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ビタミンDの上気道感染予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンDの上気道感染予防効果.jpg
Clinical Infectious Diseases誌に、
2023年12月19日付で掲載された、
ビタミンDの上気道感染予防効果についての論文です。

ビタミンDは健康な骨の維持のために必須のビタミンですが、
それ以外にも抗炎症作用や免疫の調整作用など、
多くの健康に良い働きを持つことで知られています。
血液のビタミンD濃度の低下と、
動脈硬化関連の病気や癌のリスク増加との間に関連のあることが、
これまでに報告されています。
ただ、その一方でビタミンDをサプリメントとして使用しても、
そうした病気の予防には多くの場合繋がっていません。

ビタミンD濃度の低下はまた、
呼吸器の感染症のリスクとも関連が指摘されています。
こちらについては、ビタミンDの補充により、
急性呼吸器感染症や喘息、COPDの急性増悪が、
一定レベル予防されたとするデータが報告されていますが、
その一方で有効ではなかったとする報告も見られていて、
この問題は現時点で解決されているとは言えません。

今回の研究はアメリカにおいて、
ビタミンDとオメガ3系脂肪酸の、
心血管疾患と癌に対する予防効果を検証した、
臨床試験のデータを活用することで、
ビタミンDのサプリメントの、
急性上気道感染に対する有効性を検証しているものです。

対象は動脈硬化性の病気は癌の既往のない、
登録時で50歳以上の男性と55歳以上の女性、
トータル15804人で、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はビタミンDを毎日2000IUサプリメントで使用し、
もう一方は偽のサプリを使用して、
1年間の経過観察を施行しています。

登録時点での血液のビタミンD(25OHD)濃度は、
平均で31ng/mLで、
そのうちの2.4%は欠乏の指標とされる、
12ng/mL未満となっていました。

検証の結果、
観察期間中の上気道感染のリスクは、
ビタミンD使用群と未使用群との間で、
有意な低下は示されず、
ビタミンDの欠乏群のみの解析でも、
リスク低下の傾向はあったものの、
矢張り有意なものではありませんでした。

このように、
対象を絞り込めば、
一定の予防効果がある可能性は否定できないのですが、
トータルには中高年でビタミンDの補充を行っても、
それが風邪などの予防に繋がる根拠は、
現状は明確なものはないと考えるのが妥当であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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