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高齢者の座位時間と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
座位時間と認知症リスク.jpg
JAMA誌に2023年9月12日付で掲載された、
高齢者の座っている時間の長さと、
認知症リスクとの関連についての論文です。

1日の多くの時間を座って過ごすことが、
総死亡のリスクの増加や、
糖尿病や癌や心血管疾患のリスクの増加に繋がることが、
多くの疫学データにおいて示されています。

つまり、座る時間が長いほど、
健康には悪影響を与えることになるのです。

心血管疾患のリスクと認知症リスクとの間には関連があり、
その点から考えると、
高齢者が座っている時間が長いことも、
認知症のリスクになると想定されます。

しかし、実際には座位時間と認知症リスクとの関連は、
それほど明確に証明されている事項ではありません。

今回の研究は大規模な健康情報や遺伝情報を収集している、
UKバイオバンクの住民データを活用して、
ウェアラブル端末の加速度計で正確に測定された、
座位時間とその後の認知症リスクとの関連を検証しています。

対象は登録の時点で認知症のない、
年齢60歳以上の49841名で、
1週間のデータから座位時間の計測を施行し、
その後の認知症の発症との関連を検証しています。
平均観察期間は6.72年です。

その結果、
1日の平均座位活動時間9.27時間に対して、
1日10時間の座位時間では、
認知症リスクは1.08倍(95%CI:1.04から1.12)、
1日12時間では1.63倍(95%CI:1.35から1.97)、
1日15時間では3.21倍(95%CI:2.05から5.04)となっていました。
つまり、座位時間が平均より長くなるに従って、
認知症リスクは明確に増加している、
という結果です。

今回のデータからは座位時間の長さが、
認知症の原因であるとは言い切れず、
認知症の症状として意欲低下などがあることを考えると、
ごく初期の認知症症状に伴う座時時間の延長が、
こうした現象として表れているという可能性もあります。

従って、この問題についてはより詳細な検証が、
今後必要と考えられますが、
座位時間が年齢と共に長くなることは、
色々な意味で健康リスクとなることは間違いがなく、
その対策は健康維持の面で、
大きな課題であることは間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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