SSブログ

少量の飲酒習慣による健康効果のメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコールによる心血管疾患リスク低下のメカニズム.jpg
Journal of the American College of Cardiology誌に、
2023年6月付で掲載された、
少量の飲酒習慣の健康効果のメカニズムについての論文です。

少量の飲酒は、
狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患のリスクを、
低下させると考えられています。

その代表的な知見はNew England…誌のこちらの論文です。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejm199712113372401

一時は1日日本酒1合程度の飲酒習慣は、
トータルに健康に良い、とする見解もありましたが、
その後の多くの疫学データがの解析からは、
少量の飲酒でも一部の癌の増加などのリスクはあり、
飲酒は健康面からは推奨されない、
というのが一般的な見解となっています。

ただ、それでも心血管疾患のリスクのみについて見ると、
少量の飲酒習慣にその予防的効果のあること自体は、
否定はされていません。

何故少量飲酒にそのような健康効果があるのでしょうか?

今回の研究はアメリカ、マサチューセッツ州の、
13の病院を擁する大規模医療システムである、
Mass General Bringhamの利用者の医療データを活用して、
飲酒習慣と心血管疾患リスクとの関連を検証、
一部の利用者では脳のPET検査が施行されていて、
その結果との関連も検証されています。

年齢の中間値が60歳で、60%が女性の、
トータル53064名の健康データを解析したところ、
飲酒習慣のない利用者と比較して、
平均で毎日日本酒1合(アルコール量20グラム)以内の飲酒習慣のある利用者は、
狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や心不全などの虚血性心疾患のリスクが、
約22%(HR:0.786: 95%CI;0.717から0.862)有意に低下していました。

ここで脳のPET解析の結果と比較すると、
脳内のストレス関連神経ネットワークの活性が、
少量飲酒習慣のある利用者で有意に低下していました。
多変量解析の結果として、
そのストレス関連の反応の低下と、
心血管疾患リスクの低下との間に、
一定の関連のある可能性が示唆されました。

つまり、少量の飲酒習慣のある人では、
脳がストレスを感じにくい傾向があり、
それが心血管疾患のリスク低下に繋がっている可能性ある、
という結果です。

今回のデータのみからそうした結論を引き出すのは、
やや強引な感じはしますが、
アルコールそのものが心血管疾患に予防的とは考えにくく、
以前ご紹介したような、
一部のアルコール飲料に含まれるポリフェノールの効果や、
今回指摘された飲酒のリラックス効果などが、
少量飲酒の健康効果の、
メカニズムの候補として挙げられていることは、
確認しておく必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)