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コーヒーの覚醒効果のメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日ですが、
夏季の休診期間のため休診です。
ご迷惑をお掛けしますがご了承下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーとDMN.jpg
Frontiers in Behavioral Neuroscience誌に、
2023年6月28日付で掲載された、
コーヒーの脳内作用のメカニズムについての論文です。

コーヒーには生命予後の改善や、
心血管疾患リスクの低下、
糖尿病や肝疾患の予防など、
多くの健康効果が、
世界中の大規模な疫学データの蓄積により確認されています。

ただ、そのメカニズムについては、
不明な点が多く、
まだ実証されているとは言えません。

そうした健康効果以外に、
コーヒーを飲むことで、
寝不足で疲れている時などに、
眠気が取れ、集中力が増して、
疲労感も軽減すると、
コーヒーを好む多くの人が感じていて、
その目的のためにコーヒーを飲んでいます。

こうした効果は、
果たして客観的事実としてあるものなのでしょうか?

コーヒーの覚醒作用の一部は、
交感神経を刺激するカフェインの効果として、
説明することが可能です。

ただ、コーヒーには多くの生理活性物質が含まれており、
カフェインのみを飲んだ場合と、
コーヒーを飲んだ場合とで、
どれだけの覚醒作用の違いが生じるのか、
という点については、
あまり明確なことが分かっていません。

今回の研究では、
ポルトガルの単一施設において、
機能性MRIを用いることにより、
47名の被験者の、
1杯のコーヒーを飲んだ場合に脳に起こる変化と、
別の36名の被験者の、
1杯のコーヒーに含まれるのと同量の、
カフェインのみを含有した水を飲んだ時に起こる変化を、
比較検証しています。

最近覚醒状態の指標として、
注目されているのが、
デフォルトモードネットワーク(DMN)という概念です。

これはそもそも1990年代に、
脳がある課題を解いている時、
つまり、意識が覚醒して集中している時には、
その活動や連携が低下していて、
脳が集中せずぼんやりしている時に活動性が高くなる、
幾つかの脳領域の連携(ネットワーク)として同定されたものです。

今回の研究において、
コーヒーを飲んでも、
そこに含有されるカフェインのみを飲んでも、
その後デフォルトモードネットワークの活動性は低下し、
脳は覚醒状態になったと判断されました。

一方でコーヒーを飲んだ時には、
視覚や実行機能など、
より集中して課題に取り組む時などに活動する部位が活性化し、
集中力の高まった状態となりましたが、
カフェインのみの飲用では、
そうした脳の変化は確認されませんでした。

このように、
コーヒーの覚醒作用はその一部はカフェインで説明可能ですが、
全てが説明出来るという訳ではなく、
今後カフェイン以外の有効成分でも同様の解析を行うなどして、
検証する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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