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高齢者の脳卒中予防における低用量アスピリンの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの脳卒中予防効果.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年7月26日付で掲載された、
アスピリンの脳卒中予防としての有効性についての論文です。

1日80から100mg程度のアスピリンを継続的に飲むことに、
心血管疾患や腺癌というタイプの癌の、
予防効果のあることは、
多くの疫学データや精度の高い臨床試験においても、
実証されている事実です。

ただ、その一方でアスピリンには出血系の合併症があり、
使用を継続することで、
消化管出血や脳出血などのリスクは増加します。

従って、アスピリンを服用することが、
その人にとって有益であるかどうかは、
その作用と有害事象とのバランスに掛かっています。

その有効性は一度そうした病気になった人の、
再発予防効果としては確立されていますが、
まだ病気にはなっていない場合の、
一次予防効果については、
どのような対象者を選ぶかによっても、
その結果は様々で統一した見解とはなっていません。

心血管疾患の中でも虚血性心疾患については、
比較的アスピリンの予防効果が実証されていますが、
脳卒中についてはそれほど明確なことが分かっていません。
特に脳卒中のリスクの高い70歳以上の高齢者については、
臨床試験の対象からは外されていることが多く、
信頼のおけるデータは限られています。

今回の研究は高齢者を対象として、
低用量アスピリンの一次予防効果を検証した、
ASPREEという臨床試験の二次解析ですが、
アスピリン使用による個々の脳卒中の予防効果と、
出血系合併症のリスクとを検証したものです。

対象は心血管疾患の既往のない、
70歳以上の19114名で、
観察期間の中央値は4.7年です。

その結果、
虚血性梗塞と脳内出血のいずれのリスクも、
アスピリン使用により有意な低下は示しませんでした。
一方で頭蓋内出血のリスクは、
アスピリン使用群において、
1.38倍(95%CI:1.03から1.84)有意に増加していました。

このように、
今回の70歳以上の年齢層における検証では、
一次予防としての脳卒中予防における、
低用量のアスピリンの継続使用は、
出血リスクを増加させる一方で明確な予防効果を確認出来ませんでした。

虚血性心疾患についての同様の検証も併せて考えると、
少なくとも高齢者における一次予防としての低用量アスピリンの使用は、
トータルにあまり推奨はされない、
という流れになりそうです。

一時は万能薬のようにもてはやされたアスピリンですが、
その評価はかなり変わって来ているようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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