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岩松了「青空は後悔の証し」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
青空は公開の証し.jpg
岩松了さんの新作が、
小泉今日子さんがプロデュースする、
株式会社明後日の企画公演として、
今世田谷シアタートラムで上演されています。

小泉今日子さんも舞台には毎日立ち会われているようで、
僕が観劇した時もいらっしゃいました。

昨年の「そした春になった」と似通ったスタイルで、
凄い絵空事的な設定なんですよね。
意図的に翻訳劇に近いような設定と演出で、
何か目標があってやっていることは分かるのですが、
未だ発展途上という感じもあります。

風間杜夫さんが引退した旅客機のパイロットで、
何かの病気の療養を兼ねて、
高層マンションなのか高級老人ホームなのか、
豪華で浮世離れした部屋で、
お手伝いさんの老女と暮らしているんですね。
大きな窓の向こうには、
エンパイアステートビルのような塔が、
建設途中であるのが見えます。

変でしょ。
とても日本とは思えないですよね。
でも、登場人物は日本人らしいのが得体の知れない感じです。
主人公の設定からして、
「スチュワーデス物語」なんですね。
かつて教え子だったスチュワーデスと、
再会しようとするのに出来ない、
という話になるんですね。
年を取った教官が堀ちえみさんと再会しようとするのですが、
堀ちえみさんの娘に邪魔されて出来ないのです。
ある意味非常に意地悪な設定に思えます。
まあドラマの教官は機長ではないのですが、
もともと小泉今日子さんが堀ちえみさんの役をやる予定だったので、
それも入れ込んだ設定になっているんですね。
要は最初から最後まで登場しないヒロインは、
舞台の外にいる小泉今日子さん、
というひねった設定になっている訳です。

それだけではなくて、
風間杜夫さんの息子が豊原功補さんで、
石田ひかりさんと結婚しているのですが、
すれ違いがあって、離婚してしまう、
という展開になるんですね。
小泉今日子さんがプロデュースのお芝居で、
こういう台本を書くんですよね。
岩松さんも相当ですよね。
これは単純に意地悪とは言えないのですが、
まあ普通ではないという言い方は出来ると思います。

どうやら窓の外に広がる空が、
風間さんのこれまでの人生を示している風景であるようなんですね。
その外の世界と室内とは繋がることはない筈なんですが、
途中で建築途中の塔の上に少女が出現し、
彼女が塔から飛び降りると、
風間さんの部屋の窓から中へと入り込み、
風間さんを挑発し誘惑するのです。

これをきっかけとして、
風間さんは隣の塔の建設差し止めの運動に協力するのですが、
結果として塔の工事は再開されてしまいます。
でも、隣の塔というのは、
要するに風間さんのいる部屋がある場所のことなんですね。
風間さんは自分の過去を変えようとして、
窓の向こうにある過去の世界に入り込むのですが、
それに失敗して老いた自分の現実に気付き、
愕然として終わるのです。

如何にも岩松さんらしい、
分かり難く、意地悪な世界ですが、
正直展開される人工的な世界に、
あまり馴染むことが出来ないままに終わってしまうのが、
少し残念な気はします。

個人的には「市ヶ尾の坂」のラストや、
「水の戯れ」のラストの衝撃的な美しさが、
一番の岩松さんの劇作の魅力だと思っているので、
最近の役柄も皆カタカナの、
敢えて非現実的で紙芝居的な設定の最近の作品には、
やや違和感は感じるのですが、
これもまた1つの別個の到達点に向けての、
長い試行錯誤の道程であるという気もするので、
今後も気合を入れつつ、
岩松さんの新作を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」(唐組・第68回公演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
おちょこポスター.jpg
唐組の春公演が新宿の花園神社で上演されています。
大雨の日に出掛けました。

演目は「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」、
これは1976年に状況劇場で初演された長い1幕劇で、
状況劇場の作品としては、
家庭劇に近いような味わいの作品です。
舞台も傘屋から動きませんし、
内容も一夜の出来事だけを描いていて、
幻想的な場面や時間が移動するような仕掛けもありません。

キャストも傘屋のおちょこと檜垣という男、
そしてヒロインの3人がメインで展開されます。

この作品は1980年代に一度状況劇場で再演され、
その時は石橋蓮司さんが客演していました。
その芝居は実際に観ています。

今回の上演は唐組としては初めてのもので、
おちょこを久保井研さん、ヒロインを藤井由紀さん、
檜垣を稲荷卓央さんという座組でした。

ほぼ2時間の1幕劇ですが、
今回は途中1時間くらいのところで20分の休憩を入れていました。

前回の上演時には休憩はなかったと思います。
ただ、矢張りテントで1幕2時間というのはかなりきついので、
この判断は正解だったという気はします。

今回も唐戯曲の何たるかを知り尽くした、
久保井さんとメインキャストの演技と演出が的確で素晴らしく、
唐組らしい「おちょこ」になっていたと思います。

初演がどうだったのかは分からないのですが、
1980年代の再演では、
ラストは李礼仙さんが傘を持って、
テントの外の空に宙乗りするのですね。
ただ、戯曲はおちょこと瀕死の檜垣が空を飛ぶ、
というものなので、
それをヒロインの宙乗りに変えてしまうのは、
如何なものかな、という気はしました。
今回は戯曲通りにおちょこがクレーンからのワイヤーで、
宙乗りをするラストでしたから、
これは良かったと思いました。

ただ、今回の芝居では、
現実と狂気とを往還する、
ヒロインの感情のうねりがポイントなのですが、
藤井由紀さんの芝居には、
そうしたパッションは希薄なので、
正気の部分と狂気の部分がブツ切れで交互に出て来る、
というような感じがあって、
物語がスムースに流れてゆかない、
というきらいはありました。

前回の「ビニールの城」は絶品で、
「さすらいのジェニー」も素晴らしかったのですが、
藤井さんは緑魔子さんの役柄にはピタリとフィットするのですが、
李礼仙さんの、
特にパッションと狂気が前面に出たような芝居は、
基本的に合わないのかも知れません。

また、前回のおちょこは唐先生でしたから、
今回久保井さんが演じるのは妥当なラインではあるのですが、
そもそも純朴な少年に近い役柄なので、
こちらもちょっと無理があるなあ、
というようには感じました。

初演の録音などを聞くと、
基本的に地味な芝居に、
かなり強烈な音響や演技を付けて、
強引にメリハリをつけているような感じがあるのですね。

今回の上演はそれをもっと戯曲に即した形で、
自然な演技と演出でリニューアルしているのですが、
もともとヒロインの感情のうねりに、
かなり強引なところがあるので、
過剰な演出をしないと、
却って不自然に見えてしまうという感じがありました。

そういうところが唐先生の芝居は難しいのですね。

ただ、久保井さんも勿論そうしたことは分かった上で、
今回はこれまでとは別の形の「おちょこ」を、
見せてくれたのではないかと思います。

いずれにしても、
唐戯曲の神髄を緻密な手さばきで再構成してくれる、
唐組の芝居はいつも刺激的で素晴らしく、
今後も楽しみにテントには通いたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「神州無頼街」(劇団☆新幹線) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日ですが終日レセプト作業で、
午後には昨日のRT-PCR検査の結果説明もする予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
新感線舞台2022.jpg
王道いのうえ歌舞伎の最新作として、
コロナのため延期になった「神州無頼街」が、
今池袋のブリリアホールで上演されています。

メインは福士蒼汰さんと宮野真守さんで、
対する悪役を高嶋政宏さんと松雪泰子さんが演じ、
周辺をお馴染みの新感線メンバーが固めるという布陣です。
古田新太さん、橋本じゅんさん、高田聖子さんは出演しません。

内容は幕末を舞台にして、
それぞれ出自に謎を秘めた、
福士蒼汰さんと宮野真守さんがタッグを組み、
超自然的な力を持つ、
謎のヤクザ組織に戦いを挑むというお話です。

プロット的には「髑髏城の七人」に近い設定で、
敵の設定には、僕の大好きな「蛮幽鬼」のテイストも入っています。

安定した仕上がりで悪くなかったのですが、
悪役の設定がとても魅力的なのに、
清水の次郎長と対決するヤクザ組織というのが、
ちょっとスケールが小さいのが物足りなく感じます。
国家転覆を目論むというほどではなく、
何がしたいのか良く分からないままに自滅してしまう、
というような感じもあります。

キャストでは松雪泰子さんが迫力十分で、
とても良かったのですが、
高嶋政宏さんはビジュアルの迫力は充分あるものの、
かなり抜けた感じの役作りで、
強い筈なのにあまり強さも感じません。
新感線の悪役は残虐な力強さとコミカルな部分のバランスが肝要ですが、
その辺りの勘所がまだ掴めていないように感じました。

主役2人は頑張っていたと思いますが、
大舞台での押し出しには、
見栄を切るにもまだためらうような感じがあり、
もっと振り切って欲しいな、というようには思いました。

そんな訳で悪役の造形などに魅力はあるものの、
新感線としてはやや小粒な感じは否めない作品で、
舞台の求心力はそれほど強くないのは残念には感じました。

ただ、コロナからの試運転という感じもあるのだと思いますし、
今後またパワー全開の娯楽大作を、
期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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シベリア少女鉄道「どうやらこれ、恋が始まっている」(ネタバレ注意) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
シベリア少女鉄道.jpg
オタク嗜好と演劇実験融合のパイオニア、
シベリア少女鉄道の本公演が先日まで、
六本木の俳優座劇場で上演されました。

いつも観てすぐに感想を書くことが多いのですが、
シベリア少女鉄道は基本ネタバレ厳禁なので、
上演は終了した後で公開しています。

僕は最初に観た作品は、
確かシアタートップスだったと思いますが、
何処が面白いのか分からない、という感じでした。
次の作品も、「何なのこれは」という感じだったのですが、
吉祥寺で上演された「残酷な神が支配する」を観て、
初めてその壮大なオチに驚嘆し、
ラストに虚無的に高速回転する無人の廻り舞台に、
これまでの演劇にない奇妙な悦楽を感じて、
それ以降はほぼ全ての公演に足を運んでいます。
途中で活動休止となった時は大いに落胆しましたが、
ほどなく活動再開して今に至っています。

昔は役者さんの演技レベルが物凄く低くて、
それで前半を耐えるのがキツイ、
という感じがありました。

ザックリでいつも1時間半の上演時間のうち、
前振りのシリアスなドラマ部分が1時間から1時間10分くらいあり、
後半の30分未満が壮大なオチになります。
一番技巧的に凝っていた時期には、
2つの仕掛けのあるダブルクライマックス仕様のものや、
「永遠かも知れない」のように、
コントを執拗に繰り出し続ける、
というような変化球もありましたが、
最近の作品はほぼほぼ、通常運転です。

以下少しネタバレがあります。

今回は近未来を舞台にしたシリアスなSFスリラー的ドラマがあり、
それが1時間くらい振りとして続いて、
そのあとで現代の古い日本家屋のアパートの一室に舞台は移り、
同じ「画面」に2つの世界がリンクして現れ、
最後は2つの世界が融合するように終わります。

これ、以前にサイコスリラーが、
後半になると格闘型ゲームに変化して、
サイコスリラーも同時進行するものの、
観客にはそのラストは理解出来ない、
というような作品があって、
その変奏曲というような感じでした。

ただ、以前の同様の作品と比較すると、
その演劇としてのクオリティは遥かに高くなっています。

前半のドラマ部分も、
真面目にスリラーとして観られるレベルですし、
後半への舞台転換の鮮やかさも特筆ものです。
その後は加工された映像のように、
部分的に別世界の話が進行するのですが、
2つの世界が次第に入り混じって来る辺りは、
シベリア少女鉄道以外では、
到底体感することの出来ない愉楽があります。

ネタの前半部分では、
舞台をテレビやスマホのモニターに見立てて、
臨時ニュースや天気、試合結果などの、
文字情報が入るというパートが用意されています。
ただ、あまりに情報量が多いので、
実際の舞台では捕捉は困難です。
それで配信も見たのですが、
それで漸く話が繋がった、
という感じでした。
各キャラの点数が試合のように表示されるというのは、
これも過去作を思い出させる趣向ですが、
後半に繋がるという訳ではないので、
やや肩透かしの感じはありました。

そうじて今回は完成度に力点を置いた、
シベリア少女鉄道としては水準作という感じでした。
面白いけれどちょっと小粒で焼き直し感はありますね。

でもいつもながらの唯一無二の世界はとても楽しく、
また次回の公演を心待ちにしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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加藤拓也「もはやしずか」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
もはやしずか.jpg
今注目の劇作家加藤拓也さんの新作が、
今三軒茶屋のシアタートラムで上演されています。

上演は本日までですが、かなり好評のようで、
僕が観劇した15日も当日券には長蛇の列が出来ていました。

これは凄いですよ。

すれ違いの「静かな」会話劇なので、
系統的には岩松了さんの劇作に近い感じなんですね。
ただ、もっと平明で分かり易いんですね。
岩松さんの台詞は、
日常の会話とは違いますよね。
もっと人工的な感じがあって、
すんなり耳に入ってくるという感じではないのです。
加藤さんの台詞は、
本当に日常会話のように耳に入って来るんですね。

たとえばコーヒーの話をしながら、
子供についての夫婦の意識の違いを語っているのですが、
それがとてもスムースに分かるんですね。
保育園の先生の台詞に、
差別意識が見え隠れするような感じも、
とてもリアルでかつ分かり易いですね。

小劇場演劇の台詞は、
分かり難い方がいい、という考え方も、
これはもう根強くあるのですが、
岩松さんと同じようなことをやっていながら、
ここまで観客に親切に、
丁寧にその意図を伝えることが出来る、
というのは、
今までにあまりなかったタイプの才能だと思います。

一番似ていると思ったのはイプセンで、
その人間の内面を容赦なく抉り出すような才気と、
台詞劇としての完成度の高さは、
質の高い座組によるイプセン劇を観ているような感銘がありました。

決して褒め過ぎではないと思います。

内容も物凄く衝撃的なんですね。
発達障害の弟を事故で失った主人公が、
ウェブデザイナーになって妻をもらい、
平穏な夫婦生活を営んでいるのですが、
妻が不妊治療を始めたところから、
封印していた弟の記憶がうずき始めるのですね。
そのトラウマが解放されると、
自分の人格は完全に崩壊することが、
主人公には分かっているんですね。

こういう人いるよね。
加藤さんが28歳ですから、
丁度同じくらいの年齢の、
1つの典型的な性格構造を描いているんですね。
表面的には社交的で、
妻とも友達としてならとても上手くいくんですね。
それが、それより心の奥に入ろうとする何かがあると、
必死で拒絶しようとするのです。

それで結局妻とも別れてしまって、
「これでもう大丈夫」と思うのですが、
その妻が「善意で」戻ってきてしまうのです。

「まずい。このまま心の中に踏み込まれたら、
自分が崩壊してしまう」

こういう感覚を、
ここまでリアルに描いたドラマというのは、
これまでにあまりなかったのではないかしら。

これ基本的には主人公の内面のみのドラマなんですね。

それを立体化するために、
友達の関係を踏み越えようとする妻を描き、
過去のトラウマを実体化するために両親を描き、
他者との表面的な関係を描くために、
デリヘル嬢を登場させているんですね。
この辺の配置と、
主人公が内に秘めたものを、
「他者」として表現して見せ場にする、
という戯曲構造が極めてクレヴァーだと思います。

これも岩松さんがやっているんですね。
主人公の内面の揺らぎを描くのに、
似たような状況の男女を外に登場させて、
それが主人公に影響を与えるというような描き方をするんですね。

それをまた、
岩松さんより数段分かり易くやっている、
というところが加藤さんの凄さです。

唯一「おやっ?」と思ったのがラストで、
「衝撃的なラスト」というような評もあったので、
「何が起こるのかしら」と期待していたのですが、
主人公の内面の独白の後で、
やや唐突に舞台が暗くなって、
白い壁に血が滴り落ちて、
それだけで終わってしまいました。

何か見落としたのかと思って、
鑑賞後モヤモヤしたのですが、
どうやら上演の途中で演出が変更となり、
もっとショッキングなラストが、
削除となってしまったようです。

ネットで内容など読む限り、
確かにちょっとやり過ぎ感もある演出だったようなので、
何かクレームが入るようなことがあったのかも知れません。

ただ、ここは主人公の内面の崩壊が、
示されればいいという場面なんですね。

こういう場合岩松さんであれば、
主人公は見かけ上は平然とした様子でいて、
内面の独白などはせず、
舞台上から姿を消してしまって、
ラストに突如衝撃的な事件を起こしたり、
命を絶とうとしたことが示唆されて終わる、
というような感じになりますよね。

加藤さんはもっと観客に親切なので、
主人公の独白もあるし、
その後にビジュアルに精神の崩壊を見せよう、
ということだったのだと思いますが、
そのバランスに問題があった、
ということなのかも知れません。

おそらく加藤さんも現在のラストには、
納得はされていないのではと思いますし、
この作品はこれからも長く上演される値打ちのあるものだと思うので、
是非再度練り上げて、
決定版を作って欲しいと思いました。

キャストは勿論鉄板で最高でした。
久しぶりの舞台の黒木華さんも堪能しましたし、
安達祐実さんがまた素晴らしい芝居でした。
プロだよね。

いずれにしても今年一番の衝撃的傑作で、
今後も加藤さんのお芝居からは目が離せません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「広島ジャンゴ2022」(蓬莱竜太) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
広島ジャンゴ.jpg
シアターコクーンのレパートリーとして、
蓬莱竜太さんが旧作をアレンジして演出にも当たり、
天海祐希さんと鈴木亮平さんがダブル主演した舞台に足を運びました。

蓬莱竜太さんは多彩な作品を発表されていて、
素晴らしい作品のある一方、
オヤオヤという感じの作品も結構ある、
という印象です。

最近では「ビューティフルワールド」は素晴らしい傑作でしたが、
「首切り王子と愚かな女」は、
何がしたいのか分からない凡作でした。

今回の作品はかなり微妙なところでしたが、
小劇場演劇の古典的なスタイルの1つが、
結構シンプルに活かされているのが好感が持て、
天海祐希さんという希代のカリスマ女優の魅力が、
十全に発揮されている点も良かったと思います。

ただ、如何にも小劇場スタイルの、
基本的にはかなり小粒の感じの作品なので、
天海祐希さんと鈴木亮平さんという2大スターを揃えて、
これが本当にそれに見合った作品であるのか、
と言う点を考えると疑問にも感じるところです。

広島にある牡蠣の加工工場が舞台で、
父親の虐待から娘と一緒に逃げている中年女性と、
自殺した姉を持つ内気で引っ込み思案な青年が、
前時代的な家族経営を目指す工場長に、
切なく儚いささやかな抵抗をして、
現実にわずかなさざ波が立つというお話に、
青年が夢想する勧善懲悪の西部劇の世界を絡め、
その幼児的な活劇の世界と現実とが重層的に展開される、
というお話です。

これはかつての渡辺えり子さんの劇作に、
非常に近い構造ですよね。
主人公の青年が幻想世界に入るきっかけが、
死んだ姉という死者の力だ、
と言う点も渡辺さんの作品構造に似ています。

海外でも「ラ・マンチャの男」はこれに良く似た構造のお芝居で、
現実世界と物語の世界が並行して進み、
互いに影響し合って最後には1つになります。
途中にとても似通ったセリフがあって、
少し影響を受けているな、という感じもありました。

本当はもっと根暗でウジウジしたお話だと思うのですね。

それが主人公の青年を鈴木亮平さんが演じ、
逃げている主婦を天海祐希さんが演じることで、
非常に陽性の仕上がりになっているのが面白いところです。

幻想世界はマカロニウェスタンになるのですが、
保安官の夫を殺した凄腕の御尋ね者女ガンマンを、
天海祐希さんが演じると、
これはもう見惚れるしかないという感じになります。
クライマックスは蓬莱竜太さんのつかこうへい好きが出たという感じで、
鈴木亮平さんがマイクパフォーマンスを演じる中、
天海さんが荒くれ男どもを相手に、
立ち回りを演じるのです。

これはとても良かったですね。
眼福という感じです。

難を言えば幻想世界の構成が少し甘くて、
マカロニウェスタン的な部分も薄味だったですよね。
最後の活劇でどうにか帳尻を合わせた、という感じはありましたが、
もう少しウェスタン的な派手な見せ場が、
欲しかったと感じました。

いずれにしても観て損はないと思える娯楽作で、
完成度はそれほど高いとは思えませんが、
主役2人のファンの方にも、
まずは納得のゆく仕上がりになったようには感じました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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北村想「奇蹟 miracle one-way ticket」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
奇蹟.jpg
北村想さんの新作が、
今三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演されています、

北村想さんと演出の寺十吾さんのコラボは、
2013年の「グッドバイ」から中断はありながらも続いていて、
今回が多分8回目になるかど思います。
僕は初回の「グットバイ」にとても感銘を受けて、
そのうちの7作品は観ています。

当初は古典文学作品を、
北村さんの視点で読み直す、
という感じのシリーズだったのですが、
途中からはもうあまり原作とは関連がなくなり、
今回は純然たる新作のオリジナルになっています。

今回は井上芳雄さんが主演で、
ホームズばりの名探偵を演じ、
そのワトソン役に鈴木浩介さん、
井上小百合さん、瀧内公美さん、大谷亮介さんなどが脇を固めます。

これは昔の「碧い彗星の一夜」みたいな感じなんですね。

レトロな探偵物語がファンタジー的な色彩も加えて、
何処まで真面目で何処まで不真面目なのか、
俄に判断しがたいような展開になります。

登場人物は平気で楽屋落ちや、
勝手に作者や観客の立場に立ったような台詞を口にしますし、
探偵と犯人の対決になるのかと思いの外、
犯人が登場してものんびり話をするだけという脱力的な展開になります。
ラストには急に意外な設定が語られるものの、
すぐに「嘘です」とひっくり返されたりもします。

昔はこうした脱力系の展開に、
随分腹が立ったりもしたのですが、
今はそれこそが北村さんの個性だと思っているので、
決して面白いとは思えないのですが、
これはこれでありかな、というようには感じています。

今回はただ、テーマになっている「バチカンの女」という蘊蓄と、
奇蹟の裏で悲劇的な運命を辿る女性の話が、
少し弱いという感じはありました。
大好きな瀧内公美さんの出番も、
かなり少ないのが残念でした。

そんな訳でこのシリーズとしては、
少し落ちる出来かなというようには思うのですが、
寺十さんの演出は円熟味を増して素晴らしいですし、
北村さんの牧歌的な世界に、
自然に身を委ねることが出来る人には、
他の芝居では得難い経験を与えてくれる作品だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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マーティン・マクドナー「ピローマン」(2022年演劇集団円上演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ピローマン.jpg
僕の大好きなアイルランド出身の劇作家で映画監督、
マーティン・マクドナーの「ピローマン」が、
本日まで演劇集団円の公演として、
六本木の俳優座劇場で上演されています。

マクドナーは現役の劇作家としては最も好きな1人で、
その作風は日本で言えば松尾スズキさんや赤堀雅秋さん、
長塚圭史さんなどに近いのですが、
その完成度は数段上で、
その衝撃性も際だっています。

最初に観たのは、
長塚圭史さん演出による「ウィー・トーマス」で、
あれは凄かったよね。
その後も長塚さんの演出作品は全て観ています。
それ以外に「イニシュマン島のビリー」も凄い芝居でしたし、
「スポケーンの左手」もさすがの手触りでした。

「ピローマン」は2003年の作品ですが、
パルコ劇場で長塚圭史さんが翻訳上演していて、
その時の舞台は観ているのですが、
その時の体調が万全でないこともあって、
集中力も切れ気味になり、
その真価が分からないままになっていました。

この円の舞台は寺十吾さんの演出で、
僕は寺十さんのアングラ演出が大好きなので、
これは期待出来ると思い昨年の5月に予約したのですが、
昨年の舞台は緊急事態宣言で流れてしまいました。
今回は満を持しての再上演で、
なんとか予定をやりくりして、
滑り込んだという感じで、
俳優座劇場に足を運びました。

これは中島らもさんに似た話がありましたよね。
子供が虐待されるような残酷な童話を書いている中年男がいて、
その筋の通りに子供が殺されるという事件が起こるので、
警察に捕まって尋問を受けるのです。
彼には学習障害の兄がいて、
その兄にも同時に殺人の疑いが掛かっています。
果たして連続小児殺人事件と兄弟との間には、
どんな関係があるのでしょうか?

こうしたプロローグからは、
どんでん返しのあるサイコスリラーのようなものを、
僕としてはどうしても想定してしまいますし、
パルコ劇場の上演の時も、
そうしたものを期待していたので、
落胆してしまったという部分があったのですが、
この作品は全くそうしたものではないのですね。

現実とフィクション、創作との関わりのようなものを、
根源的な意味で追求している作品なのです。
残酷な物語というのは世の中には沢山あって、
その評価も様々ですよね。
実際に創作に影響されて犯罪を犯すということもありますし、
現実の残酷さに対抗するために、
創作の力を信じるという立場もあります。
この物語においては、
両親のある種の実験的な子育てによって、
兄が虐待を受けることを見続けて来た弟が、
兄に対してなすべきことは何なのかを、
童話を書くという形で追求し続け、
最後には物凄く残酷で刹那的な形で、
物語の奇蹟が起こる、
という壮絶なプロローグに至ります。

舞台には動きが少なく、
童話を原則語りで見せるという様式なので、
鑑賞にはかなりきつい部分はある芝居なのですが、
色々な解釈な可能な力作で、
傑作であることは間違いがありません。

寺十さんの演出は、
さすがのアングラ演出が冴えていて、
もう少し遊びがあっても良いかな、
という感じはしましたが、
まずは安定した仕上がりでした。
戯曲で気になったのは、
パルコ劇場版では見せ場の1つになっていた、
刑事が語る寓話の部分が、
バッサリカットされていたことで、
色々なバージョンがあるのかも知れませんが、
少し釈然としませんでした。

キャストも概ね好演でしたが、
主人公の渡辺譲さんはガナる場面で台詞が聞き取り難く、
弟役の玉置祐也さんは、
時々素に戻るような感じがあるところが気に掛かりました。

いずれにしてもマクドナー作品を、
上質な演技と演出で観ることが出来るのは至福の時間で、
これからも是非是非マクドナー作品の上演をお願いします。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「命、ギガ長ス」(2022年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
午前中は新型コロナワクチンの接種があり、
午後はレセプト作業で、
夜はまだ昨日のRT-PCR検査結果を電話掛けの予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
命、ギガ長ス.jpg
2019年に松尾スズキさんと安藤玉惠さんの2人芝居として初演された、
「命、ギガ長ス」が、
ダブルキャストで今再演されています。

今回は宮藤官九郎さんと安藤玉惠さんの、
「ギガ組」の上演に足を運びました。

この作品は初演は観ているのですが、
ブログの感想など読み返すと、
あまり褒めていません。

ただ、今回再見してなかなかの傑作だと思いましたし、
クライマックスのアル中の死に際の妄想では、
素直に感動することが出来ました。

初演の時はもっと過激なものを期待していたので、
やや肩透かしの感じがあったのですね。
確かにもっとキャラが暴走しても良いのに、
と思う部分はありますし、
以前の松尾さんの少人数のお芝居では、
過剰なまでに多くのキャラが入れ替わり出没していましたから、
基本的にアル中の中年息子とその認知症の母親の2人だけで、
それをドキュメンタリーで撮影している女子大生と、
そのモラハラ指導教授のエピソードが、
ちょろっと挿入される程度という今回の作品は、
小さくまとまった、という感じはするのですね。

ただ、それであるだけに、
緻密で奥の深い表現が可能になったのだと思いますし、
それがクライマックスの感動に結び付いたのだと思います。

初演を微調整した松尾さんの演出は、
初演も感じましたけれど実に冴えていますよね。
以前野田秀樹さんの「農業少女」を演出した時も感じましたが、
こういう良い意味でチマチマした小細工が上手いんですね。
舞台イラストも、
吹越さんによる口での音響効果も、
ラストにのみ出現する小道具の扱いも、
場のつなぎ方も、
オープニングの暗転のタイミングも、
まあ実に見事ですよね。
小劇場演出の達人と言うか、
名人芸の域だと思います。

初演は松尾さんのアル中の中年男が、
ややリアルさに乏しい感じはあったのですね。
モラハラの大学教授の方は、これはもう抜群なのですが、
アル中には意外に見えないな、という感じはあったのです。

今回のクドカンは、
その良い意味で貧相な感じが、
松尾さんより役柄に合っていてリアルさがありました。
頑張って生きていて欲しいな、
という気がしますもんね。
その一方でモラハラ大学教授は、
ちょっと違和感はありました。

初演に引き続きの安藤玉惠さんは、
抜群に良かったですね。
彼女の代表作の1つと言って間違いのない出来でした。

お婆さんも女子大生も両方良かったですよね。
両方とも良い意味でエロいのですね。
初演の時はもう少しお婆さんは枯れた感じでやっていたんですね。
でも今回はもっと自然に、
色っぽくやっていて、
この方が絶対いいんですよね。
老人の色気のようなものが、
ある意味この作品のテーマでもあるので、
それが自然に感じられるのがとても凄いと感じました。

そんな訳で小劇場の魅力に溢れた素晴らしい2人芝居で、
是非是非劇場に足をお運びください。
感銘を受けますし、
演出と演技の掛け値なしの名人芸に接することが出来ます。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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ほりぶん 第9回公演「かたとき」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
夜はいつものようにRT-PCR検査の電話掛けに、
クリニックには行く予定です。
最近は休みの日もあまり家で寝ることがありません。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
かたとき.jpg
最近は芸人さんとの仕事も多い、
ナカゴーの異能の人、鎌田順也さんですが、
今回別ユニットのほりぶんの第9回公演は、
紀伊國屋ホール初進出で、
ゲストにはきたろうさん、又吉直樹さん、
猫背椿さんが加わるという豪華版です。

これは下町の祭りの夜を舞台にした、
13歳の少女を不審者から助けようとする、
警官と自警団と不審者との抗争を描いた物語ですが、
不審者にも一分の理はあり、
自警団も警官もそれなりにイカれているので、
当然まともな戦いになるということはなく、
ワンピースの女性陣はいつものように絶叫しつつの大暴れになりますし、
又吉さん演じる警官が、
同じことわざを大声でしつこくしつこく説明しまくるという、
とても又吉さんのキャラクターからは、
想像を絶する様な展開となります。

同じような連続する2夜の物語になっていて、
その繰り返しと微妙な差異が、
鎌田さんの作品としては、
古典的で端正な感じに仕上がっています。
まあ「ゴドーを待ちながら」のパターンですね。
インタビューで鎌田さんはカルトホラー「マグノリア」が大好きと言っていて、
そうそうあれは確かにナカゴー的な怪作だよね、
と思いましたが、
そうした奇怪さやグロテスクさは今回の作品にはなく、
鎌田さんの最近の傾向として、
かなりウェルメイドな仕上がりとなっています。
かつての「野鳩」にかなり似て来たな、
という感じもします。

中劇場の空間は結構巧みに使っていました。
最初に登場人物がずらりと並んで、
物語のあらすじを説明してしまうという、
普通に考えると「そんなことしなくていいのに」という趣向も、
いつもながらにあって、
でも結構贅沢な絵面になるので悪くありませんでした。
いつもはセットもなく照明効果なども殆どない、
という即席感の強い舞台でしたが、
今回はちゃんと夜店と盆踊りの屋台のセットがあり、
音響や照明の効果もプロが仕事をしているという感じです。

ただ、鎌田さんのかつてのシュールでグロテスクで、
とんでもなく非常識な感じを知っている者としては、
この上品な世界は矢張りちょっと物足りない、
という感じは否めません。
でも今後は貴重なコント作家の1人として、
吉本絡みのお仕事が増えてゆくような気もしますね。
それで成功して生活も安定するのであれば、
良いことのようにも思いますし、
小劇場の暴れん坊の感じが、
失われてゆくのはちょっと悲しいような気もします。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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