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男性ホルモン治療の骨折予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
テストステロン治療と骨折リスク.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2024年1月18日付で掲載された、
男性ホルモン治療の骨折予防効果についての論文です。

女性の更年期症状ほど明確ではありませんが、
男性も性腺の機能が低下し、
血液の男性ホルモンの数値が低下すると、
男性更年期と言って良い状態になります。

その1つの現れが、
骨量の低下と骨折リスクの増加です。

男性ホルモンの低下に伴い、
骨塩量が低下することや骨折が増えることは、
多くの疫学データで実証されている事実です。
その典型的なケースは、
前立腺癌の治療におけるホルモン低下療法で、
男性ホルモンは前立腺癌の進行を促進するため、
男性ホルモンを強く抑制する治療を行うのですが、
それにより骨量は低下し、
骨折リスクも増加することが確認されています。

それでは、
男性ホルモンの補充療法を施行することにより、
血液の男性ホルモン濃度を上昇させると、
それにより骨折のリスクは低下するのでしょうか?

実は骨量の増加自体はほぼ確認されているものの、
長期的に骨折を減らすことが出来るかどうか、
という点については、
それほど精度の高い臨床データが存在していません。

そこで今回の研究では、
アメリカの複数施設において、
血液の男性ホルモンであるテストステロン濃度が、
300ng/dL未満と低値であることが確認されている、
年齢が45から80歳で心血管疾患のリスクを持つ、
5204名の男性を、
本人にも担当者にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はテストステロンの外用剤を毎日使用し、
もう一方は偽の外用剤を使用して、
中間値で3.19年の観察を施行し、
その間の骨折リスクを比較検証しています。

その結果、
臨床的に診断された骨折は、
テストステロン使用群の3.50%に当たる91名に発症したのに対して、
偽薬群では2.46%に当たる64名に発症していて、
テストステロンの使用は当初の予測に反して、
骨折のリスクを43%(95%CI:1.04から1.97)、
有意に増加させていました。

つまり、骨量を増やして骨折を予防する筈のテストステロン治療が、
逆に骨折を増やしていた、
という意外な結果です。

何故このような結果になったのでしょうか?

正確な原因は不明ですが、
今回の研究では比較的軽症の事例が対象となっていて、
骨折リスクそのものも低かったことが、
その原因の1つとして考えられています。
外用剤のみの治療では、
充分な有効性がなかった可能性も指摘されています。

いずれにしても、
現時点ではテストステロン治療の、
男性ホルモンが低めの男性に対する骨折予防効果は、
実際には明確に証明はされていない、
とそのように考えておくのが良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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