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市中肺炎に対するマクロライド系抗菌剤上乗せ治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
市中肺炎に対するマクロライド追加の有効性.jpg
Lancet Respiratory Medicine誌に、
2024年1月3日付で掲載された、
市中肺炎の治療におけるマクロライド系抗菌剤の、
上乗せ使用の有効性についての論文です。

マクロライド系の抗菌剤には、
エリスロマイシンやアジスロマイシン(ジスロマック)、
クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)などがあり、
マイコプラズマやクラミジアなどの病原体にも抗菌力を持つことから、
主に気道感染症などの治療に幅広く使用されています。

マクロライド系の抗菌剤はそればかりでなく、
びまん性汎細気管支炎や慢性閉塞性肺疾患など、
気道の慢性の炎症が持続するような病気の、
長期のコントロール薬としても応用されていて、
この場合は比較的少量を長期間継続する、
というような、
抗菌剤としてはやや特殊な治療が行われています。

こうした治療は疾患と病態を選べば大きな効果があるのですが、
単純に抗菌剤としての効果とは考えられません。

そこで、マクロライド系抗菌剤には、
過剰な免疫反応を抑制するような、
免疫の調整作用があるのではないか、
という仮説が提唱されるようになりました。

そのメカニズムの詳細は明らかではない点もあるのですが、
動物実験などを主体として、
クラリスロマイシンの使用により、
骨髄球系の免疫抑制細胞群が誘導され、
それが過剰な免疫の調整に働いて、
細菌性ショックなどの改善に、
結び付いている可能性を示唆するようなデータもあり、
そうした免疫調整作用のあること自体は、
ほぼ間違いないことであるようです。

そこでたとえば市中肺炎などの治療において、
通常使用されるペニシリン系などの、
βラクタム系と呼ばれる抗菌剤に加えて、
マクロライド系抗菌剤を併用することで、
肺炎の重症化を予防し、
その治癒を促すような効果があるのではないか、
という考え方が生まれました。

実際欧米の2019年以降の呼吸器疾患のガイドラインにおいては、
入院を要する市中肺炎の治療において、
βラクタムとマクロライド系抗菌剤の併用が、
治療の選択肢の1つとして推奨されています。

しかし、その根拠となったデータはメタ解析によるもので、
より精度の高い介入試験の結果のみで検証すると、
その効果は明らかではないという指摘もあります。

そこで今回の研究はギリシャにおいて、
市中肺炎で入院加療となった278名を、
本人にも主治医にも分からないようにくじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常のβラクタム系抗菌剤の使用に加えて、
マクロライド系抗菌薬のクラリスロマイシンを、
1日1000㎎追加で使用し、
もう一方は偽薬を追加使用して、
その治療を1週間施行して、
肺炎の早期の臨床的な改善の指標を比較検証しています。

その結果、
肺炎の早期の改善の指標を、
治療開始後4日の時点で示していたのは、
クラリスロマイシン上乗せ群で68%であったのに対して、
偽薬群では38%で、
クラリスロマイシンの上乗せは、
早期改善に明確な有効性を示していました。
また、感染症の重症の状態である敗血症のリスクを、
クラリスロマイシンの上乗せは、
48%(95%CI:0.29から0.93)有意に低下させていました。

今回のデータはかなり明確に、
通常の抗菌剤にマクロライドを上乗せすることの、
肺炎改善と重症化予防効果を示していて、
やや出来過ぎの感じもしなくはありませんが、
今後のガイドラインなどにも、
大きなインパクトを与える結果であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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