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「哀れなるものたち」(2024年日本公開映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
哀れなるものたち.jpg
ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した、
ギリシャ出身の鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の新作映画が、
今ロードショー公開されています。

イギリス・アメリカなどの合作ですが、
基本ヨーロッパ映画なのだと思います。
「逆転のトライアングル」などにも通底する、
退廃と終末感に溢れた作品で、
全てのディテールは過剰で装飾的で、
それでいて知的に世界を読み解こう、
この世界の終末を分析しよう、
という理知的な手触りも共通しています。

この理屈っぽく知的な部分が、
アメリカ映画にはない、
ヨーロッパ映画の昔からの魅力です。

原作は未読ですが、
1990年代初頭に書かれていて、
フランケンシュタインの物語を現代に読み替えた、
偽古典のような作品であるようです。

舞台は19世紀末のロンドン、
エマ・ストーン演じる、
夫から虐待を受けていた女性は、
自分の娘を身ごもったまま、
身を投げて自殺するのですが、
それをウィリアム・デフォー演じるマッドサイエンティストが、
胎児の脳を移植することで蘇生します。

この母親の身体に娘の脳を持つ人造人間は、
マッドサイエンティストを父親として育つのですが、
彼女に思いを寄せる男達に翻弄され、
その狂暴で無垢な個性のままに、
ヨーロッパ世界を旅することになるのです。

要するに「男にとって都合の良い女性」は、
男によって造られた人造人間だ、
ということなのですね。
物語は彼女が世界を旅して自我に目覚め、
自立した女性として生まれ変わるまでを、
滅びゆくヨーロッパ世界の、
熟し過ぎた果実のような退廃的な魅力と共に描きます。

こういうお話の常で、
登場する男どもはほぼ全てろくでなしかクズなので、
一応男の端くれとしては、
観ていてあまり居心地の良い感じはしません。

ただ、それを脇に置いておけば、
物語は豊饒なロマンの魅力に満ち、
残酷やエロス、グロテスクや見世物的過剰さも、
フェリーニの映画を観ているようで、
懐かしく鑑賞することが出来ました。
ただ、基本的に「ヨーロッパなんてもう終わりさ」
という雰囲気が濃厚に感じられる映画なので、
基調音はかなり重苦しくも感じられます。

総じてヨーロッパ映画(とてもザックリの括りですが)のお好きな方には、
完成度も高くお勧め出来る作品です。
ただ、この監督の常で、
魚眼レンズを駆使した撮影や読みづらいタイトルなど、
かなり癖のある絵作りなので、
それほど観易い作品ではないことは、
一応理解の上鑑賞して頂くのが吉だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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