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「ゴールデンカムイ」(2024年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ゴールデンカムイ.jpg
アニメの「ゴールデンカムイ」が、
実写映画として今ロードショー公開されています。

原作は読んでいます。
コミック版は31巻で完結していますが、
今回の映画版は3巻目までの、
主に人物紹介のパートのみの実写化です。

それも少し先のエピソードを再構成して挿入した程度で、
後はほぼほぼ原作通りに、
全てのシーンを再現しています。

もう続編も撮っているようで、
ラストにはその紹介的なカットも入っています。

同じ山崎賢人さん主演の「キングダム」に近い構想ですが、
あちらはオープニングが割と綺麗に完結したエピソードだったので、
第一作から映画としてのまとまりがありましたが、
この作品は原作が割と串団子的な構成と言うのか、
小山を連ねて物語が進んで行くので、
個々のエピソードのみで映画にするには弱い、
という欠点があります。

脚本の黒岩勉さんは、
こうした原作物の構成には卓越した才があり、
トリッキーな展開も得意なので、
敢えて今回はプロローグのみの作品でじっくりキャラを描き、
続編で怒涛の展開に移行するのではないかと推測しています。

こうした先を見越した映画製作は、
以前はかなり難しかったと思うのですが、
この作品は製作にWowowが付いていて、
仮に続編が公開されない事態となったとしても、
それ以降は配信のドラマとして継続、
という選択肢が残っているので、
最初から長期の計画を立てやすかった、
という側面があるのかも知れません。

単独の映画としてはクライマックスが弱い感じがしますし、
もう少し映画ならではのスケール感が欲しいな、
と感じる部分はあるのですが、
キャストの好演や水準の高い絵作りを含めて、
堂々たる娯楽映画に仕上がっている点は、
映画館で鑑賞する価値は充分にある1本だと思います。

これ、西部劇なんですね。
それもマカロニウエスタンに近いテイストの、
和製ごった煮西部劇です。
そう考えると、
まあアイヌの人達はインディアンの役割ですし
(アイヌの人達とインディアンが同じという意味ではありません。
勿論違うのですが、西部劇という見立ての中では相似性がある、
という意味です)、
北海道の開拓と西部の開拓は重ね合わせられる部分があるでしょ。
そうした意味で、
海外の人にも受け入れられやすい素材だと思うのですね。
戦争帰りの風来坊というのも、
とても西部劇的な設定です。

製作陣も勿論そのことは理解していて、
世界での配収も想定しているように推測されます。

続編が非常に楽しみです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「TALK TO ME トーク・トゥ・ミー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
トークトゥーミー.jpg
これは年末に公開されたホラーで、
アメリカで大ヒットしたオーストラリア映画です。

謎の手の作り物を握って、
特定の言葉を発すると、
死者が一時的に憑依するという設定があって、
それが麻薬のように悪い学生の遊びで使われている、
というのが如何にも現代的な趣向です。

ある取り決めを守っていれば、
それほどの危険はないのですが、
こうしたお話の常で、
取り決めは破られてしまうので、
大変な事態が出来してしまいます。

格別新しいという感じはないのですが、
主役の女子高生が、
関わる人を不幸に巻き込む、
かなり強烈な「困ったちゃん」に設定されていて、
皆放っておけばいいのに構ってしまうので、
それでどんどん状況が悪化する、
という段取りがなかなか巧みに出来ていて、
オープニングは分かり難くてちょっとイライラしますが、
後は楽しく鑑賞することが出来ました。
95分という上映時間も手頃で、
それでいて短過ぎるという感じはありません。

少しどぎつい描写もあるので、
万人向けではありませんが、
こうしたジャンル物のお好きな方には、
観て損はない1本だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「サンクスギビング」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
サンクスギビング.jpg
イーライ・ロス監督による新作ホラー映画が、
2023年の年末から公開されています。

これは仮面を付けた殺人鬼によって、
アメリカの田舎町の住民が次々と殺されるという、
1980年代くらいに大流行した、
低予算ホラー映画をリスペクトしつつ、
現代に合わせてリニューアルした作品で、
これといった目新しさはないのですが、
平均点以上の仕上がりにはなっていて、
ホラー映画のファンには、
まずは楽しめる作品になっていたと思います。

こうした殺人鬼物は、
1978年の「ハロウィン」という作品が、
今思うとパイオニアで、
マスクを被った殺人鬼の正体が、
その素顔を含めて最後まで分からない、
ある意味人間かどうかすら分からない、
という点が、公開当時観た時には、
拍子抜けに感じてガッカリした覚えがあるのですが、
今思うとかなり画期的であったのです。
脅かしの技巧という点では、
続編の「ハロウィン2」が、
非常に完成度が高く、
今観ても見ごたえがあります。

1980年には有名な「13日の金曜日」が公開され、
その後シリーズ化されますが、
最初は仮面の殺人鬼は登場せず、
そのパターンが確立するのは3作目以降です。
この作品も仮面の殺人鬼の正体は基本的には不明なのですが、
実は影響された別の人物が犯人、
というような犯人捜しを交えた作品も含まれています。

今回の作品と最も似ている過去作としては、
1980年に「プロムナイト」というカナダ映画があって、
ちょっと青春映画的な切なさを持った作品でした。
過去の惨劇が現代の殺人のきっかけとなっている、という点、
仮面の殺人鬼の正体が最後には明かされると言う点、
ある関係性を持つ若者の集団が、
次々と復讐のために殺されると言う点など、
多くの共通点のある作品です。

今回の映画は殺人シーンのバリエーションに工夫があり、
犯人の設定は、
途中の段取りではかなり無理のある感じもするのですが、
もう続編の製作も決まったようですし、
ひょっとすると続編で、
その辺りが伏線として回収される可能性もあります。

悪趣味であることは間違いがないので、
好みは分かれると思いますが、
こうしたジャンル物のお好きな方には、
ホラーへの愛と情熱を感じられる良作として、
お薦めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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2023年に観た映画を振り返る [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは年末年始の休診期間中です。

今日は昨年観た映画を振り返ります。
昨年映画館で観た映画がこちらです。

1.かがみの孤城
2.イチケイのカラス
3.レジェンド&バタフライ
4.イニシェリン島の精霊
5.THE FIRST SLAM DUNK
6.アントマン&ワスプ クアントマニア
7.エンパイア・オブ・ライト
8. バビロン
9. #マンホール
10.ベネデッタ
11.エゴイスト
12.RRR
13.エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
14.ボーンズ アンド オール
15. シン・仮面ライダー
16.ケイコ 目を澄ませて
17.シャザム2
18. フェイブルマンズ
19.Winny
20.映画 ネメシス 黄金螺旋の謎
21.search #サーチ2
22.逆転のトライアングル
23.ロストケア
24.ヴィレッジ
25.TAR ター
26.最後まで行く
27.せかいのおきく
28.ザ・ホエール
29.ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
30. ザ・フラッシュ
31.M3GAN ミーガン
32.インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
33.岸辺露伴 ルーヴルへ行く
34.1秒先の彼
35.君たちはどう生きるか
36.ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE
37.Pearl パール
38.イノセンツ
39.ヴァチカンのエクソシスト
40. キングダム 運命の炎
41. クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
42. リボルバー・リリー
43. アステロイド・シティ
44. ブギーマン
45. スイート・マイホーム
46. バービー
47. 福田村事件
48. アリスとテレスのまぼろし工場
47. BAD LANDS バッド・ランズ
48. 栗の森のものがたり
49. キリエのうた
50. 月
51. キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
52. お前の罪を自白しろ
53. 愛にイナズマ
54. ゴジラ−1.0
55. ドミノ
56. 首
57. 怪物の木こり
58. 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
59. トーク・トゥ・ミー
60. ナポレオン
61. PERFECT DAYS
62. サンクスギビング
63. 枯れ葉

以上の63本です。
昨年も何かせわしなく、
何とか毎日を凌ぐという感じで過ごした1年でした。
かなり映画館に行ける時間は減りましたが、
昨年よりは多くの作品を観ています。

良かった5本を洋画と邦画とに分けて、
エントリーしてみます。
2023年に公開された新作に限っています。

それではまず洋画編です。

①ザ・ホエール
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-05-28-1
これは舞台劇の映画化ですが、
肥大した知性を持つ孤独な男が、
絶望した人生の最後に、
人生を踏み外した娘を救おうと格闘する物語で、
その伏線が張り巡らされた密度の高い作劇と、
ラストの盛り上がりが素晴らしく、
昨年最も興奮して観終えた1本でした。

②フェイブルマンズ
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-05-28-1
巨匠スピルバーグの自伝的映画という触れ込みですが、
両親との葛藤が非常にシリアスに描かれ、
その生々しさには驚かされましたし、
如何にもスピルバーグらしい映像技巧も盛沢山で、
まさに見応え満点の
巨匠の傑作の1つであることは間違いがないと思います。

③TAR ター
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-05-28-1
エリートの女性指揮者が、
学生へのパワハラを指摘されたことをきっかけとして、
その地位の全てを失うことになる、
今の時代の狂気を象徴するようなドラマで、
外連味たっぷりの作風は、
ちょっとアクどいという感じもするのですが、
ポランスキーの妄想恐怖映画を思わせるようなスタイルも魅力で、
ケイト・ブランシェットの演技も圧倒的でした。

④逆転のトライアングル
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-04-22
ヨーロッパの白人特有の恐怖を、
グロテスクに煽情的に描いた怪作で、
かなり悪趣味なので好みは分かれる映画ですが、
その追求の仕方は純ヨーロッパ的で魅力に溢れていました。
船上の嘔吐シーンには唖然とさせられましたね。

⑤キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-11-05-1
スコセッシ監督のもと、
デ・ニーロとディカプリオが共演した大作で、
アメリカ開拓時代の歴史の暗部を、
堂々たるタッチで描いた力作です。
ちょっと長過ぎる感じはあるのですが、
こういう映画をもっと観たいと、
心から思わされました。

それでは次は日本映画のベスト5です。
最近は日本における封切りの映画は、
良くも悪くも邦画が主体になっていますね。

①Winny
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-04-01
新鋭松本優作監督が、
ファイル共有ソフトWinnyの開発者が逮捕起訴され、
7年の裁判を戦った実話を、
極めて刺激的で感動的な社会派ドラマとして映画化した作品で、
その見事な構成力と取材の重み、
主演の東出昌大さんを初めとする役者陣の入魂の演技に、
今年一番の深い感銘を受けました。
事実の重みがリアルに感じられながら、
ノンフィクションではなく、
敢くまでフィクションの魅力にも溢れた力作でした。

②PERFECT DAYS
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2024-01-01-2
ヴェンダース監督が描いた、
東京を舞台にした人生スケッチで、
日本人には描けない切り口と映像表現が魅力です。
石川さゆりさんがバーのママ役で歌ったり、
田中泯さんが踊ったりと、
脇もある意味とても贅沢な布陣です。

③キリエのうた
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-10-22
岩井俊二さんの映画の中では、
個人的にはとても好きな1本です。
特に前半は大好きな「リップヴァンウィンクルの花嫁」
に似た奇談の雰囲気があって、
即興的な映像も音楽も最高でした。
現実感のない震災の描き方には、
納得のいかない部分はあるのですが、
長く心に残るとても愛しい作品でした。

④エゴイスト
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-03-26-1
ドキュメンタリー映画出身の松永大司監督が、
高山真さんの自伝的な小説を元にして、
特異な執着と愛の形を描いた、
感性豊かで刺激的劇映画を撮りました。
河瀨直美監督に近いアップのみを偏執狂的に連ねた演出は、
好みはかなり分かれるところですが、
主役の2人を演じた鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんが圧倒的で、
この2人の芝居と映像に酔う映画です。

⑤首
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-11-26
本当に心待ちにしていた北野武監督の時代劇映画で、
思っていた以上にぶっ飛んだカルト映画でした。
ちょっと石井輝男監督の残酷時代劇のような、
「悪趣味な爽快さ」があって、
一般受けは絶対にしませんが、
カルトとして長く語り継がれる怪作です。

今年はもう少し沢山の映画を観たいと思いますし、
また良い作品に出逢えればと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「PERFECT DAYS」 [映画]

あけましておめでとうございます。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは1月5日(金)まで、
年末年始の休診となっています。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
パーフェクトデイズ.jpg
ヴィム・ヴェンダース監督がメガホンを取り、
役所広司さんが主役を演じた映画が、
今ロードショー公開されています。

これは「THE TOKYO TOILET プロジェクト」から始まった、
特殊な成り立ちによる映画で、
お金を掛けた贅沢公共トイレの宣伝映画と考えると、
少しモヤモヤする感じもあるのですが、
商業映画では成立しなかったであろう企画で、
間違いなく一流の藝術家が顔を揃えて、
自由な創作が行われたと考えると、
ある意味商業主義以前の藝術映画に近いものかも知れません。

これで作品が詰まらなければ意味がないのですが、
出来上がった映画は、
さすがヴェンダース、さすが役所広司という感じがあって、
日本の風景をそのままに切り取りながら、
絶対に日本映画の監督には、
成し得ない映像となっていました。

作品内では明確には説明されない事情があって、
熟年で1人暮らしの生活をしている、
トイレ清掃を生業としている主人公を、
役所広司さんが演じ、
その生活を淡々と綴りながら、
そこに生じた幾つかの揺らぎのようなものを、
もう滅びつつある東京の景色と共に描いています。

ジャームッシュの傑作「パターソン」に近い雰囲気があって、
あちらもバス運転手の日常のルーティンを、
淡々と描いているのですが、
こちらも毎日の生活のルーティンを描きつつ、
相棒の清掃作業員に我儘を言われたり、突然退職されたり、
家出した姪の少女が現れて、
定位置の寝る場所を奪われたり、
毎週行く馴染のスナックのママの、
裏の顔を見てしまったりと、
その生活のルーティンが、
修正を余儀なくされる出来事を描きつつ、
その揺らぎも生活の中に吸い込まれて行く、
人生の不思議を描きます。

「パターソン」ではとても些細なことでありながら、
主人公の人生に大きな影響を与える出来事が、
唐突に起こるのですが、
この作品ではそこまでショッキングな出来事は起こりません。
そこが若干の物足りなさを感じさせるのですが、
その代わり主人公の日々のルーティンは、
より端正で美しく磨かれているという感じがしますし、
そのルーティンを揺らがせる出来事は、
より計算され複層的に構成されています。

そんな訳で勿論違和感や不満はあるのですが、
海外監督による日本映画の力作として、
特にヴェンダース監督のファンであれば、
必見の作品であることは間違いがないと思います。

個人的には嫌だなと思う毎朝のルーティンを、
この映画を観てからは、
映画の主人公のつもりでこなすようになり、
少しだけ嫌だと思わなくて済むようになっています。
結構そうした影響力のある作品なのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ナポレオン」(リドリー・スコット監督) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ナポレオン.jpg
リドリー・スコット監督がアップルなどの資本で、
ナポレオンの生涯を描いた大作映画を作りました。

こうした歴史大作は大好物なのですが、
日本ではあまり人気はないようで、
もう終わりそうであったので、
取り敢えずウィキペディアなどで歴史のおさらいはしつつ、
急いで映画館に出掛けました。

サイレント時代に「ナポレオン」という大作映画があって、
多分それを意識して、
リドリー・スコット監督は自分なりのアレンジで、
その世界を再現したかったのではないか、
というように感じました。

正直内容はあまりないのですね。
ドラマとして辛うじて描かれているのは、
ナポレオンとジョゼフィーヌの愛憎のみで、
それ以外は歴史的な時間をなぞっているだけです。

ただ、そのビジュアルはなかなか美しくて、
豪華な歴史紙芝居として、
かなり完成度の高い世界を楽しむことが出来ます。

格調の高い構図の作り方や壮大な合戦シーンの数々、
その空気感のようなものは、
さすがリドリー・スコット監督、
という感じが間違いなくあります。

確かにもう少しドラマ的なものがないと、
映画としては成立していないのですが、
これは80歳を超えたリドリー・スコット監督の「老人映画」だと思うので、
巨匠の見た夢の映画の世界を、
その夢想を追体験するような気持ちで観るのが吉で、
それ以上をこの映画に求めるのは、
正しい見方ではないように個人的には思いました。

従って、
人間ドラマを観たい、
感動したり泣いたりしたい、という方には、
あまりというか、全く向いていない映画で、
敢くまでリドリー・スコット監督の美的センスで、
ワーテルローの戦いやモスクワ炎上、
アウステルリッツの戦いやエジプト遠征などが、
見事に立体化しているその見事さを大スクリーンで味わうのが、
この映画の見どころであり、
かつその全てであることを理解した上で、
それで満足出来る方のみに、
至福の時間を約束してくれる映画です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
鬼太郎誕生.jpg
ゲゲゲの鬼太郎の出自を描いた、
アニメ映画が今公開されています。

これは鬼太郎のシリーズ物というより、
独立した完成度の高い長編アニメ映画で、
言ってみれば、
テレビシリーズと、
「ルパン三世 カリオストロの城」の関係のような感じです。
鬼太郎のフォーマットを使いつつ、
作り手はシリーズとはテイストの違う、
独立した世界観で物語を紡いでいます。

舞台は昭和35年に設定され、
露骨に映画版の「犬神家の一族」を模倣した枠組みで開始されますが、
そこからは多くの別個の世界観を取り込みつつ、
おそらく作り手が好きな物を全て投げ込んで、
一種の「全体映画」的な、
ロマンチックで奇怪でアニメ的で文学的でもある世界が構築されます。
人間以外の世界の終焉を描くと言う意味では、
「もののけ姫」的な感じも少しありますし、
ラストに登場する悪党には、
「ルパン三世 ルパンVS複製人間」の面影があります。
以上どの映画も大好物なので、
とても楽しく観ることが出来ました。

世界観はちょっと微妙で、
何でもかんでも古い因習のせいにするのもなあ、
という気もします。
ただ、そこは作り手としては、
善悪の境を明確にした作品を作りたかったのだろうなあ、
という気はするので、
キャラクター物である以上、
仕方のないことなのだと思います。

映像は極めて美しく、
手描きとCGのバランスも、
如何にも日本アニメという感じの精緻さです。

確かに凡百の実写映画より数段レベルが高いことは間違いがなく、
今後いよいよ実写映画の肩身は狭い時代になりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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北野武監督「首」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日ですが、
午前中は区民健診の当番日なので、
健診の診療は行う予定です。

日曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
首.jpg
一時はお蔵入りの可能性もあった、
北野武監督の新作時代劇「首」が、
今ロードショー公開されています。

これはもうとても楽しみで、
公開初日に映画館に出掛けました。

ザックリの感想としては、
思っていたよりも数段良かったです。

これね、黒澤明監督なら「影武者」、
大島渚監督なら「御法度」みたいな作品ですね。
どちらもその監督ならではの個性の横溢したカルトで、
ただ、その監督の代表作という訳ではなくて、
「老いたり」という感じもあるんだけど、
それでも監督でないと絶対に撮れない、
という感じの絵があって、
捨てがたい魅力のある映画です。

「影武者」も物凄い悪口を、
公開の時は言われたんですね。
悪口を言うことが、知識人のたしなみ、というような感じ。
でも、監督の本当のファンなら、
そう悪く言えるような作品ではないですよ。
完成度は確かに低くて、
その点で幾らでも悪くは言えるのですが、
間違いなくカルトの魅力に溢れていました。

「御法度」も同じで、
大島監督老いたり、という感じは勿論あるのですが、
ラストの尋常ならざる感じは、
大島監督作品の中でも白眉の1つと、
そう感じさせるものがありました。

今回の映画は、
予告だけ見ると、
「ああ、戦国時代で『アウトレイジ』をやるだけのことね」
みたいに思いますよね。

でもそうではないんですね。
「座頭市」で、
ちょっとシュールでスタイリッシュな時代劇をやったのですが、
あまり成功ではなかったですよね。
多分ちょっと気負い過ぎたのではないかと思うのですね。
それで今回はもっと肩の力を抜いた感じで、
監督が面白いと思う時代劇の要素を、
ともかく全部叩き込んだような1本になっているんですね。
「アウトレイジ」もあるけれど、それは部分的なもので、
「影武者」と「乱」の黒澤後期時代劇の世界もあるし、
泥の中の殺陣は「七人の侍」のオマージュですね。
「ガルシアの首」のペキンパーも出て来るし、
大島渚監督の切腹描写と男色描写もあるでしょ。
途中で忍びの里の異界が出現すると、
かつての東映時代劇を、
深作監督が再構築した忍者映画みたいなタッチもあるし、
石井輝男監督の残酷時代劇みたいな部分もありますよね。
また石井岳龍さんの大傑作「パンク侍、斬られて候」を、
彷彿とさせる破天荒さもありました。

間違いなく北野映画で一番の大作だと思いますが、
合戦描写もきちんとやっていて、
掛けたお金が無駄になっていないですよね。
特に大抵ナレーションでしか説明されない山崎の戦いが、
しっかりと描写されていたのは感心しました。
その一方で監督悪ノリの不真面目なアドリブ合戦もあって、
それがキチンと作品の流れを邪魔していないのが、
さすがと思います。

かなり出鱈目で、完成度の高い映画ではないのです。
でも、間違いなくカルトとして残る1本だと思います。
VFXの質も高くて、
題名の通り、ワンカットで人間の首が、
ビュンビュンと飛ぶのですが、
不謹慎ですがワクワクするような魅力がありました。

キャストは皆好演ですが、
特に準主役で狂言回し的な役柄を演じた木村祐一さんが、
元忍びで語り芸の新境地を開いた芸人という役柄を、
巧みに描いて作品に1本の筋を通しているのが、
見応えがありました。

そんな訳で北野映画のファンは勿論必見ですが、
かつての娯楽映画の好きな方には、
シネフィルとしての北野監督が、
そうした映画愛をおもちゃ箱的に表現した、
稚気溢れるカルト映画として、
あまり過度な期待はせずに足を運んで頂きたいと思います。

僕は大好きですが、
この映画を絶賛する人も、
罵倒する人も、
おそらく何等かのバイアスからの感想と思って、
それに惑わされずにご覧頂きたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ドミノ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ドミノ.jpg
ロバート・ロドリゲス監督の新作SFアクション映画が、
ベン・アフレックの主演で今公開されています。

仮想現実を操る男との対決とか、
予想外のどんでん返しの連続、
みたいな煽りがあったので、
そうした仕掛けのあるお話は大好きなので、
それでも、まあそれほどの期待はせずに出掛けました。

結果は、
控え目な予想を更に裏切る、
相当ショボい映画で、
要するに低予算のB級映画なんですね。

「インセプション」や「ドクターストレンジ」みたいな、
空間が無限ループみたいに歪む映像が予告編にあったのですが、
実際には殆どそんな場面はなくて、
予告編に使われたものでほぼ全て、
という感じでした。
それもきちんとCG使っている感じではなくて、
映像パネルの前で演技して胡麻化した、
という感じのビジュアルでした。

内容も何を今更、というような、
相当お寒い感じで、
まあ「メメント」と「マトリックス」をミックスしたような話なのですが、
「メメント」のような知的スリルは微塵もなく、
「マトリックス」の100分の1以下くらいのスケール感でした。

1時間33分という上演時間は手頃で、
ちょっと時間が空いた時に観られるのは良いのですが、
その短さは納得という内容の貧弱さで、
配信でこれはもう充分かな、
そもそも映画館で公開するつもりで製作したのかしら、
と疑問に思うような作品でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ゴジラ−1.0」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ゴジラ-1.jpg
山崎貴監督によるゴジラの新作映画が、
今公開されています。

怪獣映画は大好きなので期待して出掛けました。

内容は微妙なところで、
これは「永遠のゼロ」と「ゴジラ」のミックス、
というような作品なんですね。

うーん、それだと結構好き嫌いが分かれてしまうと思うんですね。
正直観たいのは純粋な怪獣映画なので、
勿論そんなものは存在しない、
と言われればそれまでなのですが、
文芸映画と怪獣映画をミックスするとしても、
あまり特攻の生き残りみたいな設定は、
よろしくなかったように思えてなりません。

戦争映画と怪獣映画は基本的に別物だと思うのですね。
同じような兵器や戦いが登場するとしても、
それは別物で、
戦争は現実であって、
そこには思想性や社会性が、
当然の如く付き纏っている訳ですが、
そこから自由に解き放たれた状態で、
「怪獣との闘い」を純粋に娯楽として楽しめる、
というのが怪獣映画のメリットではないのでしょうか?

要するに戦争映画からそれ以外の要素をはぎ取って、
純粋に娯楽にしたのが、
怪獣映画という考え方です。

そこに戦争の要素、特に特攻などの要素を入れてしまうと、
これはもう本末転倒と言うか、
戦争映画として観ざるを得なくなってしまうので、
それはまずかったように個人的には感じました。

怪獣映画としては非常に優れていて、
色々なパニック映画のパターンを総ざらいしているんですね。
オープニングのゴジラ登場は、
ハリウッドゴジラ的テイストですし、
海で小舟と戦うところは、
これは「ジョーズ」そのものですよね。
原作のオマージュ的銀座壊滅を経て、
ラストの崩壊シーンは「鬼滅の刃」の鬼のテイストでした。

頑張っているのは分かるだけに、
どうして戦争映画にしてしまったのかな、と、
それだけが悔やまれる「怪獣映画」でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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