0期乳癌の長期予後(検診以外で診断された事例の解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
British Medical Journal誌に2024年1月24日付で掲載された、
非浸潤性乳管癌(0期乳癌)の長期予後についての論文です。
非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ)というのは、
乳癌の細胞が乳管の中に留まっていて、
その周囲には広がっていない(浸潤していない)状態のことで、
臨床的な分類では0期という最も初期の乳癌です。
この非浸潤性乳管癌は、
以前は発見されることが少なかったのですが、
乳癌検診の導入後、
微細石灰化などの所見をきっかけとして、
診断される機会が増え、
その対応が問題となっています。
現状非浸潤性乳管癌に対しては、
手術治療が行われることが一般的です。
それは乳癌検診で見つかった非浸潤性乳管癌の長期予後を検証すると、
浸潤性乳癌に進行するリスクが、
一般住民の2倍以上に増加していた、
というデータが存在しているからです。
https://www.bmj.com/content/384/bmj-2023-075498
ただ、実際には乳癌検診以外で、
非浸潤性乳管癌が診断されるケースもしばしばあり、
上記のデータにはそうした事例が含まれていない、
という欠点がありました。
そこで今回の研究ではイギリスにおいて、
国レベルの癌登録のデータを活用し、
1990年から2018年の間に乳癌検診以外で診断された、
非浸潤性乳管癌の事例、
トータル27549例の予後を検証しています。
事例によっては20年を超える、
2018年末までの観察期間において、
検診以外で診断された非浸潤性乳管癌が、
その後に浸潤性乳癌に進行するリスクは、
一般住民の浸潤性乳管癌発症リスクと比較して、
4.21倍(95%CI:4.07から4.35)有意に増加していました。
また累積の乳癌による死亡のリスクも、
一般住民の平均的死亡リスクと比較して、
3.83倍(95%CI:3.59から4.09)有意に増加していました。
この非浸潤性乳管癌の浸潤性乳癌と乳癌による死亡リスクの増加は、
少なくとも診断後25年に渡り認められました。
乳房の部分切除は放射線治療の併用の有無に関わらず、
乳房の全切除と比較すると、
その後の浸潤性乳癌のリスクを高めていました。
ただ、累積の死亡リスクに関して比較すると、
両者の治療法の有意な差は認められませんでした。
このように今回の大規模な検証において、
非浸潤性乳管癌と検診以外で診断された事例は、
検診で診断された事例と比較しても、
その後の浸潤性乳癌のリスクや、
乳癌による死亡リスクが高くなっていました。
その長期予後を考えると、
診断の時点では最も早期の癌であっても、
積極的に治療することが重要と考えられます。
その治療の選択肢としては、
現時点では乳房全切除の方が、
浸潤性乳癌の予防のためには有効性が高そうですが、
より保存的な治療と比較して、
長期の生命予後には差がない点から考えると、
保存的治療も検討には値すると思われます。
今後こうしたデータにより、
その治療ガイドラインが、
よりアップデートされることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
British Medical Journal誌に2024年1月24日付で掲載された、
非浸潤性乳管癌(0期乳癌)の長期予後についての論文です。
非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ)というのは、
乳癌の細胞が乳管の中に留まっていて、
その周囲には広がっていない(浸潤していない)状態のことで、
臨床的な分類では0期という最も初期の乳癌です。
この非浸潤性乳管癌は、
以前は発見されることが少なかったのですが、
乳癌検診の導入後、
微細石灰化などの所見をきっかけとして、
診断される機会が増え、
その対応が問題となっています。
現状非浸潤性乳管癌に対しては、
手術治療が行われることが一般的です。
それは乳癌検診で見つかった非浸潤性乳管癌の長期予後を検証すると、
浸潤性乳癌に進行するリスクが、
一般住民の2倍以上に増加していた、
というデータが存在しているからです。
https://www.bmj.com/content/384/bmj-2023-075498
ただ、実際には乳癌検診以外で、
非浸潤性乳管癌が診断されるケースもしばしばあり、
上記のデータにはそうした事例が含まれていない、
という欠点がありました。
そこで今回の研究ではイギリスにおいて、
国レベルの癌登録のデータを活用し、
1990年から2018年の間に乳癌検診以外で診断された、
非浸潤性乳管癌の事例、
トータル27549例の予後を検証しています。
事例によっては20年を超える、
2018年末までの観察期間において、
検診以外で診断された非浸潤性乳管癌が、
その後に浸潤性乳癌に進行するリスクは、
一般住民の浸潤性乳管癌発症リスクと比較して、
4.21倍(95%CI:4.07から4.35)有意に増加していました。
また累積の乳癌による死亡のリスクも、
一般住民の平均的死亡リスクと比較して、
3.83倍(95%CI:3.59から4.09)有意に増加していました。
この非浸潤性乳管癌の浸潤性乳癌と乳癌による死亡リスクの増加は、
少なくとも診断後25年に渡り認められました。
乳房の部分切除は放射線治療の併用の有無に関わらず、
乳房の全切除と比較すると、
その後の浸潤性乳癌のリスクを高めていました。
ただ、累積の死亡リスクに関して比較すると、
両者の治療法の有意な差は認められませんでした。
このように今回の大規模な検証において、
非浸潤性乳管癌と検診以外で診断された事例は、
検診で診断された事例と比較しても、
その後の浸潤性乳癌のリスクや、
乳癌による死亡リスクが高くなっていました。
その長期予後を考えると、
診断の時点では最も早期の癌であっても、
積極的に治療することが重要と考えられます。
その治療の選択肢としては、
現時点では乳房全切除の方が、
浸潤性乳癌の予防のためには有効性が高そうですが、
より保存的な治療と比較して、
長期の生命予後には差がない点から考えると、
保存的治療も検討には値すると思われます。
今後こうしたデータにより、
その治療ガイドラインが、
よりアップデートされることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
腰痛症の自然経過(2024年メタ解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Canadian Medical Association Journal誌に、
2024年1月21日付で掲載された、
腰痛の自然経過についての論文です。
所謂「ぎっくり腰」と呼ばれるような腰の痛みは、
誰でも経験すると言っても良いくらい、
非常に一般的な症状です。
しかし、これほど身近で一般的な症状でありながら、
その原因やメカニズムなどは、
科学がこれだけ進歩していても、
あまり明らかにはなっていません。
腰の痛みの中には、骨折や骨や造血系の悪性腫瘍など、
すぐに治療を要するものもありますが、
大多数の腰痛の原因は検査をしても不明で、
痛み止めや湿布、理学療法、温熱療法などで経過をみる以外に、
有効な治療も確立していません。
急性の腰痛の多くは、
概ね6週間くらいの経過で自然に改善することが多く、
そのため予後の良好な症状と考えられています。
ただ、その一方で一度腰痛を経験すると、
そのうちの69%は1年以内に再発を起こす、
というような報告もあり、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31208917/
その中には痛みが長期間持続する、
慢性疼痛と呼ばれる状態に移行することもあります。
問題は同じように見える腰痛のうち、
どのようなケースが慢性化し易いのか、
という点にあります。
つまり、雑多に見える腰痛症の自然経過を観察する必要があるのです。
今回の研究は、
これまでの主だった臨床データをまとめて解析するメタ解析という手法で、
腰痛症の自然経過を解析しているものです。
この研究では、
原因不明の腰痛症を、
6週間未満で症状が改善する急性腰痛と、
6から12週間未満までで改善する亜急性腰痛、
12週以上持続する慢性腰痛に分けて、
その経過を検証しています。
これまでの95の臨床研究をまとめて解析したところ、
急性腰痛と亜急性腰痛の患者のうち、
大多数は発症6週間の時点で、
痛みの状態が大きく改善していましたが、
慢性腰痛の患者では、
発症6週の時点でそれほどの改善が認められていませんでした。
つまり、その腰痛が長引く性質のものであるかどうかは、
最初は見極めが付かないものの、
発症6週の時点での症状を見ることにより、
かなり推測することが可能だ、という結果です。
こうしたデータは、
一見大したことがないもののように思われますが、
臨床的には結構重要なもので、
腰痛の患者さんを診察する上では、
非常に意義のある知見であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Canadian Medical Association Journal誌に、
2024年1月21日付で掲載された、
腰痛の自然経過についての論文です。
所謂「ぎっくり腰」と呼ばれるような腰の痛みは、
誰でも経験すると言っても良いくらい、
非常に一般的な症状です。
しかし、これほど身近で一般的な症状でありながら、
その原因やメカニズムなどは、
科学がこれだけ進歩していても、
あまり明らかにはなっていません。
腰の痛みの中には、骨折や骨や造血系の悪性腫瘍など、
すぐに治療を要するものもありますが、
大多数の腰痛の原因は検査をしても不明で、
痛み止めや湿布、理学療法、温熱療法などで経過をみる以外に、
有効な治療も確立していません。
急性の腰痛の多くは、
概ね6週間くらいの経過で自然に改善することが多く、
そのため予後の良好な症状と考えられています。
ただ、その一方で一度腰痛を経験すると、
そのうちの69%は1年以内に再発を起こす、
というような報告もあり、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31208917/
その中には痛みが長期間持続する、
慢性疼痛と呼ばれる状態に移行することもあります。
問題は同じように見える腰痛のうち、
どのようなケースが慢性化し易いのか、
という点にあります。
つまり、雑多に見える腰痛症の自然経過を観察する必要があるのです。
今回の研究は、
これまでの主だった臨床データをまとめて解析するメタ解析という手法で、
腰痛症の自然経過を解析しているものです。
この研究では、
原因不明の腰痛症を、
6週間未満で症状が改善する急性腰痛と、
6から12週間未満までで改善する亜急性腰痛、
12週以上持続する慢性腰痛に分けて、
その経過を検証しています。
これまでの95の臨床研究をまとめて解析したところ、
急性腰痛と亜急性腰痛の患者のうち、
大多数は発症6週間の時点で、
痛みの状態が大きく改善していましたが、
慢性腰痛の患者では、
発症6週の時点でそれほどの改善が認められていませんでした。
つまり、その腰痛が長引く性質のものであるかどうかは、
最初は見極めが付かないものの、
発症6週の時点での症状を見ることにより、
かなり推測することが可能だ、という結果です。
こうしたデータは、
一見大したことがないもののように思われますが、
臨床的には結構重要なもので、
腰痛の患者さんを診察する上では、
非常に意義のある知見であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
「哀れなるものたち」(2024年日本公開映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した、
ギリシャ出身の鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の新作映画が、
今ロードショー公開されています。
イギリス・アメリカなどの合作ですが、
基本ヨーロッパ映画なのだと思います。
「逆転のトライアングル」などにも通底する、
退廃と終末感に溢れた作品で、
全てのディテールは過剰で装飾的で、
それでいて知的に世界を読み解こう、
この世界の終末を分析しよう、
という理知的な手触りも共通しています。
この理屈っぽく知的な部分が、
アメリカ映画にはない、
ヨーロッパ映画の昔からの魅力です。
原作は未読ですが、
1990年代初頭に書かれていて、
フランケンシュタインの物語を現代に読み替えた、
偽古典のような作品であるようです。
舞台は19世紀末のロンドン、
エマ・ストーン演じる、
夫から虐待を受けていた女性は、
自分の娘を身ごもったまま、
身を投げて自殺するのですが、
それをウィリアム・デフォー演じるマッドサイエンティストが、
胎児の脳を移植することで蘇生します。
この母親の身体に娘の脳を持つ人造人間は、
マッドサイエンティストを父親として育つのですが、
彼女に思いを寄せる男達に翻弄され、
その狂暴で無垢な個性のままに、
ヨーロッパ世界を旅することになるのです。
要するに「男にとって都合の良い女性」は、
男によって造られた人造人間だ、
ということなのですね。
物語は彼女が世界を旅して自我に目覚め、
自立した女性として生まれ変わるまでを、
滅びゆくヨーロッパ世界の、
熟し過ぎた果実のような退廃的な魅力と共に描きます。
こういうお話の常で、
登場する男どもはほぼ全てろくでなしかクズなので、
一応男の端くれとしては、
観ていてあまり居心地の良い感じはしません。
ただ、それを脇に置いておけば、
物語は豊饒なロマンの魅力に満ち、
残酷やエロス、グロテスクや見世物的過剰さも、
フェリーニの映画を観ているようで、
懐かしく鑑賞することが出来ました。
ただ、基本的に「ヨーロッパなんてもう終わりさ」
という雰囲気が濃厚に感じられる映画なので、
基調音はかなり重苦しくも感じられます。
総じてヨーロッパ映画(とてもザックリの括りですが)のお好きな方には、
完成度も高くお勧め出来る作品です。
ただ、この監督の常で、
魚眼レンズを駆使した撮影や読みづらいタイトルなど、
かなり癖のある絵作りなので、
それほど観易い作品ではないことは、
一応理解の上鑑賞して頂くのが吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した、
ギリシャ出身の鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の新作映画が、
今ロードショー公開されています。
イギリス・アメリカなどの合作ですが、
基本ヨーロッパ映画なのだと思います。
「逆転のトライアングル」などにも通底する、
退廃と終末感に溢れた作品で、
全てのディテールは過剰で装飾的で、
それでいて知的に世界を読み解こう、
この世界の終末を分析しよう、
という理知的な手触りも共通しています。
この理屈っぽく知的な部分が、
アメリカ映画にはない、
ヨーロッパ映画の昔からの魅力です。
原作は未読ですが、
1990年代初頭に書かれていて、
フランケンシュタインの物語を現代に読み替えた、
偽古典のような作品であるようです。
舞台は19世紀末のロンドン、
エマ・ストーン演じる、
夫から虐待を受けていた女性は、
自分の娘を身ごもったまま、
身を投げて自殺するのですが、
それをウィリアム・デフォー演じるマッドサイエンティストが、
胎児の脳を移植することで蘇生します。
この母親の身体に娘の脳を持つ人造人間は、
マッドサイエンティストを父親として育つのですが、
彼女に思いを寄せる男達に翻弄され、
その狂暴で無垢な個性のままに、
ヨーロッパ世界を旅することになるのです。
要するに「男にとって都合の良い女性」は、
男によって造られた人造人間だ、
ということなのですね。
物語は彼女が世界を旅して自我に目覚め、
自立した女性として生まれ変わるまでを、
滅びゆくヨーロッパ世界の、
熟し過ぎた果実のような退廃的な魅力と共に描きます。
こういうお話の常で、
登場する男どもはほぼ全てろくでなしかクズなので、
一応男の端くれとしては、
観ていてあまり居心地の良い感じはしません。
ただ、それを脇に置いておけば、
物語は豊饒なロマンの魅力に満ち、
残酷やエロス、グロテスクや見世物的過剰さも、
フェリーニの映画を観ているようで、
懐かしく鑑賞することが出来ました。
ただ、基本的に「ヨーロッパなんてもう終わりさ」
という雰囲気が濃厚に感じられる映画なので、
基調音はかなり重苦しくも感じられます。
総じてヨーロッパ映画(とてもザックリの括りですが)のお好きな方には、
完成度も高くお勧め出来る作品です。
ただ、この監督の常で、
魚眼レンズを駆使した撮影や読みづらいタイトルなど、
かなり癖のある絵作りなので、
それほど観易い作品ではないことは、
一応理解の上鑑賞して頂くのが吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「ゴールデンカムイ」(2024年映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アニメの「ゴールデンカムイ」が、
実写映画として今ロードショー公開されています。
原作は読んでいます。
コミック版は31巻で完結していますが、
今回の映画版は3巻目までの、
主に人物紹介のパートのみの実写化です。
それも少し先のエピソードを再構成して挿入した程度で、
後はほぼほぼ原作通りに、
全てのシーンを再現しています。
もう続編も撮っているようで、
ラストにはその紹介的なカットも入っています。
同じ山崎賢人さん主演の「キングダム」に近い構想ですが、
あちらはオープニングが割と綺麗に完結したエピソードだったので、
第一作から映画としてのまとまりがありましたが、
この作品は原作が割と串団子的な構成と言うのか、
小山を連ねて物語が進んで行くので、
個々のエピソードのみで映画にするには弱い、
という欠点があります。
脚本の黒岩勉さんは、
こうした原作物の構成には卓越した才があり、
トリッキーな展開も得意なので、
敢えて今回はプロローグのみの作品でじっくりキャラを描き、
続編で怒涛の展開に移行するのではないかと推測しています。
こうした先を見越した映画製作は、
以前はかなり難しかったと思うのですが、
この作品は製作にWowowが付いていて、
仮に続編が公開されない事態となったとしても、
それ以降は配信のドラマとして継続、
という選択肢が残っているので、
最初から長期の計画を立てやすかった、
という側面があるのかも知れません。
単独の映画としてはクライマックスが弱い感じがしますし、
もう少し映画ならではのスケール感が欲しいな、
と感じる部分はあるのですが、
キャストの好演や水準の高い絵作りを含めて、
堂々たる娯楽映画に仕上がっている点は、
映画館で鑑賞する価値は充分にある1本だと思います。
これ、西部劇なんですね。
それもマカロニウエスタンに近いテイストの、
和製ごった煮西部劇です。
そう考えると、
まあアイヌの人達はインディアンの役割ですし
(アイヌの人達とインディアンが同じという意味ではありません。
勿論違うのですが、西部劇という見立ての中では相似性がある、
という意味です)、
北海道の開拓と西部の開拓は重ね合わせられる部分があるでしょ。
そうした意味で、
海外の人にも受け入れられやすい素材だと思うのですね。
戦争帰りの風来坊というのも、
とても西部劇的な設定です。
製作陣も勿論そのことは理解していて、
世界での配収も想定しているように推測されます。
続編が非常に楽しみです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アニメの「ゴールデンカムイ」が、
実写映画として今ロードショー公開されています。
原作は読んでいます。
コミック版は31巻で完結していますが、
今回の映画版は3巻目までの、
主に人物紹介のパートのみの実写化です。
それも少し先のエピソードを再構成して挿入した程度で、
後はほぼほぼ原作通りに、
全てのシーンを再現しています。
もう続編も撮っているようで、
ラストにはその紹介的なカットも入っています。
同じ山崎賢人さん主演の「キングダム」に近い構想ですが、
あちらはオープニングが割と綺麗に完結したエピソードだったので、
第一作から映画としてのまとまりがありましたが、
この作品は原作が割と串団子的な構成と言うのか、
小山を連ねて物語が進んで行くので、
個々のエピソードのみで映画にするには弱い、
という欠点があります。
脚本の黒岩勉さんは、
こうした原作物の構成には卓越した才があり、
トリッキーな展開も得意なので、
敢えて今回はプロローグのみの作品でじっくりキャラを描き、
続編で怒涛の展開に移行するのではないかと推測しています。
こうした先を見越した映画製作は、
以前はかなり難しかったと思うのですが、
この作品は製作にWowowが付いていて、
仮に続編が公開されない事態となったとしても、
それ以降は配信のドラマとして継続、
という選択肢が残っているので、
最初から長期の計画を立てやすかった、
という側面があるのかも知れません。
単独の映画としてはクライマックスが弱い感じがしますし、
もう少し映画ならではのスケール感が欲しいな、
と感じる部分はあるのですが、
キャストの好演や水準の高い絵作りを含めて、
堂々たる娯楽映画に仕上がっている点は、
映画館で鑑賞する価値は充分にある1本だと思います。
これ、西部劇なんですね。
それもマカロニウエスタンに近いテイストの、
和製ごった煮西部劇です。
そう考えると、
まあアイヌの人達はインディアンの役割ですし
(アイヌの人達とインディアンが同じという意味ではありません。
勿論違うのですが、西部劇という見立ての中では相似性がある、
という意味です)、
北海道の開拓と西部の開拓は重ね合わせられる部分があるでしょ。
そうした意味で、
海外の人にも受け入れられやすい素材だと思うのですね。
戦争帰りの風来坊というのも、
とても西部劇的な設定です。
製作陣も勿論そのことは理解していて、
世界での配収も想定しているように推測されます。
続編が非常に楽しみです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
市中肺炎に対するマクロライド系抗菌剤上乗せ治療の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医面談などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Lancet Respiratory Medicine誌に、
2024年1月3日付で掲載された、
市中肺炎の治療におけるマクロライド系抗菌剤の、
上乗せ使用の有効性についての論文です。
マクロライド系の抗菌剤には、
エリスロマイシンやアジスロマイシン(ジスロマック)、
クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)などがあり、
マイコプラズマやクラミジアなどの病原体にも抗菌力を持つことから、
主に気道感染症などの治療に幅広く使用されています。
マクロライド系の抗菌剤はそればかりでなく、
びまん性汎細気管支炎や慢性閉塞性肺疾患など、
気道の慢性の炎症が持続するような病気の、
長期のコントロール薬としても応用されていて、
この場合は比較的少量を長期間継続する、
というような、
抗菌剤としてはやや特殊な治療が行われています。
こうした治療は疾患と病態を選べば大きな効果があるのですが、
単純に抗菌剤としての効果とは考えられません。
そこで、マクロライド系抗菌剤には、
過剰な免疫反応を抑制するような、
免疫の調整作用があるのではないか、
という仮説が提唱されるようになりました。
そのメカニズムの詳細は明らかではない点もあるのですが、
動物実験などを主体として、
クラリスロマイシンの使用により、
骨髄球系の免疫抑制細胞群が誘導され、
それが過剰な免疫の調整に働いて、
細菌性ショックなどの改善に、
結び付いている可能性を示唆するようなデータもあり、
そうした免疫調整作用のあること自体は、
ほぼ間違いないことであるようです。
そこでたとえば市中肺炎などの治療において、
通常使用されるペニシリン系などの、
βラクタム系と呼ばれる抗菌剤に加えて、
マクロライド系抗菌剤を併用することで、
肺炎の重症化を予防し、
その治癒を促すような効果があるのではないか、
という考え方が生まれました。
実際欧米の2019年以降の呼吸器疾患のガイドラインにおいては、
入院を要する市中肺炎の治療において、
βラクタムとマクロライド系抗菌剤の併用が、
治療の選択肢の1つとして推奨されています。
しかし、その根拠となったデータはメタ解析によるもので、
より精度の高い介入試験の結果のみで検証すると、
その効果は明らかではないという指摘もあります。
そこで今回の研究はギリシャにおいて、
市中肺炎で入院加療となった278名を、
本人にも主治医にも分からないようにくじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常のβラクタム系抗菌剤の使用に加えて、
マクロライド系抗菌薬のクラリスロマイシンを、
1日1000㎎追加で使用し、
もう一方は偽薬を追加使用して、
その治療を1週間施行して、
肺炎の早期の臨床的な改善の指標を比較検証しています。
その結果、
肺炎の早期の改善の指標を、
治療開始後4日の時点で示していたのは、
クラリスロマイシン上乗せ群で68%であったのに対して、
偽薬群では38%で、
クラリスロマイシンの上乗せは、
早期改善に明確な有効性を示していました。
また、感染症の重症の状態である敗血症のリスクを、
クラリスロマイシンの上乗せは、
48%(95%CI:0.29から0.93)有意に低下させていました。
今回のデータはかなり明確に、
通常の抗菌剤にマクロライドを上乗せすることの、
肺炎改善と重症化予防効果を示していて、
やや出来過ぎの感じもしなくはありませんが、
今後のガイドラインなどにも、
大きなインパクトを与える結果であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医面談などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Lancet Respiratory Medicine誌に、
2024年1月3日付で掲載された、
市中肺炎の治療におけるマクロライド系抗菌剤の、
上乗せ使用の有効性についての論文です。
マクロライド系の抗菌剤には、
エリスロマイシンやアジスロマイシン(ジスロマック)、
クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)などがあり、
マイコプラズマやクラミジアなどの病原体にも抗菌力を持つことから、
主に気道感染症などの治療に幅広く使用されています。
マクロライド系の抗菌剤はそればかりでなく、
びまん性汎細気管支炎や慢性閉塞性肺疾患など、
気道の慢性の炎症が持続するような病気の、
長期のコントロール薬としても応用されていて、
この場合は比較的少量を長期間継続する、
というような、
抗菌剤としてはやや特殊な治療が行われています。
こうした治療は疾患と病態を選べば大きな効果があるのですが、
単純に抗菌剤としての効果とは考えられません。
そこで、マクロライド系抗菌剤には、
過剰な免疫反応を抑制するような、
免疫の調整作用があるのではないか、
という仮説が提唱されるようになりました。
そのメカニズムの詳細は明らかではない点もあるのですが、
動物実験などを主体として、
クラリスロマイシンの使用により、
骨髄球系の免疫抑制細胞群が誘導され、
それが過剰な免疫の調整に働いて、
細菌性ショックなどの改善に、
結び付いている可能性を示唆するようなデータもあり、
そうした免疫調整作用のあること自体は、
ほぼ間違いないことであるようです。
そこでたとえば市中肺炎などの治療において、
通常使用されるペニシリン系などの、
βラクタム系と呼ばれる抗菌剤に加えて、
マクロライド系抗菌剤を併用することで、
肺炎の重症化を予防し、
その治癒を促すような効果があるのではないか、
という考え方が生まれました。
実際欧米の2019年以降の呼吸器疾患のガイドラインにおいては、
入院を要する市中肺炎の治療において、
βラクタムとマクロライド系抗菌剤の併用が、
治療の選択肢の1つとして推奨されています。
しかし、その根拠となったデータはメタ解析によるもので、
より精度の高い介入試験の結果のみで検証すると、
その効果は明らかではないという指摘もあります。
そこで今回の研究はギリシャにおいて、
市中肺炎で入院加療となった278名を、
本人にも主治医にも分からないようにくじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常のβラクタム系抗菌剤の使用に加えて、
マクロライド系抗菌薬のクラリスロマイシンを、
1日1000㎎追加で使用し、
もう一方は偽薬を追加使用して、
その治療を1週間施行して、
肺炎の早期の臨床的な改善の指標を比較検証しています。
その結果、
肺炎の早期の改善の指標を、
治療開始後4日の時点で示していたのは、
クラリスロマイシン上乗せ群で68%であったのに対して、
偽薬群では38%で、
クラリスロマイシンの上乗せは、
早期改善に明確な有効性を示していました。
また、感染症の重症の状態である敗血症のリスクを、
クラリスロマイシンの上乗せは、
48%(95%CI:0.29から0.93)有意に低下させていました。
今回のデータはかなり明確に、
通常の抗菌剤にマクロライドを上乗せすることの、
肺炎改善と重症化予防効果を示していて、
やや出来過ぎの感じもしなくはありませんが、
今後のガイドラインなどにも、
大きなインパクトを与える結果であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
体重減少と癌リスクとの関連 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2024年1月23/30日付で掲載された、
体重減少と癌リスクについての論文です。
急に心当たりがないのに体重が減ると、
何か悪い病気が隠れているのではないか、
と心配をされる方は多いと思います。
その場合の「悪い病気」というのは、
通常は癌のことです。
テレビやネットなどで、
有名人が急に痩せたのを見ると、
「あの人は癌なんじゃないか」
というような噂が広がることが多いのも、
そうした考え方が一般に広がっていることを、
示しているように思います。
ただ、実際には体重減少の原因は癌だけではなく、
たとえばストレスや糖尿病、甲状腺機能亢進症などでも、
比較的急激な体重減少が起こることがあります。
実際に予期せぬ体重減少が見られた場合、
それが癌である可能性はどの程度のものなのでしょうか?
これまでに体重減少が癌の症状として見られた、
というような報告は勿論多数ありますが、
実際に体重減少そのものが、
どの程度その後の癌リスクに結びついていたのかを、
多数の事例で検証した報告は、
実際にはこれまであまりありませんでした。
今回の研究はアメリカにおいて、
有名な医療従事者を対象とした疫学研究のデータを活用して、
2年間における体重減少が、
その後12か月の癌の診断に与える影響を、
体重減少がない場合と比較して検証しているものです。
対象は年齢の中間値が62歳の医療従事者、
トータル15474名です。
平均で28年という長期の経過観察が施行されています。
その結果、
それ以前の2年間に10%を超える体重減少があると、
その後12か月に癌と診断されたのは、
年間10万人当たり1362件であったのに対して、
体重減少のない場合は869件で、
体重減少があると癌の事例は、
年間10万人当たり493件増加していました
(95%CI:391から594)
特にダイエットや運動習慣がないのに体重減少のあったケースに限ると、
2年に10%を超える体重減少後に癌と診断されたのは、
年間10万人当たり2687名であったのに対して、
体重減少のないコントロール群では、
年間10万人当たり1220件で、
体重減少があるとこうした運動習慣などのないケースでは、
癌の事例は年間10万人当たり1467件増加していました。
(95%CI:799から2135)
こうした体重減少後に診断される癌で、
最も多かったのは上部消化管由来の癌(食道、胃、胆道、肝臓、膵臓癌)で、
2年に10%を超える体重減少のあった場合、
こうした癌は年間10万人当たり173件報告されているのに対して、
体重減少のない場合の報告は36件で、
その差は年間10万人当たり137件でした。
(95%CI:101から172)
このように、
特に2年で10%を超えるような体重減少は、
その後の癌診断のリスクを高めていて、
癌の種類としては上部消化管由来の癌が多く、
特にダイエットを目標とした生活をしていないのに、
体重減少が見られた場合には、
より注意を要すると考えておいた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2024年1月23/30日付で掲載された、
体重減少と癌リスクについての論文です。
急に心当たりがないのに体重が減ると、
何か悪い病気が隠れているのではないか、
と心配をされる方は多いと思います。
その場合の「悪い病気」というのは、
通常は癌のことです。
テレビやネットなどで、
有名人が急に痩せたのを見ると、
「あの人は癌なんじゃないか」
というような噂が広がることが多いのも、
そうした考え方が一般に広がっていることを、
示しているように思います。
ただ、実際には体重減少の原因は癌だけではなく、
たとえばストレスや糖尿病、甲状腺機能亢進症などでも、
比較的急激な体重減少が起こることがあります。
実際に予期せぬ体重減少が見られた場合、
それが癌である可能性はどの程度のものなのでしょうか?
これまでに体重減少が癌の症状として見られた、
というような報告は勿論多数ありますが、
実際に体重減少そのものが、
どの程度その後の癌リスクに結びついていたのかを、
多数の事例で検証した報告は、
実際にはこれまであまりありませんでした。
今回の研究はアメリカにおいて、
有名な医療従事者を対象とした疫学研究のデータを活用して、
2年間における体重減少が、
その後12か月の癌の診断に与える影響を、
体重減少がない場合と比較して検証しているものです。
対象は年齢の中間値が62歳の医療従事者、
トータル15474名です。
平均で28年という長期の経過観察が施行されています。
その結果、
それ以前の2年間に10%を超える体重減少があると、
その後12か月に癌と診断されたのは、
年間10万人当たり1362件であったのに対して、
体重減少のない場合は869件で、
体重減少があると癌の事例は、
年間10万人当たり493件増加していました
(95%CI:391から594)
特にダイエットや運動習慣がないのに体重減少のあったケースに限ると、
2年に10%を超える体重減少後に癌と診断されたのは、
年間10万人当たり2687名であったのに対して、
体重減少のないコントロール群では、
年間10万人当たり1220件で、
体重減少があるとこうした運動習慣などのないケースでは、
癌の事例は年間10万人当たり1467件増加していました。
(95%CI:799から2135)
こうした体重減少後に診断される癌で、
最も多かったのは上部消化管由来の癌(食道、胃、胆道、肝臓、膵臓癌)で、
2年に10%を超える体重減少のあった場合、
こうした癌は年間10万人当たり173件報告されているのに対して、
体重減少のない場合の報告は36件で、
その差は年間10万人当たり137件でした。
(95%CI:101から172)
このように、
特に2年で10%を超えるような体重減少は、
その後の癌診断のリスクを高めていて、
癌の種類としては上部消化管由来の癌が多く、
特にダイエットを目標とした生活をしていないのに、
体重減少が見られた場合には、
より注意を要すると考えておいた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
ビタミンDの上気道感染予防効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Clinical Infectious Diseases誌に、
2023年12月19日付で掲載された、
ビタミンDの上気道感染予防効果についての論文です。
ビタミンDは健康な骨の維持のために必須のビタミンですが、
それ以外にも抗炎症作用や免疫の調整作用など、
多くの健康に良い働きを持つことで知られています。
血液のビタミンD濃度の低下と、
動脈硬化関連の病気や癌のリスク増加との間に関連のあることが、
これまでに報告されています。
ただ、その一方でビタミンDをサプリメントとして使用しても、
そうした病気の予防には多くの場合繋がっていません。
ビタミンD濃度の低下はまた、
呼吸器の感染症のリスクとも関連が指摘されています。
こちらについては、ビタミンDの補充により、
急性呼吸器感染症や喘息、COPDの急性増悪が、
一定レベル予防されたとするデータが報告されていますが、
その一方で有効ではなかったとする報告も見られていて、
この問題は現時点で解決されているとは言えません。
今回の研究はアメリカにおいて、
ビタミンDとオメガ3系脂肪酸の、
心血管疾患と癌に対する予防効果を検証した、
臨床試験のデータを活用することで、
ビタミンDのサプリメントの、
急性上気道感染に対する有効性を検証しているものです。
対象は動脈硬化性の病気は癌の既往のない、
登録時で50歳以上の男性と55歳以上の女性、
トータル15804人で、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はビタミンDを毎日2000IUサプリメントで使用し、
もう一方は偽のサプリを使用して、
1年間の経過観察を施行しています。
登録時点での血液のビタミンD(25OHD)濃度は、
平均で31ng/mLで、
そのうちの2.4%は欠乏の指標とされる、
12ng/mL未満となっていました。
検証の結果、
観察期間中の上気道感染のリスクは、
ビタミンD使用群と未使用群との間で、
有意な低下は示されず、
ビタミンDの欠乏群のみの解析でも、
リスク低下の傾向はあったものの、
矢張り有意なものではありませんでした。
このように、
対象を絞り込めば、
一定の予防効果がある可能性は否定できないのですが、
トータルには中高年でビタミンDの補充を行っても、
それが風邪などの予防に繋がる根拠は、
現状は明確なものはないと考えるのが妥当であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Clinical Infectious Diseases誌に、
2023年12月19日付で掲載された、
ビタミンDの上気道感染予防効果についての論文です。
ビタミンDは健康な骨の維持のために必須のビタミンですが、
それ以外にも抗炎症作用や免疫の調整作用など、
多くの健康に良い働きを持つことで知られています。
血液のビタミンD濃度の低下と、
動脈硬化関連の病気や癌のリスク増加との間に関連のあることが、
これまでに報告されています。
ただ、その一方でビタミンDをサプリメントとして使用しても、
そうした病気の予防には多くの場合繋がっていません。
ビタミンD濃度の低下はまた、
呼吸器の感染症のリスクとも関連が指摘されています。
こちらについては、ビタミンDの補充により、
急性呼吸器感染症や喘息、COPDの急性増悪が、
一定レベル予防されたとするデータが報告されていますが、
その一方で有効ではなかったとする報告も見られていて、
この問題は現時点で解決されているとは言えません。
今回の研究はアメリカにおいて、
ビタミンDとオメガ3系脂肪酸の、
心血管疾患と癌に対する予防効果を検証した、
臨床試験のデータを活用することで、
ビタミンDのサプリメントの、
急性上気道感染に対する有効性を検証しているものです。
対象は動脈硬化性の病気は癌の既往のない、
登録時で50歳以上の男性と55歳以上の女性、
トータル15804人で、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はビタミンDを毎日2000IUサプリメントで使用し、
もう一方は偽のサプリを使用して、
1年間の経過観察を施行しています。
登録時点での血液のビタミンD(25OHD)濃度は、
平均で31ng/mLで、
そのうちの2.4%は欠乏の指標とされる、
12ng/mL未満となっていました。
検証の結果、
観察期間中の上気道感染のリスクは、
ビタミンD使用群と未使用群との間で、
有意な低下は示されず、
ビタミンDの欠乏群のみの解析でも、
リスク低下の傾向はあったものの、
矢張り有意なものではありませんでした。
このように、
対象を絞り込めば、
一定の予防効果がある可能性は否定できないのですが、
トータルには中高年でビタミンDの補充を行っても、
それが風邪などの予防に繋がる根拠は、
現状は明確なものはないと考えるのが妥当であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
男性ホルモン治療の骨折予防効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2024年1月18日付で掲載された、
男性ホルモン治療の骨折予防効果についての論文です。
女性の更年期症状ほど明確ではありませんが、
男性も性腺の機能が低下し、
血液の男性ホルモンの数値が低下すると、
男性更年期と言って良い状態になります。
その1つの現れが、
骨量の低下と骨折リスクの増加です。
男性ホルモンの低下に伴い、
骨塩量が低下することや骨折が増えることは、
多くの疫学データで実証されている事実です。
その典型的なケースは、
前立腺癌の治療におけるホルモン低下療法で、
男性ホルモンは前立腺癌の進行を促進するため、
男性ホルモンを強く抑制する治療を行うのですが、
それにより骨量は低下し、
骨折リスクも増加することが確認されています。
それでは、
男性ホルモンの補充療法を施行することにより、
血液の男性ホルモン濃度を上昇させると、
それにより骨折のリスクは低下するのでしょうか?
実は骨量の増加自体はほぼ確認されているものの、
長期的に骨折を減らすことが出来るかどうか、
という点については、
それほど精度の高い臨床データが存在していません。
そこで今回の研究では、
アメリカの複数施設において、
血液の男性ホルモンであるテストステロン濃度が、
300ng/dL未満と低値であることが確認されている、
年齢が45から80歳で心血管疾患のリスクを持つ、
5204名の男性を、
本人にも担当者にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はテストステロンの外用剤を毎日使用し、
もう一方は偽の外用剤を使用して、
中間値で3.19年の観察を施行し、
その間の骨折リスクを比較検証しています。
その結果、
臨床的に診断された骨折は、
テストステロン使用群の3.50%に当たる91名に発症したのに対して、
偽薬群では2.46%に当たる64名に発症していて、
テストステロンの使用は当初の予測に反して、
骨折のリスクを43%(95%CI:1.04から1.97)、
有意に増加させていました。
つまり、骨量を増やして骨折を予防する筈のテストステロン治療が、
逆に骨折を増やしていた、
という意外な結果です。
何故このような結果になったのでしょうか?
正確な原因は不明ですが、
今回の研究では比較的軽症の事例が対象となっていて、
骨折リスクそのものも低かったことが、
その原因の1つとして考えられています。
外用剤のみの治療では、
充分な有効性がなかった可能性も指摘されています。
いずれにしても、
現時点ではテストステロン治療の、
男性ホルモンが低めの男性に対する骨折予防効果は、
実際には明確に証明はされていない、
とそのように考えておくのが良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2024年1月18日付で掲載された、
男性ホルモン治療の骨折予防効果についての論文です。
女性の更年期症状ほど明確ではありませんが、
男性も性腺の機能が低下し、
血液の男性ホルモンの数値が低下すると、
男性更年期と言って良い状態になります。
その1つの現れが、
骨量の低下と骨折リスクの増加です。
男性ホルモンの低下に伴い、
骨塩量が低下することや骨折が増えることは、
多くの疫学データで実証されている事実です。
その典型的なケースは、
前立腺癌の治療におけるホルモン低下療法で、
男性ホルモンは前立腺癌の進行を促進するため、
男性ホルモンを強く抑制する治療を行うのですが、
それにより骨量は低下し、
骨折リスクも増加することが確認されています。
それでは、
男性ホルモンの補充療法を施行することにより、
血液の男性ホルモン濃度を上昇させると、
それにより骨折のリスクは低下するのでしょうか?
実は骨量の増加自体はほぼ確認されているものの、
長期的に骨折を減らすことが出来るかどうか、
という点については、
それほど精度の高い臨床データが存在していません。
そこで今回の研究では、
アメリカの複数施設において、
血液の男性ホルモンであるテストステロン濃度が、
300ng/dL未満と低値であることが確認されている、
年齢が45から80歳で心血管疾患のリスクを持つ、
5204名の男性を、
本人にも担当者にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はテストステロンの外用剤を毎日使用し、
もう一方は偽の外用剤を使用して、
中間値で3.19年の観察を施行し、
その間の骨折リスクを比較検証しています。
その結果、
臨床的に診断された骨折は、
テストステロン使用群の3.50%に当たる91名に発症したのに対して、
偽薬群では2.46%に当たる64名に発症していて、
テストステロンの使用は当初の予測に反して、
骨折のリスクを43%(95%CI:1.04から1.97)、
有意に増加させていました。
つまり、骨量を増やして骨折を予防する筈のテストステロン治療が、
逆に骨折を増やしていた、
という意外な結果です。
何故このような結果になったのでしょうか?
正確な原因は不明ですが、
今回の研究では比較的軽症の事例が対象となっていて、
骨折リスクそのものも低かったことが、
その原因の1つとして考えられています。
外用剤のみの治療では、
充分な有効性がなかった可能性も指摘されています。
いずれにしても、
現時点ではテストステロン治療の、
男性ホルモンが低めの男性に対する骨折予防効果は、
実際には明確に証明はされていない、
とそのように考えておくのが良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北村想「シラの恋文」(寺十吾演出 シスカンパニー公演) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
北村想さんの新作が、
今日本青年館ホールで上演されています、
北村想さんと演出の寺十吾さんのコラボは、
2013年の「グッドバイ」から中断はありながらも続いていて、
今回が多分8回目になるかと思います。
僕は初回の「グットバイ」にとても感銘を受けて、
そのうちの8作品は観ています。
昨年の「ケンジトシ」はチケットが取れませんでした。
当初はシアタートラムでの公演でしたが、
途中から人気者を主役に配するようになり、
次第に箱(劇場)が大きくなっています。
当初は古典文学作品を、
北村さんの視点で読み直す、
という感じのシリーズだったのですが、
途中からはもうあまり原作とは関連がなくなり、
昔の北村さんの劇団時代の作品に、
近い雰囲気のものになってきています。
今回の作品は主役に草彅剛さんを迎えて、
一応「シラノ・ド・ベルジュラック」が下敷きになっていますが、
舞台は近未来のサナトリウムに設定され、
剣劇もあるし落語もあるし、
胡散臭い活劇から時空を超えたラブロマンスと、
北村さんのかなり集大成的な作品となっています。
それでいてモチーフとなった「シラノ」の、
恋文代筆という趣向はそのまま残し、
もう1つのモチーフの「魔の山」の、
死と生とを知性で嚙み砕くような感じも、
しっかり残している、
という辺りに北村さんの円熟味を感じます。
このシリーズの準レギュラーと言えるのは、
段田安則さんで、
段田さんが出演する時の方が出来が良いのですが、
今回はサナトリウムの院長として、
実際にはシラノの役を振られているので、
そこは北村さんの段田さんへのご褒美であったように、
個人的には感じました。
寺十吾(じつなしさとる)さんの演出は、
いつも素晴らしくて、
僕はこの人が演出というだけで、
その芝居は観る価値があると思うくらい信頼しているのですが、
今回も素晴らしい腕の冴えを見せていて、
小説風の原作の長いト書きは全てナレーションにし、
ホリゾントをキャンバスに見立てて、
色々な風景の移ろいを繊細かつユーモラスに映し出しています。
それでいて、
主人公2人が出逢った瞬間に運命の人と感じる場面は、
音効とサスライトを徹底してアングラ的に仰々しく使用して、
超自然的な瞬間を盛り上げているのがさすがでした。
総じて映像には今の技術を使用しながら、
それをアナログな雰囲気に落とし込んで、
アングラ演出の手作り感の魅力も、
十全に活かしている点が素晴らしく、
最後のアングラ演出家と言っても、
過言ではないように思います。
キャストも非常に贅沢な布陣で、
草彅さんの自然体の魅力は、
ちょっと他に真似の出来ないものですし、
段田安則さん、鈴木浩介さん、田山涼成さんと手練れが周りを固めます。
特筆するべきは落語家を演じた宮下雄也さんで、
その外連味たっぷりの芝居は、
作品に話芸としての筋を通した感じがありました。
内容もさすが北村さんという感じで、
今回は北村想ワールド全開なのですね。
非常にふわふわした世界なので、
こうしたものだと思って観ないと、
しんどくなってしまうかも知れません。
正直僕自身も北村さんの作品は、
1980年代初頭から接してはいたのですが、
当時は「寿歌」にしても「碧い彗星の一夜」にしても、
あまり良いと思えませんでした。
当時はもっと力を入れまくったお芝居が、
時代の主流だったからなんですね。
開眼したのは「グットバイ」で、
それ以降は北村想さんの作品の見方が変わりました。
その世界は唯一無二で、
他の誰とも似ていないのです。
ただ、その作品の出来にはかなりムラが大きくて、
極限まで詰まらないような作品も結構あるのです。
今回は非常に素晴らしかったのですが、
一点後半になると、
中華大国(作品自体にある表現です)と北朝鮮らしき国が、
日本に侵略して来るという展開になっていて、
そうした設定というのは、
余程の覚悟がないとしてはいけないように、
個人的には考えているので、
ちょっと頭を抱えてしまいました。
北村さんにそこまでの覚悟があったとは思えませんし、
こうした台詞を発する、
役者さんにも気の毒だと思います。
結果としてこの展開は「魔の山」をやろうとした、
というだけのことだと思うので、
近未来の設定などにはせず、
大正時代や昭和初期のサナトリウムに舞台を設定すれば、
それで済んだことではないでしょうか?
そんな訳でこれさえなければ、
北村想さんの集大成的傑作と、
素直に言えた作品であったのですが、
最後は少しモヤモヤとしてしまいました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
北村想さんの新作が、
今日本青年館ホールで上演されています、
北村想さんと演出の寺十吾さんのコラボは、
2013年の「グッドバイ」から中断はありながらも続いていて、
今回が多分8回目になるかと思います。
僕は初回の「グットバイ」にとても感銘を受けて、
そのうちの8作品は観ています。
昨年の「ケンジトシ」はチケットが取れませんでした。
当初はシアタートラムでの公演でしたが、
途中から人気者を主役に配するようになり、
次第に箱(劇場)が大きくなっています。
当初は古典文学作品を、
北村さんの視点で読み直す、
という感じのシリーズだったのですが、
途中からはもうあまり原作とは関連がなくなり、
昔の北村さんの劇団時代の作品に、
近い雰囲気のものになってきています。
今回の作品は主役に草彅剛さんを迎えて、
一応「シラノ・ド・ベルジュラック」が下敷きになっていますが、
舞台は近未来のサナトリウムに設定され、
剣劇もあるし落語もあるし、
胡散臭い活劇から時空を超えたラブロマンスと、
北村さんのかなり集大成的な作品となっています。
それでいてモチーフとなった「シラノ」の、
恋文代筆という趣向はそのまま残し、
もう1つのモチーフの「魔の山」の、
死と生とを知性で嚙み砕くような感じも、
しっかり残している、
という辺りに北村さんの円熟味を感じます。
このシリーズの準レギュラーと言えるのは、
段田安則さんで、
段田さんが出演する時の方が出来が良いのですが、
今回はサナトリウムの院長として、
実際にはシラノの役を振られているので、
そこは北村さんの段田さんへのご褒美であったように、
個人的には感じました。
寺十吾(じつなしさとる)さんの演出は、
いつも素晴らしくて、
僕はこの人が演出というだけで、
その芝居は観る価値があると思うくらい信頼しているのですが、
今回も素晴らしい腕の冴えを見せていて、
小説風の原作の長いト書きは全てナレーションにし、
ホリゾントをキャンバスに見立てて、
色々な風景の移ろいを繊細かつユーモラスに映し出しています。
それでいて、
主人公2人が出逢った瞬間に運命の人と感じる場面は、
音効とサスライトを徹底してアングラ的に仰々しく使用して、
超自然的な瞬間を盛り上げているのがさすがでした。
総じて映像には今の技術を使用しながら、
それをアナログな雰囲気に落とし込んで、
アングラ演出の手作り感の魅力も、
十全に活かしている点が素晴らしく、
最後のアングラ演出家と言っても、
過言ではないように思います。
キャストも非常に贅沢な布陣で、
草彅さんの自然体の魅力は、
ちょっと他に真似の出来ないものですし、
段田安則さん、鈴木浩介さん、田山涼成さんと手練れが周りを固めます。
特筆するべきは落語家を演じた宮下雄也さんで、
その外連味たっぷりの芝居は、
作品に話芸としての筋を通した感じがありました。
内容もさすが北村さんという感じで、
今回は北村想ワールド全開なのですね。
非常にふわふわした世界なので、
こうしたものだと思って観ないと、
しんどくなってしまうかも知れません。
正直僕自身も北村さんの作品は、
1980年代初頭から接してはいたのですが、
当時は「寿歌」にしても「碧い彗星の一夜」にしても、
あまり良いと思えませんでした。
当時はもっと力を入れまくったお芝居が、
時代の主流だったからなんですね。
開眼したのは「グットバイ」で、
それ以降は北村想さんの作品の見方が変わりました。
その世界は唯一無二で、
他の誰とも似ていないのです。
ただ、その作品の出来にはかなりムラが大きくて、
極限まで詰まらないような作品も結構あるのです。
今回は非常に素晴らしかったのですが、
一点後半になると、
中華大国(作品自体にある表現です)と北朝鮮らしき国が、
日本に侵略して来るという展開になっていて、
そうした設定というのは、
余程の覚悟がないとしてはいけないように、
個人的には考えているので、
ちょっと頭を抱えてしまいました。
北村さんにそこまでの覚悟があったとは思えませんし、
こうした台詞を発する、
役者さんにも気の毒だと思います。
結果としてこの展開は「魔の山」をやろうとした、
というだけのことだと思うので、
近未来の設定などにはせず、
大正時代や昭和初期のサナトリウムに舞台を設定すれば、
それで済んだことではないでしょうか?
そんな訳でこれさえなければ、
北村想さんの集大成的傑作と、
素直に言えた作品であったのですが、
最後は少しモヤモヤとしてしまいました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
小児の睡眠呼吸障害に対する扁桃切除の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年12月5日付で掲載された、
小児の睡眠呼吸障害に対する、
口蓋扁桃摘出術の有効性についての論文です。
睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing)というのは、
夜間に頻繁にいびきをかいたり、
呼吸が一時的に止まったりする状態の総称で、
睡眠時無呼吸を含む、
もっと幅広い症状のことです。
その症状は小児期に多く、
上記文献の記載では小児の6から17%に発症するとされています。
その多くは扁桃腺の腫大と鼻炎などによって、
気道が狭くなることによって起こります。
睡眠呼吸障害があると、
小児の身体的発達や精神神経系の発達において、
障碍が生じやすいという指摘があり、
そのためアメリカでは、
睡眠呼吸障害の症状のある小児に対して、
口蓋扁桃切除が第一選択の治療となっています。
ただ、
特に無呼吸が顕著ではない比較的軽症の事例において、
扁桃切除術がどの程度、
その後の小児の成長発達の改善に有効であるのか、
というような点については、
あまり精度の高い臨床データがないのが実際です。
そこで今回の研究では、
アメリカの複数の専門施設において、
年齢が3から12.9歳で、
軽症の睡眠呼吸障害の患者、
トータル458名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は症状が悪化しないかなどの経過観察を施行し、
もう一方は早期に扁桃切除の手術を施行して、
登録時から12か月の経過を比較検証しています。
この場合の軽症というのは、
1週間に3日以上のいびきが3か月以上継続していて、
無呼吸の指標であるAHIは3未満であるものです。
その結果、
実効機能や注意力などの精神発達の指標については、
手術施行群と観察群との間で明確な差は認められませんでした。
その一方で血圧は手術群で有意に低下し、
その後の無呼吸の進行も、
手術群で有意に抑制されていました。
このように、軽症の睡眠呼吸障害においても、
その後の無呼吸の進行予防などにおいて、
扁桃切除術に一定の有効性が確認されました。
その一方で精神発達などに対する有効性は、
確認されませんでした。
今後こうしたデータを元にして、
どのような対象者に対して手術をすることがより有用であるのか、
その適応の検証が行われることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年12月5日付で掲載された、
小児の睡眠呼吸障害に対する、
口蓋扁桃摘出術の有効性についての論文です。
睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing)というのは、
夜間に頻繁にいびきをかいたり、
呼吸が一時的に止まったりする状態の総称で、
睡眠時無呼吸を含む、
もっと幅広い症状のことです。
その症状は小児期に多く、
上記文献の記載では小児の6から17%に発症するとされています。
その多くは扁桃腺の腫大と鼻炎などによって、
気道が狭くなることによって起こります。
睡眠呼吸障害があると、
小児の身体的発達や精神神経系の発達において、
障碍が生じやすいという指摘があり、
そのためアメリカでは、
睡眠呼吸障害の症状のある小児に対して、
口蓋扁桃切除が第一選択の治療となっています。
ただ、
特に無呼吸が顕著ではない比較的軽症の事例において、
扁桃切除術がどの程度、
その後の小児の成長発達の改善に有効であるのか、
というような点については、
あまり精度の高い臨床データがないのが実際です。
そこで今回の研究では、
アメリカの複数の専門施設において、
年齢が3から12.9歳で、
軽症の睡眠呼吸障害の患者、
トータル458名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は症状が悪化しないかなどの経過観察を施行し、
もう一方は早期に扁桃切除の手術を施行して、
登録時から12か月の経過を比較検証しています。
この場合の軽症というのは、
1週間に3日以上のいびきが3か月以上継続していて、
無呼吸の指標であるAHIは3未満であるものです。
その結果、
実効機能や注意力などの精神発達の指標については、
手術施行群と観察群との間で明確な差は認められませんでした。
その一方で血圧は手術群で有意に低下し、
その後の無呼吸の進行も、
手術群で有意に抑制されていました。
このように、軽症の睡眠呼吸障害においても、
その後の無呼吸の進行予防などにおいて、
扁桃切除術に一定の有効性が確認されました。
その一方で精神発達などに対する有効性は、
確認されませんでした。
今後こうしたデータを元にして、
どのような対象者に対して手術をすることがより有用であるのか、
その適応の検証が行われることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。