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通常の感冒後遺症の特徴について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
風邪の後遺症の特徴.jpg
Lancet系のeClinicalMedicine誌に、
2023年10月6日付で掲載された、
通常の感冒後遺症を、
新型コロナ後遺症と比較した論文です。

COVID-19後遺症については、
これまでも何度も記事にしています。

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、
体調不良が長期間持続することは以前より指摘されていて、
その呼び名も定義も、
必ずしも統一されていませんが、
概ね感染に罹患後3か月以上持続する症状で、
それにより日常生活や仕事などの社会生活に、
一定の制限が必要となったり困難が生じる場合に、
COVID-19後遺症や新型コロナ後遺症、
COVID-19罹患後症候群やロングCOVID、
などの名称が使用されています。

その症状も数多く報告されていますが、
報告の多いものでは大きく3つに分かれるというのが、
今の一般的な考え方です。
その3つというのは、
①咳や痰がらみ、息切れなどの呼吸器症状
②感情の変化や身体の痛みなどを伴う、全身の倦怠感
③物忘れや集中力低下などの認知機能障害
の3種類です。
他に味覚嗅覚障害がありますが、
これは持続することはあるものの、
他のCOVID-19後遺症とは別に考えることが多いようです。

さて、新型コロナに後遺症のあることは間違いがありませんが、
新型コロナ以外の通常の感冒症候群の罹患後にも、
同様の体調不良のあることは、
臨床をしている医師なら、
誰でも経験のあることだと思います。

「風邪が半年経っても治らない」と言われたり、
「だるさや熱っぽい感じがいつまで経っても良くならない」、
というような訴えは、
外来では毎日聞く性質のものであるからです。

しかし、実際にそれはどのような性質のもので、
新型コロナの後遺症とはどのような違いがあるのでしょうか?

そうした点を分析した研究は、
これまであまりありませんでした。

今回の研究はイギリスにおいて、
急性呼吸器感染症についての疫学研究のデータを活用して、
感染後の体調不良の症状を、
新型コロナとそれ以外に分けて解析したものです。

対象は元データから新型コロナワクチンは未接種の、
10171名の一般住民を抽出したもので、
そのうちの1311名は4週間以上前に新型コロナに感染し、
472名は4週間以上前にそれ以外の急性呼吸器感染症に罹患していました。

新型コロナ後遺症に特徴的とされる、
集中力低下、睡眠障害、動悸やめまいなどの症状は、
新型コロナ以外の急性呼吸器感染症の罹患後においても、
罹患していない人と比較して、
有意に増加していました。
一方で味覚嗅覚障害と脱毛、関節痛や筋肉痛の症状に関しては、
新型コロナ罹患後には増加していましたが、
それ以外の呼吸器感染症の罹患後には、
その増加は見られませんでした。

つまり、インフルエンザなど、
新型コロナ以外の感染症の罹患後にも、
新型コロナほど著明ではないものの、
長期間持続する睡眠障害や集中力低下などの後遺症が認められ、
症状の中では味覚嗅覚障害と脱毛、関節痛や筋肉痛については、
新型コロナ後遺症以外ではあまり見られない、
ということが分かりました。

今後は何故こうした現象が起こるのかの、
メカニズムの解明と共に、
その有効な治療が確立されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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