宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」 [小説]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
本屋大賞を受賞した宮島未奈さんの小説を読みました。
連作短編集で続編と一緒に読んだのですが、
明らかに1作目の方が面白くて、
2作目は正直蛇足という印象を持ちました。
これは確かに面白い、というか、
とても楽しい小説集で、
殆どの人は一気読みをされたのではないかと思います。
この小説は予備知識があると面白さが半減するので、
是非是非情報を極力入れずにお読み下さい。
ミステリーではなく、
意外な展開もないのですが、
読む前に普通の人が作品に感じている先入観を、
見事に裏切るという感じがあるので、
それを是非味わって頂きたいのです。
僕がこの本について希望することは、
絶対に映像化やアニメ化はしないで欲しい、
ということです。
何だろう、絶対今売れっ子の10代の女優さんに、
成瀬を演じさせるつもりでしょ。
でも、それは絶対駄目なんですよ。
読者の1人1人にとって、
成瀬のイメージは違う筈なんですね。
皆の思い出の中にそれぞれの成瀬がいて、
それが読んでいると脳の中に忽然を現れる感じなんですね。
映像化してしまうと絶対そのイメージが壊れてしまうので、
特に実写化はしないで欲しいのです。
でも、絶対実写化されますよね。
それを考えると、とてもブルーになります。
この作品は6本の短編から構成されていて、
最初の「ありがとう西武大津店」と「膳所から来ました」は、
ほぼ同じ流れで同じ構成を取っているのですが、
「階段は走らない」からは、
構成も視点も変化しているんですね。
普通最初の構成のままに、
グイグイと進めた方が面白いと思うところですが、
そうしていない点がとてもクレヴァーだと思います。
最後の「ときめき江州音頭」でちょっと切ない感じを出して、
見事に大仰にならずに着地している点も素晴らしいと思います。
2作目の「成瀬は信じた道をいく」も工夫はされているのですが、
矢張りどうしても二番煎じの感はあって、
構成上どんどんスケールアップしてゆく、
という感じにはなりにくいので、
結果としては1作目の興奮はありませんでした。
コロンブスの卵的発想で、
どうしても小説はドラマティックな話を書こうとするので、
こうした何でもない話を何でもなく書く、
それが面白い、かけがえがないものだと信じて書く、
ということは意外に盲点だったのかも知れません。
今後こうした作品が多分矢鱈と出版されることになるのでしょうが、
この作品のようなフレッシュな感動は、
多分そうした物真似作品にはないように予想します。
まだ未読の方は情報の入らないうちに是非。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
本屋大賞を受賞した宮島未奈さんの小説を読みました。
連作短編集で続編と一緒に読んだのですが、
明らかに1作目の方が面白くて、
2作目は正直蛇足という印象を持ちました。
これは確かに面白い、というか、
とても楽しい小説集で、
殆どの人は一気読みをされたのではないかと思います。
この小説は予備知識があると面白さが半減するので、
是非是非情報を極力入れずにお読み下さい。
ミステリーではなく、
意外な展開もないのですが、
読む前に普通の人が作品に感じている先入観を、
見事に裏切るという感じがあるので、
それを是非味わって頂きたいのです。
僕がこの本について希望することは、
絶対に映像化やアニメ化はしないで欲しい、
ということです。
何だろう、絶対今売れっ子の10代の女優さんに、
成瀬を演じさせるつもりでしょ。
でも、それは絶対駄目なんですよ。
読者の1人1人にとって、
成瀬のイメージは違う筈なんですね。
皆の思い出の中にそれぞれの成瀬がいて、
それが読んでいると脳の中に忽然を現れる感じなんですね。
映像化してしまうと絶対そのイメージが壊れてしまうので、
特に実写化はしないで欲しいのです。
でも、絶対実写化されますよね。
それを考えると、とてもブルーになります。
この作品は6本の短編から構成されていて、
最初の「ありがとう西武大津店」と「膳所から来ました」は、
ほぼ同じ流れで同じ構成を取っているのですが、
「階段は走らない」からは、
構成も視点も変化しているんですね。
普通最初の構成のままに、
グイグイと進めた方が面白いと思うところですが、
そうしていない点がとてもクレヴァーだと思います。
最後の「ときめき江州音頭」でちょっと切ない感じを出して、
見事に大仰にならずに着地している点も素晴らしいと思います。
2作目の「成瀬は信じた道をいく」も工夫はされているのですが、
矢張りどうしても二番煎じの感はあって、
構成上どんどんスケールアップしてゆく、
という感じにはなりにくいので、
結果としては1作目の興奮はありませんでした。
コロンブスの卵的発想で、
どうしても小説はドラマティックな話を書こうとするので、
こうした何でもない話を何でもなく書く、
それが面白い、かけがえがないものだと信じて書く、
ということは意外に盲点だったのかも知れません。
今後こうした作品が多分矢鱈と出版されることになるのでしょうが、
この作品のようなフレッシュな感動は、
多分そうした物真似作品にはないように予想します。
まだ未読の方は情報の入らないうちに是非。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2024-04-14 10:31
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