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体重減少と癌リスクとの関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
体重減少と癌リスク.jpg
JAMA誌に2024年1月23/30日付で掲載された、
体重減少と癌リスクについての論文です。

急に心当たりがないのに体重が減ると、
何か悪い病気が隠れているのではないか、
と心配をされる方は多いと思います。

その場合の「悪い病気」というのは、
通常は癌のことです。

テレビやネットなどで、
有名人が急に痩せたのを見ると、
「あの人は癌なんじゃないか」
というような噂が広がることが多いのも、
そうした考え方が一般に広がっていることを、
示しているように思います。

ただ、実際には体重減少の原因は癌だけではなく、
たとえばストレスや糖尿病、甲状腺機能亢進症などでも、
比較的急激な体重減少が起こることがあります。

実際に予期せぬ体重減少が見られた場合、
それが癌である可能性はどの程度のものなのでしょうか?

これまでに体重減少が癌の症状として見られた、
というような報告は勿論多数ありますが、
実際に体重減少そのものが、
どの程度その後の癌リスクに結びついていたのかを、
多数の事例で検証した報告は、
実際にはこれまであまりありませんでした。

今回の研究はアメリカにおいて、
有名な医療従事者を対象とした疫学研究のデータを活用して、
2年間における体重減少が、
その後12か月の癌の診断に与える影響を、
体重減少がない場合と比較して検証しているものです。

対象は年齢の中間値が62歳の医療従事者、
トータル15474名です。
平均で28年という長期の経過観察が施行されています。

その結果、
それ以前の2年間に10%を超える体重減少があると、
その後12か月に癌と診断されたのは、
年間10万人当たり1362件であったのに対して、
体重減少のない場合は869件で、
体重減少があると癌の事例は、
年間10万人当たり493件増加していました
(95%CI:391から594)

特にダイエットや運動習慣がないのに体重減少のあったケースに限ると、
2年に10%を超える体重減少後に癌と診断されたのは、
年間10万人当たり2687名であったのに対して、
体重減少のないコントロール群では、
年間10万人当たり1220件で、
体重減少があるとこうした運動習慣などのないケースでは、
癌の事例は年間10万人当たり1467件増加していました。
(95%CI:799から2135)

こうした体重減少後に診断される癌で、
最も多かったのは上部消化管由来の癌(食道、胃、胆道、肝臓、膵臓癌)で、
2年に10%を超える体重減少のあった場合、
こうした癌は年間10万人当たり173件報告されているのに対して、
体重減少のない場合の報告は36件で、
その差は年間10万人当たり137件でした。
(95%CI:101から172)

このように、
特に2年で10%を超えるような体重減少は、
その後の癌診断のリスクを高めていて、
癌の種類としては上部消化管由来の癌が多く、
特にダイエットを目標とした生活をしていないのに、
体重減少が見られた場合には、
より注意を要すると考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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