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高齢者の高血圧治療の認知症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者の降圧治療の認知症予防効果.jpg
Journal of the American College of Cardiology誌に、
2024年4月2日付で掲載された、
高血圧の治療と認知症との関連についての論文です。

中年期以降の高血圧が、
その後の認知症のリスクを高めることは、
多くの信頼のおける疫学データで実証されている事実です。

ただ、降圧剤による高血圧の治療が、
認知症のリスクに与える影響については、
最近までそれほど明確な知見がありませんでした。

最近になって、
収縮期血圧を130mmHg未満にすることで、
脳の白質病変と呼ばれる認知症と関連のある変化が、
抑制されたとする報告や、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31607143/
65 歳を超える年齢では、
収縮期血圧を10mmHg下げることにより、
認知症のリスクが13%低下したとする、
メタ解析の報告などが発表されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36282295/

ただ、一般住民を対象として長期間観察したような単独の研究は、
これまであまりありませんでした。

今回の研究はイタリアにおいて、
65歳以上で降圧剤による治療を開始した、
215547名の患者を対象として、
降圧剤の累積の治療期間と、
認知症のリスクとの関連を検証しているものです。

その結果降圧剤の治療期間が長いほど、
その後の認知症のリスクは低い傾向があり、
実際に観察期間の4分の1以下しか、
治療が行われていなかった場合と比較して、
4分の3以上の期間降圧剤の治療が継続されている患者では、
他の認知症のリスクに関わる因子を補正した結果として、
認知症の発症リスクが24%(95%CI:19から28)有意に低下していました。
85歳以上の年齢に限定しても、
余命が1年未満と想定される患者に限定しても、
同様の傾向が確認されました。

つまり、高血圧の治療を継続しているほど、
認知症のリスクが抑制された、
ということを示唆する結果です。

ただ、お分かりのようにこのデータは、
降圧剤の処方歴を確認して比較しているだけなので、
本当に血圧値の低下自体が、
認知症のリスクの低下の原因であるとは断定出来ません。

ただ、一般住民を対象とした大規模なデータである点には意義があり、
今後血圧コントロールと認知症との関連については、
検証が重ねられ、
より精度の高い結果が確認されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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