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前川知大「無駄な抵抗」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
無駄な抵抗.jpg
イキウメの前川知大さんの新作が、
世田谷パブリックシアター主催公演として、
今上演されています。

これはオイディプス王の物語を、
性的虐待の観点から現代的に再構築したもので、
場所は何故か全ての電車が停まらなくなった駅前広場に設定され、
そこに集う人々の会話の中から、
現代版オイディプス王の物語が浮かび上がるという仕掛けです。
ラストにはテロを容認するような不穏な空気も醸成され、
好き嫌いは置くとして、
如何にも現代の気分を反映した物語となっていました。

前川さんの作品としては珍しく、
基本的に超現実的な要素や怪異、SF的設定などはなく、
電車が説明なく停まらなくなる駅、
という抽象的な設定はあるものの、
それは概ね、
今の世の中で社会システムから、
結果として排除されてしまう人達のことを、
意味しているのだろうなあ、
というような「雰囲気設定」の枠を出ることはなく、
そこにSF的展開などは用意されていません。

そのため前川さんの作品としては、
比較的すんなりと作品世界を理解することが出来ます。

巻頭狂言回し的な設定の浜田信也さんが、
客席の方を向いて作品の設定を語るのは、
別役実さんの初期作品を思わせるテイストです。
その後も別役テイストは感じられる展開はあるのですが、
作品のテーマに入って来る辺りからは、
古典的な会話劇のスタイルになります。

正直もっと現実離れした架空論理に支配されたような世界が、
前川さんの真骨頂だと思うので、
今回のようなシリアスな会話劇は、
これはこれで悪くないとは思いつつも、
何処かしっくりしない感じはありました。

ただ、イキウメの公演を離れてのチャレンジだと思うので、
ラストの自暴自棄的な雰囲気には、
一抹の危惧は感じつつも、
ギリシャ悲劇の世界を現在に引き込んだ力業として、
役者さんの安定した力量とも相俟って、
見応えのあるお芝居になっていたと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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