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M&Oplaysプロデュース「帰れない男~慰留と斡旋の攻防~」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
帰れない男.jpg
M&Oplaysプロデュースとして、
倉持裕さんの新作が今上演されています。

これは「お勢登場」と「お勢、断行」という、
以前上演された明治・大正辺りの時代設定にして、
謎めいた女性を巡る、
乱歩や谷崎的な怪異譚を、
倉持さん流にアレンジしたシリーズの、
第三弾と言った雰囲気の作品です。

今回は内田百閒がモチーフとなっているそうですが、
前2作よりも焦点がかなり絞り込まれた作劇になっていて、
シリーズ(個人的感想で実際にシリーズ化されている訳ではありません)として、
より円熟し、この系列として本腰が入って来たな、
という印象を持ちました。

セットはある程度前作の使いまわしかな、
という印象を持ちましたが、
奥の客間の周りにグルリと廊下を巡らして、
客間の向こうには中庭を挟んで別の座敷があり、
その襖には影絵の人物を映して、
シンプルで基本的に変化のないセットでありながら、
迷路のような広大な旧家を幻視させるに充分な、
計算された鮮やかなセットでした。

特に廊下を通る経路で、
人物が何度か消える、
という工夫が大変巧みに効いていました。

こうした近世日本を舞台にした文学的幻想譚は、
ケラさんも書きますし、岩松了さんも、
また北村想さんも得意としているところですが、
その中では倉持さんの書くものが、
台詞の結晶度では一番で、
以前も思ったのですが、
三島由紀夫さんの戯曲に、
現行の劇作家の中では、
最も近い位置にあるように個人的には思いました。

キャストは皆好演でしたが、
ヒロインの藤間爽子さんは、
非常に魅力的な女優さんで、
舞踊家でもあるので所作が美しく、
着物の着こなしも素敵ではあったのですが、
ファムファタール的なこの作品のヒロインとしては、
少し弱いな、ということを感じました。
ただ、それは藤間さんの責任ではなくて、
藤間さんがキャスティングされるのであれば、
ヒロインの描き方は、
もっと違ったものがあって良かったのではないか、
というように感じました。

いずれにしても今の小劇場では珍しい、
台詞の輝きを楽しむタイプの幻想譚で、
しばし夢幻的な世界に酔うことが出来ました。
これからも是非倉持さんには、
こうしたお芝居も書いて欲しいと思いますし、
よりその世界を研ぎ澄ませて、
本家の三島戯曲を、
乗り越えて欲しいと切に願っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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