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非ステロイド系消炎鎮痛剤と経口避妊薬併用の血栓症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
経口避妊薬の血栓リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年9月6日付で掲載された、
経口避妊薬と非ステロイド系消炎鎮痛剤の、
血栓症リスクについての論文です。

日本では専ら低用量ピルが使用されている経口避妊薬は、
基本的には安全性の高い薬ですが、
深部静脈血栓症や肺塞栓症などの、
静脈血栓症のリスクがあることは知られています。
そのため血栓症の傾向やリスクがないかどうかを、
検査しながら使用する必要があります。

非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
プロスタグランジンなどの炎症物質を抑えることで、
解熱と鎮痛の効果のある薬剤で、
解熱剤や痛み止めとして広く使用されています。
ロキソニンやボルタレンはその代表です。

この非ステロイド系消炎鎮痛剤も安全性の高い薬ですが、
経口避妊薬と同様に、
若干ながら静脈血栓症や肺塞栓症の、
リスクを高めることが知られています。

生理のある女性では、
経口避妊薬と非ステロイド系消炎鎮痛剤を、
併用するケースは多いと考えられますが、
併用した場合にどの程度血栓症のリスクが高まるかについては、
これまであまり正確なデータ存在していませんでした。

今回の研究はデンマークにおいて、
15から49歳の女性2029065名を対象とし、
経口避妊薬と非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用と、
静脈血栓症のリスクとの関連を検証しているものです。

非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用していない女性と比較して、
使用歴のある女性は、
深部静脈血栓症と肺塞栓症を併せたリスクが、
経口避妊薬の併用のない場合でも7.2倍(95%CI:6.0から8.5)、
有意に増加していましたが、
高リスクの経口避妊薬使用者では、
11.0倍(95%CI:9.6から12.6)とより高い増加を認めていました。
中リスクの経口避妊薬の併用でも、
血栓症リスクは7.9倍(95%CI:5.9から10.6)と、
非ステロイド系消炎鎮痛剤単独より増加する傾向を示しましたが、
低リスク(日本で使用されている低用量ピルは多くがこの区分)
の経口避妊薬の併用では、
血栓症リスクは4.5倍(95%CI:2.6から8.1)の増加に留まっていました。

非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用していない場合と比較して、
使用開始後1週間における血栓症の発生は、
10万人当たり4件(3から5)増えると推計され、
高リスク経口避妊薬併用群では23件(19から27)、
中リスク経口避妊薬併用群では11件(7から15)、
そして低リスク避妊薬併用群では3件(0から5)、
更に多くなると推計されました。

このように経口避妊薬を使用している患者さんでは、
一時的な非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用により、
血栓症のリスクは増加していて、
特に高用量のホルモン剤を含む製剤の使用において、
そのリスク増加は顕著に認められました。

今回のデータは痛み止めの30錠のパッケージをいつ購入したか、
という処方データを元にしているものなので、
厳密にその使用が確認されている訳ではない、
という点には注意が必要ですが、
経口避妊薬と痛み止めの併用は血栓症のリスクを高めるという情報は、
もっと周知される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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