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急性心筋梗塞後のβブロッカーの有効性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心筋梗塞後のβブロッカー使用の有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2024年4月7日付でウェブ掲載された、
心不全治療薬を急性心筋梗塞後に使用することの、
有効性についての論文です。

βブロッカーというのは、
交感神経作用の1つであるβ受容体を介した働きを、
抑制する作用のある薬です。
商品名ではインデラル、ミケラン、テノーミン、メインテートなどが、
その代表的薬剤です。

交感神経のβ作用を抑制することにより、
脈拍は低下し、血圧も低下して、心臓への負荷が軽減されます。
このため、βブロッカーは労作性狭心症や心不全、高血圧の治療薬として、
その有効性が確認されています。
その一方でβ作用により気管支は拡張するので、
βブロッカーの使用により、
喘息は悪化するリスクがあるのです。

心臓を栄養する血管が閉塞する、
急性心筋梗塞の際には、
βブロッカーを使用することで、
その後の死亡リスクを20%以上低下させる、
というデータがあり、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7038157/
急性心筋梗塞後にβブロッカーを使用することが、
ガイドラインにおいても推奨されて来ました。

ただ、これは心臓のカテーテル治療などが進歩する前のデータで、
現在でも当て嵌まるとは限りません。
特に心不全や心機能の低下が顕著ではないケースでは、
βブロッカーの必要性は高くないのではないか、
という意見も見られるようになって来ています。

今回の研究はスウェーデン、エストニア、ニュージーランドの複数施設において、
急性心筋梗塞でカテーテル治療を施行した患者さんのうち、
心機能の指標である駆出率が50%以上と、
明確な心不全のない5020名の患者を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はβブロッカーを使用し、
もう一方は未使用として、
中間値で3.5年の経過観察を施行しています。
偽薬などは用いない試験デザインとなっています。

その結果、
患者の死亡や心筋梗塞の再発などのリスクには、
両群で明確な差は認められませんでした。

つまり、心不全のない急性心筋梗塞の患者さんでは、
βブロッカーの使用はあまり有効性はない、
ということを示唆する結果です。

ただ、同様の目的を持った別個の臨床試験も現在進行中で、
この問題はまだ一致した結論に至った、
とは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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