ナカゴー特別劇場vol.13「ベネディクトたち」 [演劇]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から診察室の片付けなどして、
それから今PCに向かっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
我が道を行く、と言う感じの、
小劇場ならではの魅力溢れる愛すべき劇団、「ナカゴー」の、
特別劇場と銘打った2本立ての公演が、
明日まで秋葉原にほど近い、
廃校となった中学校の校舎を利用した多目的施設で上演中です。
これまでに2回二本立て上演のうちの1本として上演された、
「ベネディクトたち」という再演の作品と、
「ミッドナイト25時」という新作とのカップリングです。
時間の都合で再演の「ベネディクトたち」のみ足を運びました。
これはかなり楽しくて、
ちょっとだけ気の利いた台本に、
如何にも小劇場という怪優が、
その体技としゃべくりの技芸を、
心ゆくまで披露するという快作で、
1時間という上演時間も非常にお手頃感がありますし、
主要なキャストがそのままでの3演目なので、
細部が練り上げられているのが素晴らしく、
役者さんにもうちょっと華があればなあ、とか、
ラストをもう少しどうにかすればなあ、とか、
一点豪華主義でちょっとした仕掛けなどあれば、
もっと充実するのに、とか、
言いたいことは沢山あるのですが、
小劇場を観るという楽しみを、
充分に満喫することが出来ました。
小劇場の好きな方には、
お勧めの愛すべき小品です。
以下ネタばれを含む感想です。
いきなりブリーフ一丁で舞台に登場する篠原正明さんは、
自ら「超人ベネディクト」と名乗る正体不明の男で、
ベネディクトガールという2人の女性をはべらせ、
同じブリーフ一丁姿の北川昇吾さん扮する子分を、
チェルフィーチェと名付けて支配しているのですが、
その裏ではベネディクトガール2人も、
チェルフィーチェもベネディクトを殺す機会を狙っていて、
ピクニックの日にベネディクト対その他大勢の、
対決の火ぶたが切って落とされます。
対決は最初は格闘技もどきの身体のぶつかり合いになり、
これも寸止めギリギリのような、
かなり向う見ずなもので、
見応えがあるのですが、
その後は単なる口げんかに移行します。
クライマックスは延々続く口げんかのバトルで、
人間性を否定し合うような、
子供じみた悪意の遣り取りが、
馬鹿馬鹿しくてたまりません。
ただ、そこに支配と被支配の関係という、
人間が子供の時から死ぬまで離れることの出来ない、
本質的な人間関係のダークな部分が反映されているので、
ただの口げんかが、
何か奥深いもののように感じられる瞬間があるのが、
面白いところです。
ベネディクト1人を概ね3人で攻撃し罵倒するので、
3つの声がシンクロするのですが、
それほどうるさくは感ぜず、
個々のキャラの台詞だけを聞いていると、
また趣きがあるというのが、
これも非常に面白くて、
3演目で練られた成果だ、という気がします。
個人的な不満は大きくは2点あります。
1点目はラストの処理で、
心を閉ざしたベネディクトが、
大木に姿を変えてしまった、
というナレーションが入り、
篠原さんが顔を手で隠して、
棒立ちになったままで幕となるのですが、
インチキ昔話のようなこの処理は詰まらないと思いますし、
ベネディクトが人間ではなく超人であることを、
明確にしてしまっているので、
それも良いことではないように思います。
ベネディクトは単なる変態に過ぎないのか、
本当に超人であるのかが、
不確かであるのが面白いのですから、
そのラインは崩すべきではなかったのではないでしょうか?
もう1つの不満は、
あまりに低予算で何のギミックも存在しないことで、
別にこの芝居に豪華なセットも豪華な衣装も、
何もなくてもいいのですが、
1点だけで良いので、
手間を掛けたりお金を使ったりしたギミックが、
登場することで、
もっと作品に膨らみが出たのではないか、
というように思います。
たとえば、野鳩との合同公演では、
非常に良く出来たマペットのエイリアンが登場しましたが、
ああいうものが一点豪華主義であることで、
作品に演劇としての奥行が出るような気がします。
今回の作品の場合、
エイリアンが出て来ても、
UFOが出て来ても、
全然違和感はない話なので、
もう一工夫あると、よりグレードの高い芝居に、
なったのではないでしょうか?
いずれにしても、
ただの口げんかを本気で芝居にする、
という心意気が楽しいですし、
強烈な肉体派の役者さんの競演の魅力は、
きっと状況劇場の初めの頃は、
こんな感じだったのじゃないかしら、
と思わせるものもあります。
ただ、ここでそのまま終わっては、
矢張り残念な気がするので、
是非色々な面で磨きを掛けて、
今のスタイルには必ずしも拘ることなく、
ラディカルに攻めの姿勢で、
この閉塞した小劇場に風穴を開けて欲しいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
朝から診察室の片付けなどして、
それから今PCに向かっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
我が道を行く、と言う感じの、
小劇場ならではの魅力溢れる愛すべき劇団、「ナカゴー」の、
特別劇場と銘打った2本立ての公演が、
明日まで秋葉原にほど近い、
廃校となった中学校の校舎を利用した多目的施設で上演中です。
これまでに2回二本立て上演のうちの1本として上演された、
「ベネディクトたち」という再演の作品と、
「ミッドナイト25時」という新作とのカップリングです。
時間の都合で再演の「ベネディクトたち」のみ足を運びました。
これはかなり楽しくて、
ちょっとだけ気の利いた台本に、
如何にも小劇場という怪優が、
その体技としゃべくりの技芸を、
心ゆくまで披露するという快作で、
1時間という上演時間も非常にお手頃感がありますし、
主要なキャストがそのままでの3演目なので、
細部が練り上げられているのが素晴らしく、
役者さんにもうちょっと華があればなあ、とか、
ラストをもう少しどうにかすればなあ、とか、
一点豪華主義でちょっとした仕掛けなどあれば、
もっと充実するのに、とか、
言いたいことは沢山あるのですが、
小劇場を観るという楽しみを、
充分に満喫することが出来ました。
小劇場の好きな方には、
お勧めの愛すべき小品です。
以下ネタばれを含む感想です。
いきなりブリーフ一丁で舞台に登場する篠原正明さんは、
自ら「超人ベネディクト」と名乗る正体不明の男で、
ベネディクトガールという2人の女性をはべらせ、
同じブリーフ一丁姿の北川昇吾さん扮する子分を、
チェルフィーチェと名付けて支配しているのですが、
その裏ではベネディクトガール2人も、
チェルフィーチェもベネディクトを殺す機会を狙っていて、
ピクニックの日にベネディクト対その他大勢の、
対決の火ぶたが切って落とされます。
対決は最初は格闘技もどきの身体のぶつかり合いになり、
これも寸止めギリギリのような、
かなり向う見ずなもので、
見応えがあるのですが、
その後は単なる口げんかに移行します。
クライマックスは延々続く口げんかのバトルで、
人間性を否定し合うような、
子供じみた悪意の遣り取りが、
馬鹿馬鹿しくてたまりません。
ただ、そこに支配と被支配の関係という、
人間が子供の時から死ぬまで離れることの出来ない、
本質的な人間関係のダークな部分が反映されているので、
ただの口げんかが、
何か奥深いもののように感じられる瞬間があるのが、
面白いところです。
ベネディクト1人を概ね3人で攻撃し罵倒するので、
3つの声がシンクロするのですが、
それほどうるさくは感ぜず、
個々のキャラの台詞だけを聞いていると、
また趣きがあるというのが、
これも非常に面白くて、
3演目で練られた成果だ、という気がします。
個人的な不満は大きくは2点あります。
1点目はラストの処理で、
心を閉ざしたベネディクトが、
大木に姿を変えてしまった、
というナレーションが入り、
篠原さんが顔を手で隠して、
棒立ちになったままで幕となるのですが、
インチキ昔話のようなこの処理は詰まらないと思いますし、
ベネディクトが人間ではなく超人であることを、
明確にしてしまっているので、
それも良いことではないように思います。
ベネディクトは単なる変態に過ぎないのか、
本当に超人であるのかが、
不確かであるのが面白いのですから、
そのラインは崩すべきではなかったのではないでしょうか?
もう1つの不満は、
あまりに低予算で何のギミックも存在しないことで、
別にこの芝居に豪華なセットも豪華な衣装も、
何もなくてもいいのですが、
1点だけで良いので、
手間を掛けたりお金を使ったりしたギミックが、
登場することで、
もっと作品に膨らみが出たのではないか、
というように思います。
たとえば、野鳩との合同公演では、
非常に良く出来たマペットのエイリアンが登場しましたが、
ああいうものが一点豪華主義であることで、
作品に演劇としての奥行が出るような気がします。
今回の作品の場合、
エイリアンが出て来ても、
UFOが出て来ても、
全然違和感はない話なので、
もう一工夫あると、よりグレードの高い芝居に、
なったのではないでしょうか?
いずれにしても、
ただの口げんかを本気で芝居にする、
という心意気が楽しいですし、
強烈な肉体派の役者さんの競演の魅力は、
きっと状況劇場の初めの頃は、
こんな感じだったのじゃないかしら、
と思わせるものもあります。
ただ、ここでそのまま終わっては、
矢張り残念な気がするので、
是非色々な面で磨きを掛けて、
今のスタイルには必ずしも拘ることなく、
ラディカルに攻めの姿勢で、
この閉塞した小劇場に風穴を開けて欲しいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣
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2014-09-13 08:17
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それじゃ台無しだとおもう
by カソン (2014-09-13 20:50)