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脳死臓器移植時の甲状腺ホルモン使用の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前緒午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
甲状腺ホルモンの心臓移植への効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年11月30日付で掲載された、
脳死ドナーへの甲状腺ホルモン剤の使用についての論文です。

脳死の患者からの心臓移植において、
臓器の生着を阻害する要因として知られているのは、
脳死患者の血行動態の不安定さや心機能障害です。
海外で脳死と診断されて移植の適応となった事例のうち、
実際に移植活用されるものは半数以下に過ぎない、
という報告もあります。

脳死により甲状腺ホルモンが低下すると、
心筋細胞のエネルギーが枯渇し、
ショックに至るという理論があります。

そのため欧米では、
脳死ドナーの前処置として甲状腺ホルモンの使用が、
経験的に行われています。
ただ、その根拠となるような、
精度の高い臨床データは乏しいのが実際です。

そこで今回の研究では、
アメリカの複数の専門施設において、
血行動態が不安定で心臓移植の候補となっている、
852例の脳死患者を、
脳死判定から24時間以内にくじ引きで2つの群に分けると、
一方は静注の甲状腺ホルモン製剤レボチロキシンを、
時間30μgで12時間以上継続し、
もう一方は生理食塩水を同様に投与して、
心臓移植の成功率を比較検証しています。

その結果、甲状腺ホルモンを使用してもしなくても、
その後の心臓移植の生着率には、
有意な差は認められませんでした。

脳死心臓移植における移植ドナーへの甲状腺ホルモンの使用は、
現時点で科学的根拠は明確なものではないと、
そう考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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