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小児の睡眠呼吸障害に対する扁桃切除の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
小児の軽症睡眠呼吸障害に対する扁桃切除の有効性.jpg
JAMA誌に2023年12月5日付で掲載された、
小児の睡眠呼吸障害に対する、
口蓋扁桃摘出術の有効性についての論文です。

睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing)というのは、
夜間に頻繁にいびきをかいたり、
呼吸が一時的に止まったりする状態の総称で、
睡眠時無呼吸を含む、
もっと幅広い症状のことです。

その症状は小児期に多く、
上記文献の記載では小児の6から17%に発症するとされています。

その多くは扁桃腺の腫大と鼻炎などによって、
気道が狭くなることによって起こります。

睡眠呼吸障害があると、
小児の身体的発達や精神神経系の発達において、
障碍が生じやすいという指摘があり、
そのためアメリカでは、
睡眠呼吸障害の症状のある小児に対して、
口蓋扁桃切除が第一選択の治療となっています。

ただ、
特に無呼吸が顕著ではない比較的軽症の事例において、
扁桃切除術がどの程度、
その後の小児の成長発達の改善に有効であるのか、
というような点については、
あまり精度の高い臨床データがないのが実際です。

そこで今回の研究では、
アメリカの複数の専門施設において、
年齢が3から12.9歳で、
軽症の睡眠呼吸障害の患者、
トータル458名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は症状が悪化しないかなどの経過観察を施行し、
もう一方は早期に扁桃切除の手術を施行して、
登録時から12か月の経過を比較検証しています。

この場合の軽症というのは、
1週間に3日以上のいびきが3か月以上継続していて、
無呼吸の指標であるAHIは3未満であるものです。

その結果、
実効機能や注意力などの精神発達の指標については、
手術施行群と観察群との間で明確な差は認められませんでした。
その一方で血圧は手術群で有意に低下し、
その後の無呼吸の進行も、
手術群で有意に抑制されていました。

このように、軽症の睡眠呼吸障害においても、
その後の無呼吸の進行予防などにおいて、
扁桃切除術に一定の有効性が確認されました。
その一方で精神発達などに対する有効性は、
確認されませんでした。

今後こうしたデータを元にして、
どのような対象者に対して手術をすることがより有用であるのか、
その適応の検証が行われることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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