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食事時間制限ダイエットの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
食事時間制限の有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年4月21日掲載された、
食事時間を制限するダイエットの有効性についての論文です。

肥満は心血管疾患など多くの病気のリスクとなり、
体重を適切に減らすことにより、
そのリスクの低減に繋がることも分かっています。

そのため、多くの減量法が開発されていますが、
科学的にその効果が立証されているものは、
実際にはあまり多くはありません。

摂取カロリーを制限する低カロリーのダイエットは、
その数少ない長期の有効性の確認されている減量法ですが、
その1年継続後の有効性は、
臨床試験においては体重の5%未満の低下にとどまっていて、
リバウンドも多いのが実際です。

そこでカロリー制限に組み合わせるダイエット介入として、
今回検討されているのが、
食事を摂る時間を制限するという方法です。
「夜食べると太る」というのは、
一般にも広く言われていることですが、
代謝の低下する夜間帯にカロリーを摂取し、
それから寝てしまうことは、
理屈から考えても、
体重増加の要因とはなりそうです。

ただ、実際にその影響が、
科学的に実証されているとは言えないのです。

今回の研究は中国において、
年齢は18から75歳、BMIが28から45で、
内臓疾患などはない139名をくじ引きで2つの群に分けると、
男性は1日1500から1800キロカロリー、
女性は1日1200から1500キロカロリーの低カロリーダイエットを施行すると共に、
一方の群では朝8じから午後4時までに食事の時間を制限し、
もう一方は特に食事時間の制限は行わずに、
12か月の経過観察を行っています。

その結果、
1年の時点での平均の体重減少は、
食事時間制限群で-8.0キログラム(95%CI:-9.6から-6.4)であったのに対して、
食事時間制限未実施群では-6.3キログラム(95%CI:-7.8から-4.7)で、
この差は検査の規定上、
有意なものではありませんでした。

つまり、夜は食べないような制限を加えても、
低カロリーダイエットの有効性には、
あまり差は見られなかった、と言う結果です。

この問題は簡単に結論が出るものではなく、
今後も検証が必要と考えられますが、
夜食べないダイエットの減量効果に限った有効性は、
現状科学的に確認されたものではない、
というように捉えておいて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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スタチンに上乗せしたコレステロール降下剤の予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチン以外のコレステロール降下療法の有効性.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年5月4日ウェブ掲載された、
スタチン以外のコレステロール降下剤による、
心血管疾患予防効果についての論文です。

スタチンというのはコレステロールの合成酵素の阻害剤で、
強力にLDLコレステロールを低下させる作用を持ち、
コレステロールの合成抑制以外に、抗炎症作用など、
動脈硬化性疾患の、
進行を抑制するような働きを併せ持ち、
特に心筋梗塞などの心血管疾患の再発予防においては、
欠かせない治療薬となっています。

スタチンの心血管疾患予防に関する有効性は、
多くの精度の高い臨床研究により実証されています。

ただ、スタチンを充分量使用しても、
目的となるLDLコレステロール値を達成出来ない場合や、
副作用や有害事象などにより、
スタチンを使用出来ないケースでは、
上乗せもしくは単独で、
エゼチミブというコレステロール吸収の阻害剤や、
PCSK9阻害剤という、
LDL受容体に結合して安定化させるという、
別個のメカニズムを持つ注射薬が、
健康保険でも適応となり使用されています。

しかし、実地臨床において、
エゼチミブやPCSK9阻害剤に、
スタチン単独と比較して、
どれだけの有効性があるのかについては、
まだデータは限られたものしかありません。
この場合の有効性というのは、
コレステロールを下げる力ではなく、
心血管疾患の予防効果のことです。

今回の研究では、
これまでの臨床研究のデータをまとめて解析して比較する、
ネットワークメタ解析と言う手法で、
この問題の検証を行っています。

これまでに行われたエゼチミブとPCSK9阻害剤の介入試験の中で、
500人以上の患者を6か月以上観察した、
14の臨床研究に含まれる、
トータルで83660名のデータをまとめて解析したところ、
スタチンへのエゼチミブの上乗せは、
心筋梗塞の相対リスクを13%(95%CI:0.80から0.94)、
脳卒中の相対リスクを18%(95%CI:0.71から0.96)、
有意に低下させていました。
つまり、一定の予防効果は付加されるという結果です。
ただ、総死亡や心血管疾患による死亡のリスクについては、
有意な低下は認められませんでした。

もう少し詳細な解析として、
患者を心血管疾患の発症リスクが低い群から高い群に分け、
絶対リスクとして、
患者1000人当たり心筋梗塞が12人、
脳卒中が10人の患者発症を抑制した場合に、
上乗せ効果があるとして解析すると、
今後5年間の心血管疾患発症リスクが、
中間値で24%に達するような超高リスク群では、
スタチンへのPCSK9阻害剤の上乗せは、
心筋梗塞のリスクを患者1000人当たり16人減らし、
脳卒中のリスクを21人減少させましたが、
エゼチミブは脳卒中のリスクは14人減らしたものの、
心筋梗塞のリスクは11人で基準には達していませんでした。

今後5年間の心血管疾患発症リスクが、
15%を超える高リスク群での解析では、
スタチンへのPCSK9阻害剤の上乗せは、
心筋梗塞のリスクを患者1000人当たり12人減らし、
脳卒中のリスクは16人減少させましたが、
エゼチミブは脳卒中のリスクは11人減らしたものの、
心筋梗塞のリスクは8人減少で基準には達していませんでした。

そして患者の大多数を占める、
中等度リスク群から低リスク群においては、
スタチンへのPCSK9阻害剤やエゼチミブの上乗せは、
明確な予後の改善には結びついていませんでした。

このように、
スタチンの使用で充分なコレステロール降下が得られない場合、
PCSK9阻害剤やエゼチミブの上乗せは、
一定の心筋梗塞や脳卒中発症抑制効果が望めますが、
生命予後には影響を与えず、
抑制効果自体も、
今後5年の心血管疾患リスクが15%以上という、
高リスク群に限って認められていました。

矢張り、スタチンと他のコレステロール降下剤とは、
同列に考えるべきではなく、
上乗せでの使用は高リスクの患者に限って有効性があると、
そう考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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オミクロン株の乳幼児感染の傾向 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オミクロン株の乳幼児のリスク.jpg
JAMA Pediatrics誌に2022年4月1日掲載されたレターですが、
5歳未満の新型コロナウイルス感染症の傾向を、
オミクロン株とデルタ株の流行時期で比較した内容です。

デルタ株と比較してオミクロン株の流行期には、
症状は明らかに軽症化しましたが、
その一方で乳幼児を主体とした感染は増加し、
デルタ株の流行時期にはあまりなかった、
保育園の休園などの事態が急増しています。

実際にクリニックにおいても、
感冒程度の症状の乳幼児で、
他院で「ただの風邪」という判断で検査もされず、
数日経ってから父親や母親が次々と発熱して、
検査をしたら新型コロナの家族内感染だった、
というようなケースを、最近は多く経験しています。

これは、デルタ株の流行時期など、
これまでの感染では見られなかった事態です。

そもそも新型コロナウイルスの乳幼児の感染は、
極めて稀だと考えられていた筈です。
しかし、オミクロン株の流行に至って、
状況は一変し小児、特に乳幼児が家庭に感染を持ち込み、
それで家族内感染が広がるという経路が、
今の感染拡大の1つのパターンとなっているのです。

それでは、実際にどの程度オミクロン株の乳幼児感染は、
それ以前の時期の感染と違いがあるのでしょうか?

今回の疫学データはアメリカにおいて、
5歳未満の新型コロナウイルス感染症患者トータル651640名を、
オミクロン株流行期の22772名と、
デルタ株流行期の2つの疫学データの66692名と10496名に分けて、
その罹患率を比較検証しています。

その結果デルタ株の流行期には、
新型コロナ感染の罹患率は、
乳幼児1日1000人当たり1.0から1.5件であったのに対して、
オミクロン株の流行期に入った2021年12月には
2.4から5.6件と増加していて、
2022年1つ前半には8.6件とピークに達していました。
つまり、デルタ株の流行期と比較して、
8倍以上に増加したということになります。
オミクロン株の感染は、
3から4歳と比較して0から2歳の方がより多く、
感染はより低年齢化した、と言うことが出来ます。
今回の3つの疫学データにおいて、
全てを併せても死亡者は10人に満たないレベルでした。

このように、
デルタ株の感染と比較してオミクロン株の感染では、
5歳未満の感染のリスクが明らかに高く、
より低年齢化が進行していることが確認されました。
どちらの流行時期においても、
乳幼児感染は同じように軽症でした。

従って、乳幼児の新型コロナウイルス感染は、
患者本人にとっては単なる風邪と違いはないのですが、
そこから家族内感染により感染が拡大することが、
オミクロン株の感染拡大の一因となっていると考えられました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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軽度認知障害(MCI)の介入法(2022年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
MCIの予防法.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年5月3日ウェブ掲載された、
軽度認知機能障害(MCI)の治療についての論文です。

軽度認知機能障害(MCI: Mild Congnitive Impairment)と言うのは、
正常の老化と認知症との間のどちらでもない状態のことで、
通常物忘れの自覚が本人にあり、
家族も以前はなかったような忘れ方や言動がある、
という訴えがあるのですが、
ミニメンタルテストのような一般的な認知症検査では、
認知症の基準を満たさない、という状態のことです。

この中には、
その後急激な悪化はすることなく、
結果として正常な老化と判断される場合と、
経過とともに進行して認知症の基準を満たすようになり、
結果的には認知症の初期症状であった、
というように判断される場合とがあります。

この両者のいずれであるかは、
経過をみないと分からないというのが、
軽度認知障害の厄介なところで、
一部で両者を見分けるのに有効な血液検査と称するものが、
開発され活用されていますが、
それがどの程度正確な診断に結び付くものであるかは、
まだ明確ではないと思います。

軽度認知障害と判断された場合には、
それが更なる認知機能の低下に進行しないように、
対策を講じる必要があります。

ただ、現行認知症に使用されているような薬剤は、
敢くまで認知症と診断された場合の進行抑制にのみ、
その有効性が確認されているので、
副作用や有害事象もあることを考えれば、
まだ病気とは言えない段階で使用することは、
適切ではありません。

そうなるとその時点での進行抑制の介入としては、
生活習慣病の管理や、
運動、ゲームなど脳を活用する娯楽の習慣化、
健康的な食生活、ストレスのコントロール、
などの一般的なものにならざるを得ません。

そうした生活への介入の中で、
最近注目されているのが、
複数領域への介入(Mutidomain interventions)という考え方です。

これはどういうものかと言うと、
たとえば読書などの脳を刺激するインドアの習慣と、
運動などのアウトドアの習慣など、
複数の認知機能に良い影響を与えると想定される活動を、
2つ以上同時に習慣化するという方法です。

こうした介入により、
単独の運動療法などと比較して、
より高い効果が得られるのではないかと考えられているのです。

しかし、実際にはそれほど実証的に、
そうした介入の効果が検証されている、
という訳ではありません。

今回の研究はこれまでに試みられた複数領域への介入が、
単独の介入と比較して、
有効であるかどうかを、
これまでの臨床データをまとめて解析する、
メタ解析という手法で検証しているものです。

これまでの28の臨床研究で登録された、
トータルで2711名の患者のデータをまとめて解析したところ、
単独の方法による介入と比較して、
運動と認知刺激など2つ以上の方法を併用すると、
トータルな認知機能や記憶機能など多くの分野において、
より認知機能の改善に結び付いていたと解析されました。

このように、
運動と知的ゲームの習慣を同時に持つなど、
脳の複数領域を刺激するような習慣を持つことは、
現状最も有効な軽度認知障害への介入法であると言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナワクチン接種後の帯状疱疹発症について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
帯状疱疹とCOVID-19ワクチン.jpg
Vaccines誌に、
2021年9月11日発表されたレビューですが、
新型コロナワクチンの接種後の有害事象として、
報告されることのある帯状疱疹についてまとめたものです。

新型コロナウイルスワクチンの3回目接種が、
日本では2種のmRNAワクチンによって進められていて、
今後4回目接種も対象を限定して準備されているようです。

この2種類のmRNAワクチンに関しては、
その短期の有効性はブースター接種を含めて確認されていて、
その安全性についても現状大きな問題は生じていません。

ただ、他のワクチンではあまり報告のない有害事象が、
新型コロナワクチン接種後には多いのでは、
というような報告も散見され、
そのうちの1つが今回ご紹介する帯状疱疹の発症です。

クリニックに関して言いますと、
ワクチン接種からそれほど時間の経たない時期に、
帯状疱疹を発症したケースが3例ほどありました。
ただ、帯状疱疹の発症自体最近増えているという印象はあり、
当然ワクチン接種前に発症することも多いので、
ワクチン接種後に増えているのかどうか、
と言う点については、
クリニックレベルの事例では、
何とも言えないというのが実際です。

ある患者さんはワクチン接種後1週間程度で帯状疱疹を発症し、
皮膚科を受診したところ、
「ああ、ワクチンを打ってから出たんでしょ。最近多いのよね」
と言われたとのことでした。

ただ、その皮膚科の先生が、
どのくらいの実証的なデータを元にして、
そうした発言をされたのかは分かりません。

今回のレビューは2021年の時点で、
それまでの主だった臨床報告をまとめて解説したものです。

解析の時点で12編の論文が発表されていて、
91名の患者が新型コロナワクチン接種後に帯状疱疹を発症しています。

このうち13%に当たる12名は、
関節リウマチなどの自己免疫疾患に罹患していて、
10%に当たる9名は免疫抑制剤を使用していました。
ワクチン接種後平均で5.8日で帯状疱疹は発症していました。

現状大規模な疫学データや臨床試験のレベルでは、
有意な帯状疱疹事例の増加は見られていません。
そうしたことはあり得るのですが、
そのリスクを議論するほどの頻度ではないようです。
mRNAワクチンなど特定のワクチンのみで増加している、
ということであればその意味合いは変わって来ますが、
今のところそうではなく、
不活化ワクチンやウイルスベクターワクチンでも、
同じように報告が見られています。

ただ、インフルエンザなど他のワクチンでは、
殆どそうした報告は見られませんから、
何らか新型コロナウイルスワクチンに、
関連する可能性はありそうです。

それでは、仮にこうした現象があるとして、
そのメカニズムはどのように考えられるのでしょうか?

通常帯状疱疹は、水痘ウイルスの再活性化により起こる、
というように説明されます。
そのため、ウイルスに対する細胞性免疫が、
低下したり、免疫系全体が抑制されているような状況で、
生じやすいと考えられます。

しかし、新型コロナウイルスワクチンを接種すると、
細胞性免疫は賦活される筈ですから、
それで帯状疱疹が増えるのは矛盾しているように思われます。

ここで1つの解釈としては、
新型コロナワクチンで誘導される免疫は、
帯状疱疹を抑制しているものとは異なるので、
新型コロナウイルスに関わる免疫系は賦活化される一方で、
それ以外の免疫系は一時的に抑制されるのではないか、
という推論も成り立たないではありません。
ワクチン接種後1週間程度で生じるという経過は、
その時点ではまだ免疫系の刺激は完成されておらず、
一時的に細胞性免疫の低下が起こるのでは、
という推測も出来ます。

ただ、いずれにしてもそれらの説明は推測の域を出ず、
それを証明するようなデータが、
基礎的なものであれ存在するということもないようです。

従って、現状この問題を重視する必要はないのですが、
ワクチン接種後1週間程度の間に、
帯状疱疹が発症しやすい、という可能性はあるので、
ワクチンを接種される方は、
その間には大事な予定を入れないなど、
注意はしておいた方が安心、
という言い方は出来そうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナの経過と抗原検査の陽性率比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日は祝日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19のPCRと抗原比較.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2022年4月29日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症診断に使用されている、
抗原検査キットの精度についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の診断のスタンダードは、
RT-PCR検査であることは間違いがありませんが、
ウイルス抗原の一部に反応する迅速抗原検査キットは、
5から15分程度でその場で結果の判明するという簡便さから、
医療機関のみならず、自宅などでも広く使用されています。

現状厚労省も、
抗原検査のみでの診断を認めていますし、
医療機関においても、
流行状況などからその可能性が高い時には、
抗原検査のみで診断して届け出をしています。

ただ、RT-PCR検査はウイルス遺伝子の一部を、
増幅して検出するので、
ごく微量の遺伝子断片でも診断が可能ですが、
抗原検査は一定のウイルス量がないと、
反応が検出されないという特徴があります。

つまり、流行している地域で特徴的な症状があって、
抗原検査で明確に陽性反応があれば、
新型コロナウイルス感染症に罹患していると言って、
ほぼ問題はありませんが、
ぼんやりと陽性ラインが見えるような弱陽性は、
他のウイルス抗原による偽陽性も否定は出来ませんし、
軽症の感染や無症状の感染の場合、
検体の採取が適切でない場合、
感染の時期によって局所のウイルス量が少ない場合などでは、
結果が陰性であっても感染の可能性は否定は出来ないのです。

こうした内容は医学的にはほぼ常識として、
捉えられていますが、
その根拠となるデータはパンデミックの初期に取られたもので、
今とは検査キット自体の性能も違っていますし、
ワクチンの接種や無症状感染などとの関連も検討されていません。

従って、
今一般に使用されているような抗原検査キットを使用し、
実際にあり得る状況でRT-PCR検査と比較したデータが、
一般臨床においては重要なのです。

今回の検証はアメリカにおいて、
新型コロナウイルス感染症とRT-PCR検査で診断され、
15日間連続して抗原迅速検査を施行し、
経過中に1回以上の鼻腔RT-PCR検査と、
ウイルス培養検査を施行したトータル225名のデータを解析したもので、
3044件の抗原迅速試験と、642件のRT-PCR検査が施行されています。

その結果はこちらをご覧下さい。
COVID-19のPCRと抗原比較の図.jpg
図の黒いラインはRT-PCR検査の陽性率で、
オレンジのラインが抗原検査の陽性率、
青いラインがウイルス培養の陽性率を示しています。

トータルの抗原迅速検査の感度は、
50%(95%CI:45から55%)と算出されます。

発症日の0日で見ると、
抗原迅速試験の陽性率は30%程度しかありません。
それが症状出現数日後には、
RT-PCR検査とかなり近い陽性率になっています。
そのピークは症状出現0日として4日目で、
陽性率は77%(95%CI:69 から83%)に達しています。

つまり、抗原検査の結果が信頼出来るのは、
症状出現後2日目から5日目くらいまでで、
それ以外の時期においては、
陰性であっても感染を否定する根拠にはなり得ない、
ということが分かります。

ここから病初期5日以内に限って、
1から2日間隔で2回の抗原検査を行うことは、
その感度を高めるために最も有効性が高い、
と言うことが出来ます。
この場合2回とも陰性であれば、
感染はかなり否定的だと言うことが出来るからです。

それでは次にこちらをご覧下さい。
COVID-19の抗原陽性率と症状の有無の図.jpg
この図のグレイのラインは有症状の感染の場合の、
抗原検査陽性率を示し、
オレンジのラインは無症状感染の場合の、
陽性率の推移を示しています。
有症状感染と比較して、
無症状感染では抗原検査の感度はより低く、
無症状の感染を抗原検査のみで否定することは、
殆ど無意味に近いということが分かります。

最後にこちらをご覧下さい。
COVID-19の抗原陽性率とワクチン接種.jpg
こちらはワクチン接種者と未接種者のデータです。

黒いラインはワクチン未接種者の抗原検査陽性率を示し、
青いラインはワクチン接種者のそれを示しています。
ワクチン接種者は未接種者と比較して、
抗原検査の陽性率が低いことが分かります。

このように、
抗原検査には一定の有効性があり、
診断における重要なツールの1つですが、
その感度はRT-PCR検査よりは低く、
その感度が高いのは症状出現数日後から数日くらいの時期のみなので、
発症初期に数回の検査を数日間隔で繰り返すなど、
検査のプロトコールを工夫し、
かつ無症状感染には使用しないなど、
条件付きの対応が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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慢性難治性咳嗽と脳機能との関係性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日は誤診や診療の過誤なく、
1日を終えることが出来るでしょうか?
何かを求めてお出でになった患者さんに、
それを提供することが出来るでしょうか?
その意味でのミスマッチを最小限度に抑えることが出来るでしょうか?

発熱外来以降、患者さんには怒られ、
スタッフは態度が悪いと罵倒され、
行政には翻弄され、大病院には虫けらの如く扱われ、
近隣や同じビルの方には煙たがられ、
多分診療を始めてから最も不毛で空しい日々が続いていますが、
それでも、これまではこれまでとして、
未来は決まっているものではないのですから、
少なくとも今日1日の診療においては、
完璧に近いものを目指しつつ、
今日出来る精いっぱい(根本宗子さん的表現です)を心に誓って、
今から診療に当たろうとは思っています。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
慢性の咳と脳との関連.jpg
Chest Journal誌に、
2022年4月29日ウェブ掲載された、
慢性の咳症状に対する脳の関与を検証した論文です。

長引く咳というのは非常に一般的な症状で、
8週間以上持続する咳を慢性咳嗽と言いますが、
その頻度は人口の5から10%に達するという報告もあるほどです。

咳というのは、
気道に侵入した異物を速やかに排出するため、
延髄の咳中枢からの指令により、
声門の閉鎖や呼吸筋の収縮などが連動して起こる一種の反射で、
慢性の咳の多くは、
何らかの原因によりその反射が敏感になり、
少しの刺激、場合によっては刺激がないのに、
咳反射が起こってしまうことがその本質ではないかと考えられています。

その原因の1つは、
気道にある咳受容体が敏感になることで、
アレルギー性の咳と呼ばれるものは、
気道のアレルギー性の炎症が起こって、
それが咳受容体の感受性を亢進させることによって起こる、
というように説明されます。

そして、それ以外に原因として考えられるのが、
咳中枢やそれより上位の大脳皮質中枢の関与です。

つまり、咳は脳から来ているのではないか、
という考え方です。

確かに不安による発作の症状の1つとして、
咳発作が見られることがあります。
また、慢性の咳というのは非常にストレスなものですから、
それが不安を高め、結果として咳の閾値を低下させる、
というメカニズムも推測されます。

ただ、こうした咳と脳機能との関連の詳細は、
これまでにあまり分かっていませんでした。

今回の研究は韓国において、
慢性難治性咳嗽の患者15名と、
年齢などをマッチングさせたボランティア15名に、
機能性MRI検査を施行し、
脳の形態や機能と慢性咳嗽との関連を比較検証しているものです。

その結果、
慢性咳嗽患者は左前頭葉の灰白質容積が減少しており、
左前頭葉と頭頂葉との機能的な結合が強い傾向が認められました。
この左前頭葉の萎縮は咳の持続期間が長いほど強く、
左前頭葉と頭頂葉との結合の強さは、
咳が生活に与える影響の強さと関連していました。

このように、
慢性の咳は脳の形態や機能に関連があり、
それが咳の原因ではないにしても、
その持続や増悪の要因となっていると思われます。
従って、慢性難治性咳嗽の治療には、
心理療法的なアプローチや心療内科的なアプローチが、
今後は重要となると共に、
脳機能の回復に繋がるような、
治療についても検討される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナ感染に伴うデング熱減少について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプトなど事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デング熱と新型コロナ.jpg
the Lancet Infectious Diseases誌に、
2022年3月2日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の流行が、
他のウイルス感染に与える影響についての論文です。

新型コロナの流行以来、
日本でもインフルエンザの冬の流行がめっきりなくなりました。

勿論コロナ重視の診療体制や検査体制で、
検査自体が減っている影響もない訳ではありませんが、
クリニックで検査をしていても、
ほぼほぼ陽性は出ませんし、
保育園や学校などでの流行や学級閉鎖もありませんから、
減少していること自体は間違いがありません。

これは世界的にも同様の傾向があり、
毎年のように流行を繰り返していたウイルス感染症が、
新型コロナの流行以降激減したという報告が多くあります。
その1つが今回のテーマであるデング熱です。

デング熱は、
蚊が媒介する熱帯から亜熱帯の出血熱の一種ですが、
日本脳炎などと比較すればその病状は軽く、
重症化も比較的稀な感染症です。
日本でも最近その流行が確認されています。

特別な治療はなく、
一旦流行するとその媒介する蚊の根絶は、
現実的には困難で、
ワクチンの開発なども進められてはいますが、
現状は決め手には欠けているのが実際です。

このデング熱も新型コロナの流行以降、
発生が減少していることが確認されています。

今回の研究はWHOなどのデータを基にして、
デング熱の減少とその原因を検証しているものです。

南東アジアと南アフリカのデング熱流行国23か国のデータを解析したところ、
2020年3月からデング熱の罹患率は激減し、
2019年には408万件から2020年には228万件と、
44.1%の減少が見られています。

その理由を天候などの要素も含めて解析したところ、
新型コロナの流行に伴う、
学校の閉鎖や地域をまたぐ移動の制限が、
最も強く影響をしていることが確認されました。
推計では、新型コロナによる感染対策の影響で、
年間72万件のデング熱が予防されたと計算されました。

要するに新型コロナで取られたような、
人間の行動を抑制するような対策により、
他の感染力の高いウイルス感染も、
抑止することが可能となるという結果です。

ただ、勿論移動せず接触を持たないことが、
人間にとって正しいあり方ということではなく、
今回の特殊な状況を科学的に解析することにより、
今後の多くの感染症の流行に対して、
わたし達はより実証的な予防法を、
社会活動とのバランスも考えた上で、
構築する下支えとなるデータを得ることが出来た、
というようにかんがえるべきではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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胸部痛の診断における冠動脈CTとカテーテル検査の比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
CTとカテーテル検査の優先度.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年4月28日ウェブ掲載された、
胸部痛の診断のための検査を比較した論文です。

僕は大学病院時代に、
一時期循環器の専門診療に従事していました。
心臓カテーテル検査やペースメーカーの植え込みなどを、
一通り研修して、
通常の診断カテなら一通りは出来、
ペースメーカーの植え込みも出来る、
というくらいまでのスキルには達していました。
考えるともう25年以上前のことですから、
時の流れには恐ろしいものを感じてしまいます。

当時の胸痛の診断は、
基本的には症状から狭心症が疑われれば、
速やかにカテーテル検査で確認する、
というのが普通でした。
大学病院ではその前に運動負荷検査や、
心筋シンチをすることもありましたが、
地域の基幹病院や総合病院クラスでは、
「まずは心カテ」というのが、
循環器の専門医のいる施設での合言葉でした。

それが大きく変わるきっかけとなったのが、
冠動脈CTの登場です。

CT検査の技術が格段に進歩し、
造影CT検査の画像を緻密に再構成することにより、
カテーテルで心臓の血管の造影検査をした画像と、
遜色のない画像が得られるようになったのです。

これは画期的なことでした。

心臓カテーテル検査は熟練した医師が施行すれば、
診断カテなら10分程度で終了します。
ただ、血管に針を刺してカテーテルを挿入するのですから、
出血などの合併症のリスクはありますし、
患者さんの負担も大きい検査ではあります。

それに比べて冠動脈CT検査は、
放射線の被曝はかなりありますが、
それ以外の合併症は、
心臓カテーテル検査と比較すれば格段に少なく、
患者さんへの負担自体も格段に少ないという特徴があります。

ただ、冠動脈CTの診断と、
心臓カテーテル検査による診断は、
完全に同じという訳ではないので、
患者さんの予後に与える影響については、
これまで実証的なデータが不足していました。

今回の研究では、
ヨーロッパの26か所の専門施設において、
虚血性心疾患の中等度の可能性が症状などから推測される、
3561名の患者をくじ引きで2つの群に分け、
一方は冠動脈CT検査を施行し、
もう一方は心臓カテーテル検査を施行して、
その経過を3.5年以上検証しています。

その結果、
経過中の心血管疾患による死亡、
心筋梗塞や脳卒中の発症を併せたリスクには、
初期診断を心臓カテーテル検査で行っても、
冠動脈CT検査で行っても有意な差はなく、
その一方で手技による合併症は、
明確に心臓カテーテル検査の方が多くなっていました。

このように、
比較的長期の経過を比較しても、
CTによる診断と心臓カテーテル検査による診断には差はなく、
その施行のリスクには明らかな差が確認されました。

勿論症状や心電図所見などから、
急性冠症候群が強く疑われる時には、
カテーテル検査で早期に診断して、
治療に結び付けることに変わりはありませんが、
緊急性のない胸部痛の診断には、
まずは冠動脈CT検査という考え方は、
より実証的なものになったと言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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低ナトリウム血症と気温との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診ですが、
あれこれ仕事は残っている状況です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
低ナトリウム血症と気温.jpg
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌に、
2022年2月22日ウェブ掲載された、
低ナトリウム血症と気温との関連についての論文です。

低ナトリウム血症は、
血液の水分に対するナトリウム量が低下して、
血液中のナトリウム濃度が低下する状態のことで、
ナトリウムに対して水分が過剰である場合にも、
水とナトリウムの両方が喪失していて、
比率的にナトリウム量の方がより失われている場合にも起こります。

この低ナトリウム血症は高齢者に多く、
特に気温の高い時期に多いと報告されています。

通常夏には脱水症状が起こりやすく、
典型的な脱水では血液のナトリウム濃度は上昇しますから、
それで低ナトリウムになると言うのは、
ちょっと奇異な感じがしますが、
発汗などにより水よりもナトリウムの喪失が多いことが、
この結果に繋がっていると想定されます。

ボストンマラソンでの意識障害の主体は、
高ナトリウムではなく低ナトリウム血症であった、
という有名な報告がありますが、
脱水の起こりやすい夏場や運動時には、
「水分を多く摂ることで脱水を予防しよう」
という考え方が一般にも浸透しているので、
ナトリウムの補充をせずに水分ばかりを補充すると、
スポーツドリンクでも塩分濃度は血液よりはずっと少ないですから、
高ナトリウムよりむしろ低ナトリウム血症のリスクの方が、
より高まるということかもしれません。

特に高齢者で降圧剤を使用していると、
利尿作用のある薬剤でなくても、
塩分の排泄を促進するような働きを持っていますから、
よりナトリウムの喪失に繋がり易い点にも注意が必要です。

高度の低ナトリウム血症はけいれんや意識障害などを伴い、
放置すれば致死率も高い病態ですから、
臨床的な意味は大きいのです。

さて、気温が上がることで、
どの程度低ナトリウム血症のリスクは高まるのでしょうか?

今回の研究はスウェーデンにおいて、
病院の入院患者のデータを解析することにより、
低ナトリウム血症の罹患率と気温との関連を解析しているものです。

9年間にトータルで11213名の低ナトリウム血症による入院患者が登録され、
そのうちの72%は女性で年齢の中間値は76歳でした。
平均気温が-10度から10度の範囲では、
低ナトリウム血症の罹患率は1日100万人当たり0.3件でほぼ一定ですが、
24時間平均の気温が15℃を超えると急増し、
最高気温が25℃に達する日では1日100万人当たり2.26件と推計されています。
女性と高齢であることが発症リスクを高める主な因子です。
80歳以上の年齢で低ナトリウム血症で入院するリスクは、
10℃以下の涼しい日と比較して最高気温が25℃に達する日では、
15倍も高くなっていました。

今後温暖化などにより平均気温が1℃上昇すると6.3%、
2℃上昇すると13.9%、
低ナトリウム血症による入院のリスクは増加すると推定されました。

このように低ナトリウム血症と気温との間には、
意外に大きな関連があり、
気温の高い日にはそのリスクを充分に想定して、
対策を取る必要があると考えられます。

ただ、ボストンマラソンの事例が物語るように、
これは単純に水を飲めばよい、
塩分を補充すれば良い、というものではないので、
今後一般の方に分かり易くそのリスクを伝えるための、
臨床的検証が重要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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