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腰痛症の自然経過(2024年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
腰痛症の自然経過(2024年メタ解析).jpg
Canadian Medical Association Journal誌に、
2024年1月21日付で掲載された、
腰痛の自然経過についての論文です。

所謂「ぎっくり腰」と呼ばれるような腰の痛みは、
誰でも経験すると言っても良いくらい、
非常に一般的な症状です。

しかし、これほど身近で一般的な症状でありながら、
その原因やメカニズムなどは、
科学がこれだけ進歩していても、
あまり明らかにはなっていません。

腰の痛みの中には、骨折や骨や造血系の悪性腫瘍など、
すぐに治療を要するものもありますが、
大多数の腰痛の原因は検査をしても不明で、
痛み止めや湿布、理学療法、温熱療法などで経過をみる以外に、
有効な治療も確立していません。

急性の腰痛の多くは、
概ね6週間くらいの経過で自然に改善することが多く、
そのため予後の良好な症状と考えられています。
ただ、その一方で一度腰痛を経験すると、
そのうちの69%は1年以内に再発を起こす、
というような報告もあり、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31208917/
その中には痛みが長期間持続する、
慢性疼痛と呼ばれる状態に移行することもあります。

問題は同じように見える腰痛のうち、
どのようなケースが慢性化し易いのか、
という点にあります。

つまり、雑多に見える腰痛症の自然経過を観察する必要があるのです。

今回の研究は、
これまでの主だった臨床データをまとめて解析するメタ解析という手法で、
腰痛症の自然経過を解析しているものです。

この研究では、
原因不明の腰痛症を、
6週間未満で症状が改善する急性腰痛と、
6から12週間未満までで改善する亜急性腰痛、
12週以上持続する慢性腰痛に分けて、
その経過を検証しています。

これまでの95の臨床研究をまとめて解析したところ、
急性腰痛と亜急性腰痛の患者のうち、
大多数は発症6週間の時点で、
痛みの状態が大きく改善していましたが、
慢性腰痛の患者では、
発症6週の時点でそれほどの改善が認められていませんでした。

つまり、その腰痛が長引く性質のものであるかどうかは、
最初は見極めが付かないものの、
発症6週の時点での症状を見ることにより、
かなり推測することが可能だ、という結果です。

こうしたデータは、
一見大したことがないもののように思われますが、
臨床的には結構重要なもので、
腰痛の患者さんを診察する上では、
非常に意義のある知見であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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