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進行心不全における心房細動アブレーション治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
末期心不全におけるアブレーションの有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年8月27日付で掲載された、
進行した心不全の状態にある心房細動の患者さんに対する、
アブレーション治療の有効性についての論文です。

心房細動というのは、
心臓の心房という部位が不規則に収縮する不整脈で、
脳梗塞や心不全のリスクとなることで知られています。

心房細動の治療の第一選択は、
心臓にカテーテルを入れて、
不整脈の原因となっている部位を焼却する、
カテーテルアブレーションと呼ばれる治療です。

ただ、心臓の機能が診断の時点で高度に低下している、
進行心不全の状態にあると、
その時点でのアブレーション治療が、
患者さんの予後の改善に結び付くかどうかは明らかではありません。

通常の臨床試験においては、
そうした患者さんは除外されていますし、
心機能が高度に低下している患者さんでは、
全身状態が治療により改善するかどうかを、
推測することは難しいと思います。
またそうした患者さんは全身状態も悪いことが多く、
アブレーション治療の合併症などのリスクも、
高くなることが想定されます。

今回の臨床試験においては、
ドイツの単独施設において、
左室機能の指標である駆出率が35%以下に低下し、
臨床的な心不全の指標であるNYHA分類でも、
クラスⅡ以上(日常的な動作でも息切れなどの症状がある)の、
心房細動を伴う進行心不全の患者さんを、
くじ引きで97名ずつの2つの群に分けると、
一方は登録20日以内にカテーテルアブレーション治療を施行し、
もう一方は標準的な心不全の治療のみを施行して、
その経過を比較検証しています。

試験は3年の観察の予定でしたが、
1年の時点で明確な差が認められたため、
早期で終了となっています。

登録後1年の時点で、
総死亡と人工心臓や心臓移植の施行を併せたリスクは、
通常治療群では30%に発生したのに対して、
アブレーション施行群では8%に留まっていて、
アブレーションの施行は総死亡などのリスクを、
76%(95%CI:0.11から0.52)有意に低下させていました。
処置関連の合併症はアブレーション群で3例に認められました。

今回の検証においては、
進行心不全の患者さんにおいても、
アブレーション治療の明確な有効性が確認されていて、
単独施設の結果であるなど、
今後検証が必要なデータではありますが、
アブレーション治療の適応については、
今後議論が進むことになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。


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