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脳の脆弱部位に影響を与える環境因子 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は介護保険の審査公務の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
認知症の改変可能リスク.jpg
Nature Communications誌に2024年3月27日付で掲載された、
老化や精神疾患などに脆弱な脳神経部位へ、
影響を与える環境因子を解析した論文です。

正常な老化は成長の過程を鏡に映したように進行する、
という考え方があります。

子供は次第に成長して大人になりますが、
その成長過程を逆転させたようにして、
徐々に脳の働きは低下し、
老化は進行してゆくというのです。

つまり、正常な老化は子供に返ることだ、
という理論です。

ここで思春期に見られる、
正常な脳の成長の最後の部位が、
老化に伴って、
最も最初に変性し易いことが指摘されていて、
その部位に認められる異常が、
成長期においては統合失調症に、
老化に伴ってはアルツハイマー型認知症に、
関連が深いことが指摘されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4267352/

この脳の特定部位の変性は、
遺伝的な影響を受けることが指摘されていますが、
その一方で基礎疾患や環境要因の関与も指摘されています。

今回の研究では、
イギリスの大規模な医療データである、
UKバイオバンクの臨床データを活用して、
認知症の発症に影響する可能性のある、
飲酒や高血圧など161の環境因子と、
認知症の発症に関連すると思われる、
脳の脆弱な部位の変性との関連を比較検証しています。

その結果糖尿病と、
環境汚染の指標である住環境の二酸化窒素濃度、
飲酒頻度の3項目が、
脳の脆弱部位の変性と関連していることが認められました。

何故この3項目が認知症のリスクと関連しているのか、
明確ではない面がありますが、
通常の認知症リスクとは別の形で、
今回の検証が行われている点は非常に興味深く、
通常の解析と比較して別の結果が得られた理由を含めて、
今後のデータの蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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