血管疾患による死亡と心筋梗塞、脳卒中、心不全を併せたリスクが、
16%(95%CI: 0.75から0.94)有意に低下していました。
総死亡のリスクも17%(95%CI: 0.72から0.96)と有意に低下し、
心血管疾患による死亡のリスクは14%(95%CI:0.58から1.01)、
有意ではないものの低下する傾向を示しました。
これも以前ご紹介したことのある、
2019年のBritish Medical Journal誌の論文では、
アメリカの医療従事者を対象とした、
3つの大規模な疫学データを、
まとめて解析することにより、
登録時に心血管疾患や癌のない168153名の女性と、
49602名の男性を、
30年余という長期間観察しています。
その結果、
最も乳製品の量が少ない(平均して牛乳1日80ml程度)群と比較して、
1日平均280mlまでのグループでは、
乳製品の摂取量と総死亡のリスクとの間に、
明確な関連は認められませんでした。
ただ、最も乳製品の摂取量が多い(平均して牛乳1日420ml)群は、
最も少ない群と比較して、
総死亡のリスクが7%(95%CI: 1.04から1.10)
有意に増加していました。
ただ、個別のリスクでみると、
心血管疾患による死亡リスクも、
癌による死亡リスクも、
有意な差はありませんでした。
ここで乳製品の種類を分けて検討すると、
生乳は最も死亡リスクが高く、
その摂取が50ml増えるにつれ、
総死亡のリスクが11%(95%CI: 1.09から1.14)、
心血管疾患による死亡リスクが9%(95%CI:1.03から1.15)、
癌による死亡リスクが11%(95%CI: 1.06から1.17)、
それぞれ有意に増加していました。
ここで乳製品をナッツや豆類、
全粒穀物に同カロリーで置き換えると、
死亡リスクは低下する一方、
赤身肉や加工肉に置き換えると、
死亡リスクはより増加する結果になりました。
要するに、
乳製品を多く摂ることは、
僅かながら生命予後に悪影響を与えていて、
その影響は牛乳で1日500mlくらいで明確になります。
特に乳製品の中でもリスクが高いのは生乳で、
チーズやヨーグルトでは明確なリスクの増加は確認されません。
そして、脂質と蛋白源として、
生乳をナッツや豆類に置き換えるとリスクは低下する一方、
赤身肉や加工肉は、
より悪影響を与える食品であることも確認されています。
今回の総説の内容は、
こうしたこれまでの研究の積み重ねを整理したものです。
①成長発達に牛乳は必要か?
母乳での栄養が困難な場合には、
牛乳を主体とするミルクを使用することは、
お子さんが1歳未満であれば有効な方法です。
ただ、それ以降の年齢において、
牛乳が健康な成長や発達に必要である、
という科学的な根拠はありません。
通常の食事に加えて、
成長期に牛乳を多く摂取することで、
成長が促進され高身長になることが認められています。
これはその一部はバリン、ロイシン、イソロイシンといった、
牛乳に含まれる分枝鎖アミノ酸と、
関連するIGF1などの成長因子の働きにあると思われますが、
詳細は必ずしも明らかではありません。
また、牛乳による成長促進が、
健康においてメリットのあることであるのかどうかも、
まだ明らかではありません。
高身長は心血管疾患のリスクを低下させる一方で、
一部の癌や大腿骨頸部骨折、肺塞栓症などのリスクは増加させる、
という知見があるからです。
②骨折予防に牛乳は効果的か?
牛乳を飲み続けると健康に良いという考え方は、
骨の健康に必要なカルシウムを摂取するため、
という意味合いが大きいと思われます。
しかし、牛乳やカルシウムの摂取量が多い国々は、
最も大腿骨頚部骨折のリスクが高い、
という矛盾した現象が報告されています。
2007年のAm J Clin Nutr誌に掲載されたメタ解析の論文では、
カルシウムの摂取量と大腿骨頸部骨折のリスクとの間に、
明確な関連は認められませんでした。
2011年のJ Bone Miner Res誌や、
2018年のBMC Public Health誌に掲載されたメタ解析でも、
牛乳や乳製品の摂取と大腿骨頸部骨折のリスクとの間には、
明確な関連は認められていません。
つまり、牛乳や乳製品を多く摂ることが、
骨折の予防に有効であるという根拠は、
実際にはあまり明確はものはないのです。
③牛乳と体重との関係
牛乳はダイエットに有効という考えがある一方、
牛乳に含まれる動物性脂肪には、
体重増加に結び付くリスクも指摘されています。
多くの研究において牛乳や乳製品の摂取と、
体重との間には明確な関連が認められていません。
ヨーグルトに関しては、
むしろダイエットに有効とする報告が、
複数認められていて、
これは腸内細菌叢などの調整作用によると考えられています。
理屈で言えば低脂肪乳の方が、
通常の生乳より体重増加のリスクは低そうですが、
臨床データにおいては明確な差は認められていません。
④牛乳と癌との関係
一部の国際的な比較データにおいて、
乳製品の摂取量が多いほど、
前立腺癌や乳癌のリスクが増加する、
という報告があります。
その理由として推測されているのは、
乳製品の摂取による血液中のIGF1濃度の増加です。
しかし、コホート研究においては、
前立腺癌、特に進行性で悪性度の高い前立腺癌と、
牛乳の摂取量との関連は認められていますが、
乳癌との関連は明確には認められていません。
乳製品全体の摂取量との関連では、
特に閉経後の女性において、
子宮体癌(子宮内膜癌)のリスクが増加した、
という結果も報告されています。
一方でメタ解析の結果で牛乳の摂取が多いと、
大腸癌のリスクが低下するというデータも報告されています。
ただ、実際には癌のリスクはそれ以前長期の生活習慣と、
関連しているものですが、
こうした研究の多くは、
ある時点での乳製品の摂取量と癌のリスクを比較しただけのものなので、
それほど信頼性の高いデータではない、
という点は注意する必要があります。
⑤牛乳とアレルギー
牛乳タンパクに対するアレルギーは、
新生児の4%に認められるという報告があります。
牛乳の摂取がアトピー性皮膚炎を悪化させ、
喘息や食物アレルギーなどの原因になる可能性がある、
という報告もあります。
アトピー性皮膚炎の家族歴のある新生児を、
牛のミルクとタンパク加水分解物の人工ミルクに分けて、
10年以上観察したところ、
人工ミルク群の方がアレルギーの病気が少なかった、
という報告があります。
アレルギー素因があると、
牛乳の摂取によりアレルギー性疾患が、
誘発されるという可能性はあるようです。
⑥牛乳と糖尿病との関係
牛乳を小児期に飲むことで、
牛乳タンパクが膵臓の炎症を惹起して、
1型糖尿病のリスクになる、
という考え方があります。
しかし、牛乳の代わりに人工ミルクを使用した臨床試験では、
膵臓に対する自己抗体の産生に明確な差はなく、
そのリスクについては結論が出ていません。
2型糖尿病については乳製品の摂取はそのリスクを低下させる、
という報告が幾つかあります。
ただ、こちらも差はないとする報告があって一定していません。
以上のようなこれまでの文献的検討より、
牛乳や乳製品には多くの栄養上の利点がある一方、
それほど明確はものではないものの、
複数の病気のリスクを増加させる、
というような報告もあり、
乳製品を特別視して毎日の摂取を推奨するような栄養指導は、
必ずしも適切ではないと思われます。
大人になったら乳製品は、
なるべくヨーグルトやチーズを利用して、
牛乳の摂取は1日コップ1杯程度に留めることが、
健康面では妥当な考え方であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
牛乳と乳製品と健康との関連についての総説です。
乳製品の健康への影響という問題については、
これまでに相反するデータがあり、
まだ結論に至ってはいません。
乳製品は吸収の良いカルシウムが豊富で、
リンやビタミンDも含んでいるため、
骨粗鬆症の予防に良いとかつては言われていましたが、
最近の疫学データにおいては、
乳製品の摂取で骨粗鬆症のリスクが、
明確に低下するというような結果は得られていません。
一方で乳製品は動物性脂肪を主体とする食品ですから、
脂質代謝に悪影響を与える可能性があり、
その摂取によりコレステロールが増加した、
というようなデータもあります。
このため心血管疾患の予防という観点からは、
現行のガイドラインにおいて、
その摂取の一定の制限が推奨されています。
チーズやヨーグルトなどの乳製品由来の発酵食品は、
生乳とは異なって動脈硬化に悪影響を与えず、
認知症予防にも良い効果が期待できるのでは、
というような報告もあります。
2018年のLancet誌に掲載された、
世界5大陸で13万人以上を解析した大規模疫学データでは、
乳製品の摂取量が多い群では未摂取と比較して、
心血管疾患による死亡と心筋梗塞、脳卒中、心不全を併せたリスクが、
16%(95%CI: 0.75から0.94)有意に低下していました。
総死亡のリスクも17%(95%CI: 0.72から0.96)と有意に低下し、
心血管疾患による死亡のリスクは14%(95%CI:0.58から1.01)、
有意ではないものの低下する傾向を示しました。
これも以前ご紹介したことのある、
2019年のBritish Medical Journal誌の論文では、
アメリカの医療従事者を対象とした、
3つの大規模な疫学データを、
まとめて解析することにより、
登録時に心血管疾患や癌のない168153名の女性と、
49602名の男性を、
30年余という長期間観察しています。
その結果、
最も乳製品の量が少ない(平均して牛乳1日80ml程度)群と比較して、
1日平均280mlまでのグループでは、
乳製品の摂取量と総死亡のリスクとの間に、
明確な関連は認められませんでした。
ただ、最も乳製品の摂取量が多い(平均して牛乳1日420ml)群は、
最も少ない群と比較して、
総死亡のリスクが7%(95%CI: 1.04から1.10)
有意に増加していました。
ただ、個別のリスクでみると、
心血管疾患による死亡リスクも、
癌による死亡リスクも、
有意な差はありませんでした。
ここで乳製品の種類を分けて検討すると、
生乳は最も死亡リスクが高く、
その摂取が50ml増えるにつれ、
総死亡のリスクが11%(95%CI: 1.09から1.14)、
心血管疾患による死亡リスクが9%(95%CI:1.03から1.15)、
癌による死亡リスクが11%(95%CI: 1.06から1.17)、
それぞれ有意に増加していました。
ここで乳製品をナッツや豆類、
全粒穀物に同カロリーで置き換えると、
死亡リスクは低下する一方、
赤身肉や加工肉に置き換えると、
死亡リスクはより増加する結果になりました。
要するに、
乳製品を多く摂ることは、
僅かながら生命予後に悪影響を与えていて、
その影響は牛乳で1日500mlくらいで明確になります。
特に乳製品の中でもリスクが高いのは生乳で、
チーズやヨーグルトでは明確なリスクの増加は確認されません。
そして、脂質と蛋白源として、
生乳をナッツや豆類に置き換えるとリスクは低下する一方、
赤身肉や加工肉は、
より悪影響を与える食品であることも確認されています。
今回の総説の内容は、
こうしたこれまでの研究の積み重ねを整理したものです。
①成長発達に牛乳は必要か?
母乳での栄養が困難な場合には、
牛乳を主体とするミルクを使用することは、
お子さんが1歳未満であれば有効な方法です。
ただ、それ以降の年齢において、
牛乳が健康な成長や発達に必要である、
という科学的な根拠はありません。
通常の食事に加えて、
成長期に牛乳を多く摂取することで、
成長が促進され高身長になることが認められています。
これはその一部はバリン、ロイシン、イソロイシンといった、
牛乳に含まれる分枝鎖アミノ酸と、
関連するIGF1などの成長因子の働きにあると思われますが、
詳細は必ずしも明らかではありません。
また、牛乳による成長促進が、
健康においてメリットのあることであるのかどうかも、
まだ明らかではありません。
高身長は心血管疾患のリスクを低下させる一方で、
一部の癌や大腿骨頸部骨折、肺塞栓症などのリスクは増加させる、
という知見があるからです。
②骨折予防に牛乳は効果的か?
牛乳を飲み続けると健康に良いという考え方は、
骨の健康に必要なカルシウムを摂取するため、
という意味合いが大きいと思われます。
しかし、牛乳やカルシウムの摂取量が多い国々は、
最も大腿骨頚部骨折のリスクが高い、
という矛盾した現象が報告されています。
2007年のAm J Clin Nutr誌に掲載されたメタ解析の論文では、
カルシウムの摂取量と大腿骨頸部骨折のリスクとの間に、
明確な関連は認められませんでした。
2011年のJ Bone Miner Res誌や、
2018年のBMC Public Health誌に掲載されたメタ解析でも、
牛乳や乳製品の摂取と大腿骨頸部骨折のリスクとの間には、
明確な関連は認められていません。
つまり、牛乳や乳製品を多く摂ることが、
骨折の予防に有効であるという根拠は、
実際にはあまり明確はものはないのです。
③牛乳と体重との関係
牛乳はダイエットに有効という考えがある一方、
牛乳に含まれる動物性脂肪には、
体重増加に結び付くリスクも指摘されています。
多くの研究において牛乳や乳製品の摂取と、
体重との間には明確な関連が認められていません。
ヨーグルトに関しては、
むしろダイエットに有効とする報告が、
複数認められていて、
これは腸内細菌叢などの調整作用によると考えられています。
理屈で言えば低脂肪乳の方が、
通常の生乳より体重増加のリスクは低そうですが、
臨床データにおいては明確な差は認められていません。
④牛乳と癌との関係
一部の国際的な比較データにおいて、
乳製品の摂取量が多いほど、
前立腺癌や乳癌のリスクが増加する、
という報告があります。
その理由として推測されているのは、
乳製品の摂取による血液中のIGF1濃度の増加です。
しかし、コホート研究においては、
前立腺癌、特に進行性で悪性度の高い前立腺癌と、
牛乳の摂取量との関連は認められていますが、
乳癌との関連は明確には認められていません。
乳製品全体の摂取量との関連では、
特に閉経後の女性において、
子宮体癌(子宮内膜癌)のリスクが増加した、
という結果も報告されています。
一方でメタ解析の結果で牛乳の摂取が多いと、
大腸癌のリスクが低下するというデータも報告されています。
ただ、実際には癌のリスクはそれ以前長期の生活習慣と、
関連しているものですが、
こうした研究の多くは、
ある時点での乳製品の摂取量と癌のリスクを比較しただけのものなので、
それほど信頼性の高いデータではない、
という点は注意する必要があります。
⑤牛乳とアレルギー
牛乳タンパクに対するアレルギーは、
新生児の4%に認められるという報告があります。
牛乳の摂取がアトピー性皮膚炎を悪化させ、
喘息や食物アレルギーなどの原因になる可能性がある、
という報告もあります。
アトピー性皮膚炎の家族歴のある新生児を、
牛のミルクとタンパク加水分解物の人工ミルクに分けて、
10年以上観察したところ、
人工ミルク群の方がアレルギーの病気が少なかった、
という報告があります。
アレルギー素因があると、
牛乳の摂取によりアレルギー性疾患が、
誘発されるという可能性はあるようです。
⑥牛乳と糖尿病との関係
牛乳を小児期に飲むことで、
牛乳タンパクが膵臓の炎症を惹起して、
1型糖尿病のリスクになる、
という考え方があります。
しかし、牛乳の代わりに人工ミルクを使用した臨床試験では、
膵臓に対する自己抗体の産生に明確な差はなく、
そのリスクについては結論が出ていません。
2型糖尿病については乳製品の摂取はそのリスクを低下させる、
という報告が幾つかあります。
ただ、こちらも差はないとする報告があって一定していません。
以上のようなこれまでの文献的検討より、
牛乳や乳製品には多くの栄養上の利点がある一方、
それほど明確はものではないものの、
複数の病気のリスクを増加させる、
というような報告もあり、
乳製品を特別視して毎日の摂取を推奨するような栄養指導は、
必ずしも適切ではないと思われます。
大人になったら乳製品は、
なるべくヨーグルトやチーズを利用して、
牛乳の摂取は1日コップ1杯程度に留めることが、
健康面では妥当な考え方であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
新型コロナウイルス感染症の妊娠出産事例 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年2月12日のLancet誌にウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症(COVIT-19)に妊娠中に感染し、
その後出産した事例の解析です。
新型コロナウイルス感染症の、
まとまった事例報告は中国のものが複数存在していますが、
特別な対応が必要とされる妊娠中の感染については、
これまでに報告がありませんでした。
今回の検証はその初めてのもので、
以前ご紹介したJAMA誌の論文で、
138名の感染時事例が解析されていた、
武漢大学中南病院(Zhongnan Hospital of Wuhan Univercity)で、
2020年1月に入院した妊娠中の新型コロナウイルス感染症の事例を、
9例まとめて解析しています。
今回解析された9例の妊娠中の感染事例は、
発熱や咳などの症状においては、
他の患者と違いはなく、
重症肺炎や死亡事例は含まれていません。
いずれも妊娠の後期に帝王切開で出産に成功しています。
胎児仮死などの合併症も認められていません。
羊水や臍帯血で行った遺伝子検査の結果では、
赤ちゃんへの垂直感染は認められていません。
今回解析された事例の範囲では、
妊娠中の女性でもその症状には大きな差はなく、
胎児への垂直感染も認められていません。
妊娠されている女性にとっては、
まずは安心材料となる結果ではありますが、
まだ例数は少なく、
単独施設での短期のデータに過ぎないので、
この点については今後の検証の積み重ねを注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年2月12日のLancet誌にウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症(COVIT-19)に妊娠中に感染し、
その後出産した事例の解析です。
新型コロナウイルス感染症の、
まとまった事例報告は中国のものが複数存在していますが、
特別な対応が必要とされる妊娠中の感染については、
これまでに報告がありませんでした。
今回の検証はその初めてのもので、
以前ご紹介したJAMA誌の論文で、
138名の感染時事例が解析されていた、
武漢大学中南病院(Zhongnan Hospital of Wuhan Univercity)で、
2020年1月に入院した妊娠中の新型コロナウイルス感染症の事例を、
9例まとめて解析しています。
今回解析された9例の妊娠中の感染事例は、
発熱や咳などの症状においては、
他の患者と違いはなく、
重症肺炎や死亡事例は含まれていません。
いずれも妊娠の後期に帝王切開で出産に成功しています。
胎児仮死などの合併症も認められていません。
羊水や臍帯血で行った遺伝子検査の結果では、
赤ちゃんへの垂直感染は認められていません。
今回解析された事例の範囲では、
妊娠中の女性でもその症状には大きな差はなく、
胎児への垂直感染も認められていません。
妊娠されている女性にとっては、
まずは安心材料となる結果ではありますが、
まだ例数は少なく、
単独施設での短期のデータに過ぎないので、
この点については今後の検証の積み重ねを注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
コーヒーと癌発症リスク(2020年のアンブレラレビュー) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のBMC Cancer誌に掲載された、
コーヒーと癌リスクについての論文です。
コーヒーを1日3から4杯くらい飲むことが、
心血管疾患や糖尿病、脂質異常症などのリスクを下げ、
生命予後にも良い影響を与えることは、
これまでの多くの精度の高い疫学データにより、
ほぼ確立された事実です。
ただ、それではどんな病気にも、
コーヒーは予防的に働くのかと言うと、
勿論そうしたことが証明されているという訳ではありません。
癌の発症リスクについては、
まだコーヒーの健康効果が認められる前に、
コーヒーを多く飲む人では膀胱癌が多い、
という複数のデータが報告されています。
その一方でトータルな癌のリスクはコーヒーを飲む人の方が低い、
という報告も複数あり、
また肝臓癌については、
コーヒーの予防効果を期待させるような結果が、
これも複数報告されています。
コーヒーと癌リスクについての関連は、
まだクリアになっているとは言えないのです。
そこで今回の研究では、
これまでの臨床データや疫学データを、
まとめて解析したメタ解析の複数の論文を、
更にまとめて解析する、
アンブレラレビューと呼ばれる手法により、
これまでの「集合知」としてこの問題を検証しています。
これまでの28のメタ解析のデータをまとめて解析した結果として、
肝臓癌と子宮体癌(子宮内膜癌)については、
コーヒーの摂取量が多いほどその発症リスクが低下する、
という関連が認められました。
その一方で小児の急性リンパ性白血病と膀胱癌については、
コーヒーの摂取量の多い群でそのリスクが増加する結果が得られました。
ただ、最終的なメタ解析の結果としては、
有意であったのは肝臓癌と子宮体癌のリスク低下のみでした。
このように今回のアンブレラレビューの結果では、
肝臓癌と子宮体癌に限ると、
コーヒーはそのリスクの低下に関連しているようです。
ただ、他の癌については明確なことは言えず、
特に膀胱癌と急性リンパ性白血病のリスク増加については、
今後の検証が必要であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年のBMC Cancer誌に掲載された、
コーヒーと癌リスクについての論文です。
コーヒーを1日3から4杯くらい飲むことが、
心血管疾患や糖尿病、脂質異常症などのリスクを下げ、
生命予後にも良い影響を与えることは、
これまでの多くの精度の高い疫学データにより、
ほぼ確立された事実です。
ただ、それではどんな病気にも、
コーヒーは予防的に働くのかと言うと、
勿論そうしたことが証明されているという訳ではありません。
癌の発症リスクについては、
まだコーヒーの健康効果が認められる前に、
コーヒーを多く飲む人では膀胱癌が多い、
という複数のデータが報告されています。
その一方でトータルな癌のリスクはコーヒーを飲む人の方が低い、
という報告も複数あり、
また肝臓癌については、
コーヒーの予防効果を期待させるような結果が、
これも複数報告されています。
コーヒーと癌リスクについての関連は、
まだクリアになっているとは言えないのです。
そこで今回の研究では、
これまでの臨床データや疫学データを、
まとめて解析したメタ解析の複数の論文を、
更にまとめて解析する、
アンブレラレビューと呼ばれる手法により、
これまでの「集合知」としてこの問題を検証しています。
これまでの28のメタ解析のデータをまとめて解析した結果として、
肝臓癌と子宮体癌(子宮内膜癌)については、
コーヒーの摂取量が多いほどその発症リスクが低下する、
という関連が認められました。
その一方で小児の急性リンパ性白血病と膀胱癌については、
コーヒーの摂取量の多い群でそのリスクが増加する結果が得られました。
ただ、最終的なメタ解析の結果としては、
有意であったのは肝臓癌と子宮体癌のリスク低下のみでした。
このように今回のアンブレラレビューの結果では、
肝臓癌と子宮体癌に限ると、
コーヒーはそのリスクの低下に関連しているようです。
ただ、他の癌については明確なことは言えず、
特に膀胱癌と急性リンパ性白血病のリスク増加については、
今後の検証が必要であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
新型コロナウイルス感染乳児事例9例の解析 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年2月14日のJAMA誌にウェブ掲載された、
これまで殆ど報告のなかった、
乳児の感染事例9例をまとめた中国発の報告です。
今回の新型コロナウイルス感染症COVID-19では、
その特徴の1つとして15歳未満の小児の事例が、
殆ど報告されていないという現象があります。
風邪症候群の原因ウイルスとして、
SARS以前から知られていた4種類のコロナウイルスは、
いずれも小さなお子さんには感染しやすく、
乳幼児期の肺炎や喘息様気管支炎などの、
原因ウイルスとして知られています。
つまり、SARS以前のコロナウイルス感染症は、
むしろ子供の病気であったのです。
それが、今回の新型コロナウイルス感染症では、
大人や高齢者での発症事例の報告ばかりで、
小児の事例が報告をされていない、
という奇異な現象がありました。
しかし、実際には少ないながらも、
家族内感染などで小さなお子さんでの感染が、
確認された事例が存在しています。
中国において2019年12月8日から2020年2月6日までの間に、
中国国内で診断された新型コロナウイルス感染症は31211名で、
そのうち1歳未満の乳児は9名のみ報告されています。
9名はいずれも遺伝子検査で、
新型コロナウイルス感染症と診断されていますが、
いずれもが軽症で、
集中治療室に入室したり、人工呼吸器を装着したり、
重篤な合併症を併発したようなケースは1例もありませんでした。
症状としては4例で発熱が、
2例で軽度の呼吸器症状が、
1例は無症状ですが感染家族と濃厚接触のため検査が施行されています。
残りの2例の情報は欠落しています。
要するに乳児は新型コロナウイルス感染症にならない、
ということではなく、
風邪症候群の原因となる従来のコロナウイルス感染症と同程度か、
むしろそれより軽い症状で推移しているようです。
今回の事例は7例が女児で、
その意味では明確な性差があるのですが、
9例のみの報告ですから、
あまりそのことに意味づけはしない方が、
現時点では良さそうです。
これは1歳未満の小児のみの解析で、
おそらく小児の事例をまとめた報告が、
また別個に発表されるのではないかと思われます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2020年2月14日のJAMA誌にウェブ掲載された、
これまで殆ど報告のなかった、
乳児の感染事例9例をまとめた中国発の報告です。
今回の新型コロナウイルス感染症COVID-19では、
その特徴の1つとして15歳未満の小児の事例が、
殆ど報告されていないという現象があります。
風邪症候群の原因ウイルスとして、
SARS以前から知られていた4種類のコロナウイルスは、
いずれも小さなお子さんには感染しやすく、
乳幼児期の肺炎や喘息様気管支炎などの、
原因ウイルスとして知られています。
つまり、SARS以前のコロナウイルス感染症は、
むしろ子供の病気であったのです。
それが、今回の新型コロナウイルス感染症では、
大人や高齢者での発症事例の報告ばかりで、
小児の事例が報告をされていない、
という奇異な現象がありました。
しかし、実際には少ないながらも、
家族内感染などで小さなお子さんでの感染が、
確認された事例が存在しています。
中国において2019年12月8日から2020年2月6日までの間に、
中国国内で診断された新型コロナウイルス感染症は31211名で、
そのうち1歳未満の乳児は9名のみ報告されています。
9名はいずれも遺伝子検査で、
新型コロナウイルス感染症と診断されていますが、
いずれもが軽症で、
集中治療室に入室したり、人工呼吸器を装着したり、
重篤な合併症を併発したようなケースは1例もありませんでした。
症状としては4例で発熱が、
2例で軽度の呼吸器症状が、
1例は無症状ですが感染家族と濃厚接触のため検査が施行されています。
残りの2例の情報は欠落しています。
要するに乳児は新型コロナウイルス感染症にならない、
ということではなく、
風邪症候群の原因となる従来のコロナウイルス感染症と同程度か、
むしろそれより軽い症状で推移しているようです。
今回の事例は7例が女児で、
その意味では明確な性差があるのですが、
9例のみの報告ですから、
あまりそのことに意味づけはしない方が、
現時点では良さそうです。
これは1歳未満の小児のみの解析で、
おそらく小児の事例をまとめた報告が、
また別個に発表されるのではないかと思われます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
新型コロナウイルス肺炎99入院事例まとめ(単一施設Lancet) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Lancet誌に2020年1月29日にウェブ掲載された、
武漢市発新型コロナウイルス肺炎(2019-nCoV)の、
最初のまとまった単一施設の報告です。
その後先日ご紹介した、
JAMA誌の138例の報告が続くという格好になります。
ご紹介は前後する形になることをご了承下さい。
こちらは武漢市金銀潭病院(Wuhan Jinyintan Hospital)での、
2020年1月1日から1月20日に新型コロナウイルス肺炎と診断された、
99例の入院事例がまとめて解析されています。
1月25日までの経過が確認されています。
JAMA誌の論文の対象病院よりも、
初期治療に当たっていた施設のようで、
入院の時点で3分の1の患者に呼吸困難があり、
17名は急性呼吸窮迫症候群を、
8名は急性肺障害を、3名は急性腎障害を、
4名は敗血症の状態になっています。
全体の49名(49%)が武漢市の海産物市場の関係者で、
平均年齢は53.5歳、男性が67名、女性32名と、
明確な性差が認められています。
50名には慢性病の基礎疾患が認められています。
血液検査の特徴はリンパ球の減少で、
リンパ球数は平均で900、
35%の35名は基準値下限の1100を下回っていました。
1月25日の時点で、
患者の31%に当たる31名は退院しており、
11名は死亡しています。
この論文では、
基礎疾患のある高齢者で男性に、
新型コロナウイルス肺炎は感染して重症化しやすい、
という臨床像が強調されています。
確かにこの99名の解析では、
そうした傾向が認められていますが、
前回ご紹介したJAMA誌のデータでは、
男性は54.3%で、
基礎疾患のあるのは46.4%でそれも軽症が多かったので、
少しニュアンスは異なっています。
ただ、JAMA誌の事例には院内感染が多く含まれているので、
単純に比較は出来ないようにも思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Lancet誌に2020年1月29日にウェブ掲載された、
武漢市発新型コロナウイルス肺炎(2019-nCoV)の、
最初のまとまった単一施設の報告です。
その後先日ご紹介した、
JAMA誌の138例の報告が続くという格好になります。
ご紹介は前後する形になることをご了承下さい。
こちらは武漢市金銀潭病院(Wuhan Jinyintan Hospital)での、
2020年1月1日から1月20日に新型コロナウイルス肺炎と診断された、
99例の入院事例がまとめて解析されています。
1月25日までの経過が確認されています。
JAMA誌の論文の対象病院よりも、
初期治療に当たっていた施設のようで、
入院の時点で3分の1の患者に呼吸困難があり、
17名は急性呼吸窮迫症候群を、
8名は急性肺障害を、3名は急性腎障害を、
4名は敗血症の状態になっています。
全体の49名(49%)が武漢市の海産物市場の関係者で、
平均年齢は53.5歳、男性が67名、女性32名と、
明確な性差が認められています。
50名には慢性病の基礎疾患が認められています。
血液検査の特徴はリンパ球の減少で、
リンパ球数は平均で900、
35%の35名は基準値下限の1100を下回っていました。
1月25日の時点で、
患者の31%に当たる31名は退院しており、
11名は死亡しています。
この論文では、
基礎疾患のある高齢者で男性に、
新型コロナウイルス肺炎は感染して重症化しやすい、
という臨床像が強調されています。
確かにこの99名の解析では、
そうした傾向が認められていますが、
前回ご紹介したJAMA誌のデータでは、
男性は54.3%で、
基礎疾患のあるのは46.4%でそれも軽症が多かったので、
少しニュアンスは異なっています。
ただ、JAMA誌の事例には院内感染が多く含まれているので、
単純に比較は出来ないようにも思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。



