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コレステロールと認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コレステロールと認知症リスク.jpg
Neurology誌に2023年10月4日付で掲載された、
血液中のコレステロール値と認知症リスクとの、
関連についての論文です。

心血管疾患や高血圧、糖尿病が、
その後の認知症リスクと関連していることは、
多くの精度の高い疫学データにおいて、
立証されている事項です。

血液のLDLコレステロールの高値や、
HDLコレステロールの低値は、
動脈硬化性疾患のリスクと直結している検査値なので、
その観点からはそうしたコレステロールの異常値と、
その後の認知症リスクとも関連があることが想定されます。

しかし、実際には他のリスク因子との関連と比較して、
コレステロールの異常値と認知症との関連については、
一定の関連があったとするデータがある一方で、
無関係であるとするデータもあり、
その関連はそれほど明確とは言えません。

今回の研究はアメリカの大手健康保険会社である、
カイザー・パーマネント社の医療データを活用して、
55歳以上の184367名のコレステロール値を複数回測定し、
その後の認知症の発症との関連を検証しています。

その結果、
俗に善玉コレステロールと言われるHDLコレステロール値が、
平均的である場合と比較して、
65mg/dLを超える最も高い群では、
その後のアルツハイマー型認知症のリスクが、
15%(95%CI:1.11から1.20)、
11から41mg/dLと最も低い群では、
7%(95%CI:1.03から1.11)、
それぞれ有意に増加していました。

一方でLDLコレステロールと認知症との関連においては、
明確な関連性は認められませんでした。

このように、
今回の大規模な疫学データにおいては、
LDLコレステロールとアルツハイマー型認知症リスクとの間には、
明確な関連性が認められず、
HDLコレステロールについては、
それが高値でも低値でも認知症のリスクになり得るという、
かなり意外な結果が得られました。

これが何を意味しているのかについては、
今後検証が必要ですが、
コレステロールと認知症との関連は、
それほど単純なものではないと、
そう考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ありゃ

単純化できない話で、それだけに興味深いです。
今度の研究が期待されますね。
by ありゃ (2023-11-23 20:09) 

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