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2種類の抗血小板剤の脳梗塞早期再発予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは年末年始の休診期間中です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2種の抗血小板剤の脳梗塞予防効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年12月28日付で掲載された、
軽症の脳梗塞後の再発予防の試みについての論文です。

一度脳梗塞に罹患した時、
その後90日以内に5から10%で再発があると報告されています。
その半数は発症48時間以内に起こります。

この再発を予防するために、
アスピリンなどの抗血小板剤を使用することが、
これまでに試みられていて、
特に2種類の抗血小板剤を併用することが、
より有効性が高いと報告されています。

ただ、これまでの臨床データは、
受傷後24時間以内にその使用が開始されているものが殆どで、
それ以降に使用を開始しても有効性があるかどうかについては、
まだ明確なことが分かっていません。

特に軽症の脳梗塞や、
一過性脳虚血発作と言って、
一時的に症状が出て無症状になるような場合には、
患者が医療機関で治療を開始するまでの時間も、
長くなることが多く、
再発予防の治療の可否について、
迷うことも多いのが実際です。

今回の研究は中国の222か所の医療施設において、
一過性脳虚血発作もしくは軽症の脳梗塞(NIHSSスケールで5以下)に受傷し、
受傷後72時間以内の6100名の患者を、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は低用量のアスピリンのみを使用し、
もう一方はアスピリンとクロピドグレルという、
2種類の抗血小板剤を併用し、
その治療を受傷後90日まで継続して、
その間の脳梗塞の再発と、
出血などの治療の合併症のリスクを比較検証しています。

アスピリンは初日のみ100から300㎎を使用、
2日目以降は100㎎を継続、
クロピドグレルは初日は300㎎を使用し、
2日前以降は1日75㎎を継続して使用しています。

その結果、
脳梗塞の再発はアスピリン単独群の9.2%、
アスピリンとクロピドグレル併用群の7.3%で認められ、
クロピドグレルの併用はアスピリン単独と比較して、
軽症脳梗塞後の再発リスクを、
21%(95%CI: 0.66から0.94)有意に低下させていました。

一方でクロピドグレルの併用により、
消化管出血などの中等度以上の出血系合併症のリスクは、
アスピリン単独群と比較して、
2.08倍(95%CI:1.07から4.04)有意に増加していました。

今回の臨床データからは、
一過性脳虚血発作もしくは軽症の脳梗塞を受傷した患者1000人当たり、
アスピリン単独治療と比較してクロピドグレルの併用により、
脳梗塞の再発は19人減少し、
中等度以上の出血を起こす患者が5人増加した、
という推計が得られました。

このように、
発症3日以内であれば、
2種類の抗血小板剤の併用により、
アスピリン単独を超える予防効果が確認されました。
ただ、出血のリスクの増加も認められるため、
それを勘案した治療の適応が、
今後確立されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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