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脂肪分解に働くサイトカインについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
IL-15の脂肪融解作用.jpg
Am J Physiol Endocrinol Metab誌に、
2015年4月28日付で掲載された、
IL-15(インターロイキン15)という興味深いサイトカインについての論文です。

運動に脂肪を分解させる効果のあることは、
運動の健康効果としてほぼ確立されている事項ですが、
そのメカニズムにはまだ不明の点が残っています。

サイトカインというのは、
細胞から分泌される生理活性物質の総称ですが、
運動することで骨格筋が収縮することにより、
骨格筋の細胞から複数のサイトカインが分泌され、
それが血液を介してホルモンのように運ばれると、
脂肪細胞などに影響を与えることが、
最近の研究により明らかとなっています。

上記文献において対象となっているのは、
そのうちのIL-15(インターロイキン15)というサイトカインの働きです。

IL-15は脂肪細胞を分解する働きを持つサイトカインです。

このサイトカインは骨格筋細胞から分泌され、
血液を介して脂肪組織に働き、
脂肪を分解する作用があります。
その一方でこのサイトカインは皮下の脂肪組織からも分泌され、
その局所でも脂肪を分解する働きを持つことが、
今回の人間での実験で示されています。

痩せている人と太っている人との比較では、
太っている人の皮下脂肪からより多くのIL15が分泌されていて、
運動することにより、
皮下脂肪からのIL15の分泌が増加することも確認されました。

この現象からは、
皮下脂肪が増加すると、
身体はそれを減らすために、
脂肪分解を促進するサイトカインを分泌し、
そのバランスを取ろうとしていることが想定されます。
運動は筋肉からのIL15の分泌を増加させると共に、
直接的に脂肪細胞のIL15の分泌も増加させ、
それが運動が脂肪分解に役立つ、
1つの理由であると考えられるのです。

よく脂肪を燃焼させるにはどれだけのカロリーが必要、
というような説明がありますが、
それが敢くまで定常状態での話で、
実際には運動時には、
直接的に脂肪分解に働くサイトカインなどの働きもあり、
運動の効能はかなり複雑で多岐に渡るものであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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