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新型コロナが無症状で終わる体質 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診ですが、
少し更新出来ない日もあったので医療の話題です。

今日はこちら。
新型コロナにならない体質.jpg
Nature誌に2023年7月19日付で掲載された、
新型コロナの免疫についての論文です。

新型コロナの流行が再拡大しています。

診療している日に関しては、
毎日発熱外来を施行していますが、
熱や咽頭痛のある患者さんで大人の場合、
ほぼほぼ全員が新型コロナと言っても間違いではない、
というような状態です。

そこで時々聞かれる質問が、
「家族で全員が感染しているのに、
私だけ全く症状が出ないのはどうしてでしょうか?」
というものです。

お聞きするとこれまでに数回、
家族が新型コロナに罹っていて、
その度に検査をすると陽性の結果になるのですが、
家族で1人だけ、
その人だけいつも無症状だ、と言うのです。

たまたま免疫があったから、
という説明は出来ます。

しかし、それだと家族の他の人には、
何故同じ現象が起こらないのか、
という点が説明出来ません。

それは「たまたまですね」と言うしかないのです。

もう1つの説明は、
「新型コロナに罹っても、症状が出ない体質、
というものがあるのではないか」
というものです。

こうした質問をごく最近にも受けていて、
「それは確かにそうしたものがあるのかも知れません。
ただ、それがどういうものかは分かっていないと思います」
というお答えをしました。

その時には上記の論文はまだ読んでいなかったので、
「ああ先に読んでいたら、
もう少し説得力のある説明が出来たのに…」
と後悔しました。

上記文献の記載によれば、
新型コロナ感染者の20%は無症状であるようです。

その原因を明らかにする目的で、
今回の研究では、
ワクチン接種歴がなく新型コロナに感染した、
トータル1428名の血液データを解析して、
免疫の個人差の指標として使用されることの多い、
HLA(ヒト白血球抗原)のタイプと、
新型コロナの症状の有無との関連を検証しています。

その結果、
HLA-B*15:01というHLAのタイプと、
新型コロナの無症状感染との間に最も強い関連が認められ、
このタイプの保有率は、
有症状感染者と比較して無症状感染者では2.38倍、
有意に増加していました。
このタイプを持つ患者の免疫反応を解析したところ、
新型コロナ以外の以前から存在しているコロナウイルスに対する免疫が、
交差免疫として新型コロナの予防にも、
有効に働いている可能性が示唆されました。

つまり、
HLA-B*15:01というHLAのタイプを有していると、
それまでのコロナウイルスに対する免疫が、
新型コロナに対しても有効に作用して、
感染しても無症状に終わる可能性が高い、
という結果です。

この結果は新型コロナが、
無症状に終わるという体質について、
一定の説明を提示したという点で意義のあるものですが、
そうした傾向もあるというレベルのもので、
その全てが説明された、というものではありません。
こうした現象は他の感染症にも通じる性質のものなので、
今後の更なる知見の積み重ねに、
期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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