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人工甘味料の健康リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
人工甘味料の体重への影響.jpg
CMAJ誌に2017年7月17日付で掲載された、
人工甘味料の健康影響についてのメタ解析の論文です。

ゼロカロリーのダイエット飲料の、
身体への影響については様々な意見があります。
その一部は以前何度か記事にもしましたし、
本にも書きました。

最近ではWHOに属する国際癌研究機関(IARC)が、
人工甘味料として広く使用されているアスパルテームに、
発癌性が否定出来ないとする、
安全性の検証結果を公表して報道もされました。

ただ、これは区分のグループ2Bという、
「人に対して発癌性のある可能性がある」という括りのもので、
4種類ある発癌性区分の下から2番目のものです。
同様の区分の中には300種類以上の物質が含まれていて、
漬物なども一緒に入っています。

従って、改めて過剰な使用に注意喚起したという側面はあるものの、
危険をあまり煽るような報道は、
適切ではないように思います。

今日はこの人工甘味料の様々なリスクについて、
まとめておきたいと思います。

人工甘味料は、
高価な砂糖の代用として開発された、
サッカリンがその始まりで、
その後アミノ酸の一種であるアスパルテームや、
スクラロースなど、
多くの「代用砂糖」が開発されました。

これはそもそもは高価な砂糖の代用品として、
商品価格を下げることが目的で、
サッカリンと言えば安かろう悪かろうという、
どちらかと言えば悪いイメージしかなかったのですが、
カロリーのないことを逆手に取って、
ダイエット目的や健康に良いというイメージで、
急速に普及することになったのです。

サッカリンには発癌性の危惧があって、
今でも使用はされていますが、
その後開発されたアスパルテームやスクラロースの方が、
今では主に使用されています。
普及しているダイエットコーラでも、
使用されているのはアスパルテームやスクラロースが主です。

砂糖の入っているコーラを飲んでいた人が、
それを人工甘味料の入ったダイエットコーラに変えれば、
摂取カロリーは減り、
特に肥満の方や糖尿病の傾向のあるような方では、
より健康にメリットがあるように、
普通に考えればそう思えます。

しかし、人工甘味料の使用により、
体重が減少して血糖コントロールにも良い影響が見られた、
という臨床データがある一方で、
むしろ体重が増加して糖尿病の発症リスクも増加した、
というような相反するデータも得られています。

人工甘味料が舌の甘味受容体に結合することにより、
身体が反応してインスリンを分泌し、
それが空腹感を増強するため、
結果として過食が誘発されるのでは、
という仮説があります。

今回の研究は論文発表の時点までの、
7つの介入試験データと30の疫学研究データを、
まとめて解析したメタ解析です。

介入試験に含まれる1003名のデータをまとめて解析したところ、
人工甘味料の使用は、
体格の指標であるBMIに明確な影響を与えていませんでした。
要するに、
ダイエットに対して有効でも無効でもない、という結果です。

一方で疫学研究に含まれる、
405907名のデータをまとめて解析した結果では、
人工甘味料の使用は若干のBMIの増加と関連が認められました。
また複数の疫学データにおいて、
人工甘味料による肥満や糖尿病、心血管疾患リスクの増加が認められました。

このように、
人工甘味料は健康に無害とは言えず、
そのリスクはいずれも軽微なものではあるので、
必要以上に忌避する必要はありませんが、
そのダイエット目的などの過剰な使用は、
慎重に考える必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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