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高齢者が接種するワクチンの認知症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン接種と認知症リスク.jpg
Journal of Alzheimer's Disease誌に2023年8月7日掲載された、
成人が接種するワクチンの、
認知症リスクとの関連についての論文です。

アルツハイマー型認知症の病因については、
色々な仮説がありますが、
その1つとして細菌やウイルス、真菌などによる感染症が、
脳神経系組織の炎症を来し、
それが発症の誘因となっているのではないか、
という考え方があります。

実際に複数の感染症の罹患歴と、
アルツハイマー型認知症の発症との間に、
一定の関連があったとする報告もあります。

仮に感染症が認知症の誘因であるとすると、
感染を予防することが認知症の予防にも繋がる可能性があります。

それでは現行高齢者に推奨されているワクチンの接種に、
認知症の予防効果はあるのでしょうか?

今回の検証はアメリカの医療データを活用して、
アメリカで高齢者に推奨されている、
3種類のワクチンの接種と、
その後の認知症発症リスクとの関連を比較検証しているものです。

その対象となっているワクチンは、
Td(破傷風とジフテリアの2種混合)と、
Tdap(破傷風、ジフテリア、百日咳の3種混合)ワクチン、
帯状疱疹予防ワクチン、
肺炎球菌ワクチンの3種類です。

登録の時点で65歳以上で、
過去2年間に認知症と診断されていない、
トータル1651991人のデータを解析したところ、
2種混合もしくは3種混合ワクチンの接種は、
その後のアルツハイマー型認知症のリスクを、
30%(95%CI:0.68から0.72)、
帯状疱疹予防ワクチンの接種は、
25%(95%CI:0.73から0.76)、
肺炎球菌ワクチンの接種は、
27%(95%CI:0.71から0.74)、
それぞれ有意に低下させていました。

こうしたワクチンを接種している高齢者は、
他の健康リスクにも敏感で、
健康への意識も高いと想定されるため、
そうしたバイアスの影響も考えられますが、
複数のワクチンに同等の認知症予防効果があるとする、
今回のデータは非常に興味深く、
今後のより詳細な検証にも期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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