塩分摂取と認知症リスクとの関係(2024年メンデル無作為化解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Genes & Nutrition誌に2024年付で掲載された、
塩分の摂取量と認知症リスクとの関連についての論文です。
認知症のリスクとしては、
高血圧や糖尿病などが知られていますが、
塩分摂取量が多いことも、
認知症のリスクになるのではないか、
という意見があります。
認知症のメカニズムの1つとして、
タウ蛋白のリン酸化が知られていますが、
塩分の摂取量が多いことが、
このリン酸化を進めることが動物実験で指摘されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1688-z
そして、臨床的なデータにおいても、
塩分摂取量の増加が認知症リスクを高めたとする報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36351463/
ただ、その一方で塩分摂取量と認知症との間には、
明確な関連はなかったとする報告もあります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26137952/
(この文献は上記論文では関連ありの例として引用されていますが、
実際には否定的な報告でした)
つまり、塩分摂取の認知症リスクへの影響は、
まだ明確には分かっていないのです。
今回の研究では、
認知症のリスクに与える塩分摂取量の影響について、
それと関連のある遺伝子変異の有無を比較することで、
その因果関係の有無を解析しています。
これは何度かこれまでにも紹介したことのある、
メンデル無作為化解析という手法です。
遺伝子の変異の型というのは、
無作為に生じるものなので、
それにより異なった現象が生じているとすれば、
因果関係に踏み込んだ解析が出来る、
という考え方です。
複数の遺伝子変異から推測された塩分過多は、
ヨーロッパに祖先を持つ対象者の解析で、
トータルな認知症リスクを1.542倍(95%CI:1.095から2.169)有意に増加させていました。
つまり、塩分摂取が多いと、認知症になり易いことを示唆する結果です。
ただ、アルツハイマー病や血管性認知症など、
個別の認知症のリスクと塩分摂取過多との間には、
明確な関連は認められませんでした。
このように、
今回の解析において、
塩分摂取量の多いことと、
認知症のリスクとの間には、
一定の関連がありそうなことは示唆されましたが、
個別の認知症リスクとの間には明確な関連はないなど、
それほど明確に因果関係が示されたとは言えず、
この問題は今後も検証される必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Genes & Nutrition誌に2024年付で掲載された、
塩分の摂取量と認知症リスクとの関連についての論文です。
認知症のリスクとしては、
高血圧や糖尿病などが知られていますが、
塩分摂取量が多いことも、
認知症のリスクになるのではないか、
という意見があります。
認知症のメカニズムの1つとして、
タウ蛋白のリン酸化が知られていますが、
塩分の摂取量が多いことが、
このリン酸化を進めることが動物実験で指摘されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1688-z
そして、臨床的なデータにおいても、
塩分摂取量の増加が認知症リスクを高めたとする報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36351463/
ただ、その一方で塩分摂取量と認知症との間には、
明確な関連はなかったとする報告もあります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26137952/
(この文献は上記論文では関連ありの例として引用されていますが、
実際には否定的な報告でした)
つまり、塩分摂取の認知症リスクへの影響は、
まだ明確には分かっていないのです。
今回の研究では、
認知症のリスクに与える塩分摂取量の影響について、
それと関連のある遺伝子変異の有無を比較することで、
その因果関係の有無を解析しています。
これは何度かこれまでにも紹介したことのある、
メンデル無作為化解析という手法です。
遺伝子の変異の型というのは、
無作為に生じるものなので、
それにより異なった現象が生じているとすれば、
因果関係に踏み込んだ解析が出来る、
という考え方です。
複数の遺伝子変異から推測された塩分過多は、
ヨーロッパに祖先を持つ対象者の解析で、
トータルな認知症リスクを1.542倍(95%CI:1.095から2.169)有意に増加させていました。
つまり、塩分摂取が多いと、認知症になり易いことを示唆する結果です。
ただ、アルツハイマー病や血管性認知症など、
個別の認知症のリスクと塩分摂取過多との間には、
明確な関連は認められませんでした。
このように、
今回の解析において、
塩分摂取量の多いことと、
認知症のリスクとの間には、
一定の関連がありそうなことは示唆されましたが、
個別の認知症リスクとの間には明確な関連はないなど、
それほど明確に因果関係が示されたとは言えず、
この問題は今後も検証される必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-04-15 07:52
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